ノスタルジック少女マンガ パート14

〜大和和紀作品〜

「まっとうな」少女マンガが読みたいという時に、この先生の作品はハズレが無いというイメージを私は持っています。お話の運びかたが丁寧で、なにかをひとつひとつ積み重ねていくという感じ。破綻無く組み上げられたストーリーに「人としての正しい道」みたいなエッセンスが微妙に加えられているお話が多いという印象があり、現代としてはやはりちょっとクラシックな扱いを受けてしまうかと思われますがそれがかえって新鮮なんじゃないかという気もします。
そんなわけで2作品ほどご紹介します。

・翼ある者(KCフレンド全1巻/昭和55年)

有名ピアニストの母を持ち、昔から天才少年指揮者とうたわれ将来を約束された音大生の海里(通称カイ)。そんな彼は主に家庭の事情により、いつしか音楽に対して冷めた気持ちを抱くようになり、女遊びも激しく今ではすっかり問題児扱いされていた。しかし彼を心配する友人に偶然連れられて行った喫茶店「子供部屋」で経営者の宮村流花(ルカ)に出会ったことにより、昔のように音楽への熱い気持ちを徐々に取り戻していく。一方ルカは若くして亡くなった恋人のシオンの事を忘れられずにいたが、次第にカイに惹かれていく自分に戸惑って彼の前から姿を消してしまう。ルカの行方を追うカイ、2人を襲う過酷な試練…。果たしてカイの指揮者への道はどうなるのか、そして2人の愛は、という感じでキレイに「起承転結」のパターンを描きながら大いにドラマチックにストーリーは進んでいきます。

個人的には、この音楽大学という舞台設定だけでもうたまらない(苦笑)上に学生街のなじみの喫茶店(店の名前がこれまた良いね)という70年代乙女チック風味が非常に好感持てます。この店でカイが「ホットコーラ」をオーダーするんですが、昔読んだこの時代の別のマンガでも同じシーンがあって(確か弓月光のマンガだったような。)いまだに覚えているんですがこのセンスはなんか好きです。カイの家庭の事情もいかにも音楽一家(庶民(私)の想像する)って感じでなんともいえません。

「悲劇のヒロイン願望」(但し、自分の事を愛して何でも受け止めてくれる男性という防波堤がある中でね)みたいのを密かに持つ女子は結構いるんじゃないかと思いますが、このお話のルカの境遇はまさにそんな憧れを満たしてくれるかと思います。かわいそうなんだが、ちょっとうらやましいというか。

また、単行本1巻の中にかなりのエピソードが盛り込まれているのですが(多すぎる、と感じないギリギリのところだと思う)完全にとは言いませんがあっさり目にすべて処理されているので、読んでいて達成感というか充実感を得ることができると思います。

・天の果て地の限り(KCミミ全1巻/昭和54年)

中大兄皇子、大海人皇子という兄弟の両方から愛された女性として有名な歌人、額田女王。まあ日本史や古典の授業で少し触れたかと思いますが、何ともいろいろ想像したくなるようなお話であることには違いないだろう。
そのあたりのお話を彼らの詠んだ短歌などまじえつつ、当時の政治情勢、戦などもひっくるめて描いた歴史もの。

私は歴史にはとりたてて興味があるというわけではないのですが、このあたりのエピソードはイマジネーションを試されるというか、とにかくおいしい題材だと思っていました。2人の皇子ともなんとなくカッコよさそう、とか勝手に想像してたし(苦笑)。

もちろんそんなわけでこのお話に出てくる皇子は2人ともカッコイイです。そして藤原鎌足もかなり美形に描かれています。忠臣である鎌足から皇子への熱い想いもさらっと描かれていますが(もしあさぎり夕先生が描いていたら、この辺にもっと力が入ってそう←勝手な想像)両方の皇子たちに愛され、なんだかんだ言って二人ともを好きになってしまう額田女王の心の揺れ具合、そして政治に翻弄される皇子の側室たちの悲しさ、というのがやはりメインでしょうか。皇子たち2人の葛藤もまたよろしい。

お話の中で彼らが短歌を詠むシーンは、そのシチュエーションが歴史的に正しいかどうかは全くわからないんですがなんだか本当にそのようであったかのように思わされてしまうくらいにうまく出来ています。
学生さんはこのあたりを学習したあと、あまり時間を置かないで読むと非常に楽しめると思います。が、そうでなくても記憶をさかのぼって十分楽しめるでしょう。


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