うつ病圏の疾患の中には、大うつ病性障害、気分変調性障害、特定不能のうつ病性障害などといったさまざまな疾患があります。当院には、漢方治療を希望されて来院されることが多く、軽症から中等度のうつ状態(躁状態を伴わない単極性の気分障害)に対して、漢方治療が有効なことは結構多いように感じています。特に気分変調性障害の方を漢方で治療する機会が多いと思います。気分変調性障害は従来、「抑うつ神経症」、「神経症性うつ病」と呼ばれていた疾患で、慢性で病相をなさない抑うつ症状によって特徴づけられます。
さて、うつ病圏の疾患に対する漢方治療では、体質・病状・環境によってさらに5つの東洋医学的なタイプ(これらのタイプのことを我々は「証」と呼んでいますが)に分けて、それぞれの証に対応した処方をよく使っています。逍遙散(しょうようさん)、ケップチクオ湯(けっぷちくおとう)、温胆湯(うんたんとう)、加味帰脾湯(かみきひとう)、天王補心丹(てんのうほしんたん)などの加減法をよく使っています。また、最近ではエキス剤として抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)をよく使用しています。ただ、臨床的には複数の証を同時に認めることが多いと思います。また、病気の経過や治療の過程で証は変遷していきますので、処方も変わっていくということになります。
西洋医学の治療、漢方治療に限らず、うつ病の治療で大事なことは、焦らずゆっくりと休息をとってもらうことが重要です。また、ご家族に対して、「これらの症状は病気によるものであって怠けではない、叱咤激励するのは禁物」ということを説明することも重要です。温かく見守ってあげることが大事であるということです。 |