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横林寛昭
株式会社YBI代表取締役
山口大学大学院客員教授
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第2回「仕入れ業務に秘策アリ」
(2008/08/25)
一般に仕入高を少なくして品数を減らすと、家電量販店、サービス業、スーパーなどは売り上げが減少するといわれています。一昨年、家庭用のコピー機が故障したので、自宅近くの家電量販店に行きました。店頭の展示品は見本であって、注文してから届くまで4日かかりました。昨年は、軽井沢で通販のアウトテーブルデッキ(約18万円)を購入しましたが、1カ月ほどかかりました。実際には家電量販店も通販においても在庫品が少なくなっています。
資材担当者は、材料が高騰しているから、仕入品の単価削減は出来ないと主張しますが、それでは「購買マンとして失格」です。いかなる環境においても、仕入れ単価の削減に取り組まないと、仕入業者から会社がなめられます。 単価削減は至難の技ですが、値引き交渉をすることで仕入先の値上げの牽制(けんせい)になります。実際の交渉でも3%値下げを仕入先に要請し、1〜2%の単価削減が実現すれば上出来です。
具体的に仕入単価の削減法は、縦軸に年間仕入高の上位順に記し、横軸に仕入金額、単体仕入高比率(仕入高÷総仕入高)、累計仕入高比率、目標単価削減額、実績単価削減額、月次の削減実績を記します。そして、作成した資料の中から、仕入単価が安い仕入先に切り替えます。また、累計仕入高比率が70%のところが、仕入先の全体数の10〜13%が、仕入れの上手な会社で、仕入高トップの単体仕入高比率は12〜13%です。逆に、仕入高トップが単体仕入高比率4,5%前後でしたら、仕入先の数が多く仕入高下位30〜40%仕入先数を減らすと会社が良くなります。
0.1円単位で値引き勝ち取る
以前コンサルタントとして携わった年商15億円の会社の事例を紹介します。資材課長は「わが社は立派な製品を作っているから、材料・部品の納期は発注してから3カ月かかります」。資材課長はこう言います。それに対し「3カ月は誰でも出来る」とした上で、「3カ月もかかると、製品の納期が延びてお客様に迷惑がかかる。材料・部品も在庫しなければならず、仕入品の支払いが先行して売り上げは立たないから資金繰りが悪化する」と話しました。開発部門にはオーダー設計を止めさせ、標準部品の採用を薦めました。
月に1回東京で経営塾を開いています。その資材課長は毎月出雲から出張して参加、その前後には仕入先を回り、納期短縮と仕入単価削減の交渉に当たっています。その結果、仕入先の98%から単価を0.1円の低い単位で値引きしてもらうことに成功しました。納期が1カ月以内に短縮されると、材料・部品在庫が3分の1に減ります。同社は、在庫高1.8億円でしたが、1年後の現在9000万円となり、引き続き5000万円に挑戦しています。彼は、この成果が認められ資材課長から工場次長に昇格し、工場内の生産にも目を光らせています。
有名企業はリードタイムが長い
一般に、仕入率の逆数が粗利率ですから、仕入率がゼロに近づけば近づくほど粗利率は100に近づき、利益が出ます。ですから、仕入率を低く抑えれば良いのです。
衣料販売店を多店舗展開する会社は年商25億円。バイヤー全員が商品在庫高を少なくすると、売り上げが伸びないと考えていました。「目標の粗利率が40%だから、その逆数の仕入率は60%なのに、なぜ仕入率90%なのか? 仕入率90%だと粗利率が10%しかなく、その10%から諸経費を引くと赤字になる。毎月仕入率60%前後を維持しなさい」。こう指摘しても、常に仕入高を増やし在庫率が150〜180%と、2カ月近くの商品在庫高を抱えていました。
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| 在庫管理を工夫すれば売り場も変わる(衣料品販売の株式会社トラヤ提供) |
そこで、コンピューターで発注をする際、在庫率が100%以上の商品に関しては、コンピューターが作動しないように(発注が出来ないように)することで、仕入れを抑え在庫引当による在庫削減をしました。即ち、在庫高3億7000万円が1年半の間に2億5000万円となり、1億2000万円のキャッシュフローを好転させました。しかし、今も在庫率が108%ありますから、目標の在庫率を70%とすると在庫高(0.7×月商2億3000万円)は1億6000万円になりますから、さらに9000万円のコストセーブが期待できます。
在庫率が135%の会社(年商250億円)は、粗利率が7%ですから理論仕入率は93%ですが、在庫高が多いから在庫引当をしながら、仕入れを抑えると仕入率が90%以下の88%が実現できました。そして、さらに仕入率をゼロに近づけるためには、縦軸に在庫高の多い商品順に記し、横軸に仕入先名、発注から納品までのリードタイムを記しますと、在庫高の多い商品は有名企業でリードタイムが長いことに驚きました。短いリードタイムの仕入先に切替ると、在庫量が減り仕入率がさらに2%下がりました。言い換えますと、粗利率が2%アップしたのです。
「資金が底をつき社員に給与が支払えなくなったので、助けて下さい!」。ある時、私の主宰する「増益経営塾」を60歳のギフト店の社長が訪れました。店に行ってみると、売り場面積は広いが、フロアは「商品の在庫の山」で、お客がほとんど見当たりませんでした。おそらく3カ月近くの在庫高(在庫率約300%)になっているから、すぐに1.5〜2カ月間仕入れを止めるよう薦めました。「それは無理です」「こんなに在庫が溜まっていると、銀行は横を向き、資金が続かない」「わかりました」……。この会話は6月の初めのことで、売り上げが伸びる中元商品の仕入れを差し控えたのです。
仕入れをしなければ、支払いが立たないから支払金額の心配はありません。また、仕入高がない(ゼロ)から、売上高がほぼ粗利益高となり利益が出ます。商品が不足しているからお客には迷惑をかけますが、会社を破綻させない究極の手段です。
皆さんの会社の製品の粗利率に対して、その逆数が仕入率(又は材料費率)ですから、粗利率を高めるには、仕入率をゼロに近づけることです。そして、毎月粗利率の逆数の仕入率で仕入れることが健全経営です。仕入単価が安くなり、バックマージンが確保できるからと、まとめ買いをすると、仕入率が100に近づき粗利率が低下すると同時に在庫率が高くなり資金繰りが悪化します。

第1回「仕入れを減らし工場を磨く」
(2008/07/25)
石油や鉄をはじめ様々な原料の価格が上昇しています。中国など新興国の経済成長に伴い需要が増しているためです。影響は日本の工場も直撃し、バイイング・パワーで劣る中小・中堅ほど厳しい状況です。「失われた10年」を経験した企業には、仕入れコスト上昇を吸収するにはあまりにも大きな値上がりですが、日々の現場を点検すると、その原資は身の回りに埋もれています。
まとめ買いは高くつく?
会社の利益とは、図のように売上高から仕入高や人件費など諸経費を差し引いて残った額です。昨今のゼロサム市場では、売上高の伸びに期待できません。一方で人件費や諸経費を削減しようにも、乾いたタオルを絞るごとく水(諸経費)は出てきません。利益を創出するために仕入高に目を付けますが、原料や副資材の高騰でコストセーブが効かなくなってきました。まとめ買いすると、仕入れ単価が安くなったとかバックマージンで利益を見込む会社を見かけます。しかしバックマージンは仕入先が得するもので会社には損となります。まとめ買いで在庫を増やし、仕入れによる支払いが先行し売り上げが立たなければキャッシュアウトになるからです。
逆に仕入高を減らすことが利益創出に通じる近道といえます。原料や副資材のムダ買いをしないで、製造部門が使用する数量だけ仕入れをすればいいのです。仕入高は仕入率×売上高で表示されます。仕入率(仕入高÷売上高)は粗利率の逆数ですから、仕入率がゼロに近づくほど粗利率が100に近づき利益が増大します。
年商35億円の会社は調味料を生産し食品メーカーに販売している中間製品生産会社です。原料の在庫高が3億6000万円ありましたが、在庫率は120%(在庫高3億6000万円÷月間売上高)と製造業としては高い数字で、経営上は好ましいものではありません。同社の泣き所は、食品メーカーからの注文に対し直ぐに納品しなければならず、多くの原料や中間仕掛品の在庫を保管しているという点です。在庫削減をしようとしても、営業部門から「お客様に納期が守れないし、在庫を持った納期の早い会社に浮気される」、製造部門からは「原料や中間仕掛品を減らすと生産が止まり、作業者を遊ばせる」と猛反対。在庫増は資金を圧迫させ経営を苦しくさせているのですが、少種多量生産時代の考えから脱却できていません。
重要なのは、現在の在庫高を前年より増やさないために、現在の在庫高を毎月棚卸しをして明確化し、在庫高明細の中から必要とする原料の在庫引き当てを徹底することです。目標を在庫高1億5000万円に設定し、月次の在庫高計画と在庫高実績を追跡することにしました。大幅な在庫削減を図るには、従来通りの発注方法を改め、必要な仕入量を購入することです。実際に仕入れを担当している社員に在庫高から仕入れ原料引き当てを徹底化させ、在庫のない原料だけを仕入れるように発注面での意識改革を求めました。
すると、1年後に在庫高が目標通りの1億5000万円となりました。2億1000万円の削減でキャッシュアウトは改善されたのです。在庫削減に反対していた営業や製造部門にも問題は生じなかったし、むしろ在庫高が少なくなることで製品納期は短縮化。生産性は13%向上し、販売先への即納体制が整ったことで、売上高が計画比15%アップしました。