homeへ戻る
ECM NEWS topへ戻る

 ECM NEWSECM情報

Album cover reproduced by courtesy of ECM Records, Munich
●ジャケット写真はECM Recordsの許諾のもと、掲載しております。(musicircus


February 17, 2012

今週の批評から

Reviews of the Week

 
 カロリン・ヴィットマン Carolin Widmann とアレクサンダー・ロンクィッヒ Alexander Lonquich によるシューベルト Schubert の録音への批評、続報。

 

ECMPlayer

 「このアルバムで一際高く聳え立っている《幻想曲 ハ長調 Fantasy in C, D934》は、シューベルト晩年の傑作の中ではやや隠れた地位に甘んじている作品であるが、音楽的形式を圧縮して嵌め込み、楽章間を切れ目なく演奏するという点で、これよりも有名な作品であるピアノのための《さすらい人幻想曲 Wanderer Fantasy》と同じ構造をもつ。この曲(《幻想曲 ハ長調 Fantasy in C, D934》)の核心は、中心となる第2楽章の変奏曲のなかにある。全部で5つある部分の内、ゆっくりとした主題[註記:シューベルトの歌曲〈私の挨拶を D741〉の旋律]の導入に続く4つの部分で主題が要約・変奏され、この主題が、作品全体の至る所に影を投げかけている。冒頭でのヴァイオリンの独奏からすでにヴィットマンならではの特徴が発揮されている。音色をできる限り細い糸にまで削ぎ落とし、ヴィブラートを最小限度に抑え、作品に生気を与えながらゆっくりと呼吸を深めていくヴィットマンならではの個性的な解釈だけを見ても、このディスクは、じっくりと耳を傾けるに値するものである。この《幻想曲 ハ長調 D934》よりも小振りな作品ではあるが、併録されている初期作品《イ長調ソナタ D574》と《華麗なるロンド ロ短調 Rondo in B minor D895》での力強く印象的な表現と合わせて、本作でのヴィットマンの演奏の成果はじつに驚くべきものであり、イマジネーションと深遠なる知性の充溢を感得することができる。」

アンドルー・クレメンツ Andrew Clements、ガーディアン誌 The Guardian

 
  国内参考記事
カロリン・ヴィットマン
来日を機にブレイク必至。
ECMの秘蔵ヴァイオリニスト
掲載: 2012052921:00
ソース: intoxicate vol.972012420日発行号)
取材・文 東端哲也

 
 
 
 デーネシュ・ヴァールヨン[ディーネシュ・ヴァーリョン] Dénes Várjon の《プレチピタンド(音楽用語;速く/性急に/駆け下りるように) Precipitando》へのサンデー・ヘラルド紙 Sunday Herald の批評。

 

ECMPlayer

 「私は今、このディスクの登場を40年間待ち侘びていたかのような感慨に捕らわれている。その間、私はこの19世紀に作られた最も偉大な音楽作品のひとつであるリスト Liszt のロ短調のピアノ・ソナタのさまざまな種類の演奏を何度となく聴いてきた。(中略) ハンガリー出身のピアニスト、ディーネシュ・ヴァーリョン Dénes Várjon は、彼自身この作品の熱狂的な信者ということもあって、長年に及ぶ取り組みの過程を通じて、非常に驚くべき解釈を築き上げている。彼は聴き手が期待するあらゆる力、情熱、詩情、鋼のような名技性を身につけているが、それに先立って、何を表現するか、いかに表現するかということへの省察がある。ここでのヴァーリョンの演奏は、作品内部の構造を支えている厖大な数の連接点に、新たな光を照射している。パラグラフとセクションの間に広大な空間が空くことを、彼は恐れていない。その演奏テクニックはこのソナタ全体を形作る叙事詩的なバランスを押し展げているが、そこで重視すべきは速度を落としたり音楽の流れを遮ったりしていない点にある。まさしく、この名作の記念碑的な演奏といえよう。」

マイケル・トゥメルティ Michael Tumelty、サンデー・ヘラルド紙 Sunday Herald

 
 
 
 トルド・グスタフセン・クァルテット Tord Gustavsen's Quartet の新作《ザ・ウェル The Well》へのガーディアン誌のレヴュー。

 

ECMPlayer

 「幅広い人気を誇るノルウェーのジャズ・ピアニスト、トルド・グスタフセン Tord Gustavsen が前作《リストアード、リターンド Restored Returned》を制作する際に独特の雰囲気をもつサキソフォニストのトーレ・ブルンボルグ Tore Brunborg を加え、自身のレギュラー・トリオをクァルテット編成へと拡大したことで、グスタフセンはそこに完璧なバンドを見い出した。新作《ザ・ウェル The Well》では、グスタフセンの弾くスタンダードによって構造の上で一段と難解な領域へ向かってグループが伸長していることが読み取れるが、しかしそこには同時に、グスタフセンの特徴的な様式でもある低いキーでゴスペルを演奏する構成要素や、大量の開かれた場所や、いつまでも記憶の片隅に残る旋律や、きらきらと光を発する繊細なタッチなどがすべて出揃ってもいる。これまでよりも一層切迫した感覚の所在が直ちに判明するのは、教会音楽の厳粛さを思わせるオープニング・トラックに続いて、スネア・ドラムのリズムを刻む音やピアニストの引き締まった演奏が急旋回して転がり込んでくる、まさにその瞬間だ。(中略) ゆっくりとしたキース・ジャレットの演奏を彷彿させる非常に心地好い旋回する響き、そしてタイトル・トラックでの転移する和声は、幾許か活気ある音楽作品へのアプローチを指向したグスタフセンの研究成果の反映でもあろうか。このグループならではの絶えず発展を積み重ねてやまない姿勢は本作でも相変わらずで、ささやかな反論でさえ口を噤ませてしまうほどのものだ。」

ジョン・フォーダム John Fordham、ガーディアン誌 The Guardian

 
 
 
 リサ・スミルノワ Lisa Smirnova が演奏したヘンデル《8つの組曲(8つのクラヴィーア組曲 第1巻) Die Acht Grossen Suiten (Eight Suites for Piano) 》へのグラモフォン誌 Gramophone の批評。

 

ECMPlayer

 「ロシア系オーストリア人のリサ・スミルノワ Lisa Smirnova が弾いたヘンデルの2枚組だが、これは聴いていてじつに愉しいアルバムである。この組曲集を彼女は自分なりの順番に並べ替えて弾いており、最初に登場するのは凝った装飾音が特徴的な組曲第2番のアダージョである。つまり、彼女が奏でるピアノの音は、聴き手が予期する親しく馴染んだ場所には登場しない。(中略) しかし間もなくして、耳は快適な心地よさと共にそのことにも順応する。なにしろ彼女が描き出す響きの絵といったら、(組曲第1番のプレリュードなど)それが相応しいときにはハープシコードの幻影を引き入れるし、さらには(たとえば、組曲第3番の終曲のプレストなど)急速な楽節を極めて正確に表現すべきときには何よりも清澄な響きに奉仕するのである。スミルノワの透明なタッチと明晰な音色はヘンデルの鍵盤作品との完璧な相性の良さを感じさせ、CDに添付された優れたブックレットによれば、やがて時機が来れば、続編となる第2巻、1727年の組曲集を取り上げたレコーディングが登場することもどうやら期待してよさそうである。」

ジェレミー・ニコラス Jeremy Nicholas、グラモフォン誌 Gramophone

 
 


(c) ECM Records, Munich. Used by permission.

 
  ※本記事は、ECM が発信する最新情報を ECM Records の許諾を得て翻訳掲載するものです。musicircus  

topへ戻る