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ECM review

Album cover reproduced by courtesy of ECM Records, Munich
●ジャケット写真はECM Recordsの許諾のもと、掲載しております。(musicircus


Paul Bley
Open, To Love

Paul Bley piano

ECM 1023

Closer
Ida Lupino
Started
Open, To Love
Harlem
Seven
Nothing Ever Was, Anyway

Recorded on September 11, 1972
at Arne Bendiksen Studio, Oslo
Engineer: Jan Erik Kongshaug
Cover design: B & B Wojirsch
Photo: IB Skovgaard Petersen
Produced by Manfred Eicher

ECM 1023

オープン、トゥ・ラヴ / ポール・ブレイ
国内盤発売:1999. 8 .18(再発) POCJ-2792 ¥2,039
 
   1曲目開始10秒、和音と高音域の単音の打鍵による残響が震えながら持続するなか、ペダルを踏み替える激しい音──。本作では、倍音と残響が織りなす色彩層の干渉と響きの襞の持続が、全編にわたって、繊細に繰り広げられる。細部と全体構造の幻想的照応、そして組み合わせの妙から、パウル・クレーの世界を連想させる。  
   『クレーの絵と音楽』の著者でもある作曲家ピエール・ブーレーズは、ステファヌ・マラルメ、e.e.カミングズ、〈器官なき身体〉のアントナン・アルトー、そして、視覚と揺らぎの調停者ヘスス・ラファエル・ソト[Jesús-Rafael Soto(1923-2005)]など、いずれも脱主体的な境界域の抽象化に挑む芸術家たちを偏愛している。こうした一貫した美意識からは、ポール・ブレイの音楽と通底するものが感じられる。  
   稠密な鉱物や結晶を思わせるブーレーズ作品と疎らな空間を縫うように進むブレイの音楽とでは、表面的には対極にも映る。しかし、余白マージナルに潜む詩学を追究している点で両者は──楽譜に書かれた音楽とインプロヴィゼーション(即興演奏)という相違を超えて──重なり合う。(さらに付け加えれば、ブーレーズの音楽はきわめて官能的な流動性リクィディティに満ちている) ジャンルを超えたところで耳のフォーカスを絞るポイントはまだ沢山残されている。  
   ポール・ブレイは藤井郷子に「音楽をまなぶには、自分自身の演奏を聴くことだ」と言った。自分自身の声をみがくためには、他人への憧れや好みに従うのではなく、自らの無意識の内的鉱脈を意識化していくことが必要だという教え。そこからは、自分自身であることと、自分が自分から離れてあることが同時に成立すること、それが自由というものの本質なのだ──という即興の達意が読み取れる。6、7曲目では、内部奏法による詩的イマージュの創出が圧巻。  
 

堀内宏公
Hiromasa Horiuchi

 

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