――そこでまず音の魅力を分析してみたいのですが。
大野 そうね。まずアトムのサウンドシステムの確立、擬音語の聴覚化、音の分解と再構成、E・S(Electronic Sound)が子供に。
――ギオン語?
大野 ほら、マンガによくある“ドバーッ”とかさ、“バギューン”とか“ドシーン!”とか。
――いわゆるマンガの世界での音……。
大野 そうそうそう。
――E・Sが子供にというのは?
大野 それまではマンガ映画っていうものはさ、そういうもの(電子音)は一切使って無かったわけでしょう。で、電子音なんてのはさ、高級で、むずかしくて、という評価だったわけよ。いわゆる言ってみりゃエリートのみがわかる、みたいなね。まして子供なんかわかりっこないみたいな。ところがそれを使っちゃったわけだなー。それで使っちゃったら何もかも電子音になっちゃったわけだけどサ。
――むしろ子供だから解るんですよね。難解というよりむしろ、おもしろおかしくスムーズに入っていった。
大野 そうでしょう。それとアトムの足音に関してはひとつのプロセスがあるわけよ。第一話にはでてこないでしょう。あったんだけど全然別の足音なんだ。
――エッ!?
大野 8話から出てくるんだよ、だからそれまでのアトムには足音は無かった。そういった感じで、システムの確立というのは2クール終った頃に出来てきたわけだ。
――アトムの足音は何の音なんですか?
大野 あれはマリンバの音。
――エエッ あれこそ電子音だと思っていたのに。
大野 マリンバをテープにとって、手でテープヘッドにこする様にあてリールを動かしてやるわけよ。
――オーラルサウンドというのは、擬音語の一種なんですか?
大野 要するに、“ワッ”とか“ギョッ”とか“サッ”とかさ“ヒャッ”とかね、口で言っちゃってるアクセントだよね。でサ、そういうものも今まではセリフとして扱われてたわけだ。だからアクセントというのはどっちかというと音楽であり、Sound Effectでしょう。
――うんうん。
大野 だから、驚きの表現なんかの場合“ギャッ”とか“サッ”とか“ヒャッ”というのは実際にその通りに口で言って、それに変調をかけて作りかえてるわけだ。
――成程ね。そういう普通ならセリフで言ってしまうところもほとんど電子的処理で再構成してるわけだ。それで何でもかんでも電子音的に聞こえちゃうわけだ。
大野 そう、それに音の分解と再構成というのは非常に多くの音の素材を1/12秒くらいずつにテープをちょん切って、たてつづけに編集して使うわけだ。例えば1/12秒の白色ノイズの後に1/12秒の琵琶の音が続き、後、同様に三味線だのドラムだのが続きそれをダーッとつなぐわけだよ。そうすると個々の音というのはもう個々の音ではなくなってくるわけだよね。で、つないでいくと個々の音の要素は残ってるわけだ。前の音の残聴のあるうちに続きの音そしてまた続きの音……といった具合につぎつぎと重なって出てくるわけだ。そうすると全然違ったひとつの効果になって表われてくるわけね。
――映画が残像現象を利用してるのと同じ効果を音でねらったわけですね。そういった音は主にどういったところで使ったわけですか。
大野 そーね。まあ、アトムが活躍するところとか、要するに格闘シーンにね。画の動きが細かくて、それに合わせる意味もあったわけだけどね。
――1/12秒の意味は?
大野 それ以上細かく出来ないんだよ。1/12秒というのはフィルムにして2コマに相当するわけだ。これ以上細かくすると録音テープの編集が出来なくなるという限界なわけね。