| ジャズは元来危険な音楽だったらしい。今も不穏だ。ブラッド・メルドーはオルタナティヴ・フォークに分類される歌手ジョー・ヘンリーの歌伴でオーネット・コールマンやブライアン・ブレイドらとともに奏でていたが、彼のピアノ・トリオとしての新作『ラーゴ』での録音の音像はとんでもないことになっているらしいし。FMP はエレクトロニクス時代対応の新レーベル
"ALL" を発足させ欧州オヤジ即興の延命を企てているし。ジム・ブラックとつながるアイスランドのギタリスト、ヒルマー・イエンソンは
"Smekkleysa"
レーベルで意識に麻酔をかける音楽を現出させる一方で、音響レーベル"キッチン・モーターズ"から、シガー・ロスのメンバーを含んだコンピ盤『Nart Nibbles』を発表して、エレクトロニカと生楽器による新たな審美軸に挑んでいるし。フレッシュ・サウンド・レコードの"ニュー・タレント"シリーズでは、ダヴィッド・サンチェスのところにいたアルト奏者ミゲル・ゼノンがメインストリームにありながら瑞々しいジャズを奏でているし。CD店に行くと、アメリカン・クラーヴェは『テオ・マセロ』の音源増強2枚組復刻や、菊地雅章『アフター・アワーズ2』も並んでいる。街に出るとデート・コース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデンや大友良英ニュー・ジャズ・クインテットがライヴをやっている。"Jazz/Improv〜Electronica, Experimental"
というラインを措定すると、電子音の表現方法と試みが
"Jazz/Improv"
領域で混交しつつ発熱しているのが昨今ということになる。ノルウェーのブッゲ・ヴァッセルトフトらのジャズランド、フランスのノエル・アクショテらのレクタングルがレーベルとしてのいい成功例だ。 |
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ブラッド・メルドーの新作『ラーゴ』
"ALL"〜FMPの新レーベル
"Smekkleysa"
"キッチン・モーターズ"
エレクトロニカと生楽器による新たな審美軸
"アメリカン・クラーヴェ"
Jazz/Improv〜Electronica,
Experimental
というライン
電子音の表現方法と試み
"ジャズランド"(ノルウェー)
〜ブッゲ・ヴァッセルトフト etc.
"レクタングル"(フランス)
〜ノエル・アクショテ etc. |
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| おそらく後の歴史家は、ジャズとその発展の功績について三人のドイツ人プロデューサーの名を並べるだろう。アルフレッド・ライオン(ブルーノート)、マンフレット・アイヒャー(ECM)、ステファン・ウインター(JMT〜ウィンター&ウィンター)。ECMについては、キース・ジャレット、チック・コリア、パット・メセニー、ビル・フリーゼルらを輩出して以降、ジャズでの功績は第2のプロデューサーであるスティーヴ・レイクにバトンが渡っている(今年出たジョン・サーマンとジャック・デジョネットのデュオ・ライヴは彼の制作だ)。ジャズ・メッセンジャーズやマイルスのバンドのような存在は今はない。しかし、レーベルの存在がシーンや審美軸の共同体をドキュメントし、育んでいるのは現在も事実である。 |
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三人のドイツ人プロデューサー
アルフレッド・ライオン(ブルーノート)
マンフレット・アイヒャー(ECM)
ステファン・ウインター(JMT〜ウィンター&ウィンター)
ECM第2のプロデューサー、スティーヴ・レイク |
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| ここ20年間のジャズ・シーンでは、ウィントン・マルサリスの登場による新伝承派、キース・ジャレットのスタンダーズ(とその影響)、マイケル・ブレッカー、パット・メセニー、ジョシュア・レッドマンなど……10人ほどのいつも安心して聴ける音楽性を備えたビッグ・ネームがメディア的には主流を成し続けている。ところが、(1)80年代半ばの
JMTレーベルの発足と
M-BASE一派と呼称された一群とその後の動向、(2)90年代に台頭したデヴィッド・S・ウェアを筆頭とする(人望的にはウイリアム・パーカーかな)ダウンタウンの灼熱のような強者ども(彼らはソニック・ユースの前座を務めて若いリスナーにも脚光を浴びた)、この二つはアヴァンギャルド/オルタナティヴの視野で観測されるものではなく、圧倒的なリアルなジャズだ。むしろこちらのほうが主流で正史であることは将来的には自明なのだが。具体的なミュージシャン名としては、(1)はスティーヴ・コールマン、ティム・バーン、グレッグ・オズビー、カサンドラ・ウィルソン、ジャン・ポール・ブレイリーなど。(2)は、デヴィッド・S・ウェア、マシュー・シップ、ウイリアム・パーカー、ジョー・モリス、ロブ・ブラウンなどだ。 |
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ウィントン・マルサリスの登場による新伝承派
キース・ジャレットのスタンダーズ(とその影響)
10人ほどのビッグ・ネーム
(1)
80年代半ばのJMTレーベルの発足と
M-BASE一派と呼称された一群と
その後の動向
(2)
90年代に台頭した、
デヴィッド・S・ウェアを筆頭とする
ダウンタウンの灼熱のような強者ども |
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| 「ドルフィーが生涯に残した録音数を凌駕するだけの録音を自分は残した、私は自分の演奏をやり尽くした」と、スタジオ録音からの完全引退を考えていたマシュー・シップ(セシル・テイラー以降最も重要なピアニストのひとりだ)が、ロック系のレーベルであるサースティー・イヤーで主宰し始めた"ブルー・シリーズ"。サンプリングやプログラミングが導入されていたり、スプリング・ヒール・ジャック(ドラムンベースのユニット)が彼らの音源を手がけた作品が出されたり。しかし、エレクトロニカ以降の新しい耳に迎合したジャズという分析は正しくない。現在の空気を生きる者の必然的な表現であり、過去への参照(=前衛的態度)無しのまさに"童貞力"としか言いようのないジャズが形成されている。現在このシリーズは8枚。輸入CD屋に走ることを緊急的に勧告する。 |
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マシュー・シップ
サースティー・イヤー "ブルー・シリーズ"
サンプリングやプログラミング、
エレクトロニカ
〜過去への参照(=前衛的態度)無しの
まさに"童貞力" |
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| 昨年(2001年)、ビョークの『ヴェスパタイン』のサウンド(背景音の表現を当然含む)を聴いて私が予感したのは、"Jazz/Improv〜Electronica, Experimental"
の措定では、おそらくメゴ、ミル・プラトー、サブ・ローザ、タッチ、ルーン・グラモフォンといった越境的で魅惑的なレーベルの表現の一部は、"Jazz/Improv"
の方向へも回収されてゆくだろうということだった。その過程で、"Jazz/Improv"
も当然新陳代謝する。エレクトロニカ・シーンの勃興で耳は確実に変化した。以下に挙げた10レーベルは、"Jazz/Improv" の "Jazz" に軸足が近いコアなものだが、新しい耳に発見されるにふさわしいことだけは確かだ。 |
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ビョーク『ヴェスパタイン』
"メゴ"
"ミル・プラトー"
"サブ・ローザ"
"タッチ"
"ルーン・グラモフォン" |
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