VOL.04 2001.09.10 |
矢
多 羅 の マ サ ラ YATARA NO MASARA |
月光茶房 ■ |
原田正夫
Masao Harada
| この『矢多羅のマサラ』も無事4号までたどり着きました。「3号雑誌」といってミニコミや同人雑誌がだいたい3号で廃刊になるのは経済的理由よりおおかた内輪もめが原因。『矢多羅のマサラ』はひとりで作っているので、続くか否かはひとえにワタシの粘着と執着にかかってるわけで。商いは飽きないに通じるなんてね。逆もまた真なれば、これの継続がお小遣いの足しになり、音盤購入の糧となれば言うことなし。このレビュー面白いと言ってくださる方もいるがカンパもモチロン歓迎(笑) |
| VOL.04 | part 2 NEW ARRIVAL ▼ |
| part 1 | part 3 UNFOGETTABLE ! / PSYCHO VANILLA ▼ |
| 150 DISKS OF JAZZ |
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016 |
アーチー・シェップ (ts.ss.) 『アッティカ・ブルース』 (ユニバーサル・ジャズ&クラシック) |
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R&Bのバンドでそのキャリアをスタートさせながら、60年代後半はフリー・ジャズの流れの中に身を置くことによってジャズから越境。70年代以降はジャズとR&Bやアフリカ音楽とのミクスチャーというアプローチの中、野太い ts.と美しい ss.の音色で彼自身の魂の唄を奏でて、現在にいたる。最近は、ストレートアヘッドなフォーマットで、スピリチュアル度をさらに深化させている……らしいが、「演歌」を根に持つニッポン人から言わせれば、ムード歌謡ギリギリの最近の彼のサックスは好き嫌いのわかれるところ。1972年の本アルバムでも、タイトル曲のゴスペルそのもののコーラスと跳ねるファンク・リズムに始まって、ウィズ・ストリングスのバラードやR&Bの響きの数々。シェップのサックスはフリー・ジャズの咆哮とR&Bテイストの下世話な音色が一体となりながらも、全体の音楽の中で控えめだ。が、渾沌の70年代にあって自身の進むべき道を確信したような屹立した強さを、展開する音楽の隅々にはりめぐらせる。最後の曲のカール・マッセイの娘(当時7歳)がみせるナイーヴなボーカルの美しさといったら! | ||
017 |
Henry Threadgill (as.) 『Too Much Sugar For A Dime』 (Axiom) |
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30歳になりたての頃、1982年あたりだったか、ふらりと入ったジャズ喫茶で席に着くや否やかかったレコードが、ジョージ・アダムス〜ドン・プーレン・カルテットの「ライフ・ライン」。このアルバムがその後のワタシの音盤人生を変えました。以後ロックからジャズにシフトしたワタシは、同じような感触の音盤を次々に物色。その中にヘンリー・スレッギルたちのトリオ・ユニット「エアー(Air)」があった。as.と b.と ds.の3人だけで展開する演奏の、流し聴きを許さないキリリとした空気にハマりました。大竹伸朗のオブジェが印象的なジャケットの本アルバムは、ソロになってからのスレッギルが90年代に入って作ったグループ「ヴェリー・ヴェリー・サーカス」による3枚目で1992年に発表。スレッギルの as.にフレンチ・ホルンに2ギター、さらにチューバが2管と ds.という異色の編成で、つっかかり、ギクシャクしながら、実は滑るような心地よいグルーヴを作る。個々の音が単純に一体化しないよう置かれながらも、総体としてひとつのうねりを生み出すアンサンブルがとにかく素晴らしい。ジャケのセンスも秀逸この上なし。 | ||
018 |
Don Cherry (tp. pocket tp.) 『Brown Rice』 (Horizon / A&M) |
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タイトルのブラウン・ライスは玄米のこと。このアルバムを発表した70年代初頭、ドン・チェリーはベジタリアンになって野菜や玄米しか食べなかった。オーガニック・ミュージックなるものを提唱していた時期なのでこんなタイトルをつけたのだろう。彼は50年代末のデビュー当時からフリー・ジャズに身を投じていたので、最初からジャズからの越境者だった。以後、95年に没するまで、飄々としたスタンスで自身の音楽に垣根を作らなかった真のボヘミアン。60年代から続く、民族音楽と自身の即興演奏を共生させる喜びは本アルバムにも横溢していて、聴く者に不思議な開放感を与えてくれる。『矢多羅のマサラ2号』で紹介したステファン・ミカスと同じく、人類という種の未来を厳しく見据えながら、彼のトランペットは鋭利に空気を切り裂き、また「慈愛」と「憧憬」を奏でる。ジャケット(US盤)の彼のうしろに写るはサグラダ・ファミリア大聖堂の尖搭だろう。重力と共生しようとする自然界の二次曲線を愛したアントニオ・ガヴディ。ドン・チェリーもまた人工と自然との共生を夢見て、永遠を幻視したアーティストだった。 | ||
019 |
Pigbag (group) 『Dr.Heckle And Mr.Jive』 (BMG) |
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脱ロックということでダヴ、ファンク、フリー・ジャズ等、雑多な音楽を取り込みながらも定まったスタイルを持たずに自由自在に音楽を展開していた The Pop Group は数枚のアルバムを残して、ソロと3つのグループに分裂。70年代の終わりから80年代初頭にかけてのことだ。その3つのグループのひとつが、The Pop Group に参加していたベーシストが結成したこのピッグバッグ。これはその1枚目のアルバムで82年リリース。ヒットしたアルバム未収録のデビュー・シングルもCDに収録されている。完全なインストルメンタル・グループで、g. tp. ts. as. tb に b. ds.の編成でもってスカ+ファンカラティーナを実にカッコよくきめる。曲によってダヴィーに、あるいはロフト・ジャズ顔負けのフリーな展開もみせてくれ、腕達者なところを不良っぽさで隠すシャイな連中だった。この1枚とライブ盤でニッポンのスカ&ファンク系のブラス・グループにも影響を与えたピッグバッグ、その後の展開が尻すぼみだったのが実に残念。今年、BMGがCD化したのでジャム・バンドやフリー・ファンクが好きな人はぜひチェックを。 | ||
020 |
Nils Petter Molvaer (tp.) 『Khmer』 (ECM) |
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ノルウェーのヨン・バルケのオスロ13 や、そのヨンとアリルド・アンデルセンのグループ「マスクァレロ」等のECMのアルバムで、このニルス・ペッター・モルヴェルを聴いていたが、マイルスがアイドルなんだなぁ、という以外、特に気になる存在ではなかった。それがこの1996年のソロ第1作で大化け! 世界中で10万枚以上売れたこのアルバム、買ったのはジャズ・ファンよりクラブ・ミュージック好きの若者たちが圧倒的に多かっただろう。タイトでマッシヴなリズムに不穏な気配が濃厚なテクスチャー、そのカオスに棲みつくがごとくのモルヴェルのトランペットは、滲み、漂い、鼓動する。ドラムン・ベース、アンビエントといったクラブ・ミュージックの語法を取り入れ、エスニックなグルーヴにインダストリアル風味を加味して不穏さを加速させる。マイルスの「ドゥ・バップ」以降、打ち込みのクラブ系リズムに tp.というアルバムが数多く作られたが、結局みんな亜流で、「ドゥ・バップ」以降を提示するものはひとつとして無かった。本アルバムは「ドゥ・バップ」のその後に初めて踏み込んだ、90年代ジャズ屈指の大傑作。 | ||