彩耳記
saiji-ki
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●大野松雄。1930年、東京生まれ。少年期からシュールレアリズムの芸術に関心を傾ける傍ら、ニーチェ、西田幾多郎などの哲学に親しむ。劇団および放送局(NHK)で美術・効果音の仕事を経験。
1953年23歳でフリーの音響作家として独立。まだシンセサイザーがない時代に、発振器とテープ・レコーダーをもとに、エコー等さまざまなテープ編集技術を駆使して、「この世ならざる音」の世界の探究を開始。
「この世ならざる音」とは、大野が初めてカールハインツ・シュトックハウゼンの電子音楽をレコードで聴き感動して以来、今日まで追究し続けている最も重要なテーマ。大野の音響制作は、つねに計画性よりも偶然(“Chance Operation”)、理論よりは具体的な作業が優先されている。
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●大野が初期に大きな影響を受けたのが、直接師事した映画監督の亀井文夫(1908 - 87)と劇作家の加藤道夫(1918 - 53)だった。加藤はジャン・ジロドゥ
Jean Giraudoux に傾倒していた。大野は次のように語っている──「自分は生涯を通じて音楽家からの影響はほとんど受けていないが、自分が生み出す音の背景には、この二人の存在が極めて大きい」。
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●1963年から1966年にかけて、日本の連続テレビ・アニメ『鉄腕アトム』の音響構成の仕事を担当(■)。毎週徹夜を重ねて、さまざまな音響を制作した。このとき参加した音響制作スタッフのひとりに、後にマース・カニングハム舞踊団(MCDC)の音楽監督となる小杉武久がいた(大野松雄は、後に『タージ・マハル旅行団』の記録映画(■)の製作も行なっている)。
その後、代表作となるソロ・アルバム『そこに宇宙の果てを見た』(1978)を東宝レコードからリリース。
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●1971年から2004年現在まで、知的障害者施設の演劇協力に関わり、いくつかの記録映画の製作を行なっている。また、暗黒舞踏の創始者、土方巽(1928 - 86)を撮影した映画『風の景色
Scenery of Wind』(1976/1988)の電子音響も担当。舞踏関連では他に、長野千秋監督による大野一雄の映画「O氏三部作」[『O氏の肖像』(1969)(■)、『O氏の曼荼羅
遊行夢華』(1971)、『O氏の死者の書』(1973)]の整音を担当。
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●1980年代以降は、大規模博覧会におけるパビリオンの音響ディレクターの仕事を開始して、多元立体音響の研究と実践を追究。その他、パフォーマンス、インスタレーション、ビデオのための音響も制作している。
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●2001年入院、2003年まで療養。2004年(74歳)、新作『「はじまり」の記憶』を制作。その後も意欲的な活動を続けている。
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 CD: KICP-2636
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大野松雄の音響世界1
鉄腕アトム・音の世界/大和路/Yuragi/他
Matsuo
Ohno
The World of Electro-Acoustic Sound and Music - 1
Astro Boy / Yamatoji / Yuragi / and the others
●『鉄腕アトム・音の世界』(1963 - 66)は、独立したアルバムとして、1975年にコジマ録音、1979年にビクター音楽産業から、それぞれLPで発売され、1998年にはマスターテープ不明のためレコード盤からの板起こしでワーナーミュージック・ジャパンからCDが発売されている。ここには、そのワーナー盤から約20分の音源が収録されている。シンセサイザー以前の電子音の世界が堪能できる。(Astro Boy [appears on the screen] / New
Sound of Astro Boy / Electronic Sound - Astro Boy's
B.G.M.)
ピョコッ、ピョコッ、という「アトムの足音」は、マリンバの音を録音したテープをオープン・リール・デッキのヘッドにリールを前後に動かしながらこすりつけ、それにエコーその他の処理を加えて作られている。ほんの数秒の音をつくるのに、膨大な作業時間が費やされた。
●残りの収録作品では、音素材としてシンセサイザーが登場してくる。『大和路A(Yamatoji A)』は、日本の古都・奈良を撮った写真家・入江泰吉のビデオ・ディスク写真集のために作られた極めて洗練されたミュージック・コンクレート作品。梵鐘や読経といった日本ならではの伝統的な音素材も使われているが、これらは大野自身のフィールド・レコーディングによるもの。
『Sea Dream』は3D映画のための作品。
『Yuragi #5(Yuragi - fluctuations #5)』は京都で行なわれたアート・フェスティヴァルのために作られた作品で、『大和路』の音素材が使われている。2チャンネルでありながら、大野が開発したサラウンド効果が施されている。
『Yuragi #2(Yuragi - fluctuations #2)』は、舞踏と染色とのコラボレーションのために作られたもの。大野によれば、『Yuragi』というタイトルは、宇宙が最初に誕生したときのエネルギー変化の状態を指す意味で付けられたという。
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大野松雄の音響世界2
そこに宇宙の果てを見た/「惑星大戦争」電子音響
Matsuo
Ohno
The World of Electro-Acoustic Sound and Music - 2
I Saw the Outer Limits / The War in Space
●1978年に東宝レコードからリリースされた『そこに宇宙の果てを見た』は、他との比較を許さないじつにユニークな音響世界。人間の生活圏から離れた高峰の峻厳さを思わせると同時に、鉱物的ロマンチシズムの電子的変奏の趣を持つ響きの魅力にあふれている。
●この音楽は、他のアーティストや作品から一切影響を受けることなく、すべてが大野個人の想像の世界から生み出された。使用機材は、カスタムメイドのシンセサイザーと
EMS、さらに終曲で旋律らしき動きを奏でるシーンではビート・オシレーターが即興的に使われている。
●オリジナルLPには、プロデューサーによって“Space and Maryjuane Trip is Same”という英文タイトルが付されていたが、“Maryjuane”とは、マリファナ(Marijuana)を暗示した造語。大野自身は、自分の音楽が潜在意識を刺激する作用を有していることを充分に理解しているとはいえ、ドラッグとの関連を積極的に主張したことはない。
●『惑星大戦争』電子音響は、1977年に同名の東宝SF映画のために製作された電子音響による効果音集。これらの音は、以前発売されたサウンドトラックLP盤では、津島利章作曲のオーケストラ音楽の上に重ねて収録されていたが、今年(2004年)、電子音部分だけのマスターテープが発見されたため、今回はそれらをすべて収録した。
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「そこに宇宙の果てを見た」
I Saw the Outer Limits |
| 1) |
はじまりの宇宙
Universe is born |
| 2) |
太陽系・惑星間空間
A brief tour of the solar
system and interplanetary space |
| 3) |
銀河系・恒星間空間
A slightly longer tour of The
Galaxy and interstellar space |
| 4) |
銀河系の外・宇宙間空間
Extragalactic and
intergalactic space |
| 5) |
脈動する宇宙
Pulsation |
| 6) |
N次元の宇宙
N-dimension |
| 7) |
マンダラの宇宙
Mandala |
| 8) |
宇宙・地平の外
Extracosomos, gazing beyond
the horizon |
9-19) |
映画「惑星大戦争」電子音響
The War in Space
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 CD: KICP-2638
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大野松雄の音響世界3
「はじまり」の記憶
Matsuo
Ohno
The World of Electro-Acoustic Sound and Music - 3
Memory in The Beginning
●『「はじまり」の記憶』は、2004年に制作された新作。若々しい響きの奔流が圧倒的な体験をもたらす。無と永遠が織り成す、生命の潮流、宇宙の輪廻を思わせる、壮大な音響詩である。
●大野松雄自身が過去から現在までに作ったさまざまな音響素材を元にして、そこに新たに「声」のモチーフ、波音や雷の音、砂浜で流木を叩いた音など、自ら録音した多くの自然音を加え、それらを電子音と融合させながら全体が作られている。大野松雄の音響世界の集大成的な作品といえるだろう。無機的な世界と有機的な世界が、互いの姿を照応させながら、自然という大きな器のなかで溶け合っていく。
●全体的にディレイ・フィードバックとフランジャーが使用されており、ホワイト・ノイズは一切使われていない。途中に登場するリズミックなモチーフは、日本の祭りで奏でられる「お囃子」から取られたもの。
●各曲には大野松雄によって詩的なタイトルが付されているが、これらはかりそめの参照点にすぎない。本作が聴き手の自由な想像力によって聴かれることを、作曲者は強く願っている。
| 1) |
混沌と光=「はじまり」の「はじまり」・・・流転の「とき」を求めて・・・
The Chaos and The Light ; In
search of protean time … dawn |
| 2) |
無垢の誕生=「はじまり」の「ひろがり」・・・淡く、強く、ゆらめく光の吐息・・・
Innocence is born ; The
Beginning of Immensity … strong, watery flickering light
exhale |
| 3) |
時空の旋律=「無」の向こうに脈動する「なにか」・・・かすかに、巨大に・・・
Melody of Space-time ;
Something is stirring slightly and immensely
beyond Nothing |
| 4) |
時空のかげろう=「とき」のゆらぎ、「空間」のきらめき・・・遥かな地平で応えあう・・・
Space-time Gossamer ; Time
fluctuates, Space glitters … they hail each other at the far
horizon |
| 5) |
記憶の〈共鳴〉=こだましゆらめく「時空」・・・交錯する光の粒子が、波が、その呼びかけが・・・
Memories in Resonance ;
Reverberating and flickering Space-time …
particles and waves of light
crossing, calling each other |
| 6) |
記憶の〈共振〉=ひびきあいかがやく「時空」・・・沸騰する「とき」が生まれ、そして消えて・・・
Memories in Vibration ;
Growing and reverberant Space-time … intumesce Time, come and go … |
| 7) |
大循環圏=「おわり」は「はじまり」・・・流れさりおしよせる「とき」を求めて・・・
Eternal recurrence ; Alpha
becomes Omega … The
wave of Time crushes and recedes … |
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特集 大野松雄の音響世界 ▼
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【大野松雄ディスクユニオン限定オリジナル特典】の御案内
■3枚まとめてご購入のお客様に巨匠からプレゼントがございます。
「Yuragi #2」
スペシャル・ニュー・サラウンド・ミックス2曲収録アナログ盤。
74歳、大野松雄からの心をこめたスペシャル・プレゼントです!
(2004年クリスマス・イヴに制作)
<特典アナログ盤の収録曲>
Side A
Matsuo Ohno
Yuragi #2 [surround mix -α]
Re-mixed by Matsuo Ohno (2004. 12. 24)
Side B
Matsuo Ohno
Yuragi #2 [surround mix -β]
Re-mixed by Matsuo Ohno (2004. 12. 24)
[ご注意:この音源は特殊な逆位相波を使ってサラウンド化しているため、スピーカーでお聴き頂くことではじめてサラウンド効果を体験することができます。ヘッドホンではサラウンド効果が体験できません。]
※特典アナログ盤の在庫確認については、ディスクユニオンにお問い合わせ下さい。
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堀内宏公
Hiromasa
Horiuchi
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