「名前」
Poem by 鬱樹
低くうねる潮騒を背にして
私は歩いていた
砂が爪先に絡み付き
次第に重くなっていった
肩に掛けていたカーディガンは
いつの間にか無くなっていた
きつく束ねたはずの髪も
今は風砂で乱れていた
どうしようもなく喉が渇き
空腹も感じていた
最後に物を口にしたのが何時なのか
それさえも思い出せなかった
誰かが名前を呼んでいた
それは知らない名前だったが
私は返事をした
ざらついた苛立ちに急かされて
空が沈黙し
完成形の月が昇った
砂まみれの足で
踏みたくなるほどに白かった
嘔吐するように涙を流しても
砂浜は乾いたままだった
自分が誰だか分からなかったし
自分が誰だか知りたかった
私は名前を呼んでみた
其れは思い付きの名前だったが
月が返事をした
曖昧な笑顔を浮かべて
月が応えた其れこそが
私の名前だった
comment
「名前」
たとえば
ある漫画の中での話
人の魂には
それぞれ名前が刻み込まれていて
その名前は
愛した証として
”大地”が付けてくれたもの
なんだって