(東京学芸大学附属図書館)
著者は、『むすびめ2000』No.40に発表した「インターネット環境の多言語化に関する一考察」において、在住外国人にとってインターネット環境の多言語化が果たせる役割が大きいことを述べた。その後、「留学生受入10万人計画」達成(2003)のような政治的社会的状況の変化や、WINDOWS XPの出現のようなコンピュータ技術の進化などの要因が生じており、それに対応するために、改訂版を当ウェブサイトに掲載した。しかし、文中のURL情報が古くなったり、新しいツールが出現したりするなどの変化があったため、更なる改訂を施して今回再度掲載する。残念ながらウィンドウズビスタの多言語環境については今回は言及していない。もしご関心をお持ちの方はそれぞれで知識を深めていただければ幸いである。
国境を越えた人の流れが、昨今、より激しさを増している。それを振り返るため、まず、筆者の職場である東京学芸大学の12年間(1991〜2003年)を数字で追ってみるので、御自身の環境と比べてみていただきたい。
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1991年 |
2001年 |
2003年 |
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全学生数 |
5,995 |
6,525 |
6,455 |
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留学生数(内数)(上段) 出身地域数(下段) |
371 (16) |
420 (39) |
503 (40) |
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対全学生数比(%) |
6 |
6 |
8 |
全学生比で観ても留学生数が増加の傾向にあること、そして、留学生の出身地域が倍以上になるなど、留学生を巡る環境が多様化していることが読み取れると思う。そして、本学は2002年10月から、日本語の能力を前提としない留学生を迎えて、英語で授業を提供するプログラムを開始しており、留学生の環境の多様化のスピードはより増してきたと言える。そして、これは、東京学芸大学という、ほんの一例であり、他のそれぞれの環境でも多かれ少なかれ、似たような状況があるのではないだろうか。
また、留学生受入10万人計画の達成を記す外務省のウェブでも、「今後は、留学生の数の拡大だけでなく、一層の質の向上を目指した留学生受入政策を推進していくことになります」と記されているが、留学生らの関わる各図書館でもそのことはこれから問われていくことになるであろう。
そして、現在、インターネット上を流通する情報も多言語化している。このことについて、文字情報・音声情報に分けてふり返っていく。文中に若干の例を挙げるが、それらはとりあえず韓国語のものを中心にしていることをお断りしておく。
「インターネット上に流通する多様な言語の文字情報」として重要になるのは、2種類あると思われる。(1)その言語を使う国(地域)の図書館に関する情報(2)当該言語でメディアから発信された情報。これらについて概観する。
図書館に関する情報として重要なものは、次のようなものがあろう。つまり、単行書・雑誌記事など一次文献のデータベース、書誌ユーティリティ、全国書誌、個別図書館OPAC、等。韓国では例えば次のようなものをあげたいと思う。
例えばオリジナルの新聞なら図書館到着まで数日を要するが、当日分だけであればウェブで提供されている新聞ですぐにでも利用が可能である。また、各言語版の検索エンジンの中には、その言語によるニュース配信サービスを行うものもあり、これも有用である。第三に、「ストリーミング」と呼ばれる技術を用いてインターネット上に発信される外国発の放送番組、あるいは日本発外国語番組も重要な情報源である。これらについて、韓国語に関しては以下に例を掲げる。
さて、これらのインターネット資源に対して、図書館はどのようなスタンスで取り組んでいくべきか。その問いに対して明確な答えを出そうとしているのが、国際図書館連盟(IFLA)が2002年に発表した"IFLA Internet Manifesto"であり、その日本語訳である「IFLAインターネット宣言」である。『国際連合世界人権宣言』第19条…意見・表現の自由、手段・国境不問の情報受・発信の自由…に立脚した形でインターネット情報へのアクセスの重要性を論じたこの宣言。そして、この「インターネット情報」を含めて、情報へのアクセス保障を図書館がしっかりと担っていく必要があるのだとしたこの宣言の重みを、私たちはしっかりと受け止めるべきだろう。そして、冒頭に記したような状況の中、私たち図書館司書は、図書館で、インターネット上の多言語化された情報へのアクセス環境を利用者に提供していくことに、真摯に取り組んでいく必要に迫られているのだと理解している。下記にこの宣言のURL を記すので参考にしていただければ幸いである。
IFLAインターネット宣言
http://www.ifla.org/III/misc/im-jp.pdf
さて、それでは具体的には図書館はどのようにして、多言語化されたインターネット上の情報へのアクセス手段を提供していけばよいのか。そのことを、「システム面」「ソフト面」に分けて考えていく。
システム面でまず考えなければならないのは、画面への表示や、ヘッドセットへの音声出力、そしてシステムへの入力である。ウェブでの多言語化の実施にはマイクロソフト「インターネットエクスプローラ」(以降IEと呼ぶ)というブラウザが有用だが、以下はブラウザにそのIEを用い、OSにマイクロソフト「ウィンドウズ98」を用いる場合と「ウィンドウズXP」を用いる場合に分けて話を進めよう。
WINDOWS98上のIEで外国語ウェブを表示させようとする際、インストールしなければならないのが「多言語サポート」プログラムである。この多言語サポートには、「韓国語サポート」をはじめとして全部で7種類が揃っており、各図書館の事情に応じてインストールすればよい。最近のバージョンでは、その言語のウェブを表示させようとすれば、対応する言語サポートプログラムがインストールされるようになっている。入力に関しては、韓国語及び中国語(簡体字・繁体字)に関してはマイクロソフト"Global IME"というプログラムがあるので、そのページにある指示に従ってダウンロードし、インストールする。そのページのURLを以下に記す。
マイクロソフト"Global IME"
http://www.microsoft.com/windows/ie/ie6/downloads/recommended/ime/install.mspx
その他、次のようなケースもある。詳しくは各職場のシステム管理担当者等に相談して頂きたい。
タイ語など…上記サポートプログラムをインストールした後、「コントロールパネル」から「言語」オプションを操作することによりインストールする
西ヨーロッパ諸言語…「コントロールパネル」から「言語」オプションを操作する
東ヨーロッパ諸言語…コントロールパネルから「ウィンドウズファイルの追加・削除」機能を選んでインストールした上、「コントロールパネル」から「言語」オプションを操作する
ただ、上記の方法ではサポートできない場合もある。例えばインド各地言語やベトナム語など上記サポートプログラムがあってもそれでは対応できないような特殊フォントでウェブページが書かれている場合である。そのような場合は、後述「大阪外国語大学多言語処理室」ウェブサイトなどに、対応のために参考になる情報が書かれているので、是非御一読いただきたい。
WINDOWS XPの場合には、前述のようなGLOBALl IMEや各種言語サポートの導入を必要としない。理由は、WINDOWS XPがユニコード対応のシステムとなっており、最初から多言語システムに向いたOSだからである。操作は下記のように行う。
操作すべき場所…「コントロールパネル」内の「地域と言語のオプション」で、「言語」のタブ内にある「テキストサービスと入力言語」及び「補足言語サポート」
テキスト言語サービスと入力言語…その画面から「詳細」をクリックして、必要な言語を順次設定していく
補足言語サービス…アラビア語、ヘブライ語、インド諸語、タイ語、ベトナム語等への対応が必要な場合には、「複合文字や右から左方向に書く言語のファイルをインストールする」を有効にする
但し、XPでも対応できない言語が若干あり、その場合には前述の98のときと同様に必要フォントの個別導入という手段で対応する必要がある。Windows98のときと同様、後述「大阪外国語大学多言語処理室」等のサイトを参照されたい。
インターネットで配信されているファイルにアクセスするために、言語によっては特殊な方法が必要になってくることも付記しておきたい。日本では、大方の場合、PDFファイル(アドビ社のAcrobatにより制作されたファイル)により配信されているファイルにアクセスすることが多く、そのために同社から無料提供されているAdobe Reader(旧称Acrobat Reader)というビューア(ファイル閲覧用ソフト)のお世話になっている人も多いと思う。このAdobe Readerはアドビ社のサイトよりダウンロードすることができ、各言語への対応についても、同サイトにコメントが書かれている。これに対し、たとえば韓国では、彼の国における代表的なワープロソフトである「アレアハングル」(ハーンソフト社)で製作されたhwp というファイル形式でインターネットに流通させていることも多い。このhwp というファイルのビューアはハーンソフトのサイトから提供されている。参考になるURL を以下に記す。
ハーンソフト社
http://www.haansoft.com/
音声情報の再生には、いわばプレーヤーのようなソフトをコンピュータにインストールすればよい。このプレーヤーには、現在、“Real Player”“Microsoft Windows Media Player”“Quick Time”の3種類がある。多いのはこのうち前2者であろうと思われる。この、インターネット放送を通じて図書館で受信する場合、気をつけなければならないことは、発信されてくる情報によっては、図書館等の構内LANに設けられている「ファイアーウォール」と呼ばれる安全装置を通過できず、結果としてその放送を受信できない場合があることである。このようなケースの際は、職場のネットワーク管理者とよく協議する必要がある。
以上、システム面から、インターネット上の多言語情報にアクセスするために準備することを大まかに説明した。WINDOWS98に比べ、XPでの多言語設定の容易さにお気づきのことと思う。しかし、どのシステムをその図書館で採用できるかは、その図書館が直面する環境に左右される。一からシステムを構築していけるのならばXP、既存マシンを用いていかなければいけないところは98の活用、などといろいろと判断が求められるであろう。ちなみに、当館ではかつても以上の方法を用いてWINDOWS98をベースとしたシステムによって留学生の出身地域である40の言語のウェブ情報に対応できる環境を用意していたが、最近システムをXPベースにしてからはより多言語ウェブ情報への対応が容易になっている。
以上、システム面から見た、必要な準備について概略を記した。しかし、当然のことながらシステムだけでは多言語化されたインターネット情報へのアクセス環境を整えたことにはならない。今度はソフト面から考えてみることにする。
なんといっても一番重要なものは自館が提供する資料のデータベースであるOPACである。図書館の中には、ヒンディー語図書検索システム(大阪外国語大学附属図書館)や東洋文庫のアラビア語・ペルシャ語・トルコ語図書検索システムなどの先行事例があるが、大体の館はまだこれから、というところではないだろうか。しかし、国立情報学研究所が多言語対応の「新目録所在情報システム」を発表しており、図書館側のシステムも順次それに対応していくものと思われる。このような状況についても注意し続けていく必要がある。
次は、私たちが情報・知識を認識していくパラダイムとなる分類記号体系を外国人の方々にもわかりやすくしておく必要がある。例えば日本で使われているNDCの100区分表を英語化して利用者の見える場所に提供することが有用になると思う。
「利用案内」をインターネット上で提供していくことも必要であろう。英語利用案内は当館を含め数多くの館が行っているが、東京都立図書館や大阪市立図書館、金沢大学附属図書館や埼玉大学附属図書館等の取り組みが参考になると思う。ここむすびめの会のウェブサイト上にも「ウェブ上で公開されている各図書館外国語利用案内」というページがあるので、ご参照いただきたい。
2で言うところの、外部から提供されるインターネット情報へのアクセスについて。各言語版"Yahoo!"等の検索エンジンで検索してアクセスするという道筋のほか、同一テーマのリンクを集めたリンク集についてよく通じ、活用していくことが必要である。下記に、筆者が良く用いるリンク集を掲げる。逆に、読者の方からも情報を頂ければなお幸いである。
多言語化されたインターネット情報へのアクセス環境を整えていくにあたり、関連する技術情報を私たちが獲得していくことも重要である。そのための有用なサイトの例を次に2つ掲げる。
以上、図書館で多言語化されたインターネット情報へのアクセス手段を提供することの重要性と、若干の方法論を述べた。しかし、「先立つものは金とマンパワーであり、理想論ばかりではサービスはできない」という議論もあろう。その意味で、私たちはこれから、一歩ずつ議論を積み重ねていく必要があると思う。この拙稿が、その議論の礎のひとつとなれば幸いである。
文中に書き出した商品名は、各社の登録商標である。また、拙稿で紹介したウェブサイトのアクセス日付は、2007/06/09である。
参考文献 「留学生交流」(外務省ウェブサイト) http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/culture/hito/koryu_1.html