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9月9日
雨は朝まで残った。その後もどんよりした空模様。入山は見送ることに。
我が家のトイレは汲み取り式のポットン便所。先日は都会育ちの客人を怯ませたこのオールドスタイルのトイレにあっても、煙突状の排気管のてっぺんにはモーター駆動の強制排気ファンが鎮座している。やっぱ、技術大国・日本である。が、その近代技術のファンが止まった。壊れたのか?こうなると、便槽から立ち上ってくるメタン臭が、しゃがんでいる僕の鼻をついてくる。
何分、来春取り壊しを控えているボロ屋なもので、「生活に支障が生じるような深刻なものでなければ、一切修理は求めない」というのが、大家たる高千穂町との入居時の申し合わせだ。こんなことでいちいち修理を求めるわけには行かない。排気ファンを自分で買い直せば良いのだが、こちらとしても出費は押さえたい。で、とりあえずファンを排気管から外して修理を試みる。分解して、モーターや回転部分に油を差す。すると、ちゃんと動き出すではないか!大した故障ではなかったようだ。よかった、よかった。これでゆっくりしゃがめるってもんだ。
昼過ぎになると、天気は回復してきた。晴れ間がのぞき、暑い日差し。明日は山に入れるかな?
日没も少しづつ早くなっている。6時半前に夜回りにでる。いつものコースを走ると、タヌキ1、ノウサギ1、シカははっきり見えたのは1頭だが、あと2回それらしいものが藪に逃げ込むのがちらりと見えた。2日前に出くわした倒木は、まだ撤去されておらず、またも林道をバック。山麓まで戻ったついでに、久しぶりに四季見原付近の林道に立ち寄ってみた。で、四季見原でシカ1。
9月10日
二つの台風が日本列島を襲い、各地に被害を出しているというのに、高千穂は爽やかな秋晴れ。支度をして山に向かう。久しぶりに良い天気になって、歩いていると暑い。この日はB、D、L、P、J各地点の点検。コマの進み具合は、まぁまぁってところか。ほとんどの個所でフィルムを回収した。また途中でカメラを増設。森の中から林道に出てくる小道状の獣道(作業道の名残??)に仕掛けてみた。動物が通った形跡はあるし、何か写るだろう。R地点とした。
車を駐車している山の駐車場で、工事のオジサンに声をかけられた。いきなり「何か痕跡はありますか?」と来たもんだ。僕の素性はすっかり知れ渡っているようだ。
夜回りはノウサギ1のみ。
9月11日
今日は爽やかな天気。が、入山の予定はなくのんびり過ごす。夕方、O氏の職場でたまたまA紙記者氏と会う。先日来高千穂で大きな話題となった化石についての取材だった。O氏とともに発掘現場に行くというので、僕も同行。石灰岩の岸壁の前で、O氏が問題の化石の含まれる地層を教えてくれたのだが、僕は記者氏ともども「よくわからんなぁ…」。
7時前から夜回り。いつものコースではシカ2会頭、四季見原付近でやはりシカ2回2頭。
この夜(現地時間の朝)、アメリカのニューヨークの世界貿易センタービルやワシントン近郊の国防総省などに旅客機が突っ込むという同時多発テロが発生。被害を受けたビルが倒壊するという2次災害も加わり、未曾有の大惨事に深夜のニュースは騒然となった。
9月12日
どんよりした曇り空。ちょっと蒸し暑い。
各マスコミは、昨夜の米国同時多発テロに関する報道でもちきりだ。被害者は1000人単位、一万人を超える恐れもあるとのこと。
惨劇の映像を見ていて、僕は率直に感じた…「これは戦争だ」。恐らく、米国本土で甚大な被害を生んだ史上初の戦争なのだ。日常的に空を飛び回っている国内線旅客機が、たった数人のテロリストによって有人ミサイルと化した。そして、時間差をつけた2度の攻撃によって、その衝撃的な瞬間が全世界に生中継されたのだ。世界中の人々を震撼させた、という意味では、下手な核攻撃より威力があった事件だった。
国内でも海外でも、信じがたい事件が続いている。景気の先行きも不安ばかり。暗いニュースが溢れている。こんな時代だからこそ、夢を持とう。希望を持とう。明日を信じよう。
先日注文したセンサーの部品が届いた。早速、不調のセンサーの部品と組替えて1台を復旧。
7時頃から夜回り。シカ1、ノウサギ1、タヌキ?2。例の倒木はいまだに撤去されていない。燃料の都合で、四季見原方面には行かなかった。
9月13日
空はどんよりしているが、雨がすぐに降り出すような気配もない。支度をして山に向かう。G、K、M、Q各地点を点検。前回新たに仕掛けたQ地点のフィルムが終わっている。動物の痕跡もあるにはあるが、誤作動か?他は数コマ程度。
保険会社の外交員のオバちゃんがやってきた。保険どころではないのだが、一応聞いてみた。「クマにかじられたときにきく保険ってあります?」オバちゃんはきっぱり「ありません!」ですと。
M社長からのお誘いでお隣の五ヶ瀬町のKさん宅へ。ここの息子さんはときどきM社長のところに出入りしていたので知っていたが、Kさん本人に会うのは初めて。M社長とは長い付き合いらしい。ご家族や親戚の方と一緒に食事やお酒をご馳走になった。クマの話などしていたら、ついつい夜更かし。寝たときには午前4時を回っていた気がする。
9月14日
Kさん宅で9時過ぎに目覚めるが、頭はもーろーとしている。帰り際にお米やら何やらとお土産まで頂いて、帰宅したのは昼頃。天気は前夜から雨。何もできないので、そのまま爆睡。
天気は夜になっても降ったり止んだり。夜回りは中止。
天気は明日も良くなりそうにない。16日に予定していた帰省を一日早めることにした。
9月15日
なぜか早くから目が覚めた。雨は止んでいるが、どんよりした空。山には入れそうなら帰省は中止するのだが…。天気予報が正しければ、この小康状態も一時的なもの。やはり入山は諦めて帰省することに。出かけに写真屋に寄って、先日回収したフィルムの現像結果をチェック。Q地点はセンサーの異状による誤作動が生じているようだ。
福岡に向かう前に、祖母山の登山口に立ちよった。ここは小雨が降っている。8月末に補給したチラシはすでになくなっていた。で、またチラシを補給。
福岡への道中は、時折雨がぱらついたものの、予想していたほどの天候の崩れはなかった。順調に福岡へ到着。早速自宅近くのホームセンターで、で買い物。高千穂では手に入らない部品を調達。丁度足りなくなりそうだったので、助かった。
自宅からインターネットにアクセスすると、何通か「おめでとうメール」が。今日は僕の36回目の誕生日。
9月16日
朝から秋晴れの良い天気。山に入りたいところだが、福岡にいるのではどうしようもない。福岡の街に出て買い物。センサー、センサーのパーツ、大量の電池、フィルム、本…。あれやこれやで、結構な出費になってしまったが、必要なものばかりなので仕方がない。
夕方から協力隊時代の友人たちと飲む。一人が近々転勤するというので、送別会だ(今回の帰省の目的はこれ)。福岡のTV局に勤める男で、過去何度も彼の番組で僕のクマ探しなどの活動を取り上げてくれた恩がある。その他の友人たちとも会うのは久しぶり。やはり今回のテロ事件が話題になるが、みなそれぞれ海外派遣の経験者だけに、現地で接したイスラム教徒たちの考え方や、アメリカの外交政策の問題点など、突っ込みが深い。
明日は早めに高千穂へ発ちたいので、一次会で散会となった後、珍しくまっすぐ帰宅。
9月17日
朝から爽やかな秋晴れ。こうなると居ても立ってもいられない。早々に荷物をまとめて福岡を発つ。概ね快調なドライブで、昼前には高千穂に到着。
昼食後、早速山に入る。半日で点検ができるG、K、M、Q各地点のエリアを回る。点検自体は急ぐことはなかったのだが、先日仕掛けたQ地点のセンサーに異状の疑いあったので、これを取り急ぎ交換したかったのだ。が、異状どころか、このQ地点のセンサーは完全に機能を停止していた。ここで使っているセンサーと同タイプのものは他にも使っているが、調子の良し悪しの差が激しい。ま、安物だから仕方ないけどね。
作業を終えて、林道を走っていると車の床下から異音が。車を停めて覗き込むと、直系5cmほどの長い枯れ木がはさまっていた。しっかり食いこんでしまったようでなかなか外れない。そのまま何とか林道終点の広場にたどり着いて、車の下にもぐり込み、アーミーナイフ(ツールナイフ)の小さなノコギリを使ってやっと除去に成功。
高千穂の町は、今週行われる町議会選挙のため、騒がしくなっていた。今回から僕も高千穂町での選挙権が発生しているので有権者の一人だ。さて、クマ問題に一番理解がありそうな候補者は…?
夜8時過ぎに夜回りのため再び出発。ノウサギ2、テン1のみ。春に比べて夜回りの成績がわるい。道が荒れて静かに走れないのと、草木が視界を妨げているためだとは思うのだが。
9月18日
早起きして外を見ると朝霧が出ている。良い天気になりそうだ。山に行かなくてはならないので、まずは弁当の支度。
朝食を食べながらA新聞をめくっていて、ぶっ飛んだ。「大分県耶馬溪町でツキノワグマ?目撃」の記事が…!祖母・傾山系の大分県側というのなら話はわかるが、耶馬溪(やばけい・景勝地として有名)といえば同県北部、福岡県との県境付近だ。この辺りでは最近の目撃はもちろん、過去の捕獲記録すらないはずだ。記事を読む限り、やはり放獣の可能性が示されてる。とりあえず、記事にコメントがでていたK大のD先生、広島の熊追い師・M氏ほかクマ関係者やマスコミ関係者にメールを送って情報を集めることに。
何はともあれ、今日は山に行かなくては。霧が晴れた後には雲一つない晴天。風には秋を感じるが、きつい日差しの中を歩きだすと、みるみる汗だくに。B、D、L、J、P、R各地点の点検。
BとD(両地点は直線で100mも離れていない)の間を歩いている時のことだった。右側のササ藪の中から低いうなり声のようなものが聞こえた。「うううぅぅぅ〜」 反射的に足を止め、声に耳を傾ける。聞いたことがないその声はまだ続いている。声は大きくはないが、距離は約10m以内、近過ぎる!腰のホルスターに納まった唐辛子スプレーに手を伸ばして安全ロックを外した。次の瞬間、声の元よりやや左側の藪の中を、何かがすばやく左方向に動いた。本体は見えなかったが、ササの動きで小型の動物だとわかった。明らかに2頭いる。まさか親子熊か?!僕は重たいザックを下ろして、そばの木によじ登った。すると先ほどとは反対側の笹薮が同じように動いた。3頭か?間もなく声の主もササ藪の中に消えてしまった。
相手が判らないというのは何とも心臓に良くない。ドキドキ高鳴る鼓動を感じながら「アフリカの公園で調査中に至近距離でクロサイに遭遇したときのほうがまだマシだったな…」なんて事を思い出していた。周囲に獣の気配がなくなったのを確認して木から降りた。「クマにしては声も小さかったし、アナグマとかタヌキとかかなぁ…。」
D地点のあと、B地点に戻って作業をしていたとき、再びササ藪のざわめきとともに、あの声が聞こえてきた。あいにく機材を一旦分解して組み直しているときだった。このまま放置するわけにも行かない。腰のスプレーを確認して、ホイッスルを鳴らした。が、そいつはまだ近くにいる。手元の金属のフレーム同士が発した音に驚いたのか、今度は驚いたようにササの中を走り去った。思ったより音が大きかった。やっぱりクマか??
静かになったところで作業を終わらせて、次へすすもうとザックを背負いなおしたとき、そいつはまたやってきた。ササの中をこちらに近づいてきた。いや、すでに近い。もうすぐ背の低いササ藪のあたりから顔がでるはずだ。距離は15m。僕は意を決し、スプレーを確認した後、カメラを構えた。「さぁ、来い。何者なのか、この目で確認してやる!」
ぴょん!まさにそんな感じで視界の中に飛び込んできたのは、かわいいウリボウ(イノシシの子ども)だった。次々に計3匹のウリボウが現れて、拍子抜けしている僕をよそに、林床のエサを探している。この大きさだとまだ親と一緒のはずだが、親の気配はない。木立の間からその姿をじっと見つめている僕に気がついたのか、気がついていないのか、時々こちらを気にして鼻を鳴らしている。あぁ、この声だったのか…。ひとしきりその辺りを物色した3匹は、僕のカメラのシャッター音に驚いて藪の奥へと消えていった。
作業そのものは特に問題もなく進み、足早に車に戻って下山。帰宅して今朝の記事の件でメールなどを確認。そのあと、記事を書いた記者氏本人にも電話で問い合わせ。すべてを総合すると…どうやら小熊がいるのは間違いなさそう。が、やはり人為的な放獣との見方が強いようだ。足跡も見つかって写真が鑑定されたが、間違えたのか、それともぬかるんで足跡が変形したのか、クマかサルか結論が出ていないようだ。地元役場の対応はまだはっきりしていない。放獣した輩が見つかって、もしどこかで捕獲したとすれば、元の山に返してあげて欲しいものだが…。
7時半過ぎに夜回りに出発。満天の星が美しいが、出てきたのはシカ1。立派な角の大物だったから、ま、いいか。
9月19日
「耶馬溪でクマ?目撃」の一件は、昨日のA紙に続いて、宮崎県内のM紙が掲載したのみ。他は未確認情報なので見送ったか、米国テロ事件で紙面が足りなかったか?こちらにもなかなか新しい情報は入ってこない。
現地の町役場に連絡が取れた。町としては、いまのところ対応を決めかねているようだ。しばらく様子を見るという。明日現場を見に行くと伝えた。
午後、M社長のガレージで、車のオイルとオイルフィルターの交換。僕の車も半年で14000kmを走ったことになる。このペースなら、年間30000kmか?
夕方、大分の新聞記者から連絡。今回の目撃現場近くで見つかった「足跡」はクマではなく、おそらくサル、との結論になったようだ。で、目撃も見間違いで片付けるつもりらしい。足跡に関しては百戦錬磨のクマ師・広島のM氏が断定しなかったっていうんだから、多分別物だろうとは思っていたが、この足跡がクマのものでなかったということと、住民が遭遇した動物がクマかどうかの問題は全く別だ。至近距離で出会ったサルをクマと見間違える奴は、まずいないはずだ。ともかく現場を見てみたい。
このところ遅い時間からのスタートが続いた夜回りは、早めの6時過ぎに出発。林道の入り口に到着した時にはかなり暗くなっていたのに、そこにはこのあたりで最近続いている工事の関係者がまだいた。そっか、最近夜回りの成績が悪いのには、この工事の影響もあるのかもしれない。が、今夜の成績はシカ1、ノウサギ1、アナグマ?1、イノシシ親子各1と、数は少ないがバラエティに富んでいた。
夜、先日福岡で購入した新しいセンサーを組み立てる。不調のセンサーは一部のパーツ交換で復調したようだ。
9月20日
朝から耶馬溪に向かう。前日M社長から借りたカーナビに導かれるまま、高森・阿蘇を経て3時間あまりで現地の役場に到着。
担当の課長さんと話ができた。前日に県職員が現地を調査したが、結論は「足跡はサル、目撃も見間違い」とのこと。課長さんによると、このあたりは時々サルが出るらしいし、目撃者は現場となった山の麓の住民らしい。サルが出てもおかしくない山でサルが出たからといって、地元の人がそれをわざわざクマと見間違えるだろうか?課長さん自信も半信半疑らしいが、現場には「クマ注意」の看板を立てたとの事。
昼食と休憩の後、現場に入ってみる。今回の2度目の目撃の現場となったのは、長期間放置され荒れ放題のクリ園だ。最初の目撃があったのは、麓からここへ上がってくる、地図で見るとこのクリ園の周囲をぐるりと回りこんだ車道上で、2つの目撃現場は直線距離にしたらわずかだ。
クリ園に踏みこむと、途中までは軽トラくらいは入れる小道が残っている。新しい轍は今回の騒ぎの後に入った車だろう。付近にはもったいないくらい立派なクリの実が散乱している。クリ園の周囲はスギ林であったり、荒れた雑木林だったり。そばに二つため池があった。この辺りにクマがいれば、確かに天国みたいなところだろう。もっとも、天国なのはクマにだけではないようで、いたるところにイノシシの痕跡がある。角痕もあるので、シカもいるようだ。周囲の舗装道路にも動物が横断した時の泥の足跡がいたるところに残っている。
小道のそばのクリの木の下で、硬い皮がきれいに割られて中身がなくなったクリの実が散乱している場所をみつけた。動物の歯形がついている。クマはクリの硬い皮をきれいにむいてから(渋皮のまま)食べると聞いている。もしかしたら、クマかもしれない。ここに一晩だけ無人カメラを仕掛けてみることにした。付近のクリの実を集め、カメラの前に置いた。
一旦下山したあと、夕方からまた現場に戻って、クリ園の入り口に車を止める。今夜はここで車中泊だ。あたりが暗くなりかけた6時ごろ、この山の上にあるお寺のご住職が通りかかった。挨拶ついでにいろいろ聞いてみるが、やはりクマの話は今回が初めてだという。そして、「この日の午前中、北九州の男性がやってきて、カメラを仕掛けていった」という。その話を聞いてピンと来た。あの「ニホンオオカミ?写真」のN氏だ。彼がオオカミだけでなくクマについても調べているのは知っている。そっか、会いたかったなぁ。
ご住職が帰られた後、車中で夕食をとる。幸い窓を明けたままで、暑くも寒くもなく、虫も来ない。外の気配に耳を傾けたまま、車のシートを倒して横になり目を閉じた。。
夜中に何度も目が覚めた。クリの実が落ちる音が時々する。一度だけ小型の動物が落ち葉を掻き分けているような音がした。
9月21日
明け方にかけても何度か目が覚めた。が、特に動物の気配はしなかった。動物は7時前後くらいまでは動きまわる可能性が高い。無人カメラの回収は8時ごろで良いだろう。それまではこのまま寝ていよう…と思っていたら、7時前に一台の車が上がってきて僕の車の横で止まった。北九州ナンバーだ。そうか、N氏だ。
寝ぼけた顔で挨拶すると、やはりN氏だった。前日仕掛けたカメラの点検に来たという。少し話したあと、N氏だけ先に身支度してクリ園に入って行った。彼が入るのなら、これ以上カメラを置いていても意味がないので、僕も身支度してカメラの回収に入る。無人カメラのフィルムは、思いがけず10コマ以上進んでいた。前日寄せ集めたクリには変化がないようにも見えるが、誤作動とも考えにくい。
N氏は複数のカメラを仕掛けているようで、さらにこのまましばらく調査を継続するつもりらしい。自宅から車でわずか1時間という。僕はホームグラウンド(祖母・傾山系)が目の離せないシーズンでもあるし、新しい情報でもない限り再訪の予定はないことを伝えた。ここはN氏にお任せしよう。ちょっと気になったが、「オオカミ」騒ぎのことには触れなかった。
N氏の車が去った後、間もなく僕も出発。途中で腹ごしらえをして、再び借り物のカーナビを頼りに高千穂へ。昼過ぎに高千穂に到着。
即日現像したフィルムに写っていたのは、シカ3コマとイノシシ6コマのみ。残念だが、あとはN氏の調査に期待しよう。それにしても、一晩でこれだけの動物が撮れるとは、やはりクリ園のなせる技か??
ちなみにこの日は高千穂町議選の投票日。平日に投票が行われるのは全国的にも珍しいが、高千穂では当たり前らしい。高千穂では観光業、農業、土建業が3大産業だ。公務員以外に普通のサラリーマンはあまりいないので、かえって平日のほうが都合が良いのだろうか?僕は初めて高千穂町民としての選挙権を行使した。
寝不足だし、疲れたので、夜回りは中止。夕方から強風が吹き荒れている。
早く寝よう…と思いつつ、先日から読んでいた本を読み出したら、最後まで読んでしまった。西中国地方の某町職員として長年熊問題に携わってきた筆者の経験と思いを綴った本だ(*)。一般的な自然保護論を一蹴し、現場の苦労を知らずにおいしい所だけ持っていく県政を真正面から批判して、また現場へのサポート体制のない日本の現状に危機感を抱いている。いろいろな面で共感する点の多い、そして読みやすい本だった。
*;「熊と向き合う」 栗栖浩司著(2001年、創森社) 1905円(+税)
9月22日
風は強いが、爽やかな青空。でも、今日は休養日と決めていたので、ゆっくり朝寝。
D紙記者氏から新たなクマ目撃情報が入ってきた。といっても夏の話だ。7月に大分県との県境付近の林道でクマらしき動物に遭遇した人物がいる、との「信頼できる筋」からの情報提供があったらしい。何らかの事情で目撃者の身元は明かしてもらえなかったとのこと。場所は祖母・傾山系の東の外れのほうのようだ。この辺りはかつての捕獲例もあるし、十分ありえる話だ。とはいえ2ヶ月ほど前の話でもあるし、慌てても仕方がない。
さらに記者氏は「栗原さんがクマの撮影に成功した、という妙にリアルな夢を見た。予知夢かもしれませんよ」と言ってきた。そういえば今年の正月に僕もそんな夢を見た。早く現実になって欲しいもんだ。
洗濯をしに町のコインランドリーに行ったら、いつもの店が休業中。もう一軒も、一番小さな洗濯機が故障中。洗濯日和なのに、ついてないなぁ。仕方ないので、自宅で写真の整理や機材の点検。カメラとセンサーはあと3基分ある。さて、どこに仕掛けるか??
もう暗くなりかかった6時半過ぎ、夜回りに出る。空気はもう冷たく感じられ、迷わず上着を着て出かけた。三日月が輝く秋の夜空の下で車を走らせると、次々にシカが姿を現した。いつものコース上で、シカ7回9頭、ノウサギ1、イノシシは5頭のウリボウを引き連れた家族が1。さらに立ち寄った四季見原では大物のオスジカ1頭にであった。久々の大漁(?)だ。
この日、富士山山頂で初冠雪が観測されたとのこと。
9月23日
今日も朝から良い天気。巷は明日まで連休。地元の岩戸神社でもなにやらお祭りがあるようだ。が、僕は山に向かう。B、D、J、L、P、R各地点を点検。今回はイノシシにうなられることもなく、作業を終了。昼頃から雲が多くなってきた。
協力隊の後任者で大分に住むTちゃんからメール。協力隊時代の現地人の同僚が、いま研修で大分に来ているらしい。会いたいなぁ。
夜7時半過ぎから夜回りに出るが、シカ1回2頭のみ。
9月24日
曇り空だが、雨は降らないようだ。昼食後から山に向かい、G、K、M、Q各地点の点検。このあたりは久しく動物の活動が低調でこれといった成果が出ない状態続いていたのだが、この日の林床には動物が歩き回ったり地面をほじくり返した痕があちこちに残っていた。どうやらイノシシのようだ。カメラのほうも、いずれも確実にコマを進めていた。
最近画質が著しく低下していたG地点のカメラを点検すると、レンズのカビが重症だ。レンズのカビはある程度覚悟の上だ。予備のレンズと交換。(注;カメラなどのレンズに特異的に発生する「レンズカビ」というのがあり、これは撮影機材の管理上の大敵なのだ!)帰りに林道を走ると、シカが2回3頭でてきた。
夜7時半過ぎ、再び夜回りのため林道に向かう。出てきたのはシカ1回2頭。なんだ、昼間のほうが成績が良いじゃないか!
9月25日
たまった洗濯物を持って、いつものコインランドリーに行くがまだ休業中。いつになったら開くやら。もうこれ以上待てないので、仕方なく町にあるもう一つのコインランドリーの明らかに大きすぎる洗濯機で洗うことに。中古の洗濯機でも探そうかなぁ…。
昨日のフィルムの現像結果をチェックすると、イノシシやアナグマ、シカが活発に動いているのがわかる。ただ、新しいQ地点はうまく撮れていない。どうやらセッティングの変更が必要のようだ。カビだらけのカメラのレンズの整備のため、福岡の営業所へ発送。
夕方暗くなりかけた6時過ぎ、夜回りに出発。舗装の町道で中くらいのオスジカが1頭出てきた後、林道では子ジカ1頭を連れた同じような親子ジカが3回出てきて、シカは計7頭。後は子ダヌキ。
9月26日
この日は所用で大分市へ行くことになっている。朝から高千穂を出て、まずは今年春無人撮影を試みていた傾山麓の方面に久しぶりに行ってみた。周囲はなかなか良い森があるのだが、春の約3ヶ月の結果は全くの期待外れで驚いたものだ。今回付近の林道を少し車で走ってみたが、全く動物の痕跡が見当たらない。たとえばいつも夜回りで走る林道なら、今の時期は昼間ならイノシシが地面をほじっくった痕やシカの足跡くらい、すぐに見つかるというのに。やっぱ、ここにはあまり期待しないほうが良さそうだ。
早々に林道を後にして大分市内へ。県立図書館や県庁の情報センター(県発行の公文書などが閲覧できる)で資料を物色。欲しかったクマ資料の原本が見つかり、全頁コピーを取らせてもらう。また、今までその存在自体を知らなかった調査報告書も発見。これは質の悪いコピーしかなかったので、調査を担当し報告書をまとめた民間調査機関に問い合わせてみるとしよう。
夕方、某ホテルに知人を訪ねる。協力隊でアフリカの国立公園関係で仕事をしていた時の、現地人の同僚・Bだ。現在研修で来日し、他の研修生と共に大分県内の各地を回っている。Bは僕が接した現地人スタッフの中でも、特に頭が良くて根が真面目で、印象が強い。そのBが大分まで来ているとあっては会わないわけには行かない…というわけで今回大分まで足を運ぶことにしたのだ。一緒に研修を受けているという同国のYさんと3人で、忘れつつあった英語と現地語を脳みそから引っ張り出しながらあれやこれやと楽しく談笑。僕のクマ探しについては、丁度先だって英文で紹介された雑誌の記事のコピーを渡して読んでもらった。その後、僕の後任隊員で現在この研修生たちの面倒を見ているTちゃんも合流して4人で日本食を楽しむ。
夜8時ごろ3人と別れ、再び高千穂へ向けてドライブ。2時間半ほど走った後、いつもの夜回りコースの林道へ入った。こんなに遅い時間に夜回りするのは、たしか初めての事だ。今年4月のクマ目撃が深夜であったこともあり、クマにお目にかかれるのではないかとちょっと期待したものの、シカが4回5頭でてきたのみ。とはいえ、疲れを押しての夜回りで全くの空振りでなかったのは幸いだ。自宅に帰り着いた時には11時半を回っていた。
9月27日
前夜の疲れか、気が乗らず山行きは見合わせた。
前日入手した資料(*)に改めて目を通した。この資料は昭和62年に緒方町で射殺されたツキノワグマについて、K大学のD先生が中心になって解剖・現地調査などを行ってまとめられたものだ。以前緒方町の図書室でコピーを拝見したことがあったが、今回大分県庁で原本を見つけたので、全項コピーを取らせてもらった。「野生か、飼育されたものか」そして「九州産か、移入個体か」が大きな焦点となったこの報告書の大筋はもちろん知っていたが、改めて分析の詳細なども知ることができた。
(*)「大分県祖母・傾山系で捕獲されたツキノワグマについての緊急調査報告書」 1988、大分県緑化推進課
当時この調査は射殺を受けて「緊急」に行われたもので、おそらく時間的にも予算的にも制約のある中で行われたであろうことが読み取れる。現在はクマ研究もずいぶん進んでいるのだから、最新の技術と情報をもって、改めて分析しなおして欲しいものだ。
たとえば、遺伝的な分析は血中タンパク質の遺伝的変異の分析が行われている。結果として九州産の特徴の可能性がある遺伝的変異が見つかっている。現在のDNA分析技術を使えば、はるかに高い精度の議論が可能なはずだ。それに、かつてクマ猟が行われていたころに採取された九州産クマの他個体の生体試料が「クマの手」などの形で保管されているのだから、これらのDNAを分析すれば純九州産クマの遺伝的特性がつかめるはずだ。
この問題は「クマ現存の真否」とは直接関係なく議論できる話なので、ぜひ専門家諸氏に再分析を強くお願いしたいものだ。
注;この報告書がまとめられた当時はまだ本格的なDNA分析技術には限界があり、遺伝的研究はタンパク質の変異を分析することよってその元となったDNAの変異を間接的にみる方法が一般的だった。タンパク質分析は試料が新鮮な状態でないとできないが、DNA分析は保存状態さえ良ければ古い毛などでも可能。
午後降り始めた小雨は、夕方には本格的な雨になった。夜回りは中止。明日も雨模様のようだ。安心して焼酎を頂く。
9月28日
前夜の焼酎が過ぎたか、思いっきり朝寝坊して目覚めると、雨はすっかり上がっていた。あれまぁ…。昼食後から山に出かけることに。
身支度をしていると、外から「ぐぅ」あるいは「きゅぅ」…なんとも表現の難しい声が聞こえてきた。はて?聞いたことのない声だが、何かの鳥だろうか?窓から声の主を探すと、庭(小さいとは言え一軒家なので、「庭」と言えない事はない程度のスペースがある)で80cmほどのアオダイショウがカエルをくわえているのに気がついた。声は苦し紛れにカエルが発している悲鳴だったわけだ。う〜ん、命のドラマだねぇ。写真を撮ろうと窓をあけたら、ヘビは驚いてカエルを放り出して逃げてしまった。ヘビには悪いことをしたなぁ。
山支度をして向かったのはG、K、M、Qの各地点。24日に点検したばかりではあったが、前回交換したバッテリーに不安があったのと、新設したQ地点が設定の変更を要するようだったので、早めに訪れることにした。あまりコマは進んでいなかった。
帰りに林道を走ってみるとシカ3頭がでてきた。夕方、また雲が空を覆った。
8時ごろから夜回りに出る。空はまた晴れてきたようで月も星も出ているが、山は風が強くなっていた。その風のせいかどうかはわからないが、林道の前半はノウサギがちらりと出てきたのみ。かわりに後半部分で滅多にこの辺りには出てこないシカ1頭が姿を見せた。
夜台所で大きなゴキブリがひっくり返っていた。気温が下がってきて弱ったのだろう。季節は確実に移ろっている。
この日、ジャイアンツの長島監督が辞任を表明。来年の日本シリーズでON対決再現&ホークスのリベンジ!を期待していた僕としては少々残念。今後長島氏が、ジャイアンツのみならず日本野球界の正常進化へむけて貢献してくれることを祈ろう。
9月29日
朝の空は曇り。下り坂の予報が出ているので心配だが、とりあえず山へ。B、D、L、J、P、R各地点の点検にむかう。
いつもの駐車場で身支度をしていると、首輪をした白い犬が寄ってきた。が、ワンともクンとも言わず、尻尾を振るわけでもない。そのくせ目は僕が何か食べ物を恵んでくれることを懇願しているようだ。確かに痩せているが、捨て犬か?下手に構って山中まで付いて来られると面倒だ。無視、無視。林道を30分ほど歩いたあと休憩を取っているとき、その犬がまたやってきた。僕の匂いを追ってきたようだ。よっぽど人恋しいのか?が、これから山中に分け入り無人カメラを点検するというのに犬についてこられては迷惑千万。僕に寄ってこようとしたところで強く足を踏み鳴らしたら、ビビッて逃げていった。ちゃんと首輪をしているところをみると、迷い犬だったのかな?
B、D、Lの点検を終えたころには、雲行きがかなり怪しくなってきた。麓はともかく、山中では午後まで天気が持ちそうにない。おまけに膝の調子も悪い。残り3地点の点検は見合わせて、下山することに。無理はするまい。帰りに林道を走ると、シカ1。手製の弁当は自宅で食す。
午後も降るんだか降らないんだか、空は雲に覆われたまま。気温は上がらず昼間だというのに肌寒い。ついウトウトしたら、体が冷えてしまった。
夜回りは早めの6時に出発。といっても日も短くなっているし曇ってもいるので、もう暗くなりかけていた。山もまだ雨は降っていなかった。シカ2回2頭にノウサギ1。帰宅して夕食を終えると、外から雨音が聞こえ始めた。明日は雨のようだ。
9月30日
前夜からの雨は断続的に霧雨・小雨。近所の小学校の運動会も延期になったようだ。ようやく営業を再開してくれたコインランドリーで洗濯などして過ごす。夕方から雨脚はまた強まった。
先日から読んでいた本(*)を完読した。野生動物に関わる諸問題を「動物自身の問題ではなく、人間社会のありようの問題」という視点で切り込んでいる。日本はこの分野でのたち遅れがあるのは嫌というほど知っているが、具体的に法や行政システムに何が欠けているかを明確にしてくれている。害獣問題などで動物たちを目の敵にしているような方々にもぜひ読んでもらいたい本だ。
*;「野生動物問題」 羽山伸一、2001、地人書館(2200円+税)
夜、雨脚はさらに強くなった。少し体調が悪い。風邪か?日頃の不摂生が祟ったか?少し横になった後、またパソコンに向かい、戦後のクマに関する記録をいろいろな文献から集めて一本化した。なかなかの量だ。明日はもう10月。
10月1日
前夜の激しい雨も朝には上がっていた。体調も回復。でもこの日朝から向かったのは山ではなく、O氏の職場。実は、先日まで彼の下で働いていたバイトの女の子が急に辞めてしまい、それを補うために急遽僕がその仕事を引き受けることになったのだ。で、週に数日程度、資料整理などが中心だ。初日はず〜っとワープロを打ちつづけた。
夕方仕事を終えて自宅に向かっていると、屋根の上で赤い飾りがくるくる光るチャーミングな車がついてきた。「申し訳ありませ〜ん。一時停止違反ですねぇ。」妙に丁寧な対応で渡されたのは、青い切符と振込用紙。が〜ん!今日のバイト代はチャラ…いや、赤字だ。
前夜の大雨で林道の状態がどうなったか心配だ。昼間の下見もしないまま日没後に走るのは危ないので、夜回りは中止。夜になり風が強くなった。今夜は「中秋の明月」。
10月2日
朝から良い天気になった。近所の小学校もようやく運動会が開けるようで、朝から花火が上がった。
山に行くつもりにしていたが、いろいろ雑用があったり、また僕の手違いなどもあって、結局午後から林道の下見に行ったのみ。林道では中小の落石と倒木があったが、すべて僕の手作業で撤去できた。
来週取材の予定が入っている宮崎のTV局・M局の担当者と電話で打ち合わせ。M社長からは「お月見」のお誘いだ。暦の上では前夜が「中秋の名月」だったが、月齢では今夜が満月らしい。天気も雲が残った前夜より、スカッと晴れた今日のほうが良いに決まっている。ま、どのみち「わびさび」するような席でもないけれど。
夜の飲みかた(飲み会)のため、5時ごろといういつになく早時間から夜回りに出る。日が短くなっているとはいえ、まだ視界は十分に明るい。実は、クマに限らず、野生動物は一般に朝夕が一番活発と考えられている。僕が夜回りをもう少し遅い時間に行うことが多いのは、自分の家事(買い物や食事)の都合や、夜回りコースの道を午後〜夕方走るほかの車(営林署や林業関係者、そして週末は登山者はドライブ客)のことを考えてのことだ。条件が合えば、日没前でも動物は出てくるはずだ。現に昨年秋の2度のクマ目撃は日が暮れる前に発生している。さて、この日の夜回り?の結果は…シカ6回9頭。上々だ。すべてまだ明るいうちに出会った。暗くなってからだったら見逃していたであろう位置にいたものもいる。夕方も冷え込んできたし、夜回りの時間を早めようかな…。走り終えて、ほとんど暗くなった頃に一旦帰宅。温かい服を持って、いざ、飲みかたへ。
10月3日
M社長の会社でM社長ともども朝を迎える。未明から「コケコッコー!」とうるさい鶏(宴会食肉用に飼育中)とM社長の愛犬&愛猫が僕らの安眠を妨げてきた。う〜ん…もう少し寝かせてくれ…。結局7時前に起きて、一旦帰宅。
朝食の後、またアルバイトのためO氏の職場へ。今日もひたすらパソコンをぱそぱそ。
夕方は前日に倣い早めの夜回り。5時半に自宅を出て、日が暮れる前後の林道を走った。舗装路でもシカ2頭がでて、シカは計7回8頭。他にノウサギ1にイノシシは1家族(ウリボウが2頭見えただけ)と単独の1頭。なかなかの成績だった。
このホームページのアクセス数の累計が20000件を超えた。20000人目は何と初めてアクセスした強運の方。記念のプレゼントを贈ることに。その代わり、その強運を少し分けてほしいなぁ。
10月4日
前日の天気予報では午後から天気が崩れそうな感じだったので、午前中にやれる山仕事を予定していた。が、なんと午前中から雨に。「くそぉ〜。これじゃ仕事にならんがぁ。」とふて寝。昼には雨も上がったが、そのまま自宅でパソコン仕事などしていた。天気はそのまま回復に向かい、夕方には日が差してきた。こんなことなら、午後から山に行けば良かったかなぁ…?
昨日のアクセス20000人目の読者のために、プレゼントを選んだ。この方からの連絡で、実は同じ高校の卒業生であることが判明。世間は狭い。
夕方5時過ぎに夜回りに出た。この日も夕暮れ時の山を走る。シカ4回5頭。ちょっと少なめなのは天気のせいか?
10月5日
この日はアルバイト。自分で作った弁当を持参したら、女性職員に感心された。
帰宅後、5時半に夜回りに出発。山には霞がかかっていたが、雨は降っていない。シカ4回4頭のみ。
10月6日
朝早くから山に行くつもりがついつい寝坊。道路工事の時間規制もあって、昼前にようやく山に入れた。この日はB、D、L、R、P、J各地点を点検する予定で、入山から5時間くらいはかかるが、天気は良く夕方まで持ちそうだ。
L地点のカメラを点検中のこと。フィルムは珍しく撮り尽くされている。誤作動か?そのくせセンサーは止まっているようだが、多分バッテリー切れだろう。ここのセンサーは基盤やバッテリーが納まった本体部分は布の袋に入れてぶら下げてあり、これと独立した感受部とは配線でつながっている。点検のため本体を取り出そうと袋の口に指を差し入れたとき、予期せぬ感触に思わず手を引っ込めた。覗き込むと、大きめに作ってある袋には枯草やコケがびっしり詰めこまれ、まるで鳥の巣だ。外から触ると、テニスボール大の球形に丸まっている。「あ、もしや…」カメラを用意しようと思ったとたん、その中でモゴモゴと何かが動き出し、すぐに袋の口からそいつは飛び出してきた。左手に持った袋の上に姿を現したのは、まぎれもないヤマネだ!(photo6.01)
ヤマネは小さなネズミくらいの動物で、ネズミとリスを足して二で割ったような、なかなかかわいらしい姿をしている。越冬中は丸くなって死んだように動かないので、冬の山小屋などで見つかって話題になったりもするが、普段は滅多にお目にかかれない動物であり、あまりなじみがないかもしれない。九州にもヤマネがいることは知っていたが、生で拝見するのは僕にとっても初めてのことだ。
たぶん深い冬眠に入る前にお邪魔してしまったのだろう。そいつは元気に僕の手から飛び降り、枯葉の中をどこかへ消えてしまった。あ〜あ、写真撮り損ねた。袋の中から巣材を引っ張り出すと、センサー感受部への配線も巻き込んだ状態。巣をできるだけ壊さないように配線だけ取り出すと、2ヵ所ほど噛み切られていた。センサー停止と誤作動の原因はこれのようだ。
主のいなくなった巣はこのまま持ちかえることにした。ヤマネは上述のような事情もあり、生息情報があまり集まらない動物だ。もしかしたら、ここでのヤマネ確認も貴重な情報になるかもしれない。写真が撮れなかった以上、この巣が貴重な物証だ。
時間切れのため一番奥のJ地点の点検をあきらめ、車に戻った。休憩の後、5時から林道に入って夜回り(夕回り?)。曇ってきたが、最後まで空の明るさの残った林道を走り、シカ4頭。
帰宅後、資料をめくってヤマネについて復習。日本固有種で国の天然記念物。国のレッドデータブックでは「準絶滅危惧」、宮崎県版レッドデータブックでは「絶滅危惧U類」指定。宮崎県重要度Aランク。近いところでは隣の日之影町で記録があるようだ。天然記念物の動物というと、高千穂でもニホンカモシカがいるが、そういえばヤマネの話は聞いたことがない。高千穂町内では初確認かもしれない。
そして本州のものと九州のものでは遺伝的な違いがあるようだ。たしかに図鑑で見る本州産のものの写真にくらべ、毛の色が濃かったよなぁ。持ちかえった巣から毛が採集できれば、DNA分析だって可能なはずだ。もしかしたら遺伝的な研究に役立つかもしれない。図鑑類の著者名を参照しながらインターネット上でヤマネ研究者を探すと、やっとそれらしい人物が特定できた。
10月7日
ちょっと曇り空だが、雨の心配はなさそう。昼頃から山へ向かう。G、K、M、Q各地点を点検。コマは進んでいたり進んでいなかったり。連休のためか、釣り客のものと思われる車やツーリングのライダーをたびたび見かける。今日は林道も車がたくさん入っているだろう。夜回りは止めるか、それとも遅い時間にするか…。
作業を終えて山から下り、前日分も含めフィルムを町の写真店に現像に出した。明日は町内でお祭りがあるようなので、今日中にプリントまでやってもらうことにした。無人カメラの結果は今一つ。Q地点はいまだにちゃんと撮れない。何が悪いのかなぁ??
夕方からD紙記者氏に会い。ヤマネのネタ(写真と資料)を見てもらう。ついでにクマのことやらブナの葉枯れのことやら、いろいろ話しんだ。おかげですっかり遅くなってしまった。今日は夜回りは止めておこう。
前日野生動物関係のメーリングリストに流したヤマネ情報に反応して、大阪の方が詳しい情報を求めてきた。この中で「巣材は?」とあったので、保存してある巣を改めて見てみる。すると、僕が「枯草」と思っていたのは、明らかに木材をひも状に裂いたものだった。多分スギの樹皮に近い部分の材だろう。これが丸い巣の本体を作っており、その外側をコケで覆ってあった。図鑑などによると、スギの材を巣材にするのはヤマネでは一般的らしい。今度行ったら、近くにあったスギ林を見てこよう。材を裂いた痕が見つかるかもしれない。
ヤマネは以前からお目にかかりたいと思っていた動物だったが、まさかクマ探しの過程で目の前に登場するとは思ってもいなかった。今回偶然にもその生息場所を知ることになったのも何かの縁か。今後はクマと同時に九州産のヤマネも調べてみようか。
10月8日
連休3日目。空はどんよりしているが、町のお祭りは問題なく行われているようだ。町中の道路規制を心配したが、幸いお目当てのコインランドリーには辿り着けた。その他はのんびり過ごすことに。山は雲に覆われており、夜回りは中止。
この日、海の向こうでは戦いが始まった。あのテロ事件以来予想していた事態ではあるが、またこんなことが繰り返されるとは。アメリカは1940年代以来、何も変わっていない。何も学んでいない。
僕はこれからも山を歩いてクマを探し続けよう。世界が戦乱に巻き込まれようが、「非国民」と罵られようが、僕は止めない。どんな時代になっても、夢をあきらめない大馬鹿者でありつづけよう。
10月9日
朝から雨。でも今日はバイトなので問題なし。朝一番で営林署(正確には森林事務所)に電話を入れ、先日のヤマネ発見の報告と継続調査の予定を伝える。同様に町の天然記念物担当者にも報告。
バイトはまたひたすらワープロ打ち。雨は夕方になっても止む気配はなく、夜回りは中止。
10月10日
雨は朝には上がった。昼過ぎ、M局のTV取材クルーと落ち合う。自宅でインタビューなどを収録。
5時頃からは夜回りに同行取材。ガタガタの悪路走行の中、がんばってカメラを構えているカメラマン氏は相当つらそう。シカ5回5頭、ノウサギ1が出てきたが、さすがにうまく撮れなかったようだ。
10月11日
夜半に一雨降ったようだが、朝には上がっていた。が、天気予報では晴れと言っているが、空は今にも降り出しそうな曇り空。
8時に自宅近くで落ち合ったM局クルーを伴って山に向かう。この日はB、D、L各地点を案内しながら点検。より奥のJ、P、R各地点は、これまでのTV取材の経験から時間的に難しいと判断して見送ることに。前回ヤマネが見つかったL地点付近に仮設の巣箱を2つ仕掛けた。天気は回復してきたが、風が冷たい。
結果的には点検も撮影も順調で、昼頃には作業終了。奥のポイントにも行くことを考えたが、このまま下山して明日午前中に行く予定だった祖母山登山口に向かうことに。ここでは僕が掲示したクマポスターと、僕がチラシを補充する様子の撮影。これで明日はフリーだ。
5時から再び取材クルーを連れて夜回り。前夜は出てきた動物がうまくビデオに納まらなかったようなので、この日の成果に期待しながら出発。いつものコースではシカが4回7頭?出てきたが、やはり動きが速くてなかなか撮れない。結局まともに撮れたのはメスのヤマドリ?1のみ。ならば、と四季見原方面の広い林道に足を伸ばしてみた。ここで良く出会う大きなオスジカにはお目にかかれなかったが、ウサギ2、シカ4が出て、何とか絵になりそう。夜回りが終わり、しばし雑談の後、取材クルーと別れる。こちらとしてもやりやすいクルーたちだった。
10月12日
前日に取材を終えることができたので、今日は朝からバイト。O氏は明日からのイベントの準備に駆り出されて忙しそう。僕はいつものワープロ打ちの仕事を進めるが、2日連続のTV取材の疲れか、あまり集中できない。
帰宅後5時過ぎから夜回りに出発。最近恒例になった日没前後を走る。林道に入る前の舗装路で早速シカ2回3頭が出てきた。これは幸先が良い…と思ったが、林道に入るとぜんぜん動物が出てこない。つまらん!
林道に入って7kmほど走ったとき、車輪の回転に合わせて「シュッ、シュッ…」と異音が聞こえてきた。何かホイルに絡まったか?とも思ったが…間もなくハンドルに違和感が伝わってきた。パンクだ。何とか作業ができそうなところに辿り着いて確認すると、左前輪がペシャンコ。このタイヤには少し前から側部に岩でついた深めの傷があった。おそらくそこが弱ってエアが抜けたのだろう。もう日が暮れようとしている。頭にヘッドランプをつけ、暗闇に包まれつつある林道の真中でタイヤ交換。林道でのパンクも3度目だが、夜は初めてのこと。30分ほどでなんとかスペアタイヤに交換して、再び走り出した。結局この後シカ1回2頭に遭遇したのみで、ぱっとしない結果。
10月13日
山に行きたいところだが、タイヤの問題が生じたので、そちらを解決するのが先決だ。と言いつつ、ゆっくり朝寝して疲れを取る。
いつも世話になっているGタイヤ店に出向く。パンクしたタイヤをホイルから外してみると、以前からの古傷とは全く別のところが数cmほど鋭く切れていた。これでは修理の余地はない。持参した古タイヤ(以前使っていて予備として保存していたもの)と交換してもらうが、これはすでに磨耗が進んでいるので、スペアとすることに。もし、僕のクマ探しにスポンサーがつくとしたら、第一希望はタイヤメーカーだな…。
いつものように5時に夜回りに出発。林道の入り口で一服していると、前方にシカ2頭が出てきた。シカたちが森の中に消えた後、車でやってきたのは登山者たちのグループ。ここでキャンプして明日山に登るという彼らと少し話した後、林道へ。が、今日もシカ1が出たのみ。
夜の自宅も肌寒くなった。何分、標高400mだもんなぁ。そろそろ暖房とかの冬支度を考えないといけない。
10月14日
明け方は寒かったが、日中は暖かくも爽やかな天気に。
午後から山に向かい、G、K、M、Q各地点を点検。少し前一時的に動物が活発になったこのあたりも、動物の痕跡が全くないわけではないのだが、また静かになった。フィルムのコマもあまり進んでいない。新設したものの成果が出ていないQ地点は、同じ場所ではあるが、カメラとセンサーの向きを大きく変え、これまでとは別の獣道に狙いをつけてみた。作業を終え、4時ごろから林道を走ってみるが、特に成果なし。
夕食の後、7時半ごろから改めて夜回りに出る。もう夜風は冷たく、今季初めてヒーターのスイッチを入れた。舗装路を走っているとき、シカ1に遭遇。林道に入ってノウサギ1、イノシシ1家族(ウリボウ3頭のみ確認できた)、シカ1、そしてあまり動物が出てこない林道の後半、夜回りでは初登場のキツネ1。このキツネ、延々と僕の車の前方の林道を駆け下っていく。適当なところで横の藪に入れば良いものを、そのまま林道の終点も過ぎ、舗装路に入っても横に逃げようとしない。結局、姿を消すまで2kmほどの追いかけっこ状態が続いた。そういえば、昔オフロードバイクで林道を走っているときに出会ったキツネも同じだった。キツネは人を化かす、なんて言うけれど、実はそれほど頭は良くない?
10月15日
今日はアルバイト。良い天気なのにもったいないなぁ…なんて思っていたら、帰宅する頃には雲行きが怪しくなってきた。山のほうはすでに霞んでいる。急いで支度して5時から夜回りに出る。シカ3回3頭(含む大物オス)、ノウサギ2、ついでにヤマドリのオス1。途中から霧雨になった。
10月16日
夜の間の雨は大した事がなかったようだが、朝からはまとまった雨に。どうやら台風の影響らしく、県内各地に大雨警報が出ている。高千穂鉄道も止まったようだ。山に行きたかったが、これでは話にならない。町で洗濯や買い物をしたのみ。もちろん、夜回りもなし。
10月17日
相変わらず雨。台風が接近してきている。今日はアルバイトでずっと室内にいたが、外は雨も風も大した事はないようだった。が、帰宅すると自宅付近では風が強くなり始めていた。夜回りはこの夜も中止。強い風は断続的に続いて、ボロ屋はあちこちからガタガタと音を立てていた。
10月18日
朝、強い風は残っているものの、雨は完全に上がっていた。天気予報でも昼頃には晴れると言っている。思いの外、天気は早く回復してくれたようだ。支度をして山に向かう。峠ではまだ小雨が降っていたので車の中で1時間ほど天気の回復を待ったあと、日が差し始めた11時過ぎに出発し、歩いてB、D、L、J、P、Rの各地点の点検へ。台風の吹き返しで北風が強い。歩いていると良いが、しゃがみこんで作業していると体がどんどん冷えてくる。稜線付近は紅葉が良い感じだ。B地点はカメラに故障の疑いがあり、システムを交換した。L地点付近にしかけた巣箱にはまだ入居希望者はいないようだ。一番奥のJ地点は久しぶりの点検。結局、こことP地点だけフィルムを交換したが、他はほとんどコマが進んでおらず、そのまま。
夕方車に戻る頃には風も弱くなった。夜回りとしては少し早いが5時前に林道に入る。強風と雨の影響が心配だったが、中小の落石が増えたくらいで大きな障害はなかった。が、オスのヤマドリが2回出てきたのみ。
先日のヤマネの一件で問い合わせていた文化庁(文化財保護法に基づき、すべての天然記念物を担当している)から返事が来た。僕が気にしていた「巣を持ちかえったことに法的問題はなかったのか」については、樹洞などに自然営巣したものを持ちかえったわけではなく、人工物への営巣で継続利用はありえない状況だったのであれば、違法ではなかろう、とのこと。また、巣箱を仕掛けての調査についても、たとえ一時的であっても捕獲(逃げられない状態にする)のであれば許可が必要だが、そうでないなら不要とのこと。ちょっと安心した。
明日からは「台風一過」で天気も良くなりそうだ。そして紅葉も秋の冷え込みも本番だ。
10月19日
朝、寒かった〜!この秋一番の冷え込みだったようだ。そろそろ真面目に暖房のことを考えよう。昼間は暖かい日差しが心地よい。が、一日バイトで室内で過ごした。
夕方5時過ぎに夜回りに出る。シカが出てきたのはもうほとんど暗くなってから。結局シカ5回7頭、そしてタヌキ?が1。まぁまぁ、ってところかな?
夜11時過ぎ、無性に夜回りに出たくなった。いつもならとっくに焼酎を飲んで良い気分になっているこの時間に、どう言うわけかまだシラフ。「おお、もしかしたらクマが呼んでいるのかも!」とっくに寝静まっている山里の家々のみなさんに申し訳ないが、深夜に車をだして夜回りに出発。結果、峠近くの舗装路上で危うく子ジカをはねそうになったのを皮きりに、シカ7回8頭、ノウサギ3。特に最後に出てきたシカは、停車した車のヘッドライトや僕のカメラのストロボを気にしながらも、僕の車の前で1分ほど?うろうろしてくれた。帰宅したのは、日が変わった午前1時過ぎ。クマこそ出てこなかったが、満足感のある深夜の夜回りだった。
10月20日
雲はすこしあるが、概ね良い天気。午後から山に向かい、G、K、M、Q各地点の点検。が、どれもあまりコマが進んでいない。ここもやはり台風の影響?帰りに林道を走ってみるが、シカ1、オスのヤマドリ1のみ。
7時前から改めて夜回り。シカ4、ノウサギ3、ウリボウ(イノシシの子供。なぜか親の姿は見えず)が2。天気は下り坂のようだ。
10月21日
前夜夜半から雨が続いている。午後からM局のTV取材クルーが来訪。10日ほど前のものとは別番組のため、取材スタッフも別。今回は打ち合わせを兼ねたインタビューで2時間ほど。今後数回に渡って取材に来るとの事。
10月22日
朝まで残った雨も昼には上がり、晴れ間も見えた。バイトしながら、「この分なら夜回りは行けるなぁ。」なんて思っていたら、夕方にはまた雨。どうしようかな…夜回り…。
帰りに写真店に立ち寄り、先日のフィルムの現像仕上がりをチェック。誤作動が続いていたQ地点でやっと動物が写っていた。アナグマと…もう一つは体半分しか写っていないが、結構大きい。何だろう??プリントが出来てきてから確認しよう。(注;僕は同時プリントはせずに、フィルム現像の結果を見てから、必要なもののみプリントを頼んでいる)
日没頃には霧雨になった。食事をしたり機材のメンテナンスをしているうちに霧も晴れてきたようだ。おーし、これなら行けるぞ!ってなわけで8時半近くになってから夜回りに出る。読み通り山でも雨は止んでいた。が、路面は水浸し。慎重に林道を走り、シカ2回3頭、イノシシ(大)1、ノウサギ1。
10月23日
すこし雲は多いが、爽やかな天気。山に行こうかとも思ったが、洗濯だの、もろもろの支払いだのがあり、山へは夜回りのみ。前日から気になっていた、フィルムに写った正体不明の動物は、どうやらイノシシかカモシカのようだ。足だけしか写っていないが、どのみちクマではない。
5時から夜回りにでる。シカ3、イノシシ(大)1、小動物(テン?)1のみ。
10月24日
今日はバイトの日。朝のうちは曇っていたが、午後には晴れた。明日は山に行けそうだ。
バイト先の職員の方が、気になることを言っていた。「今年は庭の柿の木にカラスが来ない。」何でも、例年だとこの時期、熟れた柿の実を求めてカラスがたくさんやって来るのだそうだが、今年に限ってはその姿をほとんど見ないと言う。「よほど山にエサがたくさんあるのかも。」と、その人は付け加えた。なるほど、そう解釈は成り立つ。あくまで一つの可能性ではあるが。そう言えば、当初寒さが早く来るかと思っていたら、案外暖かい日が続いている。さて、クマの動きにどう影響するか??
5時過ぎから夜回りに出る。舗装路脇で出会ったシカに始まり、林道でも次々にシカが現れた。結局いつもの夜回りコースでシカ8回13頭、タヌキ1、ヤマドリ1。気を良くして立ち寄った四季見原・親父山山麓では大物のシカが2頭でてきた。シカに関する限り、大漁!
10月25日
朝から晴。で、寒い!こうなると布団から出られない性分。すっかり寝坊してしまった。午後からG、K、M、Q地点の点検。相変わらず動きが少ない。調子が今一つだった一部の機材を交換。
一旦下山したあと、5時過ぎに夜回りにでる。前夜と天候などの状況はほとんど同じ。期待しつつ林道に入ったが、結果はシカ2回2頭、イノシシ(大)1のみ。夜回りの結果は、本当に予測ができない。
ここ数日、山関係のあるホームページの掲示板でクマ鈴の問題が話題になり、僕も参加。登山愛好家の中には他の登山者が鈴をつけて歩くことに批判的な意見が結構あり、一部では禁止している例もあることを知った。要するに、せっかく静かな山を楽しんでいるときに、人工的な鈴の音一つで台無しになる、という意見だ。なるほど、これはこれで一理ある。
が、クマの危険が少しでもあるなら鈴は有効な防衛策であることもまた事実。もちろん鈴などなくても必要に応じて声を出したり手を叩いたりするだけで十分効果があるといわれているが、そういう判断ができない登山初心者などにとって一番手軽で確実な方法は、やはり鈴だ。そしてそれによって救われるのは、何も登山者自身だけではない。人を傷つければほとんど確実に殺される運命にあるクマも、そしてクマ被害の発生によって多大な迷惑をこうむるであろう地域社会も救われるのだから、やはり用心するに越したことはないと思う。
祖母・傾山系の一般的な登山(特に複数で行動する場合)に話を限れば、クマ鈴がどうしても必要だとは思わない。不安を感じる人は持って行けば良い、と言う程度の話だ(現状では)。でも、地域によっては何らかのクマ対策が必要な山も現にある。一般論として鈴を邪道視するのは、クマのいない山でも鈴を付けて歩くのと同様、ある種の過剰反応のように思えてならない。どうしても静かな山を味わいたければ、誰もいない山とか時期を選べば良い。どうしても混み合う場所・時期に出かけて行くしかないのであれば、譲り合いの気持ちが大切なのは、鈴の問題だけではなかろう。せっかく山を楽しもうと言うのなら、お互いおおらかに行こうじゃないか。
10月26日
今朝もさぶっ!日中は天気もよく気温も上がったのだが、バイトで建物の中にずっといたので、結構肌寒い。職員の方から大根1本を頂く。
5時半から夜回り。シカ5回5〜6頭、イノシシ1回2頭?、ノウサギ2。まぁまぁってとこか。
10月27日
良い天気だ。朝から山に向かう。B、D、J、L、P、R各地点を点検。全体にあまり進展はないが、過去あまり成果の出ていないJ地点だけどうしたことかコマの進みが良い。ヤマネの巣箱は空室のまま。山の中腹では紅葉が良い感じ。ここ1週間くらいが見頃かな。昼頃から曇ってきた。
帰りに林道を走る。最近中小の落石で走りにくいところがあったので、石をどけながら進む。が、やり始めるときりがない。それでもタイヤに当たりそうなところを中心に石をどけるが、どうやら、石の埋まった路肩や斜面をイノシシがほじくり返しているようだ。最近落石が目立つ理由がやっとわかった。動物には出会わず。
夕方写真店にフィルムを出した後帰宅。天気は山のほうから崩れてきたようだ。日没後雨になり、夜回りは中止。
10月28日
まとまった雨は朝まで残った。その後も時々雨。ま、予定通りの天気なので、洗濯したり、機材のメンテナンスなどしながら過ごす。夕方には雨は上がったが、山霧は残っているようなので、夜回りは止め。
10月29日
O氏の職場で、いつものバイト。昼過ぎに役場を経由して電話がかかってきた。対応したO氏によると、高千穂の町中で奇妙なトカゲのような生き物を見つけた、という町民からの問い合わせだ。天然記念物ならともかく、こういう話は明らかに担当でも専門でもないO氏だが、すぐに見に行くというので僕も同行。サンショウウオの珍しい種類だったりしたら、ちょっとウレシイ。
町中の住宅の庭で、その生き物とやらにご対面。一気に気が抜けた。「な〜んだ、ヤモリじゃないですか。別に珍しくないですよ。」知らない方のために念のため書いておくが、ヤモリ(守宮)というのは小型の爬虫類で、トカゲの一種だ。名前は似ているが両生類の「イモリ(井守)」とは全く別物。夜、窓や網戸の外側に止まった虫を食べにやってくるので、腹側だけなら見たことのある人も多かろう。僕の福岡の実家でも以前はよく見かけたものだ。同じく福岡出身のO氏の実家には今でもいるそうだ。
しかるに、この家の年配の家人も、発見者である業者のオジサンも「初めて見た。」という。「若い人や都会の人ならともかく、高千穂の年配の人たちがヤモリも知らないなんてなぁ…」内心、ちょっと呆れながら職場に戻った。戻った職場で早速この「笑い話」を披露するが、他の職員たちの反応が期待と違う。みんな「ヤモリなんて知らない」という。え?まさか…??
試しに「宮崎県版レッドデータブック」を開いてみた。「まさか載ってる訳ないよなぁ…。」なんて考えながら…。
ヤモリ…カテゴリー;情報不足、宮崎県重要度;Aランク…
「げ〜っ!!!!」なんと、福岡では珍しくとも何ともないヤモリが、ここ宮崎県ではしっかりレッドデータ指定種となっている。記述によると、県南部の平野部の住宅街などには生息が知られているようだが、県北部では情報がほとんどないようだ。さらに、木造家屋を好み、かえって山林には生息しないという。つまり人間がある程度住む「町」に適応した動物、ということだ。もともと山里である高千穂は、昔はヤモリがいなかったか、極端に数が少なかったのかもしれい。何はともあれ、意外な「発見」にびっくり仰天の僕とO氏だった。
曇り空も夕方近くになって回復してきた。5時過ぎから夜回り。冷たい夜風を切りながら車を走らせるが、シカ2回4頭、イノシシ1家族(親+子が3〜4頭)のみ。
帰宅して夕食を済ませた頃からどんどん冷え込んできた。放射冷却だ。雑事を終わらせた11時、空は快晴。再び山に向けて車を走らせる。6時間前と同じコースを走ると、シカ7回9頭、ノウサギ1に遭遇。この程度の冷え込みは、彼らには関係ないようだ。深夜1時前に帰宅。
10月30日
今日は良い天気だけど、山はお休み。午後から営林署に出向いて、入林許可の来春3月までの延長を申請した。ついでに先日国有林内で見つけたヤマネのことも報告。
久しぶりにM社長の事務所に顔を出す。延岡市出身のM社長にヤモリを知っているか、と聞くと「東京で見て驚いたことがある」という。どうやら宮崎県北部には本当に少ないらしい。
夕方早めの5時前に夜回りに出発、まだ明るいうちに林道に入る。が、ぜんぜん動物が出てこない。つまらん。結局、後半にシカ1が出たのみ。ならば今夜も深夜廻りじゃ!と思ったが、燃料タンクも財布の中身も空に近く、結局断念。
夜いつものようにFMラジオを聞いてた。で、良く聞くある若者向けの社会派?番組の冒頭で、絶叫型「ハードコアDJ」が「日本国内も大変なことになっている。○○県ではクマの被害者が昨年の○倍!…クマなんか殲滅してしまえぇぇ。」みたいなコメント。まぁ、昨今の国際情勢に引っ掛けただけのことなのだろうが、それにしてもちょっと一方的なコメントだ。若い人たちが聞く番組でもあり、クマ関係者としてはこのまま捨て置く訳には行かない。番組のホームページを開いて、この番組のノリに合わせてメッセージを送ってやった。
「クマ問題はゴミ問題から発展した人災です。したがって、罰せられるべきは人間。提案;山野にゴミを捨てた人間には殺人罪を適用すべきである。」
10月31日
バイトのため朝8時半ごろ自宅を出る。まだ霧が晴れていない。今朝の雲海はさぞ良かっただろうな。いろいろ行事で忙しそうなO氏。僕はまたパソコンでワープロ打ち。
夕方5時過ぎ、夜回りに出る。日が暮れるのと入れ替わりで、満月が昇ってきた。眩しいくらいの満月が夜空に輝く様子を横目に、いつものコースでシカ6回7頭。さらに足を伸ばした四季見原・親父山山麓ではシカ6回6頭に遭遇。
明日は山で作業…と思っていたが、予報によると天気が崩れそうな気配。最終判断は朝するとして、とりあえず今夜は天気が良いので、もう一度「深夜回り」に出ることに。夕方の夜回りから約5時間半後の10時半過ぎ、冬物の上着を着込んで出発。月は夜空に高く昇っている。通常の夜回りコースを走り、シカ6回6頭、イノシシが単独1と家族連れ1。このイノシシ家族、中程度の親と思われるもの2頭に子が4頭という構成。イノシシの母子群れは通常「母親1+数頭の子」のはずだが、なぜ親が2頭も??図鑑によると、まれに近親の母シシが一緒に行動することもあるらしい。日付が変わった12時半ごろ帰宅。
11月1日
おおぉ!いつのまにか11月だぜ。早くクマを見つけなきゃ。なんて思いながらも、天気のぐずついたこの日はお休み。
レンタカーのM社長のところに顔を出す。近々青ナンバー(貸切バス)営業を開始する社長は忙しそう。そこにやってきたお友達のSさんが町内の解体屋を紹介してくれた。残念ながらお目当ての中古タイヤは適合サイズがなかったが、手配をお願いした。ご主人から激励を受ける。
夕方になり、近くの山も見えないほどの濃霧に包まれた。夜回りも中止。全国紙M紙の記者氏から取材の申し込みがあった。
M社長が古い石油ストーブをくれた。一見ぼろぼろだが、持ち帰って試運転するとちゃんと燃えてくれた。これで冬も乗り切れそうだ。やったぁ!初めて暖房が入った我が家。快適に夜を迎えると…久しぶりにムカデ君の登場。おやおや、外は寒いか?で、こちらとしても久しぶりにキン○ョ―ルの登場。
11月2日
曇り空の今日はバイト。パソコンぱそぱそ。
夕方、山の天気を心配しつつ5時半前に夜回りに出発。幸い奥山を覆い尽くしている霧も、僕の夜回りコースまでは降りてきていなかった。そのまま林道に入る。シカ6回7頭、アナグマ1、イノシシは単独2、家族1。このイノシシ家族、先日のと同じ群れだと思うが、明らかに3サイズ(大1、中1〜2、小3〜4…多すぎてよくわからん)いた。構成がよくわからん家族だ。
これ以外にも、もう動物をもう一頭目撃した。林道脇の斜面の上のあたりを駆け上っていく体長50〜60cmくらいの「そいつ」の背中が見えた。色は全体が黒かったと思う。身のこなしがイノシシのそれとは印象が違った。とはいえ、ヘッドライトがまともに当たらない暗いところだったし、ほんの一瞬のことで、なんともはっきりしない。車を降り、懐中電灯を頼りに付近を見まわしたが、はっきりした足跡は見つけられなかった。大きなアナグマ(成獣の体長は60cm前後になる)か、さもなくば…。
明日はまた天気が崩れる予報が出ているものの、とりあえず今夜は天気が一時的に持ち直したようだ。で、夜10時半、前回から5時間の間隔を置いて2度目の夜回りに出発。山の霧はほぼ晴れたようだ。林道に入る前の舗装路でシカ3回5頭が出て、「これは絶好調か?!」と思ったものの、いざ林道に入るとシカ1、アナグマ2、ノウサギ2と今一つ。欲張りすぎたか??が、足を伸ばした四季見原方面では、メスばかり(だったと思う)少なくとも4頭のシカの群れや、大きなオスジカばかり3頭(これは「群れ」ではないと思う。おそらく勢力争いでもしていたのだろう)が同時に出て来たりして、ちょっと感動。深夜1時ごろ帰宅。
11月3日
予報通り雨の朝。そのままゆっくり朝寝させていただいた。本当は山に入りたいんだけどなぁ。
夕方、雨の中四季見原のあたりまで車道を走ってみるが、特に成果なし。M社長のところに立ち寄って軽く一杯。
11月4日
天気は回復し青空が戻ってきた。が、その分朝は冷え込み…あぁ、布団が恋しい。前夜までは「朝から山」なんて言っておきながら、ついつい寝坊。
早めに昼食をとって、昼頃から山に向かった。紅葉目当ての行楽客、そして隣り町で行われているはずのお祭りの影響か、峠越えの車が多い。大型バスが狭い峠道で往生している。作業はB、D、L各地点を点検するものの、いずれもコマはあまり進んでいない。一部の機材を先日から準備していた冬季向けのものに交換。近くの藪の中を何かが走り去っていった。たぶんイノシシだろう。
帰りに4時前から林道に入って夜回りコースを廻ってみるが、ここにも行楽客の車が入った形跡がある。そのせいかどうかはわからないが、シカ1、ヤマドリ1に遭遇したのみ。
明日はまた天気が崩れそうだ。天気の良い今夜のうちに再度夜回り。9時に出発。序盤にシカ3回5頭、タヌキ1、アナグマ1が出て、これは幸先が良いと期待したが、以後はさっぱり。四季見原方面にも足を伸ばしたが、成果なし。今日はこのあたりも行楽客でにぎわったはずだ。駐車場にはキャンパーのテントもある(これって、たぶんルール違反。真似しちゃダメよ。そばにキャンプ場があるんだから。)。動物たちも喧騒の逃れてどこかに隠れているのだろう。最後に集落近くの舗装された道でイノシシ1に出くわした。
11月5日
今日はバイト。昼前には雨が降り出し、職場は寒寒としている。夕方自宅に帰る道はすでに濃霧に包まれている。迷うことなく、夜回りは中止。
もともと寒さには強いほうではなかった僕だが、3年もアフリカの冬のない気候で過ごして以来、以前にもまして冬が苦手になった。あ〜寒いよ〜。
11月6日
前日の雨は止んだが、強い寒風が吹き気温が上がらない。
先日取材の申し込みのあった全国紙M紙の記者氏は約束の朝9時ごろ電話してきた。近くの天岩戸神社まで来ていると言うので、自宅までの道順を説明。が、記者氏が辿り着くにはさらに30分を要した。お世辞にも判りやすい場所ではないが、道に迷った人は初めてだなぁ…。
気を取り直して自宅で取材開始。この新聞のクマ探しに関する取材は今回が初めてで、この記者氏とも初対面。というわけで、話はかなり時間を遡り、果ては僕の少年時代にまで至った。気がつくと午後1時。午後だけ山に同行する予定だったのだが、時間がないので山の入り口付近まで行って記事用の紹介写真だけ撮ってもらう。遅い昼食をご馳走になって別れたときには3時半になっていた。
しゃべり疲れて一休みしたら、もう夕方。5時過ぎに夜回りに出発。シカ4回4頭のみで、ぱっとしない。夜回りにいつも持参していたストロボが原因不明のショートで破損してしまった。
夜FMラジオを聞いていたら、先週(10/30)僕がクマ問題に関するコメント(「各地で発生しているクマ問題の多くは人災である」という趣旨)を送った番組でそのほぼ全文が紹介された。全国の若い人たちが聞くこの番組でこんなメッセージが紹介されるなんて滅多にないことだろう。素直に喜ぼう。
高千穂の明朝の最低気温予報は1℃(多分自宅付近は0℃になるだろう)、霜注意報が出た。
11月7日
冷え込んだ朝。外は真っ白な霧に包まれている。うぅ〜…さむ〜。天気は良いが気温が上がらない。バイトの職場もさむ〜。
日が暮れたあと、6時前に夜回りに出発。シカ1、そして久しぶりにキツネ1が出てきた。足を伸ばした四季見原方面ではシカ2、アナグマ1、テン1。ま、数は少なかったけど、いろいろ出てきてくれた。
11月8日
今朝もさむ〜。バイト先に9時前に着いたが、まだ霧が晴れていなかった。
午前中、バイト先に突然の来客。クマ探しの大先輩・宮崎市のK氏だ。仕事の都合で近くまで来たらしい。O氏と3人でしばし情報交換。
O氏が一冊の本を買ってきた。僕が以前ユースホステルの「住人」だった頃、偶然同宿となった山旅人・Tさんの本だ。自然歩道を歩いて九州を縦断した日々が日記の形で綴ってある。O氏や僕のこともちらほら。それにしても、旅が終わってまだ半年ほどなのに、もう本になっているなんてすごい。見習わないと。
5時過ぎに夜回りに出発。このところあまり動物が出てくれないが、この夜もシカ2、キツネ1、小動物(イタチかテンの小さいのだと思う)が1のみ。
5時間半ほど間を置いて11時前から再び山に向かう。シカ5回6頭、ノウサギ1、イノシシ1家族?(中くらいのが2頭)。まぁまぁの成果だった。安心。
11月9日
朝は寒かったが、晴れた日中はぽかぽか陽気。午前中は珍しく車の掃除。
午後1時、約束通りM局のTV取材クルーが来訪。そのまま一緒に山に向かう。この日の作業はは2週間ぶりになるG、K、M、Q各地点の点検。タフそうなカメラマン氏は余裕の表情だが、「病み上がり」のディレクター氏は、かなり辛そう。落ち葉が舞う森の中での作業の様子を収録してもらった。肝心のフィルムのコマは結構進んでいる。辺りにもイノシシ?の痕跡が多数。
作業中、下の林道を車が通過する音が何度も聞こえてきた。何事か??ちょうど作業を終えて車に戻ったところに、ダンプカーが2台も登ってきた。げげっ!この林道の何処かで工事が始まったのか?この道は夜回りコースで一番重要なところなんだけど…。
下山し、引き続いて自宅で取材&撮影。なんと、夕食の支度の様子や、食事の様子まで収録。この貧相な食生活が、とうとう一般公開されるのか!
取材班は一旦宿に。8時ごろ再び合流して夜回りに出発。ダンプカーが運び込んでいたのは、悪路補修用の土砂だったようだ。林道の所々がこの土砂で覆われていた。それ以外のところも重量級ダンプカーが地ならししてくれたおかげで、いくらか走りやすくなった。この程度の工事で終わってくれればよいが…。成果はいつものコースでシカ3回5頭、アナグマ2、イノシシ単独1と2頭連れが1でいずれも中型。足を伸ばした四季見原方面ではシカ1のみで、ちょっと期待外れだった。それでも取材クルーは何とかシカの映像を納められたようだ。
11月10日
朝6時半、久しぶりに早起きすると、なんと雨が降っている!げっ!!心配したが、8時にM局取材クルーと合流し山に向かうころには晴れてきた。が、山の上ではまだ雲がかかっており風も強くて寒い。紅葉の盛りも麓にまで下ったようで、山の中腹まで葉が落ちて冬枯れの森となっていた。作業はB、D、L各地点の点検だが、B地点がわずか1コマ進んでいただけで、フィルムの回収は見送る。昼頃になってようやく天気が回復し、暖かい日差しが戻ってきた。車に戻って昼食。
下山後、町の写真店でフィルム(前日回収分)を現像に出す様子などを撮影(Tカメラさん、お邪魔しました)。即日仕上がったプリントを自宅でチェック(もちろんこの様子も撮影)。イノシシやシカが多く写っていた。すべての取材が終わったのは4時過ぎ。取材の続きはまた来週…。
一息入れて5時ごろから夜回り。いつものコースでシカばかり6回8頭。
11月11日
取材から開放され、ちょっと朝寝坊。昼頃から山に向かう。2週間ほどほったらしになってしまったJ、P、R各地点を点検。
一番奥にあるJ地点で作業をしているときだった。同じ斜面の上方でガサっという音。立ち木などに阻まれて見えないが、直前に見かけた3匹の小さなイノシシたちだろうか?少し間を置いて再び音がした。そして込み合った木立の隙間から、黒く大きな獣の姿が見えた。「出たかっ?!」僕はとっさに望遠レンズ付きのカメラをつかみ、音のした辺りを覗き込む。見えない…何処だ?…いた!…立派なイノシシでした(ちゃんちゃん!)。イノシシは僕の居る斜面の数十m上方を静かに横切った後、山の奥へと消えて行った。
夕方に近づくにつれ、空には雲が広がってきた。天気を気にしながらも、予備のカメラとセンサーを林道脇に新規に仕掛けることにした。S地点とした。実は15日から狩猟が解禁になり猟区内での作業は危険になる。昨年はこれを機に一旦全面撤退したが、今年は猟区内にある各地点のみ撤去し、禁猟区内での撮影は可能かなかぎり続けるつもりだ。この日まわったエリアは撮影を継続するエリアなので、この期に及んで新規設置してみたというわけ。車に戻って4時半ごろから林道に入り夕暮れ時の森の中を走るが、シカ1とヤマドリが出てきたのみ。この日は日曜日。新しいタイヤ痕があるので、紅葉目当ての車やバイクがこの道にも入ったようだ。
天気は下り坂かと思っていたが、天気予報では回復に向かっているようだ。夜空に星は見えないが、雨の心配はなさそうだ。10時前に夜回りに出る。シカ3回4頭、アナグマ2。目の前に止まった僕の車の方を見てキョトンとしたアナグマの表情がかわいらしかった。
11月12日
良い天気だが、今日もバイトの日。
5時過ぎに夜回りに出る。昨夜とは打って変わって、冷え込んできた。が、シカ2回3頭のみ。
先日クマ問題が取り上げられたFM番組で、オープニングの絶叫コメントとして、またまたクマ問題が取り上げられた。今回は、先日の僕のメッセージを反映した内容となっていた。クマ問題の広報としては、おそらく絶大な効果があったに違いない。「ハードコアDJ」氏と番組スタッフに感謝!
夜10時ごろから再び夜回りに出る。夕方の夜回りが今一つだったので、リベンジ!と思ったが、なんとアナグマ1のみ。サイテー!12時近くになって帰宅。ニューヨークでまた旅客機の墜落事故が発生し、ニュースは騒然となっていた。
11月13日
雲が多いが概ね良い天気。昼食後、山に向かう。目指したのはG、K、M、Q各地点のあるエリアで、先日TV取材のときに来たばかりなのだが、ここは猟区なので解禁の15日までにカメラをすべて撤収しなくてはならない。中でもやっと調子がでてきて、この日も唯一コマの進みが良いQ地点を撤去するのは本当に残念だが、点検中に散弾の餌食になってもシャレにならない。
帰りに目撃者Tさんの山に向かう。ここはTさんが昨秋にクマを目撃した地点に近く、今春から梅雨くらいまで無人撮影を行っていた(T地点)。その後秋にはカメラを再設置するつもりでいたが、ついつい先延ばしにしているうちに猟期が迫ってしまった。ここも猟師が来る場所らしいので今から撮影は行わないが、残置していたパーツを回収するために再訪した。イノシシのものらしき痕跡を見ながら進むと、T地点のそばで獣が山を駆け下りて行く音が2度。2度目は角がちらりと見えたのでシカのようだ。
5時ごろ帰宅して軽く腹ごしらえをしたあと、5時半、あわただしく夜回りに出発。が、この日もあまり動物は出ず。シカ1、アナグマ1、そして山側の斜面のヤブの中を駆け上がって行った黒い影は中くらいのイノシシだと思う(たぶん2頭)。
妙に疲労感がある。考えてみれば最近バイトのない日は取材続きで、ゆっくり休めていない。この状態はこの週末まで続くはずだ。今夜は深夜の夜回りは止めよう…なんて考えていたら、ユースホステルの泊り客からお呼び出し。以前YHに住んでいた頃に同宿したことのある女性だ。御無沙汰のお母さんにも会いたかったので、御注文の絵葉書を持ってYHを訪ねた。ドイツからのお客さんも交えてしばし談笑。
帰宅後メールをチェックすると、やはり以前YHで同宿した女性客からメッセージ。今の家に移り住んで以来、YHのときのような出会いの機会がなくなって寂しく思っていたが、こうやって後々までコミュニケーションが続くと言うのも良いものだ。
11月14日
今日もバイト。が、この日はいつものデスクワークではなく、肉体労働。荷物を抱えて階段を登ったり降りたり。「いつも山仕事やっているから、こんなのヘッチャラさ!」なんて思っていたら、ふくらはぎは張るわ、腰に来るわ。歳かなぁ。
バイト先に某新聞社のカメラマン氏が来訪。この人、今年5月くらいから僕と同様の無人撮影の技術を使ってクマ撮影にトライしている、いわば僕のライバル。が、どうやらこの半年ではろくな成果が出なかったらしい。そりゃそうだろう。撮影を止める、とは言わなかったが、現状までで何とか記事の形にしなくてはならないらしく、町で保存しているクマ足跡の石膏型の撮影に来たらしい。当り障りのない情報交換をする。
夕方5時半過ぎ、夜回りに出る。夕方近くに降った雨は上がったが、夜風はさすがに冷たい。シカ2回2頭、アナグマ2、イノシシ1、キツネ1。
11月15日
今朝も冷え込んだ。曇り空で風が冷たい。天気予報では宮崎県内では今季初めて「雪」という言葉を聞いた。午前中、溜まっていた洗濯をやっと済ませる。
午後からはまたM局の取材。取材クルーが見つけたという、バックに山の見える刈り取り後の田んぼに移動してインタビューを収録。寒風の吹くなか震えながら話した。顔が引きつってたり、声が震えたりしていないか心配だなぁ…。そのあと、M社長の会社に押しかけてここでも収録。
一旦M局スタッフと別れ、Gタイヤ店へ。前輪2本を交換してもらった。これでやっと前後のタイヤサイズが同じになった。しかも、この車では初の新品タイヤ!ついでに後輪に見つかったパンクも修理(どうりでエアが抜けるわけだ!)。
夕方、近所に住む目撃者のTさん宅にお邪魔して、また取材。昨年の目撃の状況などを話してもらった。5時半、今回の取材は終了。
8時前に夜回りに出発。やっぱ新品のタイヤは気分がいい(前2本だけなんだけど…)。走りも良い感じだが、初陣でいきなり破らないように大人しく走る。が、肝心の動物はぜんぜん出てこず成果ゼロ!考えてみたら狩猟解禁初日だもの、猟師がこぞって山に入ったのは目に見えている。こんな夜は早く帰って、焼酎のも!
11月16日
今日のバイトはいつものパソコン仕事にもどった。なぜか判らないが断続的にシャックリがでてはなかなか止まらず、これが結構つらい。
5時過ぎに夜回りに出る。やはり動物の姿は少ないが、それでもなんとかシカ2回2頭とイノシシ1を確認。四季見原方面に足を伸ばすと、シカ3回5頭と遭遇。この辺りは猟の影響が少ないのかもしれない。
11月17日
ゆっくり朝寝。午後、M局クルーたちと合流。宮崎市内から来た彼らは「寒い」というが、僕からすればぽかぽか陽気。高千穂町内某所にある「熊塚」を取材。
祖母・傾山系のクマについて語るとき、忘れることができないのが「たたり」の伝説だ。クマを殺すと祟りがあると信じられていたため、クマを仕留めた猟師やその関係者によってクマの霊を鎮めるためのほこらや墓が建てられた。これが「熊塚」とか「熊墓」と呼ばれるもので、例えば戦前のクマ捕獲記録を収集した加藤数巧による「祖母、傾山系における熊の捕獲表」を見ても多くの例が記載されているし、現在でもいくつかが残っている。このことは、単にこの地に熊が生息していたという事実だけでなく、「熊文化」とでもいうべきものが存在していたことを物語っている。
実は熊塚を訪れるのは、僕にとって初めてこのこと。ここの熊塚は近所の神主さんが管理されており、毎年正月に慰霊祭を行うのだそうだ。祭られている石版には、動物の姿が彫られているが、よくわからない。クマがイノシシを担いでいる姿ともいうが…??。ここでクマの祟りと熊塚について収録。(photo6.02)
この後、祖母山登山口に用のある僕に、M局クルーたちも同行。登山口に置いてあるチラシを補充するためだ。1ヶ月余りまえにおいた100枚のチラシはすっかりなくなっていた。今回も100枚ほどを置く。この様子も収録。下山するともう暗くなってしまった。
自宅であわただしく腹ごしらえをした後、7時ごろまたM局クルーと合流。近所の集落で行われる今年最初の高千穂夜神楽を見物に行く。夜神楽は昨年一度見物したことがあったが、今回は本格的に撮影機材を持ちこんだ。今年初の夜神楽ということで、今まで取材を受けた高千穂や延岡のマスコミ関係諸氏が勢ぞろい。もちろん各地からの見物客、夜神楽マニアたちもたくさん。
僕の興味の対象が自然であり野生生物であることに変わりはないのだが、最近バイトの関係で夜神楽関係の文献に目を通す機会があり、すこし興味も沸いてきた。O氏の勧めもあった。せっかくこの土地に暮らすのだから、この土地の誇りでもある夜神楽を撮ってみようか、と思い始めたところだ。が、今はまだ神楽の撮り方がよくわからない。今シーズン中に試験的にトライしてみて、自分なりの撮影の方向性がつかめれば、と思っている。
実際に撮影してみると、とたんにいろいろな問題点が…。機材から揃えなおしたい気分。カッポ酒(青竹で燗をつけた日本酒や焼酎)を飲みつつ、午前1時半頃まで撮影を続けたが、機材のトラブルもありここで中断。重たい機材を担いで、暗い夜道を30分ほど歩いて家に帰る。「自分にしか撮れない夜神楽」…その答えは容易には見えてこない。
これ以前の日記は「クマ探し日記(5)」 続きは「クマ探し日記(7)」
エッセイ「アフリカとクマ探し」 参考文献 作者プロフィール Profile
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