イノシシを知らない日本人


 日本人って、不思議だ。テレビやなんかのメディアが発達していて、アフリカにいるゾウやライオンのことは子供でも知っている。なのに、自分の地元の山林にイノシシとかタヌキとかがいることをほとんどの人は知らない(または気にしていない)。もし、知っていてもその姿を見たことのある人ってすごく少ない(夜行性の奴が多いから、これは仕方ないか)。彼らのことを知っているとすれば、農家の人たちが「害獣」として意識しているくらいかな。

 知らないだけなら良いんだけど、「無知」は大抵良くない結果につながるもんだ。1年以上前(一時帰国中)の話だけど、福岡県内のある住宅地にイノシシの群が出てきた。山を切り開いて作った住宅地だった。大騒ぎになって、警察や猟友会が出て、このうち数頭が殺されたんだ。

 僕は作物を食い荒らされた農家の人が、その犯人を恨む気持ちは理解できる。状況によっては(最後の手段であって欲しいけど)駆除も仕方ないのかもしれない。でも、住宅地に出てきただけのイノシシたちが、なぜ殺されなければならないんだろう?僕には理解できない。

 イノシシは好んで人を襲ったりはしない。たったそれだけのことをみんなが知っていれば、彼らは殺されずに済んだのではないか、と残念で仕方無かった。よく「民族が違うというだけで殺し合うなんて馬鹿げている」って、みんな言うじゃないか。それと同じくらい、馬鹿げたことじゃないのかい?

 最近、地元の山でイノシシやタヌキの写真を撮り始めた。この写真が商売になるとは思っていない。でも、僕が撮ったイノシシやタヌキの写真を見た人が、「この森には本物のイノシシやタヌキがいるんだ!」って気づいてくれたら、僕はうれしい。だって、それは僕ら人間と彼らが共存して行くための第一歩に違いないから。

(1999年10月12日・ホームページのための書き下ろし)

 福岡市油山のイノシシ


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