「高千穂神楽の夜は永く」 高千穂神楽拝観記

高千穂町岩戸「上永之内神楽」

(御霊神社)

拝観日 場所 備考
2002/11/30-12/1 土持某氏邸 全日程拝観

2002年11月30日〜12月1日(「自然派宣言!/クマ探し日記」より抜粋)

 ゆっくり朝寝して目覚めると小雨模様の天気。せっかくの夜神楽なのに生憎の天気だ。

 この夜は町内2ヶ所で夜神楽が開催される。どちらも行った事のない地区ではあるが、そのうち一つが僕の住む地区のすぐ隣の地区。行かない訳には行かない。昼過ぎに神楽宿へ。この地域では舞い始めが少し遅いので、そんなに急ぐ事はないと判ってはいたが、余所者に遅れをとっては「地元民」として恥ずかしい。当然のごとく、見物人としては一番乗り。地元とは言え初対面の人が多いのだが、「クマの先生じゃがね!」と歓迎された。

 実は恥ずかしながら、僕はここを含む「地元」岩戸地域の夜神楽をまともに(全日程)拝観するのは今回が初めてだ。だから、今シーズンは、この地域の神楽(他に2地区が予定されている)は最優先に拝観して行こうと思っている。

 で、実際に舞を拝見して驚いた。舞の平均レベルが高いのだ。高千穂神楽も地区ごとに舞人が違うのが普通だ。「練習」への取り組みも異なる。すると、当然技量の差が出る。神楽「通」の人たちの間では、「○○地区は舞が上手い」みたいな話が出ることもある。だが、今まで岩戸地域の神楽でそういう評判を聞いていなかったので、失礼ながらそう言う意味ではあまり期待していなかった。だが、それは「良い意味」で裏切られた。特に若手の舞人の中にかなりハイレベルな舞を見せる人たちが多くいる。

 中でも序盤で披露された素面2人舞の「幣神添(ひかんぜ)」は僕の目を引いた。一つ間違えると退屈な舞になってしまう演目だが、この夜の「幣神添」は囃子太鼓の秀逸さもあって、抜きん出いていた感がある。息の合った舞の動にきには目を見張るキレが、神楽歌にもこちらの腹に響いてくるほど力強さが、二人が振る神楽鈴の響きにすら迫力があった。ちょっと感動。

 一般の見物人には「神面」をつけた舞の方がウケが良い。写真撮影が主目的の人たちには特にそうだ。だが、高千穂神楽では舞の半分くらいは「素面」で舞うのだから、神面舞にしか興味を示さない見物人が多い事を残念に思っている。だが、反面僕自身も「素面舞」の魅力をどう伝えてよいか、迷っていた。それがこの「幣神添」の舞を見てその「迷い」は吹っ切れた。これぞ素面舞の醍醐味だ!

 地元開催という事も手伝ってか、僕がシャッターを切るペースはいつもより速くなった。通常一夜の夜神楽撮影では36枚撮りフィルムで15本前後を撮る事が多く、予備も含め20本用意してある。だが、今夜は足りそうにない。夜食のため舞が中断された隙に自宅に戻り予備のフィルムを持ってきた(近所で良かった!)。結局、早朝は睡魔で撮影ペースが落ちたものの、僕の夜神楽取材では最多本数となる22本のフィルム(約800コマ)で全日程を撮りきる。

 雨は夜半まで続いた。おかげで朝の冷え込みは弱かった。朝には雨も上がり天候は回復へ。帰宅後はもちろん昼寝。気がつけば、もう師走だ。

 

「幣神添」の舞(2002年11月、上永之内神楽)


  番付表   実際の順番
太殿(たいどの) 太殿(19:30頃開始)
神降(かみおろし) 神降
鎮守(ちんじゅ) 鎮守
杉登(すぎのぼり) 杉登(前半)
      入貴神
      杉登り(後半)
地固(ぢがため) 地固
幣かざし(ひかざし) 幣かんぜ
弓正護(ゆみしょうご) 弓正護
住吉(すみよし) 住吉
      直会(夜食)
岩くぐり(いわくぐり) 岩くぐり
10 袖花(そでばな) 10 袖花
11 柴のり(しばのり) 11 御神体
12 地割(ぢわり) 12 柴のり
13 本花(ほんばな) 13 本花
14 五穀(ごこく) 14 五穀
15 七奇神(しちきじん) 15 七貴神
16 御神体(ごしんたい)    
17 蛇切(じゃきり) 16 蛇切
18 八鉢(やつばち) 17 八鉢
19 武智(ぶち) 18 武智
20 四人鎮守(よにんちんじゅ) 19 四人鎮守
21 火の前(ひのまえ) 20 火の前
22 太刀かざし(たちかざし)    
23 置絵(おきえ) 21 沖逢
24 大神(だいじん) 22 大神
25 山森(やまもり) 23 山森
      直会(朝食)・休憩
26 柴引(しばひき) 24 柴引
27 伊勢(いせ) 25 伊勢
28 手力(たちから) 26 前の手力男命舞
29 鈿女(うずめ) 27 鈿女命舞
30 戸取(ととり) 28 戸取の舞
31 舞開(まいひらき) 29 舞開
32 繰下(くりおろし) 30 繰下
33 雲下(くもおろし) 31 雲下(10:20頃終了)

 配布された番付表は天岩戸神社が製作した岩戸地域広域向けのもので、上表左はこれを参照。ほぼこれにしたがって進行したが、「地割」と「太刀かんぜ(太刀かざし)」は省略された。この他、時間の都合で未明の時間帯(夜食〜朝食)の演目では内容を省略したものがあるようだ。

 一番に「彦舞」がない代わりに「蛇切」があるのは岩戸地域共通の特徴とのこと。ここでは序章としての「御神屋(ほめ)」からそのまま「太殿」に移行して神楽がスタートした。「蛇切」はスサノオのオロチ退治を題材にした舞で、タヂカラオの「戸取」と共に力のこもった舞。

 「八鉢」は、他の地域にもあるが、ここでは大根を「男根」のようにして振りながらの「かまけわざ」が中心。他所で多い、逆立ちなどの軽業は一切見られなかった。

 本文にある通り、全般にレベルの高い舞を拝観できて、充実した夜神楽拝観だった。


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