「高千穂神楽の夜は永く」 高千穂神楽拝観記

高千穂町田原「上田原神楽」

(熊野神社)

拝観日 場所 備考
2002/2/10-11 安在某氏邸 全日程拝観

2002年2月10〜11日(「自然派宣言!/クマ探し日記」より抜粋)

 朝はゆっくり目に起床。外は小雪が舞っている。小春日和も昨日まで、か。コーヒーを飲んでいると、O氏から電話。「今夜の神楽宿は寒いぞ!良い場所を取らないと大変だぞ。早く来い!」そう、この日は今シーズン最後の高千穂夜神楽が執り行われる。僕も食事を済ませて昼頃から出かけた。

 この日の「神楽宿(神楽が行われる民家、または建物)」は予定では個人宅になっていた。ところが、実際の神楽宿になったのは、その方の母屋ではなく、おそらく農業機械・作業用の大きな倉庫。そこに「神庭(神楽が舞われる8畳四方のスペース)が特設されていた。客席にも畳が敷き詰められたが、もともと半開放の大きな空間だ。おまけに雪の舞うこの天気。O氏の言葉どおり、寒くなりそうなだ。O氏と二人で、壁に守られた最前列に陣取る。ついでに用意されていた石油ストーブを背後にキープ。

 夕方が近くなるにつれ、見物客が集まり始める。そぞろにやって来た写真愛好家らしい一団が神楽の番付表(三十三番の舞の予定表)を見て、「面を着けた舞はどれだ?」と言い出した。熱血高千穂神楽男・O氏がこれに黙ってはいなかった。「面をつけない舞が多いのは高千穂神楽の特徴。神面舞いばかり撮るのはシロート。それで高千穂神楽を観たつもりになってもらっては困る!」きつい言い方ではあるが、O氏の意見はもっともだ。

 僕自身も高千穂神楽について勉強して知った事ではあるのだが、高千穂神楽において神面を着けた「神面舞い」と、着けない「素面舞い」とのコンビネーションはかなり重要な意味を持っているようだ。一般に「神楽=神面舞い」のイメージが強いのは事実としても、特に写真家の中には最前列に陣取った挙句、素面舞いの場面では居眠りしているような輩が少なくない。そういう連中の中には「神事に参列している」という自覚に欠け、マナーがよろしくない者も少なからずいる。「良い写真作品を撮る」ことにしか興味がないのだ。O氏が上記で示した露骨な不快感はそのためだ。

 そんな話はさておき、夕方5時半過ぎから本格的な神楽舞いがスタートした。夜神楽全日程撮影も4回目で大分慣れてきた。先日の番組出演の謝礼のおかげで、ポジフィルムはこれまでより多めに用意できたので、いつもより少し速いペースでシャッターを切る。番付表をざっと見ただけでは三田井神楽(高千穂の町の中心部・三田井地区の形式)に比べ際立った特徴が分かりにくかったが、細部に余所にない組み合わせの舞いなどが観られる。子供たちや中高生がほしゃ(舞い手)として多く参加していたのも印象的だった。

 夜半から降雪は激しくなり、雪が積もり始めた。寒風が最前列まで吹き込み、冷え込みは厳しい。ストーブの近くに座れたのは幸いだった。が、今期最後の夜神楽とあってか、未明まで見物客で混み合った。夕方O氏が「ゲットした(僕のために?)」女子大生2人も、僕の後ろで寒さと睡魔に耐えながら舞いを見続けている。

 真っ白に雪化粧した風景が日差しに照らされ始めた午前10時前、今シーズン最後の高千穂夜神楽の全日程が終わった。一時フィルム不足を心配したものの、36枚×18本半で撮りきる。5cmほどの雪が屋根に積もった車で2人の学生さんを町に送り届けたあと、自宅の布団にもぐりこみ夕方まで昼寝。(後略)

ユーモラスな「道化荒神」。後頭部に面をつけ、前後逆の仕草で舞う。


2002年2月10〜11日の上田原神楽(番付順)

  番付表の順番(予定時刻)   実際の順番
      宮神楽(16:00すぎ)
      舞い込み
御光屋(みこうや)(17:30) 御光屋誉め(前半)(17:40)
彦舞(ひこまい) 彦舞
      御光屋誉め(後半)
神降し(かみおこし) 神降し
鎮守(ちんじゅ) 鎮守
杉登り(すぎのぼり) 杉登り(前半)
      入鬼神
      杉登り(後半)
  神事   神事
袖花(そではな) 袖花
地固(じがため) 地固
幣神添(へいかんぜ) 幣神添(前半)
      (道化荒神)
      幣神添(後半)
沖逢(おきえ) 沖逢
10 太刀神添(たちかんぜ) 10 太刀神添
11 住吉(すみよし) 11 住吉
12 火の前(ひのまえ) 12 火の前
13 四人武智(よにんぶち) 13 四人武智
14 山森(やまもり) 14 山森
15 柴荒神(しばこうじん) 15 柴荒神
16 弓正護(ゆみしょうご) 16 弓正護
17 地割(じわり) 17 地割
18 五穀(ごこく) 18 五穀
19 杵舞(きねまい)・御神体(ごしんたい) 19 杵舞
      御神体
20 本花(ほんはな) 20 本花
21 岩潜り(いわくぐり) 21 岩潜り
22 七鬼神(しちきじん) 22 七鬼神
23 武智神添(ぶちかんぜ) 23 武智神添
24 八鉢(やつばち) 24 八鉢
25 大神(だいじん) 25 大神
      神事
26 柴引き(しばひき) 26 柴引き
27 伊勢神楽(いせかぐら) 27 伊勢神楽
28 手力男(たじからお) 28 手力男
29 鈿女(うずめ) 29 鈿女
30 戸取り(ととり) 30 戸取り
31 舞開(まいひらき) 31 舞開
32 注連引き(しめひき) 32 注連引き
33 雲降し(くもおろし)(9:00) 33 雲降し(9:50)

 配布された番付表はこの地区の当年専用のもので、全体の進行もこれに従っていた。他の地区の神楽では通常番付に数えない『みこうやほめ』を一番に数えているうえ、彦舞いの後にその後半がくる(これは他の地域の『太殿』に相当するだろう)。『幣神添』にわりこむ『道化荒神』を番付に数えなかったり、『杵舞』『御神体』をまとめて一番に数えたり、と番付の数え方に変則なものを感じた。もとは三十三番以上あったものを強引に「三十三番」に合わせたのかもしれない。


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