「高千穂の夜神楽」ってのは、その字のとおり「高千穂で夜にやる神楽」のことだ。
まずは「高千穂(たかちほ)」って?…それは宮崎県西臼杵(にしうすき)郡高千穂町のこと…というのが素直な答え。現に文化庁が文化財保護法に基づいて指定した「国指定重要無形民俗文化財・高千穂の夜神楽」の対象は同町に限られる、とのことだ。
ところが、かつてこのあたりでは現在の五ヶ瀬町、日之影町、諸塚村を含む広範囲を指して「高千穂郷」と呼ばれ、そして、現にこれらの地域にも同系統の神楽舞の伝統行事が残っているのだそうだ。それを考えると、「高千穂町」という現在の行政区分で区切ってしまうのは、ちと問題がありそうだ。
「高千穂」の地名は日本神話にある「天孫降臨」の話の中で、神々が地上に降り立った地とされるが、その解釈をめぐって「臼杵高千穂説」(宮崎県北部の当地)、と「霧島高千穂峰説」(宮崎・鹿児島県境)の2説による「本家論争」が江戸時代から続いている。神楽とは直接関係ないが、興味のある人は「天皇家の"ふるさと"日向をゆく」(梅原猛、2000年、新潮社)を読まれると良いだろう。
次に「神楽(かぐら)」って?…まぁ、初心者カグラーとしては「日本古来の神様に対して舞を奉納する儀式の総称」くらいの認識でたぶん間違ってはいないだろう。その語(カグラ)の由来にはいろいろ説があるようだが、ここでは触れるまい。そういう難しい議論はプロカグラー(専門家)たちに任せておけば良い。
ただ、日本各地の神楽行事には大きく分けて2種類あることだけは知っておいたほうが良いかもしれん。「神楽」というと、「神社や宮中で神官が舞う雅(みやび)なもの」と思うかもしれないが、高千穂神楽は原則として民家で普通のオジちゃん、お兄ちゃんたちが舞う(「舞人の謎」参照)。宮中などでの神官による神楽は「御神楽(みかぐら)」、高千穂神楽のように一般大衆によるものは「里神楽(さとかぐら)」と言うんだそうな。
里神楽は「伝統芸能」である前に、年に1度の「村祭」。「雅」なだけじゃつまらない。だから、その中には余興的な笑える舞も挿入されている。優雅な舞は静かに堪能し、ユーモラスな舞には腹を抱えて笑い合う。それが高千穂の「神楽」だ。
「夜神楽(よかぐら)」は「夜にやる神楽」…これはちょっと補足が必要だ。「夜神楽」は正確には「夜通し行われる神楽」を指しており、実際には日没前、日出後の明るい時間帯にも舞は行われる。大切なのは、これが神楽の本式のスタイルである、ということ。これに対し、略式の神楽として一部の舞だけが昼間行われるものを「日神楽(ひかぐら)」と呼ぶ。したがって「夜神楽」・「日神楽」という表現は、舞が行われる時間帯ではく、本式か略式かの違いを指している、ってことになる。
このHPではとりあえず「高千穂の(夜)神楽」とはすなわち「高千穂町を中心に、旧高千穂郷に伝わる伝統的神楽舞奉納行事」ってことくらいにしておこう。
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