「高千穂神楽の夜は永く」 高千穂神楽の謎(初歩的な…)

日程の謎


 夜神楽の日程と言えば、舞の「番付」…のことを言っているのではない。実際、夜神楽奉納行事のメインはこの舞の部分だし、カグラーたちのお目当てもこれであるのは間違いない。ところが、この行事の日程はこれだけでは終わらないのだ。…かといって、事前の準備とか後片付けのことを言っているのでもない。

 実は夜神楽奉納行事には、舞い始めるまでにいろいろな手順が踏まれている。舞が終わった後にも手順がある。舞の部分だけを拝観したのでは、これがよくわからない。これまた地区により段取がいろいろ異なるようだが、概ね下記のような感じになる。なお、このページの写真はすべて、栗原が全日程に立ち会う事が出来た2003年1月25〜26日の向山地区・黒仁田神楽でのもの。ひとつの例として見ていただきたい。

 

(1)神事・祭式

 神楽宿で行われることもあるし、氏神の神社の拝殿で行われることもあるが、要するに神楽奉納を前にした最初の神事・祭式。関係者や白装束を整えた舞人たちが一同に会し、神官による御払いを受ける。これによって舞人たちは「神と同化して舞うことのできる清浄なる者」になる…ってことだろう。早い地区では初日の正午頃に行われるが、午後3〜4時ごろの地区が多いと思う。

最初の神事で舞人たちは御払いを受ける。ここでは神官は高千穂神社宮司。

(2)神迎え

 祭式に続いて、神社の氏神(御神体)や一緒に保管されている神面を神楽宿に招く行事。これはさらに下記の部分に分ける事ができる。(しばしば部分的に省略されるので注意)

 拓ノ滝神社での宮神楽。この地区ではこの宮神楽も神楽番付に組み込まれていたが、これは珍しい。

道行きの隊列

神輿と共に、隊列は外注連(写真左)を3周する。

 隊列が神楽宿に入った後、舞人たちの舞の中を神輿が神庭へと進む。この段階で神楽宿全体を使ってこれほど大きく舞うのは、この地区の特色らしい。一般にはもっとコンパクトに舞われることが多い。

 

(3)みこうや誉め(または「みこうや始め」、あるいは単に「みこうや」)

 「みこうや」は「御神屋」「御光家」「御小屋」などと表記され、神庭(こうにわ)と同義と言われるが、なぜか「神庭誉め」とは言わない。「みこうや誉め」は神々を迎えた神庭(みこうや)を賛美し、そこが神々が舞い遊ぶに相応しい場であることを宣言する意味があるのだと思う。

 神楽奉納が始まる直前に「序章」として行われるのが一般的で、早い地区で午後4時頃。一般には6時前後の事が多い。「太殿」の舞にそのまま続く地区があったり、これを神楽番付に数える地区などもある。だが、太鼓を打ち鳴らしながら唱教(神楽歌)が歌われるだけで、舞は無いのが普通。

この地区では「御神屋」として、番付に組みこまれていた。最初は唱教のみで、この部分だけを指して「みこうやほめ」と呼ぶ地区が多い。その後写真の2人が舞ったが、他地区で言う「太殿」の舞に相当するのだと思う。

 

(4)神楽奉納

 これでようやく神楽の奉納が始まる。詳しくは別項(「番付表の謎」)参照。通常「式三番」が終わった後、改めて神事が執り行われる。ここでは、関係者などによる玉串の奉納があり、一般参列者からも代表一人を選んで奉納する事が多い。神事の後は直会(なおらい・食事か、簡単なお神酒上げ)になることが多い。神楽全番付が終了するのは、早い地区で翌朝午前7時ごろ、遅い地区で正午前後。一般には8時〜10時くらい。

式三番の後の神事。

神事の後の直会。ここでは参列者にも同様の食事がふるまわれた。

夜神楽奉納の一場面(「稲荷」の舞)

 

(5)神送り

 神楽の全日程が終了(一般には最終演目「雲降」の終了)した後、神楽宿から神社に神(御神体や神面)を送り届ける行事。ある程度片付けなどが済んでからのようで、終了後すぐに神送りとなるわけではないようだ。賑やかな「神迎え」とは対照的に、最小限の人数で静かに送り届けられる。これは舞の疲れと御神酒で気持ち良く寝ている神様を起こさないためだという。

森の小道を行く「神送り」の神輿。普段から神社を守っているという老師2人だけで神社に御神体や御神面を送り届けた。

(6)直会(なおらい)

 全日程を終了した後には「翌年の神楽の打ち合せ」と「打ち上げ」とを兼ねた直会が開かれているそうだ。もちろん、これは関係者たちの内輪の席なので、カグラーが首を突っ込むような場では無い。

 

 …とまぁ、舞を拝観しているだけのカグラーたちには見えにくい部分で、舞人たちの「行事」はきちんとした段取を踏みながら進んでいるってわけだ。神楽が単なる「芸能」ではなく「神事」であるゆえん、とも言えるだろう。


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