「高千穂神楽の夜は永く」 高千穂神楽拝観記

高千穂町田原「下田原神楽」

(広福神社)

拝観日 場所 備考
2003/1/18-19 佐藤某氏邸 全日程拝観

2003年1月18〜19日(「自然派宣言!/クマ探し日記」より抜粋)

 良い天気になった。仕度をして昼過ぎに夜神楽取材に向かう。この開催される夜神楽は2ヶ所だが、一つは昨年取材済み。なかなか魅力的な神楽でもう一度行きたい気分だが、まだ見ていない他方の神楽宿へ向かう。

 久しぶりに神楽宿で同席する学芸員のO氏は風邪をひいたようで冴えない顔をしている。神楽宿の準備が遅れているようで、庭先で雑談しているうちに、徐々に人が集まり始めた。東京から来た出版関係者2人は、O氏が紹介したらしく、初対面なのに「あ、栗原さん!」と声をかけてきた。他に地元映像プロダクションの取材クルーの姿も。

 ようやく準備が整い、僕は舞を真横から撮影できる位置に陣取った。いつもは神棚を正面に見る後方からの撮影が多いが、違う角度からの撮影もたまには良いだろう。

 その後バタバタと段取が進められ、夕方6時ごろから神楽舞がスタート。この地区では師匠格の超ベテラン舞人三人を相次いで亡くしたという。舞人の数も決して多くは無いから、3人減ったというだけで、そうとう辛いはずだ。ましてそれが指導者たちであったとなれば、夜神楽の存続にも関わる事態だ。準備の遅れもそのせいかもしれない。だが、残された舞人たちは掲げられた遺影の前で、省略無しの神楽三十三番を奉納し続けた。

 全体的に見ると、昨年この近くの集落で見た神楽と、段取は似ていた。だが、驚いたことに細部にはかなり個性があった。この辺りのエリアには、まだ見ていない夜神楽がいくつもあるし、僕の見落しもあるだろうが、段取などの中に「え?こんなの初めて見た!」という部分を何度もあったのだ。これだから高千穂の神楽はいろいろ見てみないとわからない。

 夜神楽を初めて見に来た福岡の知人・Kさんとそのお友達はどちらも若い女性。僕の隣に陣取った大分の女性も若い方だった。僕は、そんな若い人たちが高千穂神楽に興味を持ってくれることが嬉しい。これからの高千穂神楽を支えるのが若い舞人たちであるのと同じように、若い神楽ファンが増えてくれる事も、この伝統を維持して行くためには大切な事だと思う。

 夜神楽に来る観光客はまだ中高年層が多い。だが、眉をひそめたくなるマナー違反は、そう言う人たちに多い。後から来て人の前に割り込んで座るんじゃない。酔っ払って他者に迷惑をかけるんじゃない。少しは若者を見習ってくれ。

(後略)

「幣神添」では途中に「道化荒神」が登場、さらに見物客も招き入れて舞われた。

 

「七貴人」の子神役には女性の見物客2人が参加した


2003年1月18〜19日の下田原神楽(番付順)

  番付表   実際の順番
彦舞 彦舞(18:00ごろ開始)
太殿 太殿
神降 神颪
鎮守 鎮守
杉登 杉登(前半)
      入貴神
      杉登り(後半)
      神事・直会(夕食)
地固 地固
    袖花(子供神楽)
幣神添 幣神添
武智   (途中に「道化荒神」)
太刀神添 沖逢
10 弓正護 10 弓正護
11 沖逢 11 本花
      夜食
12 岩潜 12 住吉
13 地割 13 五穀
14 山森 14 きね舞
15 袖花 15 御神体
16 本花 16 八鉢
17 五穀 17 武智かんぜ
18 七貴神 18 七貴人
19 八つ鉢 19 火の前
20 御神体 20 岩潜
21 住吉 21 地割
    22 芝上げ荒神(=御柴)
    23 大神
    24 山森
22 伊勢神楽 25 伊勢神楽
23 柴引 26 柴引
24 手力雄 27 手力男命
25 鈿女 28 鈿女命
26 戸取 29 戸取
27 舞開 30 舞開
28 日の前    
29 大神    
30 御柴    
31 注連口 32 注連口
32 繰下し    
33 雲下し 33 雲下し(8:20ごろ終了)

 配布された番付表は高千穂町製作の三田井地区向けのもの。基本的な段取は、この辺りのエリア(上野・田原地区)に多いスタイルで、「幣神添」に「道化荒神」が割りこんだり、「きね舞」があったりする。ただし、本文にもある通り、細部には独特の段取が多く見られた。この地区特有のスタイルと言って良いのかどうか未確認だが、少なくとも栗原にとっての「初めて見た!(気がする)」を挙げてみる。

 ・彫り物を除く御幣などの紙飾りの類は、一般には白・緑・赤の3色が多いが、ここでは黄色と紫をくわえた「五色」で、色鮮やか。

 ・「幣神添」の途中に道化荒神が入るのはこの辺りのエリアには他にも例があるが、その間、幣神添の舞手(素面2人)は舞いを止めて控えているのが普通。ここではそれと同時進行で道化が舞い、さらに男性観客を誘い入れて一緒に舞う姿が見られた。

 ・「御神体」で、見物人の男女を招き入れ、御神酒を飲ませる場面があった。

 ・「七貴人」の子神役に素人の見物人を参加させる地区は多いが、ここでは女性の参加を許していた。また、普通子神は6〜7人だが、計8人登場した。また、子神に2回ずつ舞わせる地区が多いが、ここでは各人の舞いは1回のみで、退場時に全員一緒に舞いながら退場させた。

 ・「山森」には2頭の「シシ」が登場したが、これが突然鉄砲で撃たれて死ぬ、という演出があった。

 ・終盤の「岩戸五番」は地区によって順番が異なるが、内容(振り付け)が似ている「伊勢(神楽)」と「手力雄(男)」は続けて舞うのが一般的。ここでは間に「柴引」が入った。

 ・「注連口」(内容的には他地区の「繰下」と同様)では、外注連を引き倒し、その場で外注連に使われている御幣を奪い合った。(一般には「雲下」終了後に分け与える事が多い)


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