「高千穂神楽の夜は永く」 高千穂神楽拝観記

高千穂町高千穂神社「猪掛祭」

拝観日 場所 備考
2002/1/15 鬼八塚・高千穂神社本殿 全日程(午前中)拝観

1月15日(「自然派宣言!/クマ探し日記」より抜粋)

 朝から生暖かい。外は霧に小雨。真冬とは思えない天気だ。

 カメラバッグを車に積んで、高千穂神社に向かった。旧暦12月3日のこの日は、同神社で「猪掛祭(ししかけまつり)」が執り行なわれる。この地の狩猟文化との関わりが深く、また夜神楽の原型とも言われるこの祭はぜひ見ておきたかった。

 境内に到着すると、すでに本殿前に氏子の人々が集まっていた。「ほぅ〜ほっ」2人がそれぞれ長槍を天に向かって突き上げながら、本殿の周りをゆっくり歩いている。魔祓いのようだ。簡単な御祓いのあと、宮司さんは氏子たちを伴って神社近くの「鬼八塚(きはちづか)」へ。

 その昔、この近くに悪神・鬼八(きはち)が住みついて村人たちを苦しめていることを知った神・ミケヌノミコトがこれを退治した、という「鬼八退治」の伝説がこの地にある。

高千穂神社本殿の横には鬼八退治を表した彫像が残っている。

 鬼八の蘇生を絶つため三つに切り分け埋めたのが、この辺りにある3つの「鬼八塚」なのだそうだ。僕は宮司の一行に伴われて、そのうちの一つを訪れた。

 鬼八退治の後も続いた祟り(早霜)を鎮めるため、と伝わる慰霊祭である。注連縄を掛けなおし、イノシシの肉・新米の供え物をして、祈祷。「山の神様でもあるので」と言う宮司さん(実は「クマ探し」の理解者でもある)の計らいで、写真を撮っていた僕も他の氏子に倣い玉串(榊の枝の供え物)を奉納させていただいた。ちょっとウレシイ。

鬼八塚参り

 本殿に戻った後、今度はたくさんの参列者が加わって、「猪掛祭」のメインである「笹振り神楽(ささふりかぐら)」の奉納だ。御神体に向かって、二束の笹の束を両手に持ち、手を振るだけのシンプルな舞い。笛・太鼓の囃子は一般の神楽とほとんど同じようだが、足の動きはないし、笹の振り方も単調。この「笹振り」がより複雑な神楽舞の起源であろうとの説も、なるほど頷ける。宮司さんの後、続いて夜神楽の舞い手たちや氏子たち数人が舞いを奉納した。

「笹振り神楽」を舞う宮司(高千穂神社本殿にて)

 舞い手の前の祭壇には大きなイノシシが供えられていた。丸々1頭、仕留められたままの姿である。鬼八鎮魂のために処女を生贄にした名残ともいうが、狩猟の成果への感謝の意味が込められているのだろう。祭式の後、他の参列者と共に社務所に通され、新米のご飯とイノシシ汁を頂いた。秋の収穫と山の恵みに感謝し、天災を畏れた古の人々の自然に対して謙虚な生き方が垣間見れた気がする。宮司さんは、他の参列者に僕を紹介しながら「山の神を祭る猪掛祭に参られたのだから、きっとクマも見つかるでしょう」と言って下さった。

この年は大物のイノシシが供えられた

(後略)


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