サファリの必需品/双眼鏡・サファリ写真入門・サファリのための分類学・サファリのための雑学辞典
さぁ、楽しみにしていたサファリ旅行です。まずあなたが用意するものは?「一眼レフカメラに望遠レンズ!」ちょっと待った!写真もいいですが、あなたは「これ」を持っていますか?あなたがサファリに出かける前に手にいれるべきものは、高級カメラでもなければ望遠レンズでもありません。それは 双眼鏡 です。
実際、肉眼で見る動物たちの姿と、双眼鏡を通して見るそれとでは、まるで迫力が違います。すでにサファリに行かれた方や、バードウォッチングの経験のある方なら、その重要性はに十分に認識していらっしゃるでしょう。そう、サファリに向かうあなたの荷造りリストの中には「双眼鏡」が含まれていなくてはなりません!
サファリに使う双眼鏡はどんなものであれ、ないよりはマシです。しかし、「せっかくだから一つ新調したい」という方もいらっしゃるでしょう。サファリ用の双眼鏡選びのポイントまとめてみます。
まず一言で表現するなら、「バードウォッチング用」を選んで下さい。バードウォッチングに適した双眼鏡は、そのままサファリに適した双眼鏡と言って過言ではありません。バードウォッチング用として定評のある製品なら、まず大きな失敗はないでしょう。
<スペックの読み方> ではつぎに細かい話をしましょう。双眼鏡の性能は次のように表示されます。
例)8×23/6.3° これは「倍率:8倍、対物レンズ有効直径:23mm、実視界:6.3°」という意味です。
<倍率>が8倍ということは、80m先のものが10m先にあるかのように見える、ということです。サファリ/バードウォッチング用双眼鏡のオススメ倍率はズバリ7〜8倍です。これ以下だと少々物足りず、10倍以上だと余程慣れていないと手ブレで見づらくなります。
<対物レンズ有効直径>は大きいほど視界が明るくなりますが、反面、双眼鏡が大きく(重たく)なり、なぜか視野も狭くなります(光学的な理屈までは知りませんが…)。現実的には20〜50mmくらいの範囲で選ぶことになるでしょうが、初心者にお勧めなのは30mmくらいまでです(後述の大きさ・重量の関係から)。
実視界はその双眼鏡の視野に入る実際の範囲を角度で表わしたものですが、ここではあまり気にしなくてもいいでしょう。これら3つの数字の組み合わせで、その他の「理論上の」性能のほとんどが決定されます。
<レンズの質>しかし、一番双眼鏡の差が出るのは、何といってもレンズの質。上記のスペックが全く同じでもレンズの善し悪しでまるで見応えが違います。しかし、これは初心者が店頭でちょっと覗いたくらいではよくわかりません。目安としては、
<重さ・大きさ>もう一つ気をつけて欲しいのは、大きさ(重さ)です。笑い話のようですが、せっかく買った立派な(大きな)双眼鏡を「かさばる、重い」といって、家に置いてきた、というのはよくある話です。あなたが旅に出かける時、気軽に持って行ける大きさ(重さ)であることはとても大切なことです。具体的な大きさは人によって異なるでしょうが、初心者にとっては、前述の対物レンズ有効直径が30mmくらいまで、重量にして500g以下が一応の目安でしょう。
メガネを使っている人はもう一つ注意してください。双眼鏡のカタログをみると「アイレリーフ」という項目が掲載されています。これは接眼レンズ(眼で覗き込む側のレンズ)からどのくらい離れたところまで視野全体を見ることができるか、という数値(概ね10〜18mm)で、これが短いと眼をレンズにより近づけないと、視野の周辺部がケラれて十分に見えません。裸眼なら気にしなくてもよいのですが、メガネをはめたまま双眼鏡を覗くならアイレリーフは15mm以上欲しいところです(このような製品には「ハイアイポイント」と表示されていることもあります)。(後述の「メガネ、サングラスをかけたまま使用する場合」も参照してください)
このほかの機能としては防水(防滴)、耐震(ブレ防止)、自動焦点、ズームなどがあります。しかし、いずれも高価なだけでサファリにはほとんど必要ありません。こういった機能のために余計なお金を払うくらいなら、シンプルでいいですからその分質の高い双眼鏡を選びましょう。
実際の購入は、日本なら都市のカメラ/写真用品の量販店に行くと、いろいろな在庫がありますので手に取って選べるでしょう。アフリカ諸国内では双眼鏡を買うのはなかなか難しい(マラウィではほとんど市販されていません)ですが、L.L.Bean、REIなどの国際通販でニコンなどの双眼鏡(主に$100前後の製品)が購入可能です。また日本から行くときなら、経由地の空港の免税店でなら購入できるかもしれません(少なくともロンドン・ヒースロー空港やシンガポール空港では買えるはずです)。
大抵の双眼鏡には接眼レンズの縁に円筒形のゴム(最近ではプラスチックのこともあります)の覆い(目当て/アイピース)が付いています。このアイピースは、余分な光の侵入を防いで像を見やすくするものです。メガネをかけていると、これが邪魔になって十分に(アイレリーフの位置まで)眼を近づけることができません。メガネをかけたまま覗きたいときはアイピースを前に折り返してください。この場合ヒサシのある帽子を併用し、余分な光を遮ってください。(注意!;メガネを外して覗くほうが、像は断然見やすいです)
視度調節
現在の双眼鏡の多くは、中央にあるダイヤルを調節すれば左右同時にピントが合うように作られています。しかし、あなたの左右の視力に差があると像が見づらくなります。このため、一般的には右の接眼レンズ付近に視度矯正ダイヤルがあり、調節できるようになっています。まず、矯正ダイヤルの付いていない側(一般には左側)だけで覗いて、何かにピントをしっかり合わせます。次にもう一方の側(右側)だけで同じものを見て、ピントのズレを矯正ダイヤルで調整します。調整が終わったら、矯正ダイヤルの目盛を覚えておいてください(ダイヤルにロック機能が付いている製品もあります)。次の機会から、いちいち調整する必要がなくなります。
左右の鏡筒の間隔を自分の眼の間隔に会わせます。実際に双眼鏡を覗きながら、左右の視野が重なり完全に円形になるところを探してください。同じ人でもメガネをかけているか、外しているかで間隔が変わります。
サファリの必需品/双眼鏡・サファリ写真入門・サファリのための分類学・サファリのための雑学辞典
監修/マサ米本(写真家)
サファリに出かけるとき、そこで出会うであろう野生動物たちの姿を自分の手で写真に収めたい、と思う人は少なくないようです。かく言う私自身、サファリでは愛用のカメラが手放せないひとり。というわけで、サファリ写真の入門編です。
「オイオイ、いきなり何なんだ」みなさんと思ったかもしれません。しかし、あまり写真の経験のない方に、オススメしたいのはまさにこれです。写真を撮るのは止めましょう!
サファリに限った事ではありませんが、写真に夢中になりすぎると、目の前の光景を「いい写真が撮れるかどうか」という基準で見てしまい、その光景自体を楽しむことを忘れてしまいがちです。そしてさんざんシャッターを切った挙げ句に、「あれ、さっき見た動物は何だったっけ??」なんてことになりかねません。
それに、本格的にサファリ写真を撮ろうと思えば、高価で扱いの難しい機材を用意しなくてはなりません。贅沢なサファリツアーをもう一回楽しんでもおつりが来る額になるはずです。フィルムと現像代だけでも、すばらしい写真集が買えるかもしれません。
そして何より、野生動物の写真はプロカメラマンの世界でも最も難しいジャンルの一つなのだと言うことを知っておいてください。あなたは岩合光昭でも星野道夫でもありません。それでも、写真を撮りたいですか?
(注;岩合氏、星野氏ともに著名な野生動物カメラマン。岩合氏はセレンゲティNPのでの仕事が有名。星野氏はアラスカでの活動が有名だが、1997年ロシアでの取材中に熊に襲われて死去。)
「おう!それでもやっぱり写真が撮りたいぜ!」というあなたのために、「初心者向け」という前提でサファリ写真の基本を伝授いたしましょう。
(以下の説明は普通サイズのフィルムと一眼レフカメラを使用することを前提としています。)
サファリ写真について、一番良く聞かれる質問が「どのくらいの望遠レンズが必要か?」です。この質問に素直に答えるなら「最低で200ミリ、できれば300ミリ以上、理想的には500ミリ」です。おおっとぉ〜!今荷物の中からカメラのカタログを探し出そうとしているあなた!ちょっと待って下さい。大切なのはこれからです。
たとえば私がマラウィ国内やケニア、タンザニア旅行時にサファリで使用した主なレンズは21ミリ・50ミリ・90ミリ・180ミリ・400ミリの5本の単体レンズでした。
ケニアやタンザニアのメジャーな公園の場合、動物が人慣れしているため驚くほど近くにまで寄れることが多々あります。400ミリと180ミリをスタンバイしていたら、サファリカーがライオンの群に横付けとなり、慌てて50ミリと90ミリに付け替えた、なんてこともありました。結果的にこの旅行中、400ミリと180ミリのレンズを使用したのは撮影のそれぞれ1/4くらいづつ、残り半分は21ミリ〜90ミリのレンズを使用しました。
サファリで写真を撮る時、超望遠レンズ(200ミリ以上)があるに越したことはありません。これは事実です。しかし「サファリ写真=超望遠レンズ」ではありません。一眼レフカメラの初心者の多くが最初に手にするであろう標準ズームだけでも「サファリ写真入門」は十分可能なのです。まずはお手持ちのレンズを使いこなすことから初めてはいかがでしょうか。
最近の一眼レフカメラはシャッターを押すだけのフルオートの時代です。シャッターチャンスがモノを言う動物写真ではフルオートカメラの速写性能は強い味方。しかし、どんなオートシステムにも必ず弱点や欠点があるもの。とりあえず、説明書をしっかり読んで自分のカメラの 機能の特徴と欠点をきちんと把握しておきましょう。AFロック、AEロック、MFでのピント合わせ…と、このくらいはマスターしておきましょうね(え?意味がわかんない?そういう時のために説明書があります!)。
そして…「これはうまく撮れないな。」と思ったら、潔くあきらめて双眼鏡に持ち代えましょう。
もちろん、最新のフルオートカメラでなくったって、サファリ写真は楽しめます。私なんぞ、未だに機械式のマニュアルカメラ(ピント、シャッタースピード、絞りのすべてを自分で設定しなくてはならない)を使ってます。苦労も多い代わりに、気に入った写真が撮れた時のヨロコビは格別。要は相性ですね。
皆さんが買う「普通のフィルム」はカラーネガフィルムと呼ばれるカラープリント用ものです。サファリ写真の入門にはこれが最適。多少露出をミスってもプリントの段階で補正できるのが特徴です。カラーポジフィルム(スライド用)は露出を失敗すると修正が効きませんので、入門用にはお勧めしません。それに国によってはフィルムの入手も現像もできません(少なくとも私がいた頃のマラウィでは、ポジは購入も処理もできませんでした)。
さて「普通のフィルム」でよいとして、もう一つの問題は感度です(ASAまたはISOと表示されています)。「普通の感度」と言えばASA/ISO100ですが、私がオススメしたいのは4倍の感度を持つ高感度フィルムASA/ISO400です。
写真を撮るときに一番気を付けなくてはならない(=よくやる)ミスの一つにブレがあります。そしてサファリ写真の現場ではブレが起きやすい条件がほとんどすべて揃っています(望遠レンズを多用する、三脚が使えないことが多い、足場が不安定、おまけに被写体も勝手に動く)。このブレの失敗を減らす一番手っ取り早い方法が、高感度フィルムを使うことなんです。
「高感度フィルム」と言っても使い方も現像もまったく同じ。現在の高感度フィルムは画質も大変向上していますし、夜間のスナップ写真で多い「光量不足」の防止にもなります。サファリに限らずASA/ISO400を常用するのをオススメします。ただ当時のマラウィでは、ASA/ISO400は在庫が少なくASA/ISO100の3倍ぐらいの値段を取られました。そう言う状況の国もあるので、日本で用意してくるか、経由地などの空港の免税店で探しましょう。
前述のとおり、サファリ写真の現場ではブレが起きやすいものです。高感度フィルムを使用することである程度防げるとしても、それだけでは完璧ではありません。200ミリ以上の超望遠レンズを使っているときは特に要注意です。ブレを防ぐためにあらゆる努力を払って下さい。
一般的にはカメラをしっかり固定するには三脚を使うのが一番なのですが、車内からの撮影が多いサファリではあまり役にたちません。代わりに有効なのが一脚とビーンズバッグです。
一脚は伸縮自在の棒の上にカメラを固定する道具で、使い方次第では三脚並にブレを防ぐ効果があります。携帯性を考え出来るだけ縮長が短いものがオススメです。ビーンズバッグは本来はその名の通り「豆袋」で、手頃な布袋に適量の豆(タオルなどでも代用可能)を入れて作ります。これを車の天窓の縁などに置いてカメラの「枕」にするわけです。特にサファリカーの天窓からの撮影では非常に有効なので、身近なもので工夫してみるといいでしょう。

ボート上から一脚を使って撮影する筆者
さぁ、ピントも合った。露出も決まった。ブレも押さえた。…これでいい写真が撮れるでしょうか?いえ、まだです。大切な構図が残っています。と言っても、この問題だけで本が1冊書けてしまうほど深遠な部分です。とりあえず基本中の基本です(以下の注意点は動物だけでなく、人物写真にも言えます)。
動物が向いている方の空間を広くあける
動物(の顔または身体)が向かって右を向いていれば画面右側の空間を、左を向いていれば左側を広く開けるだけで、構図に落ちつきがでます。特にAFカメラで測距点が画面中央にしかないものを使っている場合、被写体を中央においたままシャッターを切ってしまいがちですので気を付けでください(AFロックを使いましょう)。ちなみに、ピントは目に合わせるのが基本です。
背景を撮りこむ
動物のアップばかりを求めず、できるだけ背景(=その動物の生息環境)を撮り込むようにすると、ぐっと雰囲気がでます。特に超望遠レンズを初めて使う方は動物をアップで撮ろうとしがちですので注意してください。逆に標準ズームレンズしか持っていない人は、背景の取り入れ方で差をつけましょう。

さて、ここまで写真の機材や技術的なことを長々と書いてきましたが、じつはもっと大切なことがあります。サファリでせっかく撮ってきた写真もできあがって来たもの見てみるとお尻ばっかり写ってる、なんてことが良くあります。何がいけなかったのでしょうか?
動物は、こちらの思い通りには動いてくれません。ですから動物たちが通りすがりの者に見せてくれる表情なんて限られています。いいシーンを撮ろうと思えば、待つしかありません。せめてあと5分その場にとどまって見てはどうでしょう。もし可能なら、気に入ったポイントで数時間過ごしてみるのもいいかも知れません。そして今その動物が何をしようとしているのか、など、動きや仕草、表情などしっかり観察する努力をしてください。
これらは写真撮影の技術というより、野生動物の観察や調査と共通した部分です。本格的な野生動物の観察や写真撮影では、こちらが移動するのではなく、動物たちが出て来そうなポイントで小屋やテントの中に隠れて張り込むことが多々あります。車で走り回って動物を見て回ったり、写真を撮ったりするサファリのスタイルの方が、実は邪道なのだ、ということを付け加えておきましょう。
サファリの必需品/双眼鏡・サファリ写真入門・サファリのための分類学・サファリのための雑学辞典
動物や自然に対する知識がない方々でも、動物たちの迫力ある野生の姿を見るだけで素直に楽しめるところがサファリの魅力のひとつ。しかし、せっかく高いお金を払ってのサファリです。これを機に、動物や自然についてより多くのことを知ることができれば言うことなしですね。そこでサファリの際に知っておくとよい(かもしれない)基礎知識、動物の分類について大ざっぱに解説してみましょう。
(注意;生物の分類には学説がいろいろあって、本によっては違う説明がなされていたり、違う学名が採用されていたりします。ここでは複数の書籍を参照し、もっとも一般的と思われる考え方に従いました。またこの解説では、ごく一般の方々が基本的な概念を理解しやすいように表現を選びました。したがって学術的定義などに厳密に当てはめれば、不正確な部分があるかもしれません)
サファリで角のある草食獣を見つけては「あっ、シカだ!」と言う人が多いのですが、実はこれ、まったくの誤解です。彼らは英語でアンテロープ Antelope、 和名では「羚羊(レイヨウ)」と呼ばれる動物たちです。ま、簡単に言えば「カモシカ」ですね。日本の天然記念物、ニホンカモシカJapanese Serow もこれに近い種類です。これらはみんなウシ科 Family Bovidae で、ニホンジカなどのシカ類Deerはシカ科 Family Cervidae。ですからカモシカはシカよりウシに近い動物です。人為導入を別にすれば、東南部アフリカにはシカ科の野生動物はいません。
ウシ科の動物とシカ科の動物の違いが一番分かりやすいのは角の構造です。ロッジなどに展示してある頭骨を注意して見てみてください。

左)リウォンデ国立公園のセーブルアンテロープ 右)長崎県野崎島のキュウシュウジカ
え?「牛」と言っても納得行かない?確かにインパラとかスマートな奴が多いですからね。だったら「でっかいヤギ」と思って頂いても結構ですよ。
こんな誤解を防ぐためには、動物の分類について少し知っておくとよいでしょう。
できればアフリカの動物を解説した図鑑が1冊あるといいですね。良くできた図鑑なら、各々の種類ごとに「目(モク) Order」、「科(カ) Family」、そして「種(シュ) Species」といった各分類階級が学名 Scientific Name で紹介されているはずです。
生物の分類階級は上から「界・門・綱・目・科・属・種」が基本。例えば、われら人間(ヒト)は「動物界・脊椎動物門・哺乳綱・霊長目・ヒト科・ヒト属・ヒト」と分類されています。(下表では学名ではなく日本語表記です)
| 人間 | ライオン | アフリカゾウ | ダチョウ | バオバブ | |
| 界 | 動物界 | 動物界 | 動物界 | 動物界 | 植物界 |
| 門 | 脊椎動物門 | 脊椎動物門 | 脊椎動物門 | 脊椎動物門 | 緑色植物門 |
| 綱 | 哺乳綱 | 哺乳綱 | 哺乳綱 | 鳥綱 | 被子植物綱 |
| 目 | 霊長目 | 肉食目 | 長鼻目 | ダチョウ目 | アオイ目 |
| 科 | ヒト科 | ネコ科 | ゾウ科 | ダチョウ科 | キワタ科 |
| 属 | ヒト属 | ヒョウ属 | アフリカゾウ属 | ダチョウ属 | バオバブ属 |
| 種 | ヒト | ライオン | アフリカゾウ | ダチョウ | バオバブ |
参考;生物学辞典・第三版(岩波書店、1983)
なお、動物の種の学名は2〜3個の単語から成っています。最初(必ず大文字で始まっている)が「科」と「種」の間に設定されている階級である「属(ゾク) Genus」の名前、2番目(小文字で始まっている)がその「種」だけを指す名前です。3つ目がある場合は、「亜種(アシュ)Sub Species」を指しています(「品種 Race」という言い方もします)。
例:アミメキリンの学名 Giraffe cameleopardalis reticurata
属名 種名 亜種名
これらの分類階級のどこまで同じかを見れば、ある程度類縁関係がわかります。具体的に誤解しやすい例を挙げてみましょう!
例:サファリの人気者、アミメキリンとマサイキリンは、どちらも同じ「種」(キリン)の中の異なった「亜種」です。「亜種」は同じ種(=全く同じ種類の生物)でも地域ごとに身体の模様などではっきりとした違いが認められるような場合に用いられる分け方で、見かけが多少違っていてもお互いに問題なく交配しあえると考えて良いでしょう。実際に両者の分布が接する地域では中間的な特徴を持ったものが見られます。キリンは、学説にもよりますが、アフリカ全土で5〜8の亜種に分類されています。
| 属 | 種 | 亜種 | |
| アミメキリン | Giraffe | cameleopardalis | reticurata |
| マサイキリン | Giraffe | cameleopardalis | tippelskirchi |

マサイキリンとアミメキリン
例:ライオンと ヒョウは、どちらも同じ属(ヒョウ属)ですので非常に近い種類です。実際、人工飼育下で両者の雑種が生まれた記録があります(ただし、生殖機能は正常ではない)。またサファリで若いライオンを見る機会があったら、その体表を注意して見てください。うっすらではありますがヒョウによく似た紋様が観察できます。
例:ヒョウ、チータとサーバルは、いずれも同じネコ科ですし、どれも体表に紋様があるのでごく近い仲間と思われがちですが、すべて違う属ですので「比較的近い」といった程度です。よく見れば紋様もそれぞれ違うことがわかるでしょう。ヒョウは前述のとおりむしろライオンに近く、チータは他のネコ類と異なりツメが引っ込まないなどの特徴があるため独立のチータ属です。サーバルを含め小型ネコ類はイエネコと同じネコ属です(注;最近、サーバルはネコ属から独立させる考え方が有力になりつつあるようです)。
| 科 | 属 | 種 | |
| ライオン | Feridae | Panthera | leo |
| ヒョウ | Feridae | Panthera | pardus |
| チータ | Feridae | Acinonyx | jubatu |
| サーバル | Feridae | Feris | serval |
例1:最初に示したカモシカ類(ウシ科)とシカ類(シカ科)の例がこれにあたります。キリン(キリン科)も同様で、いずれも 同じ偶蹄目なのですが、科のレベルで異るので、たとえ似たところがあったとしてもやはり別の仲間と考えたほうがいいでしょう。角の構造や発育の仕方などに違いがあります。
| 目 | 科 | |
| カモシカ類 | Artiodactyla | Bovidae |
| シカ類 | Artiodactyla | Cervidae |
| キリン | Artiodactyla | Giraffidae |
例2:ハイエナ類をイヌ類の仲間だと思っている方が多いようですが、これも誤り。同じ食肉目には違いないのですが、イヌやオオカミ、キツネ類、ジャッカル類Jackals、リカオンWild Dogなどはイヌ科、ハイエナ類はハイエナ科 で、それぞれ別の仲間です。ハイエナ科はむしろマングースなど ジャコウネコ科に近いと言われています。ハイエナにはイヌにはない「たてがみ」がありますので、注意して見てみてください(和名は「タテガミイヌ」)。
例3:夜行性動物のジェネット類やシベット(ジャコウネコ)は「ジェネットキャット」「シベットキャット」と呼ぶことがあるためネコの仲間と思われがちですが、いずれも前述のジャコウネコ科です。リウォンデNPのレンジャーの中にも、このことを知らなかった奴がいるので注意しましょう!
| 目 | 科 | |
| イヌ類 | Canivora | Canidae |
| ハイエナ類 | Canivora | Hyaeniadae |
| ジェネット類 | Canivora | Viverridae |
例:ウマ類とシカ類は草を食べる習性や体つきなどは似ていますが、身体の構造がいろいろな点で異なっています。ロバやシマウマ類も含めたウマ科は奇蹄目、シカ科やウシ科、キリン科は偶蹄目と呼ばれますが、これは蹄=指の数の違い(奇数か偶数か)が重要であると考えられているためです。ウマとシカを間違えたら馬鹿にされますよ!
| 目 | 科 | |
| ウマ類 | Perissodactyla | Equidae |
| カモシカ類 | Artiodactyla | Bovidae |
| シカ類 | Artiodactyla | Cervidae |
| キリン | Artiodactyla | Giraffidae |
よく「肉食」、「草食」という言い方をしますが、意味はちゃんと分かっていますか?
逆に言うと、稀に肉食動物が植物を食べたり、草食動物が小動物などを食べたりということもありますので、「絶対に動物、または植物しか口にしない」ということではありません。
さて、肉食動物に対して次の様な分け方をする場合があります。
以前はライオンは前者、ハイエナは後者である、というふうに言われていましたが、ハイエナも狩りをしますし、ライオンだって屍肉をあさりますので、厳密に分かれる訳ではありません。
中大型の草食動物では、次の2タイプの「食べ方」があります。
両方の食べ方をする種類も少なくありませんが、各々の食べ方を中心に行うものを次のように呼んでいます。
「草の葉食い」と「木の葉食い」がはっきり分化している好例がサイ類です。草の葉食いのシロサイはバリカンを連想させるような幅広の口を、木の葉食いのクロサイは曲がったペンチのような先細の口を持っています。余談ですが、シロサイはこの幅の広い口からWide Mouth Rhinocerosと呼ばれ、WideがWhiteになまってWhite Rhinocerosに、クロサイはこのWhiteに対するものというわけでBlack Rhinocerosと呼ばれたのがその名の由来。実際の両者の体色はほとんど同じ灰褐色です。
サファリの必需品/双眼鏡・サファリ写真入門・サファリのための分類学・サファリのための雑学辞典
ガイドの解説やロッジでの雑談など、サファリの最中に飛び交ういろいろな言葉の中には、いわば「サファリ用語」のようなものがあります。もちろんそれらのすべてを理解していなくったってサファリは十分楽しめるのですが、とりあえず「知っていると良いかもしれない」言葉・雑学を集めてみました。サファリの際の雑談のネタにでもドーゾ!
まずは「サファリSafari」という言葉自体について考えてみましょう。その語源はスワヒリ語の「旅、旅行」を意味する語なんだそうです。しかし時代の流れの中で、アラブ商人たちのアフリカ交易旅行(奴隷売買などを含む)やヨーロッパ人のアフリカ探検旅行、レジャーとしてのハンティング旅行、そして今日の動物観察(見物)旅行といろいろな意味に使われてきたとか。このひとつの言葉の中にアフリカの歴史が秘められている訳です。
さて、もう一つ象徴的な言葉に「ゲームGame」があります。「Game Reserve」、「game viewing」などとアフリカの国立公園関係ではしばしば使われてきた言葉ですが、日本語でいう「ゲーム」の意味ではありません。もともと英語の'game'には「ハンティングの獲物、標的としての野生動物=狩猟鳥獣」の意味があります(辞書で引いてみて!)。上記の「Game Reserve」は、したがって「狩猟鳥獣保護区」の意味です。狩猟から発達したサファリと国立公園の歴史をかいま見ることができます。ただし、最近では'Game'に代わって'Wildlife Reserve'などと'Wildlife(「野生生物」または「野生動物」)'という語が好んで使われるようになりました。アフリカの国立公園の意味あいが代わりつつある現れですね。
さて「ビッグファイブBig Five」という言葉を聞いたことがありませんか?実はこれもハンティングの世界で使われ始めた言葉で、「五大大物five big games」の意味です。ハンティングが難しく、かつ危険な5種類である事を意味し、具体的にはアフリカゾウ、サイ、バッファロー、ライオン、ヒョウの5種を指しています。これらの動物たちを仕留める事がかつてのハンター達にとってのあこがれであり、同時に多くのハンター達の命を奪った5種でもあります。中でも特に危険とされているのがバッファロー(特に単独の’はぐれ’個体)、次は恐らくゾウ(特に仔連れ)でしょう。5種中3種が草食動物であることに注目してください。
「サバンナSavanna」という語は「東アフリカの乾燥した草原地帯」という意味でしばしば使われます。英語でも同様の使い方をするので、間違いではないのですが、実はこれ、俗語的用法なのです。では「サバンナ」が本来意味するところは?これを理解して頂くには、少しばかり「植生」というものを説明しなくてはなりません。
「植生Vegetation」は「その地域に、どんな植物が、どんな状態で生育し、どんな自然環境を形成しているか」を意味する語で、簡単に言うと「森か、草原か」とか、同じ森だとしても「主な木の種類の違い」とかを言っています。この植生の違いは、その土地の気候と密接な関係があります。
世界の気候をその地域の気温の違いによって「温帯」、「熱帯」などと分けることは、皆さんもご存じですね?このうちアフリカ大陸のほとんどの地域は気温の高い「熱帯」に属するわ けですが、降水量の多少とそれに伴う植生の違いから、これをさらに次の3つに大別することができます。
このうち「サバンナ」は降水量の多少によってさらに2つに大別できます。
ですから「サバンナ」という語は、厳密には「草原」だけを意味しているのではありません。一般に「サバンナ」と呼ばれているのは、「サバンナ草原」のことです。
私が住んでいたマラウィの場合、空から見ると多くの土地が草原のように見えます。しかし、気候条件からするとマラウィの国土のほとんどは本来はサバンナ林地帯で、一見草原に見えるのは森が開かれた後の畑。サバンナ草原ではありません。マラウィにはいわゆる「サバンナ」はない、と考えたほうが良いでしょう。
余談ですが、アフリカの自然植生について語るとき、単に'Forest'というと「熱帯雨林Tropical Rain Forest」を指す事が多いです。マラウィあたりの自然の森のことを言う時には'Forest'ではなく'Woodland'と表現した方がいいですね。
サファリでの動物観察のポイントのひとつに、性別があります。どれがオスで、どれがメスなのかに注目してみましょう。ライオンのように誰でも容易にオス・メスを区別できる例もあれば、ハイエナのように専門家ですら間違えるものもいます。また身体の特徴より、保育習性や社会行動から推察したほうが早い場合もあります(例えば、アフリカゾウでは子育てはメスが群で行うので、子連れの群の成獣は基本的にメス、成獣だけの群や単独行動しているものはすべてオスと考えられます)。
さて、具体的な識別方法は図鑑を見て頂くとして、ここでも、ちょっと言葉の問題を…
ゾウを見ているときなどにサファリのガイドたちが'Bull'とか'Cow'とかいう単語を口にします。畜産関係の方ならずとも「え、牛?」と思うかもしれません。「雄牛Bull」、「雌牛Cow」に限らず、家畜動物Domestic Animalsの場合、オス(の成獣)、メス(の成獣)、未成熟の仔をそれぞれを別々の単語で表現する習慣が英語にはあります。厄介なことに、これらの表現が類似の野生動物にも良く転用されます。図鑑などでも何の断りも無く用いられているので注意してください。私が確認した例を下記にあげておきます。なお、オス(の成獣)、メス(の成獣)、未成熟の仔を指すもっとも一般的な単語は'Male'、'Female'、'Young'で、すべての動物に使うことができます(これに統一してくれると、ほんと助かるんですけどね…)。
| 家畜 | 転用例 | オス成獣 | メス成獣 | 未成熟の仔 |
| (一般) | Male | Female | Young | |
| ウシ | ゾウ・カバ・サイ・大型アンテロープなどの大型草食獣 | Bull | Cow | Calf |
| ヒツジ | インパラなどの中小型カモシカ | Ram | Ewe | Lamb |
| ブタ | イボイノシシなどイノシシ類 | Boar | Sow | Piglet |
| イヌ | ジャッカル、リカオンなどイヌ科動物 | Dog | Bitch | Pup/Puppy |
| ネコ | サーバル、ワイルドキャットなど小型ネコ類 | (Tom)cat | She(cat) | Kitten |
大型ネコ類、ハイエナのような猛獣類では、未成熟のものを'Cub'と呼ぶだけで、成獣のオス/メスの呼び分けは基本的にありません(該当する家畜動物がいないからでしょうね)。唯一の例外はライオンで、オスはそのまま'Lion'ですが、メスは'Lioness'といいます(そういえば「ライオネス飛鳥」ってリングネームの女子プロレスラーがいましたねぇ…)。メスのライオンを見つけた時は'Female Lion!'ではなく'Lioness!'といいましょう。ガイドや同行者から一目置かれるに違いありません。
動物の社会性や行動などについても、基本的な単語を押さえて置きましょう。
まずは、動物たちが集団で行動する状態、すなわち「群」について。英語では動物(特に草食獣)の「群れ」は一般には'Herd'という単語が用いられますが、この語は、どうやら「牧場のウシやヒツジの群れ」のイメージのようです。肉食獣では下記のように表現します。
'Couple/Pair'は人間と一緒で、オス、メス各一頭で一組の状態、つまり「つがい」です。Bachelorはまだメスを獲得できない若いオスを指し、インパラなどではこのBachelorたちからなる若オスの群がしばしば観察できます。'Solitary'は単独で過ごしている事、または群を作らずに基本的に単独生活する習性を指しています。

俗に「ハーレム」と呼ばれる、一頭のオスが多数のメスを連れいている群れ(インパラ)
「縄張りTerritory」は他の同種の個体(または同種かつ同性の個体)が侵入してくるとそれを排除しようとする範囲のことです。Territorial(形)は縄張りを主張する習性があることを意味しています。「行動圏Home Range」は縄張りの有無に関わらず、単純に日常的に動きまわる範囲のことで、縄張りを持っている動物(個体)なら、行動圏はその縄張の外側にまで広がっています。縄張りや行動圏は季節などによってかなり変化します。
'Distribution'は各個体ではなく、その種類全体での分布の広がりを意味します。'Habitat'は空間的な広がりというより、その生息環境の種類を指しています。
季節的にほぼ決まったルートを大移動することを「渡りMigration」と呼び、鳥では一般にも良く知られていますね。この「渡り」、実は哺乳類にも見られ、マサイマラ国立公園とセレンゲティ国立公園で見られる有名なヌーの大移動がまさにこれ。ちなみに、このように「渡り」をする種類を'Migrator'(鳥なら「渡り鳥」)、「渡り」をせず年間を通じてほぼ同じ地域に留まるものを'Resident'(鳥では「留鳥」)といいます。
サファリの必需品/双眼鏡・サファリ写真入門・サファリのための分類学・サファリのための雑学辞典
(外国語文献は省略します)
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この著作はマラウィ協力隊機関誌「Zikomo」121号(1997年7月発行)〜126号(1999年2月発行)に掲載された同題の作品をもとに加筆修正を加えたものです。著作権および文責は著者である栗原智昭に帰属します。このページに掲載されている文章、画像の無断転用・複製を禁じます。Copyright © 1999-2002 Tomoaki Kurihara. All rights reserved. (Revised on 13, Oct., 2002)