「クマ探しの写真家」である僕だが、福岡の専門学校で講師の仕事をしている、という話は、ずいぶん前にここに書かせてもらったことがある。その後もこの仕事は続けていて、3年目を迎えたところだ。
表向きは「本業は写真家」と言い張っているが、この講師業が貧乏写真家の撮影活動と日々の生活を支えてくれているので、これが事実上の本業となっている。
写真家が専門学校で教えている、となれば写真学校で撮影の指導をしている、と思われる方が多いが、実はそうではない。
僕が専門学校で教えていることは…大きく言えば、「自然や野生生物に関すること」。3科目を担当しているが、その柱は「環境教育」についての指導だ。
「環境教育」と言うのは、人間社会が抱えるいろいろな環境問題についての関心を高め、その解決・改善に向けて行動できる人をひとりでも増やし、より良い未来につなげてゆくための教育…そんなところだろうか。
具体的には身近なゴミ問題やリサイクル、省エネ、各種公害問題、さちに野生生物保護や自然環境保全、大きいところでは温暖化などの地球レベルの環境問題まで、あらゆる環境問題が扱われるため、環境教育のテーマは実に幅広い。
小さな子供達に自然の中で遊ぶ楽しさを体験させることから、大人たちに身近なところに潜む環境問題を認識してもらい、解決に向けた具体的な行動を促すところまで、対象者の年齢や意識レベルに応じ、多様な活動プログラムの進め方がある。
最近は「生活科」や「総合的学習」などの一環として学校教育でも取り入れられる機会が多くなってきた。しかし本来、環境教育活動は老若を問わず幅広い年齢層が対象になりうる。このため、一般には、学校外の社会教育の一環として行われる例が多い。
僕がそんな「環境教育」の世界に関わるようになったきっかけは、学生時代、自然観察の指導をする市民グループの人たちに出会ったことだった。当然、ボランティアとしての活動だったが、「お手伝い」から始り、いつしか自然観察会を自ら主催するようになった。
実はこの頃の体験が、その後の僕に大きな影響を与えている。アフリカの国立公園で仕事をしていたころもそうだし、現在の「クマ探し」や夜神楽取材といった撮影活動もそう。
それぞれの背景にある自然環境と人間社会とのかかわりに目を向け、僕なりのメッセージを色々な形(話、文章、写真…)で人々に伝えていく。今では観察会などの主催行事という形をとることはなくなったが、「環境教育」というバックボーンが僕の中にある。
日本の環境教育はまだ「業界」として未成熟で、「環境教育指導者」も職業としては十分確立していない。僕自身、プロの指導者として仕事をする機会には、ついに恵まれないままだ。
しかし、時代は確実に動いている。二十年前と比べれば「環境」への関心は広まり、「環境教育」の必要性もいろいろなところでうたわれるようになった。まだ少数ながら、環境教育活動を事業化してい例も増えてきている。
象徴的だったのは、昨年成立した「環境の保全のための意欲増進及び環境教育の推進に関する法律」(通称「環境教育推進法」)。本格運用はまだこれからの法律で、効果は未知数だが、国が「みんなで環境教育に本気で取り組みましょう!」と宣言したようなものだ。
専門学校で僕が指導しいる学生達の中から、いつか日本の環境教育界をリードするような人材が育って欲しい。そんな思いを胸に、毎週教壇に立っている。
おっと、僕だってまだ引退組ではない。一年ほど前から増えた2つの肩書き。環境省公認の「環境カウンセラー」、そして宮崎県からただ1人の「九州環境教育ミーティング実行委員」。今年度もまた、忙しくなりそうだ。
(夕刊デイリー新聞2004年5月15日「エッセーひろば」掲載)
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