日本におけるLRT導入計画・構想



LRT(Light Rail Transit)は、軌道系にしては建設費が安く、技術的にも運行面でも汎用性の高い中量交通として注目を集めている。欧米で先行して普及したが、全国各地で、LRT新設や既存路面電車の改修、延伸などが検討されている。そもそも軌道系交通機関建設の合意形成には長い年月がかかることに加え、日本ではLRTの建設や運営を支える枠組みが整備されていなかったので、検討が具体化した例は多くない。もちろん、日本が公共交通整備や利用に不熱心な国かといえば、そんな事はない。東京、大阪など大都市圏は世界的に見ても公共交通がよく整備されているし、利用率も高い(新宿は世界一の乗降客数)。一方で、地方都市では欧米並みにクルマ社会化が進み、多くの既存公共交通は危機的状況に陥っている。まさに1970-80年代に欧米が経験してきた道であり、適切な枠組みと適切な配置がなされれば、日本でもLRTは都市交通の救世主となるはずである。 地方公共交通の衰退が深刻化する中、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」(2007年)が制定され、LRT整備に自治体が積極的に関与できるようになった(地域公共交通総合連携計画の策定と上下分離)。しかし、旧来の路面電車のイメージからの脱却や公共交通重視への理解はなかなか進まず、財政事情が苦しいこともあって具体的に計画が進んでいる路線はほとんどない(工事中は富山のみ)。以下は2009年10月現在、全国各地で検討されているLRT・路面電車の新設・延伸の構想である。

★:構想初期段階(公的機関・事業主体が検討開始)
★★:具体的な検討(詳細なルート案など)。 
★★★:事業化検討中
★★★★:事業化直前、事業化中


☆(断念):白紙化、他モード選択
☆☆(凍結):検討されるも動き見えず ☆☆(難航):事業化検討されるも難航中

(*)検討状況の目安です。自治体・事業者が検討に関与している事例で、延伸予定距離が0.5km以上のものを取り上げています。


札幌(既存線延長・改良):☆☆☆ 存続は決定したが延伸は未定
起点と終点の400mを結んでループ化する案や札幌駅まで延伸して直結させるなど札幌市電の活用について議論が進んでいる。 反面、施設の老朽化や利用客減少の傾向など市電をめぐる情勢は厳しく、ぎりぎりのところで存続が決断された背景もある。 これまでの流れは以下の通りである(参考:札幌市WEBサイト)。 市電延伸に関しては反対の声も大きく、施設の老朽化が進んでいる事もあって今後の情勢は予断を許さない。 平成21年度に基本計画が策定されるまでは、ハード面に関しては現状維持の体制がとられているが、優先信号の設置実験や架線レストラム2機種の運行試験(2007年12月〜2008年3月)が行われるなど興味深い動きも見えている。

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小樽(廃線転用):★ 線路を残した緑道を暫定整備
小樽市内を東西に貫く「手宮線」は北海道初の鉄道であった。末期は貨物営業のみ行われていたが1985年に廃止され、終点の手宮駅は博物館の施設としてSLなどが保存、活用されている。市内の線路は長らくそのままに残されていたが、軌道系交通導入の可能性を残したまま、一部区間が緑道として暫定整備されている。2007年には残りの区間も市が購入したため、廃線跡の活用について旧国鉄手宮線活用懇話会にて検討されている(参考:小樽市WEBサイト)。 軌道系として復活した場合、観光用のトラムを意識したものになるだろう。費用や法規制の面からは緑道(オープンスペース)としての活用に落ち着く可能性も高いが、レールを残した整備という点が目を引いた。


前橋(路線新設):★ あくまで構想段階
前橋を含む北関東地区は全国屈指のクルマ社会である。前橋市中心部には、桐生市と結ぶ上毛電鉄が乗り入れているが、JR前橋駅からは少し離れたところにあるため乗り換えは不便である。両者の結節や市内交通として軌道系交通機関導入の構想(群馬市WEB 「第五次総合計画」など)はあるが、上毛電鉄を含めて公共交通を維持するにも苦労している状態であり、構想は具体化はしていない。2008年現在、前橋市が設置した「鉄道網活性化研究会」にて、LRTによる上毛電鉄とJRの結節などのアイデアが議論されているようである(東京新聞 08/11/30)。


宇都宮(路線新設):☆☆☆ 検討につぐ検討。反対の声も根強い。
宇都宮周辺は全国屈指のクルマ社会である。中心市街地の商業施設は撤退が相次ぐ一方、周辺には大規模な工業団地や大規模商業施設が隣接している。通勤需要のほとんどがマイカーに依存するため朝夕を中心に激しい渋滞に悩まされている。そこで工業団地と市街地を結ぶ新交通(LRT)が検討されていて、長年にわたって、検討につぐ検討が行われている(宇都宮市WEBサイト)。 市のWEBサイトによれば、検討されているのは宇都宮市東側郊外の工業団地(テクノポリスセンター、清原工業団地)からJR宇都宮駅を経由して、駅の西側の中心市街地へ直通する15kmの路線である。20m級の連節型超低床LRV(定員80名・最大輸送力120名)でラッシュ時4分おき、日中6分おきの運行を計画している。道路中央(ないしは道路脇)の併用軌道を基本としつつも、JR交差部では高架、鬼怒川架橋部周辺は専用軌道を想定している模様である。予想される建設費は355億円(トランジットセンターも含めると総額380億円)、完成後は45000人/日の利用を見込んでいる。
現在、工業団地までの通勤手段は主にマイカーであるが朝夕激しい渋滞を引き起こしている。公共交通への転換を促すことで渋滞緩和を図るのが導入の狙いである。また中心市街地を東西に貫く基幹交通を整備することで市街地の活性化も狙っている。 市および県を中心に検討を重ねているが、検討の深化につれて反対の声も強まり、特に駅西側で競合することになるバス事業者からは強い反発を受けている。反対の理由としては、1)既存バス路線との競合、2)建設費と需要見積もりに対する批判、3)車線減少に対する反発、などが挙げられている。2008年秋に行われた市長選ではLRTも争点の1つになったが、LRTに前向きな現職が再選した。とはいえ、LRTに慎重な声も根強く、現職に投票した市民の全てがLRT賛成という訳ではない(東京新聞2008/11/18)。平成21年度には事業計画案をまとめ市民の判断を問う方針とのことだが、事業の費用対効果を精査した上でバスを含めた市全体の公共交通を支える枠組み作りとそれに対する市民の理解が必要なのではないかと思われる。なお、JR宇都宮駅東口の再開発計画では、LRTの用地が確保され、完成予定図にもLRTの姿が書き込まれていたが、事業会社が撤退のためこちらも先行き不透明である(駅前広場整備は進行)。

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さいたま・東西交通大宮ルート(路線新設):☆☆ 答申に盛り込まれるも動き見えず
さいたま市の大宮駅は、東北、上越新幹線を含むJRの各線が集まる鉄道の要衝である。都市交通としては北側の伊奈町に伸びる「ニューシャトル」(案内軌条式鉄道)が整備されている。LRTなどが検討されているのは、大宮駅から埼玉スタジアム(埼玉高速鉄道・浦和美園駅周辺)にいたる東西のルートである。中量交通の路線として、運輸政策審議会の答申(平成12年)に「今後整備について検討すべき路線(B)」として盛り込まれたが、現時点では特に動きは見られない。

千葉・幕張(路線新設):☆ 当面は連節バスの充実(BRT化)に重点
幕張メッセのある海浜幕張(JR京葉線)と幕張本郷駅(JR総武線、京成千葉線)の連絡(3km程度)にLRTを含む新交通が検討されている。現在は、ピーク時には連節バスも含めて60本近くのバスが運転されている。中量交通の路線として、運輸政策審議会の答申(平成12年)に「今後整備について検討すべき路線(B)」として盛り込まれているものの、目立った動きは少なかった。
千葉市幕張新都心地域公共交通総合連携計画」(平成21年3月4日策定)によると、当面はバスシステムの充実を図る方針が明らかとなった。それによると連節バスをノンステップの新造車に置き換え、信号システムや停留所の改良を計画している模様である。すでに路線バスでは限界に近い輸送が行われているため、さらに将来にはLRTやモノレールなどの新交通が検討される可能性はあるかもしれない。

浦安(路線新設):★ 市長が導入構想
コンパクトにまとまった市街地をもち、公共交通には比較的恵まれているが(JR京葉線と地下鉄東西線)、市長によってLRT導入構想が検討されている。国土交通省WEBサイトに公開された街路交通調査(平成19年度)によると、市内3駅(地下鉄東西線の浦安駅とJR京葉線の新浦安駅、舞浜駅)を結ぶLRT、ゴムタイヤトラム、BRTなどが検討されている。とりわけ鉄道で結ばれていない浦安駅と新浦安駅の結節は重要かもしれない(東京都心からみれば環状方向)。距離が短いので、LRTにこだわる必要があるかは微妙だが、広い道路、コンパクトな市街地、豊かな財政と導入への障壁は意外に少ないかもしれない。

藤沢・相鉄いずみ野線延伸(路線新設):☆☆ 高規格LRTが有利と報告されるが、動き見えず
相模鉄道いずみ野線は湘南台からの延伸が検討されている。慶応大学の湘南キャンパスを経由して戸塚方面への延伸が検討されていたが、運輸政策審議会の答申(平成12年)でも「今後整備について検討すべき路線(B)」として盛り込まれた通り、寒川町(相模線)方向への延伸構想が浮上している。開発中のツインシティと新幹線の新駅設置構想とリンクしたもの考えられる。神奈川県が中心となって「いずみ野線延伸研究会」が設置され延伸に関する調査が行われていたが、鉄道で延伸する場合よりも高規格のLRTで整備する方が有利(償還可能)と報告された(参考:神奈川県WEBサイト)。 検討区間は「湘南台駅〜慶応湘南キャンパス〜ツインシティ(寒川町)」(約8km)である。高速鉄道としての答申であったが、検討の結果、高規格のLRTでないと採算性が悪いとされた。30m連節車(定員160名)のLRVで部分的な立体交差化を行うことで表定速度25km/hを確保するという意欲的な計画である。とりわけ湘南台駅付近は地下構造で計画され、現在のいずみ野線と同一ホームで接続する計画となっている。直通を考えれば、低床車を使うよりはプラットホーム整備によるバリアフリー対応の方がよさそうである。具体的な事業化の動きは始まっていないが「湘南台駅〜慶応湘南キャンパス」はすでに連節バスが導入されていて、需要は十分にありそうである(それこそ既存バス事業者との調整が必要だが)。

東京都三鷹市・調布保谷線(路線新設):★ 東京都への要請
三鷹市の南北軸として、調布保谷線(都市計画道路)へのLRT導入構想がある。緑地帯を広く確保した道路計画のため、順調に道路が整備されれば、導入空間上の障壁は少ないものと思われる。LRT導入を東京都へ要請するなど、構想に関する内容が、第3次三鷹市基本計画(平成17年改定)に盛り込まれているものの、現時点で特に動きは見られない。

東京江東区・南北軸(貨物線転用、新設):☆ 事実上断念
江東区の南北軸として亀戸駅〜新木場への新交通導入が検討された。明治通り上空を利用した高架軌道の整備には多額の費用がかかり困難だったが、ほぼ平行して走るJR小名木川線(貨物線)を活用すればずっと低コストに整備できるとして検討が始まった(参考:江東区WEBサイト)。 亀戸駅を起点に貨物線(小名木川線)を利用して南下し、途中からは軌道を延伸して新木場に至るルート(6.3km、約15分)が想定された。 PFI(民間資金導入の一形態)を利用したLRTの導入構想で、既存の貨物線を活かす事で、低コストに新交通(LRT)が整備できる事が売りだった。しかし、詳細な検討の結果、1)当初100億円程度で整備可能とされていたが条件次第(複線)では200億円以上の整備費用が必要、2)ある程度の需要がないと運営にも公的資金の投入が必要、3)湾岸道路とは平面交差が困難、などの課題が明らかになり、構想は事実上断念された。2008年現在、目立った動きは見られないが、LRT整備の枠組み(上下分離)や架線レストラム(小名木川線は非電化)の開発が進んだ事もあって、障壁はだいぶ減少した。沿線(小名木川貨物駅)や終点(新木場駅)の再開発の進展が見られれば状況は変わると思われる。

東京都豊島区・池袋周辺(路線新設):★ 構想初期段階
池袋駅東口からシンボルロード的なグリーン大通りにLRTを導入する構想である。当初は都電荒川線の電停などへ結節する約1kmの新設案だったが、2008年9月には、サンシャインシティ周辺を回るミニ環状線の構想が発表された。 いずれも当初は都電荒川線とは独立した路線として建設し、超低床車両の導入を想定している。 新設トラム(LRT)としてのインパクトを狙っているのだろうが、都電への直通をしないとなると1km少々の路線である(ループでも2km強)。都心でこの距離はごく普通に徒歩圏であり、巡回バスならともかく路面電車のような立派なものが必要かどうか疑問である。構想(「池袋副都心再生プラン」)でも問題視している通り、都心では車両基地スペースの確保も大変である。高々2-3両の電車のために施設と人員を整備、配置するというのはあまりにもったいない。しかし、仮に都電荒川線への直通が図られるとなると話はまったく別である。王子方面と早稲田方面からの直通運転が可能になるが、ターミナル駅(池袋)からの発着が可能すれば、利用客も増えるだろうし、レトロ電車(都電9000型)の価値もずっと増大するだろう。車両も車両基地(荒川車庫)も変電所も兼用できるのでずっと経済的である。2008年の構想では荒川線との接続さえしておらず、実にもったいない。あえて、超低床LRV導入を前面に夢のある話をしているかもしれないし、メーカーと連携して架線レストラムのデモ走行の場として活用するのであればそれでもいいのかもしれない。もちろん、構想段階であるので、導入時期、導入機種、ルートのいずれも流動的である。

東京都中央区・臨海部(路線新設):☆ オリンピック招致できず白紙化?
中央区都心再生会議では、臨海部(月島、晴海)と都心部(銀座など)を巡回するLRT環状線構想を提案している。これまでのところ具体的な動きは見えていない。オリンピックの招致構想によると、東京都の「「10年後の東京」への実行プログラム2008」(2007年12月)を見る限り、晴海へのアクセス手段はBRT(Bus Rapid Transit)が検討されている模様である。しかし、2016年のオリンピック会場には選ばれることはなく、BRT構想も事実上、白紙化したものと思われる。

豊橋(既存線延長):★ 新市長が延伸構想をマニフェストに
豊橋の路面電車は、1982年に路線延伸(井原〜運動公園前、0.6km)、1998年に小延伸による駅前広場乗り入れ(150m)と積極的に活用されてきた。近年は、架線のセンターポール化、LRVの導入(2005年名鉄から移籍、2008年新造車を導入)など既存路線の改良が着実に進んでいた。大規模な路線延伸の話題はなかったが、2008年秋の市長選では、医療センターなどへの路線延伸をマニフェストに加えた新人候補が当選した。今後、路線延長が検討されることになるかもしれない。

岐阜(廃止線転用):☆ すでに廃止。バスの高度化(BRT)へ。
かつて中心部から郊外へ伸びる路面電車+郊外電車網(直通)があったが、2005年に全廃され、施設の撤去が進んでいる。存続と路線の改良が行われていればLRTへ進化を遂げていた可能性がある。存続に向けた取り組み(岡山電軌の支援表明もあった)もなされたが、結局、全面廃止が選択された。 年表から見ると明らかなように部分廃止の連続から全面廃止に至っている。自治体サイドからも存続検討(LRT化)のアクションはあったが、流れから見るとはじめから全面廃止とバスへの一元化を目指していたようにも見える。環境モデル都市(選外)の申請書からも明らかの通り、BRT化(バスシステムの高度化)の上で、連節バス導入を目指しているようだ。2008年からは幹線バスと支線バスの分離も行われ、少しずつではあるが公共交通整備の動きが見えてきた。

新潟(路線新設&廃線復活も?):★ 構想段階(当面はバス重視) 
基幹交通として新しい交通システムの導入を検討している。平成15年度からは「新たな交通システム検討協議会」(交通事業者など)、「新たな交通システムを考える会」(専門家、市民代表など)の2つの検討会議を開き、検討を進めた結果、新潟駅、中心市街地、県庁などを巡回する環状路線と新潟空港までの路線が構想に挙げられた(新潟市 都市交通政策課)。導入機種はLRTが念頭におかれているが、まずは需要のある区間からバスを充実させていく段階的な整備をうたっているのも特徴である。LRT事業化に向けた動きは顕著ではないが、先の環状路線に相当する経路でバス路線の高度化が図られている(「にいがた基幹バス・りゅーとリンク」)。

金沢(路線新設&鉄道線転用):☆ バスの整備へ
かつては市内に北陸鉄道の路面電車網があったが、昭和42年(1967年)に全線廃止となった。狭い街路が多く、軌道系の市内交通が整備されていないため、長らく新交通システム等の導入が議論されてきた。現在は、バスネットワークの改良を重点的に行う方向であるが、様々な社会実験が続けられている。 改装されたJR金沢駅の地下には新交通システムの導入空間も確保されているらしく、一時はLRT導入を前提とした社会実験(車線封鎖)も行われた。費用の問題などからバスの改良を優先させることになったが、バス路線の再編や連節バスのデモ走行など様々な取り組みが継続している。

富山(路線延長、鉄道線転用):★★★★ 一部開業済、市内線環状化を工事中。その他にも構想あり。
クルマ社会化の進行と共に、市内の路面電車+郊外電車網はかなり縮小された。しかし、現在では公共交通を維持、活用、発展させる方向に大きく舵を切っており、日本初となる富山ライトレールの開業(2006年4月)、市内線の環状化延伸工事(2009年開業予定)など様々な施策が行われている(参考:富山市WEBサイト路面電車推進室)。

<富山港線をめぐる動き> ライトレール化がスムーズに進んだ背景には、富山駅高架化をめぐる懸案があった。既存の富山港線を多額の費用をかけて高架化するよりも、ライトレール化する方が費用対効果が高いと判断されたのである。その結果、事業費58億円で約7kmの「新交通」を整備することに成功した。
富山駅周辺の約1kmを併用軌道化することで、北口駅前広場に乗り入れる形に路線が付け替えられた。車両を連節超低床LRVに全面的に置き換え、停留所を新設し、運行本数を大幅に増やす(日中1時間1本→4本、ラッシュ時6本)ことで利便性を向上させた。均一運賃(200円)としたので従来より値上げとなる区間もあったが、開業当初の日中割引(100円)やICカードによる割引を導入することで利用客は大幅に増大した(JR末期の平日2300人/日、休日1000人/日程度→約4500人/日へ;2007年)。富山駅高架化後は市内線へ接続されることになっており、中心市街地へ直結することでさらなる利便性増大と活性化が期待されている。

<市内線環状化をめぐる動き> 延伸区間は、約1kmだが、富山駅〜中心市街地(西町)をまわるループ状の運行が予定されている。当面は1方向のみの運転のため、新設区間は単線だが、将来的には複線化も想定されている。2014年に予定されている富山駅高架化の後は、富山ライトレールも直通する予定のため、富山ライトレールとほぼ同型の車両が導入される予定である。

現在は単線になっている大学前付近の末端部も富山大橋の架け替えに伴い複線化が予定されている。さらにもう一方末端である南富山駅で接続している上滝線(鉄道)のLRT化(市内線直通化)も検討されている(北日本新聞08/05/21)。富山市では、路面電車以外にも鉄道やバスの利用促進の取り組みも盛んに行われており、公共交通整備とコンパクトシティ実現(中心市街地の活性化)への取り組みが加速している。

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高岡&射水(延伸、既存線改良):★ LRV導入、走行環境改善は事業化済、他は構想段階
高岡とその周辺(射水市新湊)を結ぶ「万葉線」は、経営難から第3セクター化(2002年に加越能鉄道から移管)された経緯がある。車両の初期トラブルにも悩まされつつ低床LRVの導入(来年度には6編成)、電停、軌道の改良が進み、現在ではLRTに近い存在に生まれ変わりつつある(スピードアップが課題だが)。大きな延伸の話はないが、高岡駅新ターミナルビルへの若干の延伸が計画されているほか、利用促進案の一環として「海王丸パーク」への乗り入れや新湊大橋への路線延長(付け替え)などが検討されている(北日本新聞 HP 00/3/23; 北日本新聞 00/11/29、射水市役所WEBサイト)。新幹線の新高岡駅は、現在の高岡駅より南側(城端線沿い)に出来る予定であり、何らかの結節が必要である。新幹線開業と相前後して、JRの経営分離が議論されるはずなので、万葉線との直通など何らかの動きが見えてくる可能性がある(民間レベルではかなり議論されている模様)。

福井(既存線改良・鉄道線直通):☆☆☆ 市内線改良と三国芦原線LRT化構想。反対の声も大。
市内、周辺を結ぶ電車としては、えちぜん鉄道(三国芦原線・勝山永平寺線)、福井鉄道(市内は路面電車)がある。共にクルマ社会化や施設の老朽化(えちぜん鉄道は3セク化後の施策により増加傾向)に苦しながらも、再評価を受けつつある。現在は別個の路線だが、LRT化による直通運転(南北交通軸)など都市交通としての再生・整備が計画されている。

<福井鉄道をめぐる動き> 路面電車型車両導入(廃止になった岐阜より)、トランジットモール実験、パーク&ライド推進など様々な施策が行われてきた。 都市交通として活用する為のLRT化には市内走行環境の改善と福井駅駅前広場への乗り入れ(現在は150mほど離れた路上)が鍵となる。しかし、トランジットモール化、駅前広場延伸のいずれも沿線商店街(電車通り)の反発を受けている。都市計画上の価値と公共交通による集客の可能性について理解を得る必要があるが、道のりは険しそうである。
都市戦略上の位置づけは明確になりつつあるが、福井鉄道自体には、存廃問題が生じている。「福井鉄道福武線活性化連携協議会」の検討課題は、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」に基づく「地域公共交通総合連携計画」骨子案(毎日新聞、08/11/12)となる。計画実施には国の認可が必要だが、上下分離による支援(固定資産の自治体所有)や沿線住民や企業の出資による新体制が整った。駅前広場への延伸には紆余曲折があると思われるが、これから福井鉄道の再生とLRT化に向けての模索がつづいていくことになるだろう。

<えちぜん鉄道をめぐる動き> えちぜん鉄道はかつての京福電鉄の福井路線であり、利用客減と施設老朽化(事故多発)に苦しめられてきたが、第3セクター後は積極的な施策(ワンマン運転+アテンダント、車両の入れ替え、新駅設置など)により利用客は増えつつあり、大健闘している。福井鉄道との一体化(LRT化)により都市交通の南北軸にすることが検討されている。富山港線のLRT化同様に、背景には福井駅の高架化問題がある。当初は新幹線とえちぜん鉄道の2層構造が計画されていたが費用の点で断念され、現在は三国芦原線をLRT化(福井鉄道乗り入れ)、勝山永平寺線を北陸鉄道と共用化(双方単線化の可能性も)が検討されている。駅前再整備の問題もあって、事態は流動的である。

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四日市(路線新設):★ 構想初期段階
中心市街地を横切り、近鉄四日市駅とJR四日市駅の結節する構想である(毎日新聞 08/02/27、中日新聞 08/02/27)。広い幅員の都市計画道路(中央通)を活かして軌道を敷設し、架線レストラムを走らせるという着想である。道路自体も未着工区間があり、市では長期的な視点に立った構想と考えているようである。路線延長2km程度であり、観光地という訳でもないので、路面電車である必要がどこまであるか、という疑問もあるが、BRTなども含めて検討されることになるであろう。

大津(路線新設):☆ 構想初期段階、新幹線新駅白紙化のためこちらも凍結状態?
市内を走る京阪大津線(石山坂本線・京津線)はすでにLRTといえる存在である。これに加えて、滋賀県では、新交通システムの検討を行い、びわこ文化公園都市やびわこ栗東駅(新幹線新駅)へのアクセスとしてLRT構想を発表した(京都新聞 02/9/6)。構想は、「JR石山−安養寺−JR栗東」、「JR南草津−青山二丁目」、「青山二丁目−京阪石山寺」、「JR堅田−琵琶湖東岸−新栗東」、「JR大津−琵琶湖東岸−堅田」、「JR堅田−JR守山」、「京阪浜大津−JR堅田」と多数にのぼるが、道路の拡幅など課題も多い。県知事選の結果「びわこ栗東駅」の白紙化が決まった事もあり、アクセス路線と構想されたLRTも事実上凍結状態にあると思われる。今後は大津線の維持と充実が重視されるであろう。

京都(路線新設):☆☆ 今出川通りを中心に構想が浮上するも反対の声強い。
かつては市内に縦横に走る市電が存在したが、現在は廃止され、市内で路面電車といえるのは京福嵐山線のみである。商工会議所など市電復活を望む声も強く、「京都議定書」に代表されるような温室効果ガス削減の流れの中でLRTの導入(市電の復活)が検討されることになった(参考:京都市WEBサイト「新しい公共交通システム」)。 市のWEBサイト路線の性格から「市電の復活」と捉えられることが多いようで、車線規制と渋滞悪化への不安が強いようだ。現在は計画に反対、慎重な声が強いが、誤解があれば誤解をとき、メリット(とデメリット)を明示する必要がある。市も言及しているように、事業化に至るには市民合意が重要である。

奈良(路線新設):☆ 低公害バスなどの検討へ
2000年9月13日の報道(奈良新聞 00/9/13)によると、市中心部・観光ポイントを周回する路面電車計画の構想を市長が発表した。2002年の段階では「マスタープラン全体構想」にもLRT検討について言及されている。実現すれば観光トラムの要素が強い路線になるのではないかと予想されたが、検討の結果、実現するにしてもJRの高架化完了後になり、費用もかかることから断念された。低公害バスの導入を視野に入れたバスの活用・充実に力を入れることになった(奈良新聞WEB 2003/6/14)。

堺(路線新設・既存線改良):☆ 事業化間近に急転直下、新市長が中止を宣言
堺市では、臨海部と市街地、各鉄道駅を結節する東西方向のLRT建設(「臨海部〜堺駅〜堺東駅(〜堺市駅)」8.3km)と、既存の路面電車(阪堺線)のLRT化を計画している。堺駅〜堺東駅の都心区間(1.7km)に関しては、2010年度までに先行開業させる方針でだったが、住民説明会で異論が続出し、合意形成に難航していた。工事開始が足踏み段階にある中、2009年9月行われた市長選の争点となり、計画中止を訴えた候補が当選、急転直下、計画の中止が決まった(毎日新聞091008)。同時にLRT化が計画されていた阪堺線の堺市内区間も、財政負担には難色を示しており、廃止が危惧されている(朝日新聞091008)。一方、臨海部へのシャープ進出が決まった事もあって、臨海部(堺浜)〜堺駅間(5.2km)も事業化が検討されていた(参考:堺市WEBサイト)。こちらについては、中止は明言せず、計画の再検討をするということであるが、新市長は、大阪都心部へ向かう大阪市営地下鉄の延伸構想を発表しており(読売新聞関西版091010)、LRT計画の方はそのまま中止になる可能性が高いと考えられる。 基本計画案によると、都心区間(大小路)では、自動車を一方通行化した上で、両歩道脇に軌道を敷設する計画(分離ポールつきのサイドリザベーション)であった。一方、臨海部に至る路線は、堺駅からしばらくは高架軌道で、残りを道路中央に軌道を設置する計画であった。予定所要時間は、堺駅〜堺東駅(1.7km)が10分、堺浜〜堺駅(5.2km)が17分(表定速度:10〜18km/h程度)と、LRTにしては遅く不安が残るものだった。先行開業区間(当初2010年度開業予定)となる堺駅〜堺東駅が85億円、阪堺線のLRT化が約60億円(車両の入れ替えなど大改良)、そして早期事業化を検討中の堺浜〜堺駅に関しては約280億円(高架軌道を含むため比較的高め)とされていた。 2009年2月からは沿線住民に対する説明会が始まったが、大小路の車線減に対する反発や高い事業費などに対して異論が続出し、合意形成に難航(読売新聞 09/06/05)、先に書いたように、市長選の結果、中止を訴える市長が当選し、堺の東西LRTと阪堺線のLRT化は中止されることとなった。

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伊丹(路線新設):★ 構想段階、伊丹空港の将来像とも関連。
伊丹空港(大阪)へはすでにモノレールが乗り入れている。しかし、兵庫県伊丹市側へは軌道系交通機関のアクセスがないため、JR伊丹駅・阪急伊丹駅との結節が望まれていた。普通鉄道やモノレールの延伸は費用の面で厳しいため、LRTを用いた構想が浮上した。JR伊丹駅(将来は阪急伊丹への結節)と伊丹空港を結ぶ約4kmの路線で所要時間は10〜15分とのことである。兵庫県が2007年に調査費を計上したという報道(朝日 07/03/09)があったがその後の動きは明らかではない。初期段階の構想と考えられる。

尼崎(路線新設):☆? 構想の報道あったが動きみられず
兵庫県内の鉄道駅の結節、湾岸地区や市街地での交通手段としてLRTの導入モデルが公表された(神戸新聞 HP 00/4/25)。この中には尼崎市内へのLRT導入構想も含まれていた。当初は兵庫県のWEBサイトにもLRTを特集するページがあったが、現在は公開されていない。モデル的な構想の段階に留まっているものと思われる。

神戸(路線新設):★ 社会実験は行われたがLRTは初期構想段階
神戸市には市電網があったが、現在は全廃されている。それに代わり、地下鉄や私鉄・JRが路線網を伸ばしているが、主に東西方向であり、南北方向の結節は弱い。南北方向の歩行者の巡回支援として、神戸市中心部を南北方向に結ぶLRTの構想が明らかにされた(日経新聞 地域経済・近畿 05/02/25)。中心市街地である三宮地区とメリケンパークなどがある臨海部を結ぶ構想であり、距離にして2km弱と短い。バスを使った社会実験(「KOBEST2007」、平成19年10-11月)も行われたが、LRTに関しては構想初期段階のようである。LRTに限定せず、バスの高度化などが選択される可能性も高いと思われる。

岡山(既存線改良・延長、鉄道線転用):☆☆ 具体的に検討されるも、事業化の目処付かず。
路面電車が再評価されはじめた1990年代後半、広島と並んで延伸計画が最も注目を集めた都市の1つである。市内中心部を走る岡山電軌の路線を延伸し、歩いて暮らせる街を作るという計画だったが、事業費負担や合意形成が課題になり、計画は凍結状態にある。岡山駅から伸びるJR吉備線をLRT化して中心部へ直通させる構想も浮上したが、こちらも進展は見られていない。 平成12年2月の調査報告では、岡山駅〜岡山大学病院(1.6km)の延伸費用が47億円(運行間隔5分、新車4両、軌道の歩道より敷設の計画)であった。岡山では、LRT化や延伸を望む市民団体(RACDA http://wiki.livedoor.jp/racda_okayama/)や商工会議所の存在も大きいが、費用負担や合意形成が難航して、これまでのところ目立った動きは見えていない。 さらにJR西日本からは、富山港線と共に吉備線の分社化と路面電車化の構想(朝日、日経03/2/26)が発表された。郊外は既存の線路を活かし、路面電車として市街地に乗り入れるというLRT化で、運転本数、電停を増やすことで、活性化をはかる狙いがあった(背景には経営分離の希望も)。 高架化が懸案化していた富山港線の方は、スムーズに計画が進んだが、、吉備線の方は、非電化であることや経営分離の問題もあって、表立った動きは見られていない。両構想とも、導入の障害の1つであった費用の問題では、施設整備への補助や上下分離(公設民営)の制度が整いつつある。再び動きが活発になる可能性もある。

広島(既存線改良・延長):★★ 既存路線LRTは進行中。延伸は動き見えず
広島電鉄では、熊本市につづき全国に先駆けて超低床LRVを導入し、路面電車の未来について大きな影響をあたえた。 一方、市では当初、アストラムライン(ゴムタイヤ式の新交通)と同規格の地下鉄導入(郊外は高架)を計画していた。これに危機感を持った広島電鉄が路面電車活用の対案を出して議論になった。結局、市の地下鉄案と路面電車活用の両論併記になったが、その後の財政事情と路面電車の再評価の流れの中で、地下鉄計画は事実上凍結となった。とはいえ、これまでのところ路面電車の延伸計画も具体化はしていないが、既存路線のLRT化は確実に進展している。

<路線延伸計画の動き> <既存線LRT化の動き> 現在では、自治体と事業者、道路管理者が一体となってLRT化(「広島都市圏LRTプロジェクト推進協議会」平成17年度より超低床車両、ICカードの導入などを進めている)を進めていて、超低床車両の導入や電停の改良はもとより、優先信号や電車ロケーションシステムの導入も進んでいる(参考:中国運輸局 WEBサイト)。 延伸に関して、費用(特に橋梁)や合意形成が問題になっていたが、制度の充実とLRTの認知度向上で障壁は確実に少なくなった。今後に期待したい。今日では、LRTへの理解と法制度が充実してきたが、それも1990年代から路面電車の近代化と知名度向上に取り組んできた広島電鉄とLRT支援団体の努力の賜物といえるだろう(参考:広島電鉄WEBサイト、路面電車を考える館WEBサイト)。

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松江(路線新設):★ 構想段階だがルート案検討も。
松江市の中心市街地は、JR松江駅と一畑電車の松江しんじ湖温泉の間にあって、両駅は離れた距離にある。松江市を中心に両者の結節を念頭に、LRTなどの導入検討をはじめている(山陰中央新報08/02/09)。平成20年度に開かれた懇談会(「松江市の交通体系とまちづくりを考える懇談会」)では、両駅の最短経路による結節の他に中心市街地を巡回するルートによる結節など様々なルート案を含めて検討が行われている。検討初期段階であり、結節の距離(直結なら1.5km程度)も短いのでバスの整備に落ち着く可能性もあるが、一畑電車と連動させた場合(LRT化による直通など)には基幹軸となる可能性がある(参考:松江市WEBサイト交通とまちづくり)。

松山(既存線改良・延伸):★★★★ 2017年度完成に向け都市計画決定済
松山市とその周辺には伊予鉄道の路面電車+郊外電車網があって、基幹交通として機能している。事業者ではサービスアップによる利用客増加を目指しており、市内線・鉄道線・バスともに運賃値下げや施設改良(市内線への低床車導入含む)、ICカード導入など積極的な施策が行われている。 さらに松山駅周辺のJR高架化に連動して、路面電車の延伸(0.7km)が計画されている(参考:松山市WEBサイト松山駅周辺整備課)。 JR松山駅の駅前広場と高架下を抜ける部分はトランジットモール(公共交通専用道路)として整備し、松山駅の西側では4車線の都市計画道路中央に複線の軌道を敷設する計画である。総延長0.7kmと延伸距離は短いが、さらに将来には西側の松山空港への延伸(‘「将来は松山空港まで・・・」という大きな夢も描け’の表現で記載)も可能になるとしている。JR松山駅周辺の高架化と都市計画道路整備に連動した計画であるため、完成は2017年度予定と長期計画であるが、軌道敷設計画を含む案がすでに都市計画決定しており、延伸計画は順調に推移している。

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高知(既存線延長・改良):☆ 現有路線の維持が課題。
路面電車(併用軌道の軌道線)としては日本最大級の路線網を持つ。周辺都市を結ぶ末端部を持つことから輸送密度も低く(3000人/キロ・日台)、情勢としては厳しいが、外国電車・レトロ電車の導入、増発(延長運転)、パーク&ライド実施、LRVの導入(自治体支援で1編成のみ)、芝生軌道の導入など会社・自治体を挙げて積極的な施策が行われている。路線の延伸も検討されたようだが(高知県WEBに紹介されていたこともあり)、費用の面から断念された模様である(高知県WEBサイト・H16県民の声ネットワークレポートの回答)。 すでに高知駅の駅前広場への乗り入れは実現しているが(平成13年4月)、JR高架化に伴って移動する駅舎に対応するために、平成20年度中にさらなる小延伸(30m程度)と改良が予定されている(毎日08/06/10)。

高松(鉄道線LRT化・新設):★★ 高松市内の新交通としてLRTが注目。
戦前の一時期は市内線(路面電車)が走っていたが、廃止されて久しい。しかし、高松琴平鉄道(琴電)の3路線が集積しており、市内と郊外を結ぶ郊外電車として機能している。一方、自動車に過度に依存しない都市交通の将来ビジョンを検討しするために行政と既存事業者が集まる高松市総合都市交通戦略検討協議会が開催されているが、琴電路線の一部をLRT化する構想が浮上している。報道(四国新聞09/03/29、09/06/06)によると、高松琴平鉄道琴平線の一部(高松築港駅〜仏生山駅付近まで)をLRT化する構想が提案されている。 LRVだけでは輸送力への不安があるため(事業者は必ずしも前向きではない模様)、一部区間(瓦町あるいは仏生山駅まで)を低床LRVのみとするか既存の電車も混在されるかなどが議論され、高松築港駅とJR高松駅の数百mに路面軌道を敷設して結節改良する案も検討されている。2010年には「総合都市交通計画」として構想を取りまとめる方針のようである。

福岡(路線新設):★ かつての軌道事業者(西鉄)による構想
福岡市内には西日本鉄道(西鉄)の路面電車網があったが、すでに全廃され、地下鉄とバスに置き換えられている。福岡ではバスレーンが渋滞するほどの頻度で多数の西鉄バスが運行されているが、近年では赤字が続いていた。乗客増加を狙って(背景にはバスレーンの混雑解消もあると思われる)、西鉄では、都心を巡回する路面電車(LRT)の構想を発表した(朝日08/11/11)。自治体の協力が必須との事で、実現へのハードルはまだ高いが今後に期待したい。

長崎(既存線延長・改良):★★ 北部延伸は目処立たず。駅前など小延伸は実現か。
長崎電軌の路面電車は、旧型車両が目立つものの(観光用としてはプラス面も)、路面電車では最上位クラスの輸送密度を誇る。長い間、赤迫から滑石方面などへの延伸が検討されているが(鉄道ジャーナル No.397, 1999年11月号; 鉄道ピクトリアル No.688, 2000年7月増刊号)、未だに実現には至っていない。路面電車北部延伸検討協議会(長崎市など)の検討の結果、道路の拡幅や費用の問題となった(長崎県WEBサイト「県へのご意見・ご提案で寄せられた声」への回答)。

一方で、長崎市中心部と臨海地域が「都市再生総合整備事業」の認定を受けたことに関連して、数百メートルではあるが2箇所の小延伸が具体的に検討されている(合計すれば0.5km程度)。長崎駅周辺の高架化によりJRの駅舎が移動することになるが(2009年に事業着手、2024年完成予定)、路面電車との乗り継ぎの便を確保するために新駅舎までの支線(百数十m程度)が計画されている。松山駅や富山駅の同様にトランジットモール(公共交通専用道路)として整備される見込みである(長崎新聞 08/11/19、西日本新聞 08/12/27)。
さらに、同事業に関連して、長崎港(松が枝国際観光船埠頭)への延伸構想(長崎県)も浮上した。国際旅客ターミナルまで軌道を延伸し(約400m)、外国人観光客を呼び込むことが狙いである(西日本新聞 08/12/28)。今後、計画を煮詰めていくことになるが、事業の枠組みが作りやすく、土地にも余裕があるため、実現の可能性は高いものと考えられる。

熊本(既存線延長・改良、鉄道線転用):☆ 市内線延伸も熊本電鉄結節も断念。
熊本市電は、日本初のインバータ制御車の導入、日本初の超低床車の導入、日本初のインファンド工法(樹脂固定軌道)の導入など積極的な改良が進められてきた。自らも大きな影響(欧風LRV導入)を及ぼした路面電車再評価の流れを受けて、様々な路線延伸や結節改良が検討された。さらにターミナルが都心から少し離れた場所にある熊本電鉄でも、LRT化の上で市電に直通(中心部へ)する構想が浮上した。2008年12月現在、いずれも実現には至っていないが、優先信号の導入検討、新幹線開通に向けた熊本駅付近の改築など、既存の市電の改良は進んでいる。

<熊本市電の延伸構想> 様々な延伸案が検討されたようだが、結局、事業費の問題などから実現していない。LRT整備の公的枠組みが整いつつあるので、いずれ構想が日の目を見る日もくるかもしれない。

<熊本電鉄のLRT化&延伸構想> 現在の熊本電鉄にも併用軌道がごくわずかに残されているが(元は軌道線)、運行は元・地下鉄車両のステンレス車(都営三田線6000型)で行われている。車両自体が極端に老朽化しているわけでもなく、新駅設置や既存の駅の改良(移設)も行われているため、今すぐに危機的状況とはいえないが、廃止表明の上でのLRT化構想だっただけに予断を許さない。利用客増加には都心結節が必要と思われるので今後に期待したい。

鹿児島(既存線改良・延長):☆ 谷山乗り入れは断念。
センターポール化(中央分離帯付)、芝生軌道化が進み、美観も走行環境も日本の路面電車(併用軌道)の中ではトップクラスである。超低床車の導入や電停の改良(鹿児島中央駅の結節改良など)も進んでおり、既存路線の改良は大いに進んでいる。 市電の郊外側の終点にあたる谷山電停からJR谷山駅への延伸(0.5km)が検討されたが、費用対効果が悪いということで断念された(南日本新聞 06/04/28)。しかしJR指宿枕崎線は市電と併走していることから、三線軌条、部分電化による直通ならば可能なのではないかと思う。鹿児島市WEBサイト(「かごしま都市マスタープラン」など)には市電の延伸検討の記述があり、谷山延伸以外も含めて将来の路線延伸の可能性は残されている。


那覇(新設):★ 構想段階。モノレール延伸は事業化検討中。
那覇市の基幹交通として、沖縄県唯一の鉄道となるモノレールが導入され、健闘している(2003年開業「ゆいレール」首里〜那覇空港)。モノレールの延伸の事業化検討が行われる一方で、現職の市長が中心市街地への路面電車導入構想を提案した。2004年秋、2008年秋の両選挙で公約に掲げ(市長当人のWEBページより閲覧可能)、当選を果たしているが、今のところ具体的な動きは見られない。

横浜、静岡、浜松、東広島など商工会議所や市民団体などが積極的にLRT導入の提言・活動を行っている街は多数にのぼりますが、2009年6月の段階で、自治体、現職の自治体の長、あるいは鉄軌道事業者が計画に深く関わっている構想についてピックアップしました。今後とも随時更新して行く予定です。

(2009.6.8)


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