東京都交通局
  (都電 荒川線)

三ノ輪橋〜早稲田
営業キロ:12.2km(全線複線)
 全線 軌道線(併用軌道 1.6km、専用軌道 10.6km)
軌間:1372mm  電圧:DC 600V  表定速度:13.8km/h

いわゆる都電です。昭和40年代初頭までは山手線の内側を中心に、総延長200kmを越える網の目のような路面電車網が張り巡らされていましたが、道路事情の悪化と共にそのほとんどが廃止、残存する路線は、比較的外延部をめぐる12.2kmの路線、全盛期に比べて1/10にも満たない総延長になってしまいました(反面、地下鉄の総延長はかつての都電を越えています)。戦前の王子電気軌道に由来する路線(27、32系統)で、これを統合する形で誕生したのが現在の「都電荒川線」です。豊島区、北区、荒川区とめぐる半弧状の路線で、路線延長、利用客(1日5万人強)共に路面電車の中では決して小規模な訳ではないのですが、東京の都市交通としては都バスと同様に補完的な役割に徹しています。近年ではレトロ調の電車の導入や電停の改装など観光資源化を目指した動きが進んでいます。


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[見所]

・電車の見所
・沿線の見所 →目立つ観光地は多くないが、路線自体が観光地化を目指している。

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[乗車リポート]

沿線に目立つ観光地があるわけではないのですが、沿線には、「おばあちゃんの原宿」とも呼ばれる巣鴨があって、都電はそのシンボル的存在です。唯一の都電として沿線からはかなり親しまれているようで、沿線の商店から様々な関連グッズが売り出されています。さらに路線の東半分は下町地域を通る事もあって、昭和レトロを感じさせる「懐かしの電車」というイメージをもたれがちです。最近では、それを活かして観光化がはかられています。写真は荒川線の起点「三ノ輪橋」電停です。2007年5月にはレトロ風電車の運行開始に合わせて、電停もレトロなものに「リニューアル」されました。どうせやるなら往時を再現したものにすればいいと思うのですが、かならずしもそうでもないようです(せっかくワンマン・バリアフリー対応したものを戻すわけにはいかないので仕方ないのでしょうが)。レトロ風電車(9000形)の方も、特にモデルがあるわけではない完全新製車両であり、全盛期の都電が再現されているわけではありません。いろいろな事情があったにせよ少々残念です。とはいえ、三ノ輪橋周辺の商店街は、まさに昭和レトロな雰囲気をそのままに伝えていて一見の価値があります(こちらは観光用ではなく現役です)。

三ノ輪橋電停を出るとしばらくは専用軌道を走ります。下町の路地裏を走るような印象です。途中、荒川自然公園付近では少し景色が開けます。大きくカーブを曲がって、京成電車のガードをくぐると町屋駅前です。京成線と地下鉄千代田線の乗換駅、比較的にぎやかな所ということもあって、多くの客が乗り降りする電停です。ここからは道路中央の専用軌道を走ります。「センターリザベーション」の一種ですが、柵付きで細い道路とは踏切で処理されているので、快走といえる走りです。熊野前電停は、2008年3月より日暮里舎人ライナー(新交通)との乗換駅となりました。都電の方は上下で電停の位置が大きくずれているので、乗り換えは必ずしも便利ではありません。陸橋をくぐると少しの間、本格的なセンターリザベーションの併用軌道になります(熊野前-宮ノ前-小台)。軌道敷と車線の間には縁石で仕切られているものの、軌道敷の上も舗装されているので緊急自動車などは通行可能です。道路信号に従って進むので、信号停車も少し多くなります。ちなみに宮ノ前-小台は、ごく最近まで車線と軌道敷が一緒でしたが、道路拡幅に合わせてセンターリザベーション化されました。そのためこの区間だけ立派なセンターポールも整備されています(右写真)。

小台を出ると、道路は片側のみになり、再び専用軌道になります。荒川遊園地前電停は、下町風情ただようミニ遊園地「あらかわ遊園」への最寄、つづく荒川車庫前には電車車庫に併設された「都電おもいで広場」があって保存された電車(PCCカーと7500形旧車体)を見る事が出来ます。車庫への出入りは道路を横断が必要で、路面電車らしい風情の漂うところです。この辺りは、線路脇にたくさんのバラが植えられている事で有名です。時期には写真の通り、バラに囲まれて走る都電の姿を見る事が出来ます。費用や保守の面で難しいかもしれませんが、軌道改良などに合わせて芝生軌道化、雰囲気に合った架線柱と柵の整備が行われれば、さらにすぐれた景観になるのではないかと思います。梶原で明治通りを渡ると、路地裏のようなところを走りぬけ、新幹線の高架下を併走するようになります。王子駅前に到着です。かつては赤羽方面への分岐があった大規模な電停で、今でも長いホームが確保されています。JR、地下鉄南北線との接続駅ですので、非常に多くの人が乗り降りし、停車時間も長いものになりがちです。混雑時には遅延の原因にもなっているようですが、乗降客の多い電停は限られているので、町屋・王子・大塚駅前あたりに切符の自動販売機をおくだけで、だいぶ時間ロスが防げるのではないかと思います。

王子駅前を出ると、大通りへと躍り出ます。趣味的にはハイライト、実用上は最大のネックになっている併用軌道区間です。飛鳥山を目指して急勾配を上っていきますが、国内でも珍しい車線と共用の併用軌道です。道路が空いているときは、力強く上っていきますが、混雑時には停車も多く、運行上の障害となっています。王子駅前〜飛鳥山間に広がる飛鳥山公園は桜の名所で、付近には渓谷状の親水公園もあります。坂を上りきったところで電車は専用軌道へと入ります(飛鳥山電停より)。山の手の台地に上がった電車は、落ち着いた雰囲気の中、快走していきます。旧型車の台車を利用した7000形、7500形では「爆走」に近い揺れです(笑)。落ち着いた住宅地の中を走るのですが、線路沿いはよく緑化されていて、心和む景観です(きっと芝生軌道が似合いそう)。国道17号(白山通り)を渡ると、巣鴨商店街の最寄となる「庚申塚」電停に到着です。乗換駅ではないものの「とげ抜き地蔵」など名所に近いこともあって混雑する電停です。なお電停には和菓子などを売る売店が併設(というか店舗に接している)されています。その後も専用軌道を走り抜けると大塚駅前へ到着です。

大塚駅前はJRのガード下にあって、JRの改札口とは至近距離です。いくつかある乗換駅の中で最もインパクトのある電停です。山手線に接続していることもあって多くの乗り降りがあり、停車時間も長めです。電停自体はまるで「地下駅」のような立派なものですが、前後は併用軌道的な区間が点在します。とりわけ駅前広場を回りこんでいくところは、荒川線で最も路面電車らしい景観の一つです。大塚駅前のターミナルを越えるとセンターリザベーションの専用軌道になって一気に坂を上がります。大通りを越えると道路から離れて専用軌道となってサンシャインシティの横を走り抜けていきます。しばらくは専用軌道がつづきますが、雑司が谷付近は左右を工事現場に囲まれます。地下鉄副都心線との乗り換えは鬼子母神前電停となります。かつては落ち着いた宅地の中の専用軌道でしたが、副都心線の工事と連動して始まった道路工事の結果、最終的にはセンターリザベーションのような形になるようです。ちなみに豊島区には池袋駅前から雑司が谷付近(最近ではサンシャインシティ)へ至るLRTの構想があります。もし構想が具体化して何らかの連携が図られるようになれば、この辺りも大きく様変わりすることになると思います。

学習院下を過ぎると、早稲田まで残りわずかです。電車は大きく東に曲がって、新目白通りの中央に入ります。専用軌道ながら、交差点は信号で処理されたセンターリザベーション区間です。軌道敷にバラストと枕木が露出していることを除けば路面電車そのものといった雰囲気です。電車は比較的スムーズに進んで終点の早稲田に至ります。道路中央ながらしっかりとしたホームと屋根のついた立派な電停(札幌市電の「すすきの電停」に似た印象)です。早稲田電停は、早稲田大学の北側にあって、南側にある地下鉄東西線早稲田駅とはかなりの距離があります。大学へのアクセスは悪くないのですが、地下鉄との乗り換えには便は良くないので注意が必要です。

都電荒川線を全線走破した印象は以上の通りです。電車に乗ること自体が楽しめるという首都圏の路線ではなかなか珍しい存在です。しかし全線の所要時間が53分とかなり遅く、近距離の移動ならともかく、少し離れた距離の移動手段としては少し厳しいかもしれません。少し前まではもう少し速く、表定速度も15km/h以上あったのですが、信号式の交差点の増加、電停の増設、混雑の影響など様々な要因で、だいぶ遅くなってしまいました。専用軌道が多いメリットを活かしきれていないところが少々残念です。レトロ風電車や電停のレトロ化など観光路線化を目指した動きは進んでいますが、実用の上ではもう少し速く、時間に正確になるとうれしいところです。



(訪問多数。最新は2008年5月訪問)

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(2009.2.3)


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