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「バッシング」☆☆☆☆

監督:小林政広
脚本:小林政広
出演:占部房子 田中隆三 大塚寧々 加藤隆之 本多菊次郎 香川照之

  

 海外ボランティアとして活動してた有子は、拉致され人質となった後に開放され、いまは日本に戻ってきていた。ある日有子は突然職場を解雇される。彼女が来てから職場の雰囲気が悪くなったためと言う。世間は有子に対して自己責任の観点から非難の目を向けていた。拡大するバッシングは彼女の父親の職場にも向かい、父親も会社を追われてしまう。

 実際に数年前に起きた日本人ボランティアの拉致事件でも、開放された被害者たちへの世間からの目は厳しかったと伝えられています。報道のフィルターを通して入ってくる情報ですらそうなのだから、実際にその渦中にいた人たちの受けた攻撃は耐え難いほどのものだったかもしれません。
 ここで描かれる主人公の家族を取り巻く人々の態度は明らかに酷く、そして醜い。多くの観客が主人公たちに同情し、なんでみんなあんな対応をしてしまうのだろうと顔をしかめるでしょう。自分は、自分だけはあんな接し方はしないだろうと思っていることでしょう。
 でもそれはこうして醜い他人の姿を見せつけられるから思えることで、自分では気がつかないうちに他人や弱者に対して酷い態度を取ってしまっているのかもしれません。あれは僕らの姿かもしれません。被害者の家族に無神経な言葉を発し、相手が怒ったら「どうかしてるんじゃない?」と言い放つおばさんが、ある意味僕らの姿なのでしょうか。
 もちろん描かれているのは徹底的にデフォルメされている世間です。無軌道な若者だけでなく、世間的には地位のある人たちやかつての友人、ほとんどすれ違うだけに近い人たちまでが全員無神経かつ批判的な言動を取るなんてありえないでしょうが、一人一人が犯している微罪の集合体がああいった姿なのでしょうね。

 非常に痛く突き刺す映画で、大きく心に残りました。可愛そうなだけでなくこちらに不快感すら解き放つ主人公にはうならされるし、その苦悩や決断には息が詰まる思いです。必見。

(DVD/iMac)

2007.4.13


 

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