監督:深作欣二
脚本:深作健太
出演:藤原竜也 前田亜希 安藤政信 ビートたけし 山本太郎 柴崎コウ
とりあえず「原作と比べたら」という部分は抜きにして。
物語の背景とキャラクタの設定はとても面白く、一気に見せてしまうスピード感と緊張感はすばらしいものがあります。
また主人公たちがこの状況をどのように受け止め、自分らがすべきことを考え行動していくのかがそれぞれきちんと描かれているし、展開に無理もなくラストには希望と勇気も充分与えてくれました。
R−15指定にされた要因である容赦のない暴力描写もあってそのひとりひとりの闘い方、死に方はリアルで迫力もあるし、次は誰がどうやって死ぬんだろうというゲーム感覚的なネガティブな期待感は不謹慎ながらもどことなくわくわくさせるものがあります。
それに加えて少年少女たちが意に反して死ななくてはならない瞬間はやはり悲しいし、しかもそれがこれでもかこれでもかと間髪入れずにやってくるためにかなりブルーになってしまうなど、思いっきりこの映画の世界に入り込んでしまいました。佳品と言えるでしょう。
ただしその反面、やや個々のエピソードが短すぎたり、またそれぞれの登場人物の描き込みも足らないかなという気もします。
例えば好きな少女を探し続ける杉村や、体制に頭脳で立ち向かおうとする三村の描き方はもっと深みを持たせることはできたと思います。絶望感から自殺する生徒たちも出てきますが、やはり描き込みが足りずに彼らに感情移入する前に自殺するシーンになってしまうのでなんか唐突にも感じてしまいました。彼らの気持ちは分かるんだけどね。ちょっとばかり殺人マシン桐山とカマの美少女光子にやや重点をおきすぎた感がありますね。気がつくとこの二人のどちらかが必ずそこにいるし。
そもそももっと悲壮感があっていい話だと思います。生きることへの執着と死への恐怖、死を選択する決断、友人への信頼と疑惑のバランス、友人が死んだことへの悲しみ、ゲームのタイムリミットがせまりくる焦りなどなど、もっともっと緊迫感を煽る材料はいくらでもあるのにそれらを生かしきっていない気がしますよね。
たしかにみんな追い詰められているんだろうけど、それが「友達を殺さなくてはならない」という追い詰められ方ではなく、自分を殺しに来る誰かに対する恐怖の方がはるかに上回っているように思えます。あの灯台のシーンを除けば、あとはほとんど積極的に殺す側と殺される側だけの話になってしまっているようですよね。もう少し普通の中学生が殺人を起こすに至る過程みたいのがリアルに描かれていればよかったと思います。
こういった不満はすべて限られた上映時間の中にすべてを詰め込もうとして話を消化しきれなかったということにつきます。せめてあと30分あればもっといい映画になったと思うだけに残念です。
でもこれは、こうすればもっと僕好みになった、と言う話で、充分この映画は及第点であることは間違いないのですが。テンポが悪くなるとかも考えられるしね。
ということで僕の「バトル・ロワイアル」の評価は、「映画は面白い」「でも原作はもっと面白い」というところです。描き込みが足らないと言うのは、600ページ以上という分厚い原作があまりにもじっくりとさまざまな描写を描き切っていることが頭にあるからです。
例えば自殺するカップルは小説ではもっと最後の瞬間までお互いをいとおしみ合っているし、映画ではワンカットで示唆されていた光子の色仕掛け大作戦(だったのかどうかも映画だけだと詳しくは分からないんだけど)も小説ではもっと興味深いエピソードで描かれています。もちろん、全員が一人ずつ死んでいくシーンがとても丁寧に描かれていますし、生徒の性格付けもしっかりしていて、僕は1回読んだだけですが、ほとんどの生徒のキャラクタとその行動、死に方などを覚えてしまいました。そのくらいのめり込んだ小説でした。映画の前だろうと後だろうと、一読の価値はあるでしょうね。
映画版は原作から生徒のキャラクタも死に方もいくつか変更されています。死ぬ順番も結構違います。どこがどう違うかをチェックするのも楽しいですね。
しかし光子の色仕掛け大作戦は小説通りに映像化して欲しかったなあ。いや、マジでいいシーンなのよ。
何にしても好きな映画の一つです。もう一度観たいかな。