監督:岩井俊二
脚本:岩井俊二
出演:鈴木 杏 蒼井 優 郭 智博 相田翔子 平泉 成 木村多江 広末涼子 大沢たかお 黒澤 愛
これは素晴らしい。青春映画の大傑作。おそらくは個人的には生涯愛しつづける映画になりそうです。もう1度すぐにでも観たい。
記憶喪失をきっかけとする物語は星の数ほどもあると思うけど、本人を記憶喪失と思いこませる話とは恐れ入りました。まあSFやサスペンスならありうるでしょうし、超能力や催眠術、はてはマッドな手術をその手段とするならばストーリーも容易に組み立て易そう。でもこれは可愛い恋愛が招く小さな嘘を手段としたほのぼのラブコメディ。そんなものを信じてしまうバカがいるのかという疑問を持つ人もいるでしょうが、それを信じてしまう男がいるから面白いし、そこに違和感がない。彼が彼女にそういう嘘をああいった形でつかれたら、それは信じてしまうでしょう。この設定は最高に面白い。
女子高生になったばかりの花が嘘をつき、その嘘がばれそうになると更に嘘を重ね、友達のアリスをも巻き込んでその嘘を更に積み上げていく。しかしアリスはその嘘に付き合ううち、その嘘の中に自分の新たな本当を知る。どんなに親しい友人であってもその関係が崩れなねない嘘と本当の葛藤。しかしその嘘はいつしか終わり、本当の気持ちが本当であるが故にふたりは戸惑う。そこからまたふたりの新たな関係が始まるのです。ふたりはそうして成長し、少女の季節を過ぎていくのです。
映像の素晴らしさ。序盤に鈴木さんと蒼井さんが仲良くじゃれ合っている姿を見るだけでこの映画の評価は半分以上決まった形。何気ないシーンの積み重ねなのに幸せに満ち溢れている。涙が出そうになったくらい幸せな時間です。
僕のような少女フェチをかじりかけながらここまで生きてきたものの視線を満足させるには充分な描写も多い。バレエ姿で無邪気に写真のポーズをとる際に大きく足を広げさせる監督は凄いね。女の子達が可愛く見えるコツを知っている監督は2時間15分を決して僕らを飽きさせはしない。
それでいてアリスがミニスカートの制服でバレエを見せる際には観客にいやらしさを見せないのもよい。ただしその場にいる男どもはパンチラに心躍らせているという状況も秀逸。観客にとってとその場にいる人達であのバレエのもつ意味は大きく違うのは当然で、僕だってそこにいたらアリスの心の中などまったく関係なく、パンチラを目で追うに決まっているでしょう。その画面の向こうとこちらとのズレがまた面白いのです。
何気ない小道具や小さな伏線も素晴らしい。アリスの父親が見せた小ネタがあんなに大きな意味をもつとは驚いた。多彩なゲストも楽しい。あぁ、こんなところにこんな人が。最初から最後まで多くの驚きを与えてくれました。ちょっと泣いちゃうしね。
主演の二人は本当に素晴らしい。二人それぞれにクライマックスが用意されているけど、どちらも心から魅入ってしまう。体感で数分間にわたるアップのままその気持ちの抑制と昂揚を表現しきる鈴木さんも、手作りシューズで制服のまま華麗なバレエを魅せてくれる蒼井さんも賞賛します。二人は見ているだけでも幸せだし、でも当然それだけでないファッシネイションを感じる。
記憶喪失の先輩役の郭くんはつかみどころがあるような無いような独特の存在感がよく出ていて好感。
その他で目を惹いたのが、特に可愛くもないし演技がうまいわけでもない感じなのに強烈な好印象を残す友人役の黒澤愛さん。彼女の「ケンカしちゃダメだよ〜」には正直やられました。なんか見たことあるような気もしたけどパンフによると映画初出演とのこと。
あ、あと、僕の中で「脇で気になる男優」ランキング第2位(第1位はもちろん荒川良々さん)に急上昇したのが坂本真くん。「BRII」に続いて美味しい役どころで一生忘れなさそう(笑)。
岩井監督は凄い監督だとは思うけど、選ぶ題材が好きではないものが多くて(「リリイ・シュシュのすべて」「PiCNiC」「スワロウテイル」など)普段から次作にあまり期待していません。これだけ僕自身の感性に合致するものを作ってくれる(「Love
Letter」「四月物語」など)のに、そういうものはなかなか作ってくれない。それでいて観ると必ずと言っていいほど唸らせられるものが多い。その辺がなんか気に入らないです。
そのためこの映画が岩井監督作品であることがちょっと悔しい。また今後に期待していいのかどうか、混乱は深まるばかりなのです。(笑) さて、次はどんなのを出してくるでしょうか。
あと、パンフ買ったらついてきた「栞」がまた素晴らしい。見た途端泣きそうになったよ。(笑)
2004.3