「花と蛇」


監督:石井 隆
脚本:石井 隆
出演:杉本 彩 野村宏伸 石橋蓮司 遠藤憲一 未向 伊藤洋三郎 寺島 進

 石井隆は狂ってる。いや、これは誉め言葉。狂気の中から生み出されるものに、とてつもない魅力が隠されていることなど、芸術の世界ではよくあること。この映画の圧倒的な絵の力の前にはただただひれ伏す限り。
 何が狂っているって、まあ、ごく普通の美人タレントとして普通にキャリアを積んでいってそれなりに成功し、今後も大きな冒険などしなくてもそれなりにやって行けたであろう(小さな冒険は必要だったろうけど)杉本彩さんが、なぜここまでやる必要があったのでしょうか。そりゃあ石井隆の狂気に侵食されたからに違いない。
 映画として成り立たせるためには、そして心理サスペンス劇として傑作に仕上げるためにであっても、ここまで過激な性描写、SM的表現は必要ないはず。必要以上の映像を高いテンションで、しかも杉本彩というタレントの肉体を責める形で見せつけ続けることで僕ら観客もまたこの世界の狂気に惹き込まれてしまう。2時間の上映時間のうち1時間以上は性的暴力を受けつづける杉本さんの描写が続くのだ。最初は目を背けたとしても(背けないけど)最後のほうにはもう麻痺しちゃって目を背けることなく呆然と見つめるだけになってしまう。そういった展開に陥る設定にも無理はなく、破綻もない。この映画は映画としては大成功である。ある意味必見。

 ただしあの高貴な人妻ダンサーがあんなことをという物語上の衝撃に加えて、あの杉本彩があんなことをという実世界上の衝撃が交差してしまう。だからこの映画は画面に作りこんだものだけでは勝負できていないとも言えるんだけどね。