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「火火」☆☆☆☆☆

監督:高橋伴明
脚本:高橋伴明
出演:田中裕子 窪塚俊介 黒沢あすか 池脇千鶴 遠山景織子 岸部一徳 石田えり

 一流の陶芸家として名を馳せ、白血病に倒れた息子のために適合する骨髄の持ち主を探して奔走し、骨髄バンクの設立にも大役を担った実在の女性の半生を描く。

 昨今、人の命がどんどん軽く扱われていっているように言われています。本来人ひとりの命はなにものにも代えがたく、とてつもなく大きな価値を持ち、それを失うことの恐ろしさは言葉ではとても言い表せるものではないはずなのです。テロや戦争と言った国際的なニュースでは一山いくらで人の命が報道されています。観る方もその重みに麻痺してしまっていて、「死者○人かあ、大変だなあ」くらいに感じてしまう恐ろしさ。
 でもそんなはずはないでしょう。人ひとり死ぬことはその人に関わるすべての人に深い傷となって残ります。テロで死んだ○人にだって、一人一人に何者にも代えがたい価値があり、そこに耐え難い悲しみがあるはず。僕らはそれを忘れてはいけません。
 この映画にはその人ひとりの命の重さ、その死の持つ意味、そして生きることの意味、生きている間に何ができるのかと言った大切なことがたくさん描かれています。僕らは生きている。もっともっと大切にその事実を受け止めましょう。

 田中裕子さん演じる主人公神山清子さんの力強さが本当に素晴らしい。人はここまでパワフルになれるのかというくらいに活動的で信念的。幻の色である古代の土の赤を再現することを自らの使命とし、そのためには幾多のものを犠牲としても打ち込んでいく姿にまず圧倒されます。この人は確実に生きていくことの意味をつかみとり、それにかけている。口が悪く時には自己中心的でもあるがその姿はどこか愛らしく、ユーモラスでもある彼女の行き方には感銘せざるを得ません。貧乏しながらも女手ひとつで子供二人を(ブツブツ言いながら)育て上げ、興味ありそうななさそうな見つめ方で愛情を確かに注いでいるのにも共感。
 そして窪塚俊介くん演じる息子の賢一が病気に倒れ、一気に闘病ものになる後半にはただただ涙、涙。息子を助けようとする彼女や周りの友人、親戚たちの献身的な活動にも関わらず、ドナーは見つからない。限界までがんばっているのにも関わらずだんだんに弱っていく息子をどうすることもできない悲しさには泣かされました。
 映画の最初のシーンで描かれているし、宣伝文などでも明かされているのでネタバレではないと思うので書いてしまいますが、息子は看病の甲斐なく亡くなってしまいます。実話なのでどうすることもできないことなのですが、安っぽいドラマだと最後にドナーが見つかって助かったりするかもしれないけど、この映画では完全には不適合でありながらも比較的近似した骨髄を移植するなどの手を尽くしたのにも関わらず、その命は失われてしまいます。人の命のもろさへの悲しみと、その制限ある命を精一杯に生きることの美しさに泣いてしまうのは僕だけではないでしょう。

 田中裕子さんがとにかく素晴らしい。この強烈なキャラクターの主人公は田中さん以外には演じられないであろうと思わせるほど、あまりにもはまりきっています。その個性で笑わせるシーンはきっちり笑わせるし、力強さや悲しみで泣かせるシーンはきっちり泣かせてくれる。ただただ凄いです。
 息子役の窪塚俊介くんは映画初出演にして早くも代表作を得た感じ。意外なほど爽やかで伸びやかな演技を見せてくれてさすがタダモノではない深い印象度を残してくれました。叔母さんを演じた石田えりさん、息子の彼女役の池脇千鶴さん、弟子陶芸家役の黒沢あすかさんらも好演で、なんか全く悪いところが見つからないなあ。

 ということで久しぶりに映画でボロ泣きしました。今年のベストワンもありうる感動の大傑作。ただただ賞賛です。

2005.3.11


 

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