監督:大澤 豊
脚本:大澤 豊
出演:忍足亜希子 萩原聖人 藤田朋子 落合扶樹 石倉三郎 田村高広
唐突ですが、さだまさしさんの「償い」という曲を知ってますか。と、最近とある裁判で紹介されて話題になりました。裁判は暴行による傷害致死でしたが、歌の内容は過失による交通事故の加害死に苦しむ青年の償いの物語。僕はたまたまですがこの曲は発表当時からよく知っていました。心に残る名曲です。機会があればぜひ聴いてみてください。
と、なんでこんなこと書いているかと言うと、この映画の主人公の一人、萩原聖人さんの役がまさにこの曲の主人公と同じ立場なのです。彼はかつて交通事故を起こし、それを悔やみ償いつづける日々を送っています。そしてもう一人の主人公、忍足亜希子さんは彼と出会い、彼の苦しみを知りその励ます方法を模索していきます。
特筆すべきはこの励ます側の女性が聴覚障害者であること。支えられてもおかしくない側の彼女は、逆に全くハンデを感じず、強く明るく生きています。全て自分の力で道を切り開いていこうと思っています。実際には家族や手話の通訳ができる友人に支えられ、そのことに対する感謝の念も大きく持ちつづけている彼女ですが、それでも普通の人以上にアクティブでポジティブ。そしてそれが特別であるとは全く考えていない。相手を励まし、力づけることに対して、なんの疑問も感じさせない存在なのです。この映画は障害者が強く生きていこうとする姿を見せるのが目的ではなく、障害者も普通の人と変わらず生きていると示していますね。特別な存在ではないんだと言いたいのでしょう。メインは障害者側ではなく、傷を負った青年の再生物語です。
そういう面で言えばこの映画は素晴らしい。青年の傷は心に来るものがあるし、再生の姿とその課程はなかなか感動的です。結構泣けちゃいます。
実際に聴覚障害者である忍足さんは、前作(「アイ・ラブ・ユー」)にもまして魅力的。ただ結局のところ心に残るのは青年のほうの話ばかりで、彼女自身は話の中心からは常に一歩ずつ引いていて、ただのストーリー進行役に過ぎない印象になってしまっているのが残念。彼女の死んだ夫との話や息子との関係などの掘り下げ方がちょっと今一つなのよね。そのため、忍足さんでなくても良かった印象もありかも。まあ、しかたないか。