「硫黄島からの手紙」☆☆☆
監督:クリント・イーストウッド
脚本:アイリス・ヤマシタ
出演:二宮和也 渡辺謙 伊原剛志 加瀬亮 中村獅童 裕木奈江
太平洋戦争終盤の大激戦地となった硫黄島。圧倒的な戦力のアメリカ軍に対して不利は否めない日本軍だったが、指揮官の栗林中将のもと事前の準備もあり何とか持ちこたえ、戦いは長引いていった。
宣伝やら予告編で「アメリカが5日ほどで済むと思った戦いが日本は30日以上もがんばった」とのこと。しかし映画を観る限り、どこがそんなに優れていて日本が奇跡的活躍が出来たのかということはほとんど分かりませんでした。描かれるのは優れているのであろう指揮官の命令に背いて勝手に死を選ぼうとする下士官や、真っ当な行動を取った部下を自分の勝手な意思に反しただけで感情的に殺そうとする上官、どんどん攻め込まれていって逃げ回る兵士たちなど、どう見ても劣勢で負け戦の日本兵の姿ばかり。時間の流れも分かりにくくとても30日以上も戦っていたようには見えないし、日本が凄かった、とはこの映画からは伝わりませんね。
それにもっと「手紙」に意味があるのかと思ったのに、あまり意味が感じられなかったのも残念。別に「手紙」じゃなくてもいいじゃない。
だいたい戦争が悲惨で愚かなものだということは、ある程度の知識を持った人であればもはや常識でしょう。そして中村獅堂のようなバカ軍人が当時はたくさんいたであろうことも加瀬亮のような悲惨な人もたくさんいたであろうこともみんな知っています。ここで描かれ、ここから伝えようとしていることの多くは、これを観なくてももうほとんど知っていたことばかり。あまり新鮮な部分は感じられませんでした。
面白かったのはやはり「父親たちの星条旗」との関連性。遠くに見える掲げられた星条旗とか、前作での死体が死んだときのシーンとか、穴から撃たれた砲撃を撃った側とかの描写にはやっぱりニヤリとさせられてしまう。いや、でも、こういう部分で楽しんでしまうというのはこういう内容の映画からすると本意ではないでしょうから、僕としては2本連作でこういう作りであることには大きな意義を感じられない部分もありますね。
日米両方の視点で描くということも、別に1本の映画の中で出来ることだしね。もちろんこの2本を1本にまとめてしまえ!と言うことではないんだけど。こう続けて出さなくて、1年くらい開いていたり、同じ描写を違う側から思わせぶりに描いたりはしないほうがよくないかな。
ただし独特の力強さを持った映画であることは確か。戦争シーンの迫力や出演陣の熱演など見所はたくさんあり、圧倒される部分も大きく退屈するでもなく一気に観終わった感じはあります。これが日本映画でなくアメリカ映画であるという部分への驚きもありますし、観る価値は充分にある映画でしょう。
個人的には1.裕木奈江出演(←それかい)、2.連作であることや全篇日本語の外国映画だという話題性、3.アカデミー賞受賞の可能性、という点で観に行きました。とりあえずは満足です。
2006.12.20
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