「回路」


監督:黒沢清
脚本:黒沢清
出演:加藤晴彦 麻生久美子 小雪 有坂来瞳 役所広司

 怖いのは確か。トラウマ的になってしまうほどの恐怖を覚える人もいるでしょう。映画で感じる恐怖には、自分を含めた現実性を実感することによって覚える恐怖と、理解できない非現実性を肌で感じることによって覚える恐怖があると思います。例えば殺人鬼が迫りくる描写や突然の事故での死などで覚えるのは前者だろうし、呪いや幽霊によって引き起こされる怪現象などは後者を引き起こすでしょう。
 この映画が描写しているのは明らかに後者です。ここでおきている現象のほとんどはその理由や原因が理解・判断できないことばかり。わけのわからない「何か」が迫りきて、わけのわからない「何か」を起こして、そしてそれに接した人たちをやはりわけのわからない「何か」にしてしまう。何でそんなことがおきるのか、何でそんなことをするのかは全く分かりません。とにかくここに描写されるのはひたすら訳の分からないものに対する恐怖のみ。すべて生理的に感じ取ることで覚える恐怖です。そしてその怖さはまさに一級品でした。
 しかしそれだけに見終わった後に「だから何?」という気持ちが残るのは否めません。残った恐怖がこの思いを消すほど上回った人はこの映画を高く評価するでしょうが、この気持ちが恐怖を上回っちゃった人はこの映画に疑問符を残すでしょうね。残念ながら僕は後者なのです。
 この映画、訳の分からないことが中心なのはいいとしても、その事象の種類が多すぎて違和感を覚えます。ネットの扱い、パソコンの扱い、赤テープの部屋の扱い、おかしくなる人の扱い、死者の扱い、残像の扱い、マスクの扱い、そして世界の扱い。いろんな事象の扱い方がバラバラで関連性がつかみきれず、次から次へと出てくる新しい事象の把握に頭がついていけませんでした。
 怖いんだけど、面白いわけではない。と言うのが僕の評価です。

 そんななか一番評価しているのは、あの自殺のシーン。宣伝等で流されてたので残念ながら衝撃は少なかったのですが、それでもあれはすごい。あれだけでもこの映画を観る価値はありますね。