監督:山田洋次
脚本:山田洋次 浅間義隆
出演:永瀬正敏 松たか子 吉岡秀隆 小澤征悦 田畑智子 高島礼子 倍賞千恵子 田中
泯 緒形 拳
難を言えば、2つの話(恋物語と剣術話)はうまくかみ合っていないように思えます。何十年かしてふと思い出した時に1本の映画として記憶にとどまっているでしょうか。いっそのこと、二つの話の主人公を分けてしまい、恋物語は吉岡君にでも任せて永瀬君は剣の道に生きる剣豪として話をまとめてしまったらどうだったかね。もちろん相当の構成力と演出力が必要だろうけど、山田洋二監督なら不可能ではないでしょう。なんか二つの映画を同時並行で観ちゃったような感覚も残っています。
でもそんなことを気にしなければ、この”2本”の映画はどちらもとても面白く、逆に2倍お得な映画だったという気持ちも残っております。だから実は好きな映画だったりするのでした。(笑)
恋物語。身分の差というものは現代社会に生きる僕らにはどの程度の大きな壁なのか知るべくもないけど、お互い好きなのがはっきりとしているのに、その意思を表に出すこと、表現すること、更には意識して認識することすらできない2人を見ると、意識的以上に無意識の世界での相当大きな壁なのでしょう。好きなのに身分の差があるから耐えている、という感じじゃないもんね。壁の向こう側にいる相手に好きだという感情を持っていることがありえないと言う姿だもんね。誰よりも近くにいたいという気持ちはあるくせに、それを結実させたいという気持ちはかなりの強い無意識のなかで封印している感じ。そのもどかしさがとてもよく分かるのがいい。
だから最後に2人がある結果を迎えたときの気持ちのよさ。あまりの幸せに私なんぞはホワホワしてしまう。心から応援してあげたくなる想いがここにはあります。かわいいよね。
剣術話。タイトルにもなっている「隠し剣 鬼の爪」がまさしく「隠し剣 鬼の爪」なのが素晴らしい。クライマックスとなっている果し合いでなく、静かな怒りのなかで現れるのがカッコいいねえ。果し合いでの殺陣のキレもよい。勝負が決する一瞬とは確かにあんなものでしょう。かっこよく勝つよりも確実に勝つほうが大切なときもあるしね。
またその果し合いに至る苦しみと、その後の更なる苦しみと悲しみと怒り。そのむなしさや儚さにも涙するね。
出演者もみな素晴しく、特に主演の二人に加えて緒形拳さんが高い評価を得るような気がしています。
2004.11