監督:原恵一
脚本:原恵一
出演:しんのすけ ひまわり ひろし みさえ 又兵衛 廉姫
去年の「オトナ帝国の逆襲」は各映画賞のベストテンで上位に入るなど、世間的にも傑作扱いでかなり評判がいいようです。もちろん僕も大好きなんだけど、実のところ、しんちゃん映画としては3番目か4番目くらいかと僕は思っています。それだけこのシリーズはみんな質が高く、面白いものばかり。やっとすこしづつみんなに認められて観てもらえるところまできたかという感じで、嬉しいです。
そういうわけで毎年超期待しながら観に行ってしまうこのシリーズ。今年も行きました。そしてボロボロになって帰ってきました。
間違いなくこの映画は僕の中ではしんちゃん映画史上、というより日本のアニメ史上最高傑作。毎回多少はホロリとさせられるしんちゃん映画ですが、今回はまじめにボロ泣きさせられてしまいました。こんなに泣いた映画は最近記憶にないです。
お話は戦国時代にタイムスリップしたしんちゃんとその家族の活躍と絆を、お姫さまと家来のお侍さんの許されぬ恋の行方を絡めて描いたもの。この映画で描かれているのは家族愛、男の友情、そして男女の恋愛なのですが、どれもみな絶妙に心に響いてくるのだ。
例えばしんちゃんの危機に身を呈して助けに入る母ちゃん。例えばお侍さんとしんちゃんの男の約束。例えば自分たちの危険を分かっていても、世話になった侍達を見捨てるわけにはいかないと悩む父ちゃん。例えばお互いに恋い焦がれているはずなのに身分の違いからもう1歩踏み出せない2人。これらはみなセリフによる説明はほとんどなく、キャラクタの演技によって伝わってくる。みな切なくて泣けてしまうシーンばかり。
また例えば侍の名前が又兵衛と言って、しんちゃんが「おまたのオジサン〜」なんて呼んで笑わせるのだけど、普通なら観客が笑って終わりだと思うけど、ここではお姫さまの前でそう呼んでお姫さまに笑わせるシーンがあります。ここなどは子供の発言で大人が笑うシチュエーション、好きなお姫さまの前でそんなふうに呼ばれて気恥ずかしい又兵衛の照れ隠し様、そして自然体のしんちゃん自身のキャラクターもあって、何一つ違和感がないシーンになっています。また例えば又兵衛がしんちゃんにお姫さまが好きなのかと指摘された際に否定しきれずにドタバタとして照れまくるシーンや、未来の日本の様子を聞いたお殿様が感慨深く今後を考えるシーンなど、どのシーンを取ってみてもみんな違和感がないです。「しんちゃん一家が戦国時代にタイムスリップする」と言う設定以外、何一つ不自然なものがないんです。
加えて合戦の描写がまたリアル。矢や弾がが当たれば後ろにはじき飛ばされるし、爆弾も容赦なく爆発する。そこに平凡な現代人一家が存在することの危険度が充分に感じ取れる。とにかくディテールが見事すぎ。脚本も含めて、すべてが本当に丁寧に作られているんですよね。
おかげでどんどん物語に感情移入してしまいました。ところどころできちんと笑わせてくれることもあって、その分切ないシーンで逆に強く泣かせてくれる。押して押して引くタイミングが非常に上手い。ラストの展開も含め、本当に本当に泣いてしまいました。大絶賛。今年はもうこれを越える映画は出てこないかも知れません。