監督:水島努
脚本:原 恵一 水島 努
出演:しんのすけ ひまわり ひろし みさえ
世間的にも名作の誉れ高く、個人的にも絶賛の2作品のあと、監督も変わった前作はまあ一休みと言う感じで子供向けに終始し、明るく楽しい能天気なしんちゃん映画となっていました。
しかし今回再び、大人をも唸らせるしんちゃん映画が帰ってきました。今回のメインテーマは西部劇。そこにシチュエーションホラーとアクションのエッセンスがふんだんにちりばめられています。凄いものをまた観た、というのが率直な感想。恐怖とサスペンス、そして笑い。おまけに初恋だぁ!
古びた映画館に迷い込んだしんちゃんたち春日部防衛隊。ふとした間にしんちゃん以外のメンバーはいなくなっている。一家でみんなを捜しに戻ってきた野原家の4人は気がつくと西部劇の世界へ。しかしなぜか人々はみな日本人だ。なんなんだこの世界は? しかも見つけ出した防衛隊のメンバーは記憶を失っていた。はたしてみんなは現実世界に帰ることができるのか!
導入部からして素晴らしい。しんちゃんたちがしている”リアル鬼ごっこ”(鬼になった人は追いかける理由−離婚を迫る妻や借金取りなどを演じながら追いかけるのだ)にまず爆笑。ふっと迷い込んだ路地裏にたたずむ忘れられた映画館の描写もノスタルジック。気がついたら他のみんながいなくなっているというシチュエーションの恐怖とそれにまだ気がついていないしんちゃんの姿もよい。
西部劇の世界にいる人達がみな日本語をしゃべる日本人だと言うこういうバカ話の初歩的矛盾点をあっさりと回避して見せる技もうまい。あれなら言葉の壁など関係ないもんね。
時間が止まっているのか太陽がまったく動かず、迷い込んできた人達がみなもとの世界の記憶をだんだんと失っていくという恐ろしさ。悪保安官に定期的に引きずりまわされる人がいるためにかろうじてどのくらいのときが過ぎたのかが分かるというシュールさ。しんちゃん自身もだんだんと記憶を失っていき、お気に入りのキャラクタの絵が書けなくなっていくというショック。どれをとっても一級品の世界観の構築だと思います。その怖さには本当にドキドキしてしまいましたよ。特に、世界に順応して自分の過去をどんどん忘れていくと言うのは、本当に怖い。
そしてだんだんとこの世界の仕組みとその抜け出し方が明らかになっていく論理展開の巧みさ。人々がそれに気がついたときに起こる変化には正直心動かされちゃいました。なるほど、そうきたのか。これで解決だね!
しかしそこからまた怒涛の展開が待っているとは思いませんでした。この映画最大の見せ場が、まだまだ待っていたのだ。
終盤展開されるのは手に汗握るノンストップ列車アクション。まったく短調にならずにこれでもかこれでもかと押し寄せる展開にただただ圧倒されるばかりで凄い。いつのまにか西部劇は(登場人物からも観客からも)忘れ去られてしまうのは少々残念と言えなくもないけど、それでも列車から落ちる落ちないの展開も、しんちゃんたちが架空の世界ならではの大変身を遂げて見せる大活躍も、一旦引いたかと思う敵が再び現れる際の衝撃も、みなただただ素晴らしいのだ。
アニメで描かれたノンストップアクションとしては、個人的には一番ハラハラしたよ。
ただちょっと敵が非情過ぎるかな。敵が本気で殺しに来て、あきらかに殺すことのできる行動に出る。これはお子様も見るアニメとしては多少痛くないかな? いくらなんでも5歳児に対する明らかな殺意の描写はちょっと違和感もあるかもね。(^^;)
あとあのオチの脱力加減は、賛否両論だろうねえ。(^^;) いや、もちろん決着のつけ方として、間違ってないことはたしかでしょうけどね。
今回のメインゲストキャラのツバキちゃん。可憐で優しく、しかも芯が強い。純な中学生の男の子の理想をそのまま形にしちゃったようなキャラクタで、彼女に萌え萌えしないようでは2次元アニメ美少女おたくの資格なし(どんな資格やねん)。私はもちろん萌え萌えしました。資格はいりません。(笑)
ところで僕は西部劇をほとんど観たことないのでよくは分からないんだけど、あれってユル・ブリナーやジョン・ウエィンなのかな? マイク(水野)は分かって一人で爆笑しちゃったけど、場内はシーン。えっええっ? みんな分からないの?(^^;)
なんにしても緩急のメリハリのついた構成の見事さ、ディテールの丁寧さ、ギャグの面白さやラストの切なさなどなど、僕はこの映画を高く評価します。必見。
2004.4