「飼育の部屋」


監督:キム・テグワン
脚本:キム・テグワン
出演:小沢和義 桜井真由実 山口祥行 鈴木一功 遠藤憲一 根岸季衣

 「完全なる飼育」なるシリーズがあるけど、あれらを観てもこの映画を観ても、「飼育」と言う言葉には違和感を覚えます。みんな単なる拉致監禁でしょ。広辞苑では飼育とは「家畜などを養いそだてること」とあります。この映画で示されてい
るようなストックホルム症候群(被害者が犯人に同情心などから共感を覚えていってしまうこと)が起ころうが起こるまいが、人が人を暴力で縛りつけることは飼育ではないでしょう。家畜扱いに徹して扱いつづける、と言う感覚ならまだ多少(本
当に多少)は分からんでもないけど、どの映画もそんな感じではないものね。みんな恋愛がらみの展開になってきてしまう。「飼育」と言う言葉がキャッチーなのかはよく分かりませんが、少なくとも僕の感覚にはマッチしませんね。

 ただし、この映画は面白かったです。前述のストックホルム症候群がこの映画のメインテーマ。この扱いが微妙に「完全なる飼育」シリーズと違い、単純な男女の恋愛に転化していかないがなかなか面白いです。ちょっとばらすと、この映画のラストにはある形での不幸が訪れるのですが、拉致監禁によって訪れるのはやはり不幸でしかない可能性の方が高いというのは当然のこと。その訪れ方はいろいろあるでしょうが、この映画でのラストの展開はいい形でこちらの予想を裏切り、なかなか新鮮でした。
 しかもそもそもの拉致の理由が明かされたとき、これがまたなかなか衝撃的。あまりにも単純でないその理由は、実はある種の深い想いが隠されていて、少し泣けてしまいます。この映画の中の二人には、もしかしたら十数年後、またいい形で観客の予想を裏切るような展開が訪れるのかもしれないですね。それは想像でしかないのですが。