監督:森田芳光
脚本:筒井ともみ
出演:役所広司 黒木瞳 星野知子 柴俊夫 寺尾聰
ふたりの愛情は、まるで初めて深い恋をした少年少女のそれです。何げなく手をつなぐことを喜び、町中で堂々といちゃつき時にはキスまでします。自分たちの感情だけでお互いを強く求め、一緒にいることがすべてに勝ると思っています。父が死んだ日の夜という普通ではとても考えられないシチュエーションでのセックスも、彼らにとっては選択肢のひとつになりえてしまうのです。恋をすると人は誰でも少年少女に戻ってしまうのでしょうか。しかし彼らは紛れもなく家庭のある大人でした。多くの人を不幸にしてふたりきりになった彼らが最終的に選んだ行動が正しかったとはとても思えません。しかし彼らにとってはそれしか道はなかったのでしょう。恐ろしいものです。
おそらくふたりがどちらも出ていないシーンはなかったと思います。完全によけいな展開を排除し、ふたりだけに焦点をしぼり切ったようです。そのこともあって僕はときどき大げさに言えばドキュメンタリーを観ているように感じていました。ふたりに感情移入していくというよりは、ふたりの行く末を見届けていくという感じです。全体的にカメラも一歩ずつ引いた客観的な目でふたりを捕えている印象でした。
こうした不倫ものでは残された側が悲劇的、感傷的に描かれることが多いです。この映画でも妻役の星野知子さんがつらい状況に追い込まれながら強さを持ち続けようとする姿がとても印象的でした。