「タッチ」☆☆☆☆☆
監督:犬童一心
脚本:山室有紀子
出演:長澤まさみ 斉藤祥太 斉藤慶太 RIKIYA 風吹ジュン 小日向文世 若槻千夏 安藤 希 宅麻 伸 本田博太郎 平塚真介 上原風馬 福士誠治 徳井 優 山崎 一 高杉 亘 渡辺 哲 生田智子
原作はリアルタイムで読んでいて、当時の単行本が今でもウチには揃っています。和也が死んだときには本当にビックリしたし、その後の展開にも釘付け、ラストの達也と新田の対決シーンなどにはマジ感動しました。間違いなく名作でしょう。
あれから20年以上経ち、当時にやっと生まれたかどうかといった若い人たちが主演の実写版が作られるというのも、なんかすごい話だよなあ。全26巻からなる長編を2時間にまとめたのだから当然かなり濃縮され、設定やキャラクターも大きく異なった別の作品として生まれ変わったと僕は感じています。そしてこれまた名作でした。すばらしい。
隣同士の家にほぼ同時に生まれた3人、双子の達也と和也、そして南。三つ子のように育った3人だったが、高校生になり、いつしかその間にはお互いへの想いが交錯していた。子供のころから3人の夢だった甲子園を目指して和也は野球部のエースとして活躍し、南はマネージャーとして支えていた。そして達也はいまは野球をやめてボクシング部に入部していた。和也の快投で順調に勝ち進んだ全国大会予選決勝の朝、和也は事故に遭い命を落としてしまう。達也はその遺志を継ぐ形で、野球部に入部するが、、、。
兄弟と幼馴染という難しい三角関係の切なさが描かれる前半はその想いの交錯ぶりがとてもよく分かってうまい。双子の片方が好きだと認識してしまっているのに、もう一人からも愛されてしまうという状況はある意味とてもつらい。でもそれをはっきりと形にしてしまったら3人の関係がどうなってしまうのかという恐怖がその関係を曖昧なままで落ち着かせておきたいという感情も生み出している様子が、例えば3人でキャッチボールをする前後のシーンなどによく分かる。あそこはいいシーンですね。
そして中盤、和也が死んでしまった後、残された二人のそれぞれの心の傷の大きさがこれまたよく分かって切ない。特にそれまでしていなかった野球に再び取り組む達也の気持ちが、彼自身もそれでいいのかそれが和也のためなのか確信が持てずにしている様子が非常に痛い。そしてその行動を快く思わない他のメンバー、母親、そして南の姿に一人の死が周りの人すべてに残した傷の大きさを浮き彫りしているさまがとてもつらいです。
そして一人一人がその死を乗り越えて次のステップに進もうとする姿にはとても感動しました。ラストの試合はなかなかのナイスゲームで、ライバル新田との最終対決の描写はそれを見つめる人たちの姿を含めてやはり名シーンです。達也と和也が重なるシーンの素晴しいこと。
ここで描かれる南ちゃんは決して学園のアイドル的な超高嶺の花的美少女でないのが逆にいいね。真面目でルックスがよく性格もよさそうだから目立つだろうけど、自分の想いに沿った行動を達也に対してとっていながらも和也にもきっぱりとそれを示せないところや、和也の死から逃げるかのようにマネージャーを辞めてしまうところなどに大きな弱さを露呈してしまうような、ごくごく普通の少女としているのがいいです。長澤まさみさんは相変わらずの好演。
達也も原作よりもずっと苦しんでいる様子が分かりますね。和也は一番原作に近いキャラクターのままかな。斎藤兄弟も野球シーンも含めてとてもよかったね。
また原作とは全く違う人間味あふれる原田君はいい味出しているし(最後の応援での行動とそのときの隣の若槻千夏の表情の素晴らしさ!)、ボクシング部マネージャー安藤希の微妙なポジショニング(とやっぱりラストの表情がいい!)、キャプテン黒木、キャッチャー幸太郎をはじめとする野球部メンバー、監督の一体感なども暖かいし、一見いやな奴風でありながら実は野球が好きでしかたがないという新田のキャラクタの描写もなかなか見事だと思います。あとお母さんがよかったな。
ということで原作とは全く違う、別の物語と言っていいでしょう。原作つきの映画でよく言われる、「原作のよさを再現していない」という批判を受けるタイプの映画でしょうが、僕は原作のよさでないオリジナルのよさをたくさんもった素晴らしい映画だと思います。ぜひ原作とは違うものとして頭をすっきりさせて観てほしいです。僕は泣きました。
2005.9.27
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