なぜ社会保障費だけがターゲットになるのか。
【質問者】そこを見ないと出□が見つからない、ということですね。でも、なんて社会保障費だけがターゲツトになっているんでしょう。お金が入らないということを理由にして歳出を減らそうと思ったらほかにもやることはあると思うんですけれど。
唐鎌 いろいろ理由はあると思いますが、やはり社会保障で浮かせたものを別に使いたいということです。端的に言うと軍事費。二〇〇四年の年金改革のときに基礎年
金の財源の国庫負担を、国会決議に従って今の3分の1から2分の1ヘと引き上げることを早期実現しろと言われたんですね。でもそれには二兆七〇〇〇億円かかる。そのとき言われたことが消費税引き上げ。消費税で財源を作らなければ国庫負担増はできない、というわけです。ところが米軍に予算を付けろと言われたらボンと三兆円出
しました。年金の二兆七〇〇〇億円は消費税上げなきやできないと言っているのに、米軍には三兆円ポンと出す。社会保障の優先順位が今の政府ではとても低いということなんだと思います。
【質問者】政府の優先順位の中で社会保障費を減らすことが、とりあえずやりやすいから、という・・・。
唐鎌 「小さな政府」と言いますが、これも全体を小さくしよう、というんじやないんです。小さくするときにどこをたたくかということで、社会保障が狙われる。本来これは民主的な国家だったらすべきことではないですね。
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※新自由主義とは・・・。
国家の経済への介入は、人間の自由を制約する
という主張から、福祉や公共サービス、公営企業
の民営化、労働者保護の廃止、さまざまな規制緩
和による競争の促進などを進める考え方。福祉分
野についても、競争原理を導入して、「効率的な」
福祉を実現しようとする。
福祉はもともと市場競争を一定程度抑制して、
国民の生活不安や貧困を緩和しようとするもので
ある。しかし、新自由主義の考え方は、市場競争
がもたらした問題を市場競争の強化で解決しよう
とするために、問題が拡大することはあっても、
解決することにはつながらないといえる。
※小さな政府とは・・・。
1970年代から80年代にかけて、新自由主
義的な政策の中で出されてきた理念で、福祉国家
に対する否定的、あるいはそれに変わるものとい
った意味が込められている。
第一次オイルショック以降、先進国では不況に
よって税収が減っているのに政府のすることが増
えているといった考えや、大企業や中高所得者層
を中心として所得の肖分配を否定するような圧力
があった。ここから、政府の仕事を軍事、外交、
治安などだけに特叱させ、教育や福祉における公
的な機能を縮小させようとする「小さな政府」論
が提起されてきた。
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【質問者】
日本の政府が国民ことを考えてないということなんでしようか。
唐鎌 ちょっと古い数字なんですけれど、2001年現在で日本の社会保障給村費の対GDP比が17.5%です。EU加盟国
の平均値が26.2%。これが世界で一番多いですね。その差8.7%、日本のGDP比にすると四〇兆円くらいです。今の給
付費が八十数兆円とさっき言いましたが、その半分の四十数兆円を一年間の給付費用にてプラスして、それでEU並みです。スウェーデンは31%使っているので、今の二倍くらいにしないとスウェーデン並みにならない。
[質問者]たしかにそれだけあれば白立支援法も必要ないですね。
社会保障が国力のすごさに見合っていない
唐鎌 先ほどお話しした日本の国力のすごさ、日本のGDPというのは、ドイツとイギリスとデンマーク、その三ヵ国分を足し
たぐらいあるんです。世界第二位というのはそんなにすごい国だということなんです。ところが、それにふさわしいものを国
民は受け取っていない。きわめて社会保障が小さな国だということです。
[質問者]政府は施政方針演説や国会の答弁でも必ず「財政的にたいへん厳しい状況だ」とか
「国民の生活がたいへん苦しくなっているのはわかっているけれども、なかなか」・・・みたいな話ですよね。
唐鎌 でもそうじゃない、ということですね。あえて財源を取れるところから取らなくしているのです。その中で所得の再配分
が壊れていて、軍事費とか道路にはこれまでと同じように使われているのに、社会保障だけがたいへんと見なされ、削減対象に
されている。
[質問者]二段階ですね。これだけすごい国力があって、ちゃんとお金を取れば国のお財布に入るお金ももっと多くできるというここと、お金の使い道がすごく偏っていて、国民の社会保障給付に回るお金が少なくされているということ。あるところにはあるわけだから、それを出せっていう運動が必要なんてすね。
唐鎌 この間、燃料費の高騰で苦しんでいる漁民の方たちがデモをやりました。すると急に政府が漁船が使うガソリンに補助を
すると言いましたね。やっぱり立ち上がら
ないとダメだと思うんですね。
国民同士が分断され競わされている
[質問者]私たち、自立支技法に反対する運動をやっていても、高齢者の人たちもすごくたいへんな思いをしている、生活保護の人たちだっ
てたいへんな思いをしている、と思うと、自分たちだけがこういう要求をしていいんだろうかという気持ちになることもあって・・・。
唐鎌 いっしょにやればいいじゃないですか。まだまだ目本の運動って縦割りですよね。もっと生活保護の団体にも高齢者の団
体にも呼びかけていくべきです。労働組合のナショナルセンターもあるわけだから、リーダーシップを発揮しなければ。ネットカフエ難民を放置しているようでは、障害者の暮らしがよくならないのは明らですよね。ちゃんと働けばちゃんと幸せになれるっていう道をつくることです。そうじゃなきゃ、労働に参加することが難しい人たちが幸せになれる道なんて出てこないじゃないですか。
[質問者]でも、真面目に働いていても暮らしは楽にならない、仕事しようと思っても働けない人もいる、こんな暮らしをしているんだか
ら、働かない障害者や高齢者がなんて社会保障で生活していけるんだ、感情的に納得できない、というのは少なくない国民に共通した
思いなんじやないかと。
唐鎌 そこが分断されていると思うんです。去年台風九号で多摩川が氾濫して、救助隊が逃げ遅れたホームレスの人を助けた
んです。すると多摩川流域の
狛江市
とか
川崎市
に対して、二〇〇〇件も抗議の電話があったそうです。税金使ってホームレスを
ー救うんじやないと。そこまで心がすさんでしまっているんですね。働いている人が追い込まれている。そして、そういうちょっとしたちがいで国民同士がいがみあっているというのが実情です。政府が国民を分けて、競わせる。それに成功しているんですね。
社会保障で幸せになることが国民の合意となる社会
[質問者]障害者はサービスを受けているんだからそれにお金を払わないなんて甘えてる、受げたらそのぶんはちやんと払え、という「応益負担」の考え方が自立支援法では強調されています。
唐鎌 福祉を受けるのは個人だから、受益者負担もしかたがないと言いますけれど、受益者負担というものは、普通以上の所得があることが前提です。こんなに安い障害年金、一級でも八万円いかないわけでしょう。それで負担はできないです。
日本はもっと社会保障で幸せになっていいということを認める社会でなければいけないと思います。『ハリーポッター』の作者J・K・ローリングさんも生活保護を受けながら書いていたんですものね。母子家庭で三十代のお母さんが子どもを連れて毎日喫茶店に行って、売れるかどうかわからないものを書いていたら、日本だったらすぐに自立支援の対象です。でも、それができるイギリス社会があるんですね。
社会保障でも幸せになれる権利があるということをどこかで認めて、国民の合意になっている社会。その合意をどうつくっていくかですね。その中で障害者運動の果たす役割は大きいと思います。
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