「新しい社会福祉法の問題点・概要」

 

小泉内閣は、高い支持率を背景にこれまでの政権でも出来なかったことを強引に行お
うとしています。それは、「聖域なし構造改革」といっているようにそのなかみは、多
くの国民にとって、毎日の生活が豊かになる事など見えないのが殆どでしょう。新しい
政権の『経済・財政諮問会議』が打ち出した七つの改革プログラムのうち、医療・年金
・福祉を『一元管理する』と言うことがどのような内容なのか…。小泉首相が厚生大臣
だった橋本内閣にはじまる「社会保障制度構造改革」にあります。この「社会保障制度
構造改革」の問題点を可能な限り追及したいと思います。

 新「社会福祉法」改正の理由として「1951年の社会福祉事業法制定以来大きな改
正が行われていない、社会福祉の共通基盤制度について見直しを行う。戦後初期に出来
た法制度が制度疲労を生じてきており、現代的に解決するのが主眼である」と言ってい
ます。果たしてその通りなのでしょうか。実際は、1962年社会保障制度審議会にだされ
た「社会保障制度の総合調整に関する基本方策についての答申および社会保障制度に関する勧告」「低所得階層に対する個別的防貧策として社会福祉は,一定条件にある低所
得階層の権利として確保し、社会福祉の費用は,原則無料として国と地方公共団体が負
担すべきでありその性格からみて、事業の採算本位に運営されてはならず、原則として
受益者に負担させるべきではない」という見解を出しています。今回の『改正』はまさ
にこれらの勧告を否定するものとなっています。
 
『新しい「社会福祉法」による改革の中心は支援費支給制度』
2003年度から実施される新社会福祉法などの改定の中心は、措置制度を廃止して利
用契約制度による支援費支給制度を導入することにあります。具体的に言えば「サービ
スを受けるための受給資格の認定がこれまでの障害者手帳による程度認定とそれをもと
にした措置判定から「支援費」という金額で枠づけされた段階認定」に変わります。

「サービスの利用量や内容が必要に応じて措置決定され、その費用が事業者に全額措置
費として支払われる現行の措置制度から、支援費の範囲内で使われた金額だけ、しかも
そこから利用料を引いた額だけ事業者に支払われる支援費支給制度」に変わります。

「使ったサービスの量や金額にかかわらず、その人の収入状況に応じて行政に支払って
いた「応能負担」税金のような現行の徴収金制度が、使ったサービス額に応じて収入に
応じた金額を事業者に支払う利用料制度に変わります。」
 このように支援費支給制度は、すべての福祉サービスが金額に換算されます。そして
、「利用者はいくらかかるのか」「事業者にいくらくるのか」そのもとになる金額、す
なわち支援費の各サービス単価や支援費認定の段階金額で全てが決まる仕組みになって
います。 さらに加えると国が支出する額もこれで決まる訳です。見落としてならない
の点は、この支援費の金額を国が決定することになることです。「個に応じて」「多様
な」サービスと言われますが、じつは地方分権の時代にあって中央集権的な福祉財政管
理システムが導入されようとしているのです。

〈基礎構造改革は財政構造改革の重要な柱〉
日本の社会保障関係予算は、その時の政治的経済的な都合で、そのづど削減されてきま
した。政府・厚生省は経済政策や政策の行き詰まりを社会保障や医療と教育関係などに
その矛先を向けて来たと言えます。
1998年6月、橋本内閣は「財政構造改革の推進」を閣議決定しました。国民生活に
かかわる国の財政支出を抜本的に縮減する改革です。そこでは削減する第一の柱に社会
保障を掲げ、社会保障を必要とする人が増えること等で生じる自然増をも押さえ込み、
社会保障の「財政構造そのものについて見直し」を提言しました。単なる削減ではなく
、恒常的に国の財政支出を削減できる制度にしなさいと提言したのです。 その提言にそ
った制度改革こそ、支援費支給制度なのです。
社会福祉基礎構造改革に至る経過の中には、戦後すぐにできた社会福祉事業法等による
制度は、「制度疲労」をおこしている、現代的な社会保障制度に抜本的に見直そうとい
う論議がありました。さらに障害者プラン後の障害者福祉のありかたをにらんで、抜本
的な障害者福祉制度改革を検討するという動きもありました。こられの検討は、いずれ
も財政構造改革が提起されるより前から始められていました。しかしそれらの改革動向
葉、障害者福祉分野の措置制度廃止には言及しておらず、現状の拡充施策を提起してい
たのです。しかし財政構造改革の流れはそれらの現状拡充の提議を無視して、強引に主
要な改革課題は措置制度を廃止して支援費給付制度を導入することにあると提議してき
たのです。
国の国民生活に関する財政支出のあり方、政治の基本的あり方において「一切の聖域な
し」という政策が、障害者福祉にも直接及んできたと言えます。
 このように過去に無い厳しい巨大な力が障害者福祉充実への願いを押さえ込もうとし
ています。しかしそれはもう一方で、私たちの願いが広げてきたかつてない共感の輪と
も矛盾したものになってきています。

『利用者と事業者と言う関係』
 2000年6月「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する法律」が成立
しました。この制度改正の根本は利用者のサービスを受ける権利、それを保障する義務
をもつ国という権利義務関係を、憲法25条にふれることなく手続き的に利用者と事業者
の関係に変更することにあります。利用者制度への移行は、新たに支援費支給方式とな
ります。措置制度では、措置権者(市町村等)が対象者(利用者)に対して措置責任を
負い、その具体化として受託事業者(指定事業者)に措置委託していたが、支援費支給
制度では、市町村等は支援費支給(サービスの受給資格)決定をし、指定事業者に支給
費の代理受領(支払い)をするのみである。サービスの利用決定は、利用者と指定事業
者との契約に委ねられる。市町村は、利用者のサービス受給資格を決定するのみで、そ
の権利がどう行使され保障されたのかチェック機能はもたない、たとえば使えるサービ
スがなくて待機者になろうと、その責務としての追及はなされなくなるのである。そし
て利用者がサービス契約にたどりついた場合のみ、その事業者に支援費を支払うのです
。したがって利用者が選択し契約できるような手だてを講じなければならないのです。
情報提供や開示、障害別の相談支援事業などの第2種社会福祉事業としての範囲拡大など
がこれに該当する。その契約通りサービスが提供されているか、苦情を出せる制度も創
設された。利用料は、「自己負担分(応能負担)」を支払うと言う対等性もある。しか
し、国と自治体の責務は、「サービス提供の体制確保」と「適切な利用の推進」のみと
なります。そのため社会福祉事業の選択を可能とするような整備は、社会福祉法人の認
可要件を緩和し、これまで原則的に
国、自治体、社会福祉法人しか事業者として認められていなかったのが、民間営利事業
の参入を認める。なお今回の改正では、在宅介護支援事業者に限定されています。
重要な事は、以上なような仕組みが財政的には,国の中央集権的なコントロールによっ
てなされるようになることです。市町村が決定する支援費は、利用者のサービス受給資
格の認定であるだけでなく、「支援費」と言う用語が使用されているように利用できる
サービスの費用・量を決定するもので、そこでは、市町村独自ではなく「公正、公平に
」全国一律の仕組みの創設が想定されます。これまでの措置制度では,手帳の所持を前
提に受給資格の認定を受けなければならないが、利用者は,本人や家族の収入によって
利用料が決まりサービスの費用で決まるのではなかった。そして、措置制度では、国の
措置費は市町村への予算補助ではなく、原則としてサービスの利用実績によって支出さ
れ市町村には利用実績量の裁量をになうと言う分権がありました。市町村の裁量が狭め
られ財政面からの中央集権的なコントロールが可能となるのです。肝心な部分は以前に
も増してコントロールできる仕組みになるのです。この制度改正の特徴は,利用契約制
度導入、市場原理、競争原理の導入にとどまらず支援費支給制度の導入にあり、ここま
で書いてきたように、国による中央集権的な障害児・者、福祉財政管理システムにあり
ます。国は単に障害者福祉における責任を放棄するだけでなく、その財政を中央集権的
に管理するシステムを創設し、削減しようとしているのが、この制度改正の本質的な特
徴と言えます。

『高齢者の介護保険制度との違いと共通点』
今回の制度改正は、利用者にとってどんな影響をおよぼすのか、利用契約制度への不安
として、「契約に参加できない人が放置される」「事業者が利用者を選択する」「支援
費は誰でも支給去れるのか」「利用料負担が重くのしかかる」「事業者どうしの競争で
生き残るのは・・・」「自治体の福祉施策が解体する」等の問題点が上げられます。こ
れらは、介護保険制度における高齢者の不安と動揺です。制度改正が社会保険方式を取
っている点を除けば、殆ど介護保険制度と同様である事を示しています。したがって、
既に介護保険制度で指摘されているように、国が社会福祉における責任を放棄し、社会
福祉とは相いれない市場原理・競争原理を導入して、利用者の負担に転嫁し、民間営利
企業にも市場を開くものと言えます。障害者運動の立場から言えば、介護保険制度がも
たらした高齢者の不安を障害者にも持ち込ませない事が重要になります。矛盾に満ちた
法改正の中にあって運動によって生まれた前進面もあります。すなわち「措置制度の一
部存続」「9つの新たな社会福祉事業」「社会福祉法人の設立要件緩和」「苦情解決・
第三者評価の法制化」のような面です。例えば市場原理・競争原理に基づく市場経済に
おいて消費者保護行政が求められると同様に現代では利用契約制度導入が要請するものです。高齢者施策は、「著しく遅れた分野であるために格段の配慮をして」施策を講じ
られた。同じく「著しく送れた分野」にもかかわらず「格段の配慮」をしてこなかった
障害者福祉分野に、高齢者施策と同じものを強引に導入する際、必然的に要請される緩
和策と言えます。これらの改善施策を抜きに制度改正を容認しない障害者運動の力量
見逃せないのです。施策に権利保障の影響を与える力量が障害者運動では、高齢者運動
より強かった事の反映と言えます。

1980年代からこれまで「改革」と言う理由で大きく分けて今回の改正で3回大きな解約が行われてたと思います。しかし、私もそのたびに期待を裏切られたと何度も感じたものです。1980年代始めの「臨時行政改革審議会」に1988年頃の社会福祉関係改正・年金法改正などをバブル崩壊の時を入れて、今回2000年6月に成立した「社会福祉法」で3度目の大きな改正となります。本当に私達が願ってきた事とは、かけ離れたものだと思います。少なくとも国の社会保障費に使われている予算が20兆円ぐらいなのに対して公共事業関係は,50兆円と言うことです。この予算配分を反対にすると言うのであれば、納得できませんが、今、小泉内閣が行おうとしていることは、公共事業関係予算の中身がかわるだけなのです。本当に景気対策と言うのであれば、不良債権処理で100兆円以上国民の税金が使われると言われている時に、銀行や大企業のつけを国民に回さず国民生活に直結する医療福祉年金に予算配分する事が国民の購買力をたかめ景気対策になると思います。