■みんなのねがい2008
3月号より 全障研副委員長  峰島  厚   (立命大学)
▼またまた負担軽減などの緊急措置 厚生労働省は二〇〇七年12月、13〇億円の「障害者自立支援法の抜本的見直しに向けた緊急措置」を発表しました。その主な内容は、@利用者負担の見直し七〇億円(下の表を参照、○八年七月実施)、A事業者の経営基盤強化三〇億 円(通所サービスの単価約四%引き上げ、定員を超えた受け入れ人数のさらなる緩和、就学前児童の受け入れが少ない児童デイサービスヘの助成など)、Bグループホーム等への整備促進三〇億円(施設整備費で別枠)、です。AとBは○ 八年度実施ですがまだ詳細は示されてい ません。さらに報酬単価については○九年四月の改訂が予告されました。

▼障害者の大きな声が動かす明らかに、障害者の声に厚生労働省も「改訂せざるを得なくなった」と言えます。参議院で過半数をとった民主党は「応益負担廃止」という名称の法案を国会上程(○七年九月)しています。本誌○七年一二月号で紹介されたように、再々度六五〇〇人の関係者が「出直してよ」と大集会で声をあげました。フォーラムに参加したすべての政党が「抜本的見直 し」を言明しました。そしてついに、与 党障害者自立支援に関するプロジェクト チームも、○七年12月「障害者自立支 援法の抜本的な見直し(報告書)」を提 起しました。
厚生労働省は大集会の次の日に開き直 って、「利用者負担増による入所・通所 サービスの利用中止者は0.73%から 0.17%に減少した」と発表したにも かかわらず、です。中止者は減少しているかもしれません。
やめるわけにはいか ないのだと思います。他方で利用しなけ ればならないけれど利用料を払えない滞 納者、昼食費の負担ができない欠食者が 増えているという調査結果も出ていま す。表にあるように、低所得者の負担上 限額を、○七年四月実施の特別対策より さらに半額にしたとはいえ、トイレなど 生きることにサービスを必要とする障害者、低所得の障害者にとって、依然とし て負担増は変わりありません。

 

利用者負担の見直し@〔障害者〕

低所得1及び2(非課税世帯)の障害者の居宅・通所サービスに係る負担上限月額を更に軽減。

1月当たりの負担上限額】
・低所得1  3750円→1,500
 ・低所得2     6,150円→3000円
  (通所サービスは、3750円→1500円)

 

利用者負担の見直しA〔障害児〕
@「特別対策」による負担軽減措置の対象となる課税世帯の範囲拡大

(現 行):年収600万円程度まで※(市町村民税所得割額16万円未満)
見直し後)年収890万円 程度まで※(市町村民税所得割額28万円未満)
A1月当たりの負担上限額を次のように軽減
・年収890万円程度まで※(市町村民税所得割28万円未満)の世帯が対象

 ・居宅・通所・入所サービス共通


 
「私たち技きに私たちのことを決めないで」 今こそ変えよ う! 障害者自立支援法』10 30大フォーラムで日比谷 野外音楽堂に集まった6500人の人、ひと。そびえ立つピルは 厚生労働省。 この声とどけとばかりに渾身の発言が続いた。  

 

▼「抜本的見直し」は先送り
 
この緊急措置、名称にあるように「抜本的見直し」ではなく、それに「向け た」措置なのです。 与党プロシェクトチームの草案には 「現行の応益負担を改め」とあったので すが、最終報告書では削除され「応能的 性格を強め」となりました。さらに同最 終報告にあった「年金額を2級が1級並 に、―級をさらに引き上げ」「住宅手当の 創設」などの「抜本的見直し内容」は、 緊急措置では消えてしまい、「抜本的見 直しに向けた措置」だけになりました。 そして○七年一二月に発表された障害 者基本法による「重点実施(後期)五カ 年計画」(○ハー一二年度)では、その中のさらに重点で「障害者自立支援法の 抜本的見直しの検討」が位置づけられま した。「抜本的見直し」は、今後五年間 の、「実施」ではなく「検討」課題とし て先送りされたのです。

▼恒常的な新たな負担軽減制度
現在までに応益負担廃止は実現しませんでした。でも今回の緊急措置の@利用者負担の見直しは、特別対策とはちがっ て、三年間などの経過的な期限がありません。この点は注目すべきです。 三年たったら、また元に戻るのではあ りません。永続的に高齢者の介護保険と 異なる負担軽減制度になるのです。この 点は、厚生労働省が障害者の声に押され 相当大きな決断をした、と評価すべきで しょう。そして別の視点からは、保険な ど新たな財源システム導入という根本改 革なしに対応できなくなった、という決 断でもあるかもしれません。
 なお@以外の措置の具体化は、○八年 度予算額決定の折衝課題になっていま す。○八年度は、三年間でコー○○億円 という特別対策の最終年度です。でも○ 八年度の額はわずか一五〇億円です。O 六、〇七年度に比べて大幅な減額です。 少ない予算額の中での配分調整にさせて はならないでしょう。
▼「出直せ」は現状復帰 あらためて「抜本的見直し」とはなに かを考えてみます。 応益負担は公平な負担様式かという議 論はありますが、なによりも応能負担時 代よりも負担増になっていることが問題 です。日割り計算も合理的給付方式かと いう議論はありますが、なによりも月割 り時代よりも補助金収入が縮減している ことが問題です。事業体系も簡素でわか りやすいものになったかという議論はあ りますが、なによりも似たような事業に 移行すると補助金が下がり、これまでの 支援機能が維持できないことが問題で す。区分認定も、これで支援必要度合い が適正に測定できるかという議論はあり ますが、なによりもこれまで利用してい た事業が利用できない、単価が下がる事 業しか選べないことが問題です。 これでは、国の財源縮小だけのための 改革ではないでしょうか。障害者にとっ ては、負担増、サービス水準の低下のた めの改革でしかありません。障害者、関 係者のねがいは、まずなによりも、自立 支援法施行前の負担水準、サービス水準 に復帰せよというものです。ここを起点 に上乗せ、上向きにされるのが改革のは ずです。 だから障害者、関係者がねがう「抜本 的見直し」は、当面、新たな財源を必要 としません。現に、単年変約四五〇〇億 円の自立支援法予算に、○六−○八年度 の三年間で一三三〇億円も予算操作で上 乗せされてきました。新たな財源を確保 することなく、現状維持、自然増維持が できるのです。 障害者自立支援法は「見直すしかな い」し、「見直すことができる」のです。

▼国がねらう 「抜本的見直し」はなにか
新しいことをしないのに、これまでを上回る水準も保障されないのに、新たな財源が必要、という筋の通らないことが 打ち出されようとしています。 防衛費や大企業のための公共投資は自 然増なのに、社会保障費だけが毎年二二 〇〇億円減、という国がすすめる財政構 造改革です。年金額があがるわけでもな いのに、高齢者の医療が充実するわけで もないのに、介護が充実するわけでもな いのに、社会保障のための消費税率アップ、新たな後期高齢者医療制度、四〇歳 以上の要介護障害者と介護保険との統 合、育児支援も含めた年齢にかかわらな い福祉保険のような制度の創設など、新 たな国民負担増による財源論の検討が始 められています。 障害者福祉にあっても、自立支援法前 の水準に戻すだけなのに、新たな財源が 必要という論点も持ち込まれようとしています。今後の重要な争点になるでしょう。