◆ノーマライゼーションの本意◆「2008年3月号みんなのねがい」より 立岡 晄氏執筆文から抜粋 


 福祉が進んでいると言われる北欧では、一九九三年秋、全障研、障全協、きょうされんなどのメンバーとともに学んできました。
デンマークのヘルシンオア市(人口五万人)のホイヴアングン作業所では知的障害者など60人が12人のスタッフに支援され午前八時から午後四時までそれぞれの力量にあった仕事をしていました。ダウン症の人もおられ、利用者の障害程度や仕事 内容、送迎バス利用や自力で通所することなど日本の作業所とよく似ているのですが、決定的にちがったことは、障害者の所得が保障されていることでした。

 日本では職員の月給が仮に二〇万円としても、障害者は障害基礎年金一級の人で月 約ハ・三万円、それに作業所での工賃約一万円を加えてIヵ月一〇万円未満。職員と の格差は倍以上です。ところがホイヴアングン作業所では障害者のIカ月の所得は障 害基礎年金などを加えて約八〇〇〇クローネとのこと(一クローネは、約二〇円)。職員 の月給は約一万六〇〇〇クローネですが、そのうち半額が税金で引かれますから手取りは、約八〇〇〇クローネ。つまり、職員も障害者もほぼ同等の所得になるというのがデンマークの実態なのです。これには驚きました。

デンマークで専門家が提唱した「ノーマライゼーション」とは、「どの人も所得は同じ1‐という意味だという説明もあり、あらためてノーマライゼーションのもつ意味を深めるものです。 気になる北欧の福祉のその後をどうしても確認したくて、ホイヴァングン作業所を 再び訪問したのは、それから12年後の二〇〇七年一月四日でした。デンマークはちょうど、この年から二七〇あった自治体(コムーネ)が広域行政組織となり、人口三万 人を目途に合併して九八になったとのこと。ホイヴァングン作業所は「仕事・体験 センター」と名称変更され、二〇〇人の発達障害者が五〇人のスタッフの下、三つの セクションで支援を受けるようになったとの説明がありました。
一つは障害の重い人のデイサービス部門で、月曜日から金曜日の午前九時前から午後四時まで、コミュニケーション能力に障害のある人などのケアやサポートを行います。障害に応じて午前中で帰る人もいます。二つめは木工に力を入れた作業所で、 ポスト、鳥かご、いすなど手づくりで温かみのある木工商品を製造し、ホームセンタ ーや一般マーケットに卸し、販売しています。三つめのセクションは、二年間の期限 で一般就労を見定める、ジョブスクールと呼ばれるグループで、企業での実習訓練プ ログラムをもっています。デンマークの作業所も大きく変化していました。 ショブスクールは日本の就労移行支援事業と似ているようでした。デンマークでも 一般就労における定着率はあまりよくないようで、ショブコーチを付けるなど苦労が うかがえました。私は、日本ではじまった障害者自立支技法についてのボイントを説 明したうえで、デンマークではどう考えるかと質問をしました。わかりやすく説明し たつもりでも、「そういった仕組みは理解できにくい。逆に日本では年金額が少ないですね。少ない中でさらに徴収されるのは非常にシビアだと思います。デンマークでは障害のある人もない人も経済的には平等にしようと試みをしています。もっと年金を上げなくては」と指摘がありました。ノーマライゼーションを地でいく明確な答えが返ってきたのです。 権利条約批准に向かつて・○六年12月、第六一回国連総会で障害 者権利条約が採択されたことも、一三年ぶりの北欧の旅のきっかけとなりました。二〇カ国以上が批准すれば、この条約は効力を発揮します。現在一四カ国が批准をしたところですが、日本政府に対しても高いレベルでの批准を働きかけることが、いよいよ重要な課題となっています。

 法律や福祉制度は本来、人を救うものでなければなりません。 三十数年前、マイナスのどん底にあった障害のある仲間の現実から出発し、あたり まえの願いを一つひとつ聞きながら作業所づくり運動を進め、「生まれてきてよかった」と言える働く場、暮らす場、憩う場など、自立できる地域社会をつくることに私たち は力を尽くしてきました。自立支援法によってそれが崩されようとしている今、わが国が障害者権利条約を批准することにより、このような苦労の積み上げが功を奏する日の来ることを強く願ってやみません。

 立岡晄
 共同作業所のこころと実践

 立岡 晄
(きょうされん前理事長・ひかり福祉会)
 
定価1575円(本体1500円+税)  ISBN978-4-88134-594-8 C3036   2008.6.10   
表紙


日本では経済力に見合っただけの国民に対する生存権保障としての社会保障をしてこなかった。1990年代後半から、国や地方の財政破綻を減らすことや経済破綻を立て直さなければ「日本は沈没する・・・」とまで国民の不安ばかりをあおってきた。その結果として「障害者自立支援法」や「後期高齢者医療制度」などが押し付けられてきたと言える。例えば、高齢者医療制度は充分な審議もされずに立法は強行採決した。国民の代表者であるはずの国会議員でさえ、施行されるまで詳細を把握していなかったと言っている。これは、厚生労働省だけではなく、色んな法案が各省の官僚達によって作られ明らかになってくる「通達行政」に他ならない。よくマスコミで「閣議決定」という言葉か゜あるが、大臣達は役人や与党関係者が作った物に「花押」と呼ばれる独特の署名する儀式で「お習字」とも呼ばれる。ガソリン税の「道路予算」を一般財源として使う事が、閣議決定されたと言うが国民の多くはだまされはしないだろう。高齢者の医療費についても医療費の金額だけを捉えて将来の医療費が増えて行くことだけを強調している。日本の医療費に占める高齢者の医療費は国民総生産の8%に過ぎず、先進国では決して多い方ではないと言われる。「道路予算より社会保障に税金を使う事」を以前より感じている人は多くなっていると思う。
スウェーデンのような社会保障の進んだ国々は、第二次大戦後の社会全体の形や歴史的な背景も違う事がわかる。政治経済は簡単に言えば「市民が公平平等に暮らせることを最優先にし、富の再配分を徹底することとし、政治のあり方も特定の団体に左右されず、活動されなければ選ばれない」になっている。特定の人を差別するような法律・制度もない、したがって障害者という概念もないと言われている。国民の一人一人を尊重する社会作り、経済活動、国際活動、税金の使い方もこれらを中心に使うように配分される。