新・「社会福祉法」について。

「社会福祉法」が成立し、2000年6月7日に公布されました。これによりこれまでの措置制度が廃止され利用者契約制度になります。また、サービスを提供する事業者に民間企業の参入も認める等、障害者の福祉が大きく変わろうとしています。このページは、これらの問題点・矛盾点を下記の学習会の内容をもとに私なりの見方を書きます。

2001年 障害者冬のつどい
こんなにかわる障害者の福祉 2001年3月4日「全国障害者問題研究会新潟県支部」「障害者の生活と権利を守る新潟県連し絡協議会」共催による講演会。講師・「障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会・事務局長 白沢 仁 氏

 

 「詳しい内容と私の見解」

『社会福祉基礎構造改革』は日本の社会保障をどう変えるか!

【1】社会福祉基礎構造改革に対する学習・運動の視点。
                     ※印の文章は問題点簡単な解説・要 約
(1)社会福祉改革の流れ!
 1980年代の「臨調行革」に基づく「福祉改革」・・・財政削減中心の「改革」
 1990年代の「構造改革」に基づく「福祉改革」・・・福祉のあり方を根本的に 
                            変質させる「改革」
 *「福祉改革」の流れ・・・福祉政策のゆきづまりを象徴する歩み
 1982年頃にホームヘルパーの利用料を徴収するようになったのを始め、
  作業所等、通所施設など利用料の親・家族・本人負担を徴収するなど。

(2)「社会保障構造改革」の一連の法改悪のなかでとらえる!
  橋本内閣の6大改革と「社会保障構造改革」
 社会保障制度審議会誡告『社会保障制度の再構築』(1995、7)
「社会保障制度は、みんなのために、みんなでつくり、みんなで支えていくもの・・・
」と言う言葉が出てくる。この言葉の意味するものは、社会保障制度の理念の変質、介
護保険制度の創設など一連の法改悪の青写真となる。

(3)介護保険制度等との関係でとらえる!
   「福祉改革」の焦点・・・措置制度の廃止・利用契約制度への移行
 ・営利企業の参入促進
 ・高齢者福祉分野・・・介護保険法成立(97.12 2000.4実施)
 ・児童福祉分野・・・・児童福祉法「改正」(97.6 98.4実施)
 ・障害者福祉分野・・・社会福祉事業法等「改正」(2000.5 契約制度2003.4実施)
   付帯決議(応能負担→応益負担など5年後の介護保険制度の見直しの際に再検討)
 ・障害者施策の「介護保険化」・・・介護保険と連動した改革、その内容をモデル

「児童福祉法」の改正により規制緩和がなされ、営利企業の参入が可能となり「保育所」が主要都市の駅前などにでき、心地よい宣伝文句で利用者を誘惑している。先頃、東京都の無認可保育所で赤ちゃんが事故死している。この保育所は宣伝文句と同時に評判も良かったため利用している母親たちは預けていたと言われている。しかし、保育担当者の不足や劣悪な環境までは一見して分かりにくいものである。これは、介護リストラ等、障害者や高齢者の施設にも起こり得る事として見逃してはならない。
※介護保険を1995年頃から実施しているドイツでは、『介護スキャンダル』として社会問題化していると報道されていた。時間に追われる訪問介護者が訪問するべき所を訪問しなかったため、体の状態(床づれ)が悪化したと言う事例があった。 日本でもこのような事が起こり得るのである。一人暮らしの老人で物が言えなければ、そのままである。

(4)「改革」の見直し、改善、どう運動を前進させるかでとらえる!
   「改革」のねらい・方向・スケージュールははっきりしている、どう運動を展開
するのかが問われている!問題点の指摘 対案・政策提言 運動方針の確立・展開。
 
【2】「社会福祉基礎構造改革」の概要
(1)政府の一貫した論調。
  戦後50年あまり維持されてきた措置制度に代表される社会福祉の基本的な枠組みは、低所得者等を対象にした行政処分による一律のサービス提供であり、「制度疲労」を起こしている。これからの社会福祉事業は、「利用者の選択」「利用者と事業者の対等な関係」の確立であり、これこそ「権利擁護」である。
※政府の論調の欠陥は責任の明確化が新しい「社会福祉法」には明記されていないと言う事です。社会保障事業の主体が国でもなければ、地方自治体でもない。そして私達障害者や研究者がだいぶ以前から願い主張してきた「権利擁護」と言う文言を厚生省が使うようになるなど矛盾に満ちたものだと言うほかないのです。  
「制度疲労」と言うのは、一方的な言い分であり、日本の社会保障を受けるための基本となってきた「等級」等線引きをすることによって、受けられる者と受けられない者とを差別化してきた。事務処理に時間を要する事と措置制度が悪であると言う事を結び付けて言うのは、同列視できない。もう一つ付け加えれば、厚生省が「介護保険」を導入する根拠の一つとして「月額21万円の年金を受給している、だから介護保険も払えるだろう・・・」という言い方をしていたが、こんな高額年金受給者が何人いるというのか。


(2)「改革」の内容と論点
 「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する法律」社会福祉事業法
(社会福祉法改称)・身体障害者福祉法・知的障害者福祉法・児童福祉法・民生委員法
・社会福祉施設職員等退職手当共済法・生活保護法・公益質屋法の8法一括で成立。

 ■障害者の福祉措置制度の廃止と支援費支給方式による利用契約制度への転換
   (身体障害者福祉法第17条){措置制度一部存続(同第18条)}
   利用者保護のための制度創設・・・地域福祉権利擁護事業(社会福祉法第80条)
                   苦情解決(同第82・83条)
                   第三者評価(同第78条2)
支援費は一部の人だけに発行されるだけではなく、年1回再発行をする事となり、発行回数が繰り返されるごとに「支援給付額」が減らされていくと言われ、結果として同じ条件であっても支援給付額に差が生じる事になると言われている。
■サービスの質の確保
   事業者に対してサービス内容に関する情報提供の義務づけ(社会福祉法第75条)
    サービスの質の自己評価(同第78条)
いかなる場合でも「事業」と言う事は、利潤を追求する事が道理でありサービスの質を向上させる事は、労働力コストでしかない。労働力コストを下げなければ利潤追求にはならない。サービス提供を行う労働者の賃金や労働条件などを劣悪な環境にする結果となる。サービス内容の情報提供が正確かどうか利用者が判断することが出来るのかどうか、サービスの質の自己表現と言っても事業者にとって利益にならないようなことは、表面化しないようにするのが原理原則である。労働力不足の施設において手間のかかる重度障害者や痴呆症老人などを受け入れられない場合「ベットが空いてない・・・」と拒否されても、それが本当の理由かを確認するのは困難な事である。  
  ■社会福祉事業の充実・活性化
   社会福祉事業の範囲の拡大・・・9事業の追加(社会福祉法)
   社会福祉法人の設立要件の緩和・規模要件20人以上→10人以上(同法)
                  資産要件1億円→1千万円(運用事項)
   社会福祉法人の運営の弾力化
     施設ごとの会計区分が弾力化され法人単位での経営がみとめられる。
     利用制度化した事業による利用料金収入を施設整備費の償還に充当できる。

  ■地域福祉の推進
   市町村に「地域福祉計画」(社会福祉法第107条)
   都道府県に「地域福祉支援計画」(同第108条)の策定を義務づけた市町村社会福祉協議会を地域福祉の推進役に位置付けた知的障害者等に関する事務を市町村に委託した(知的障害者福祉法)
  
    国・地方公共団体の役割、利益企業等の参入促進はどう位置づけられたのか

【3】社会福祉基礎構造改革の問題点・矛盾点

 (1)公的責任のあいまい化・矮小化
    公的責任・公的負担は後退させないというが本当か!国・自治体の役割は何
    ■福祉サービスの直接的な提供の責任がなくなる
     あくまでもサービスのあっせん・調整・要請といった調整役(コーディネーター)に責任がとどまる(社会福祉法第3条 第5条 第6条、身体障害者福祉法第17条3)

    ■基盤整備の責任についても、公費負担を基本とせず、民間企業等の参入・誘致によってサービス料を確保しようとしている

 (2)契約したくても契約できない利用者契約制度(支援費支給方式)
    本当に請託できるのか、対等な関係が成り立つのか!
    ■基盤整備の不十分さによって、選択したくても選択できない
    ■サービス事業者による利用者の選択(選別)「逆選択」所得の少ない障害者、採算の合わない      重度障害者の除外応諾義務の問題(身体障害者福祉法第17条の3の2)
    ■支援費支給による利用者支援というが、利用者の購買力の補完であり、希望するすべての障害者を対象にするわけでない、しかも期間と量の問題サービス利用ごとに支援費支給の申請手続きが必要
       (身体障害者福祉法第17条の5の2、3)
    ■措置制度の一部を存続というが、あくまでも例外事項(身体障害者福祉法第18条)いずれは利用契約への移行を指導
    ■サービス利用において、サービスが利用できるかできないかは、利用者の選択上の問題にすり替えられる、サービスの質と量は利用者の所得状況によって規定される(措置制度の廃止の弊害・公的責任の後退)利用者本人の利用料負担の問題と扶養義務の負担の問題
(3)福祉法人と営利法人の区分がなくなる?社会福祉法人営利化の進展   

従来のようなサービスがうけられるのか、お金がないと拒否されるのか
    ■措置費なくなり、利用者からの利用量と支援費(代理受領)という費用の助成によって運営費を確保する独立採算制へと移行。多角経営化・営利化をすすめざるを得ない状況に迫られる
    ■利用者にとっては、差額徴収や自己負担分のサービスの上乗せが公然とおこなわれることが配
    ■社会福祉法人の営利化が営利企業の施設経営への参入を促進する危険とりあえず第1種社会福祉事業への営利企業の参入は禁止(社会福祉法60条)

  (4)契約できない人のための制度でありながら契約を求める「地域福祉権利擁護事業」                 消費者保護的な権利擁護では生存的は保障されない!
    ■成年後見制度な補完として昨年十月から実施されているが、「生活支援員」の不足等、積極的に活用されていないのが現状
    ■今回の法「改正」によって、この事業が社会福祉事業として法的に位置づけられたこともあり、制度利用にあたっての利用料が徴収される問題、痴呆性高齢者・知的障害者・精神障害者に対象を限定する問題
    ■市町村社会福祉協議会で本当に実施できるのか実効性が問われているアリバイ的事業という批判 公的責任で実施すべき事業
【4】今後の課題

(1)学習運動・知らせる運動
   (2)生活実態・切実な要求の掘り起こし
   (3)国に対する働きかけの強化
■選択できるだけの基盤整備・・・プランの拡充・推進 緊急整備背計画の策定
 ■利用者負担の軽減と親・家族負担の撤廃・・・国会請願署名の推進
 ■利用者保護(権利・利益を守る)システムの確立
   ・・・地域福祉権利擁護事業・苦情解決・第三者評価への提言・運動
 ■障害者関係予算の増額
 (4)自治体に対する働きかけの強化
  支援費支給制度における都道府県・市町村の役割と検討事項にそった働きかけの必要性・・・自治体独自施策の拡充、後退を許さない運動と連動財政支援求めるなど国に対する意見書採択運動
 ■地域において実質的に企業参入させない取り組みの必要性
  ・・・社会福祉法人等のネットワークのむ強化 福祉問題への機敏の対応
 ■企業等の悪質な福祉サービスを監視する取り組みの必要性
  ・・・法文化された権利擁護・苦情解決等の積極的な活用
 ■利用者の尊厳・権利を尊重した実践を構築する必要性
  ・・・詳細なマニュアルによる実践(ロボット化)契約以上のことは禁止
 ■地域における福祉全体を拡充する視点と運動の必要性
  ・・・利用者・福祉関係者・地域住民との連携強化と自治体への働きかけ企業福祉では出来ないこと
  (5)介護保険制度の改善を求める運動との連動
   「構造改革」の突破口としての介護保険を見直させることの意義

介護内容を制度で一元的に限定することは、私のように介護だけではなく日常生活の全てが、介護支援制度として盛り込まなければならない。「はみ出し・持ち出し等」と言う事がないように個人の生活環境などに合わせた介護計画が立てられるようにすべきである。

 

社会福祉構造改革の詳細について。