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ヌーベルバーグ

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Masculine Singular: French New Wave Cinema
Genevieve Sellier
Duke University Press, 2008


「男性単数」という題名のヌーベルバーグに関する本。作者はジュヌビエーブ・セリエ Genevieve Sellier という女性で、英語の訳者もクリスティン・ロス Kristin Ross という女性です。女性の立場から、カイエ・デュ・シネマ派の男性たちの独断的な作家主義とか女性の描き方とかを批判しているのかと思ったら、思ったほどカイエ・デュ・シネマ派には焦点を当てていませんでした。トリュフォー、ゴダール、シャブロルの初期作品について書かれてはいるけど、あまり印象に残りませんでした。

女性の解放 (emancipation) というのがキーワードのようで、中心となる女優はジャンヌ・モローとブリジット・バルドー。1956年から1962年までの重要な作品における女性の描き方を論じているので、トリュフォーとゴダールがそれぞれの女優を使った「突然炎のごとく」(1962)と「軽蔑」(1963)はかなりあとになってからということになります。むしろ、ロジェ・バディムやルイ・マルによる彼女たち主演作のほうに興味が向きます。バディム監督、バルドー主演の「素直な悪女」はまだ見たことないし、マル監督、モロー主演の「恋人たち」も若いころ見たきりなので、あらためて見てみたい。アラン・レネやアニュエル・バルダといった、いわゆる左岸派のこの頃の映画も論じており、当時の映画雑誌の批評がどんなだったかを紹介しているのも、本国の人が書いた本ならでは。

モロー、バルドー以外では、エマニュエル・リバを論じている個所が印象的で、もちろん「24時間の情事」が中心なんだけど、メルビルの「神父(司祭)レオン・モラン」やジョルジュ・フランジュの「テレーズ・デケイルー」にも言及しています。前者は米版VHSで持っているけど、後者は見ることができるのでしょうか。

訳者のクリスティン・ロスには "Fast Cars, Clean Bodies: Decolonization and the Reordering of French Culture" という面白そうな本があるのですが、参考図書の中から私が米アマゾンで安い古本を注文したのは Lynn A. Higgins の "New Novel, New Wave, New Politics: Fiction and the Representation of History in Postwar France" というのと、Jefferson T. Kline の "Screening the Text: Intertextuality in New Wave French Cinema" という本でした。後者は男性のようですが、女性の視点から男性中心の映画や社会を論じているのを読むのも面白いんじゃないかと思うようになりました。 ボーボワールの「第二の性」というのも読みたくなりました。

1956年から1962年までのヌーベルバーグ作品でチケット販売数が10万枚を超えたもののリストが巻末にあったので、それを掲載しておきます。
  • 素直な悪女 (1956年12月) 173,000枚
  • 死刑台のエレベーター (1957年2月) 120,200枚
  • 恋人たち (1958年11月) 451,470枚
  • いとこ同志 (1959年3月) 258,550枚
  • 今晩おひま? (1959年5月) 150,400枚
  • 大人は判ってくれない (1959年6月) 261,000枚
  • 24時間の情事 (1959年6月) 160,360枚
  • 危険な関係 (1959年9月) 640,000枚
  • 二重の鍵 (1959年12月) 239,200枚
  • 勝手にしやがれ (1960年3月) 259,000枚
  • 雨のしのび逢い (1960年5月) 140,930枚
  • 地下鉄のザジ (1960年10月) 126,540枚
  • 昨年マリエンバードで (1961年9月) 141,970枚
  • 突然炎のごとく (1962年1月) 210,065枚
  • 私生活 (1962年1月) 241,720枚
  • 5時から7時までのクレオ (1962年4月) 111,148枚
  • 女と男のいる舗道 (1962年9月) 148,010枚

「今晩おひま?」は、ジャン・ピエール・モッキー監督、ジャック・シェリエ、シャルル・アズナブール、アヌーク・エイメ出演。

(シネシャモ日記2009年7月20日)

A History of the French New Wave Cinema
Richard Neupert
The University of Wisconsin Press, 2002

ヌーベルバーグに関する本。50年代のフランス映画の社会的、経済的、美学的考察と、50年代後期から60年代初期の重要作品の詳細な研究。


The New Wave

Peter Graham
Doubleday, 1968


古本を入手しました。ヌーベルバーグに関する英語の本には必ず参考図書として挙げられている本。ピーター・グレアムという人がヌーベルバーグに関する主要なエッセイを集めたものです。一応目次だけ挙げておきます。7は1の続きで、8は4の続きのようです。

  1. トリュフォーへのインタビュー (カイエ・デュ・シネマ、1962)
  2. アストリュック/新しい前衛の誕生:カメラ万年筆 (エクラン・フランセ、1948)
  3. バザン/映画言語の発展 (「映画とは何か1」、1958)
  4. ジェラール・ゴズラン/アンドレ・バザンをたたえる (ポジティフ、1962)
  5. シャブロル/小さなテーマ (カイエ・デュ・シネマ、1959)
  6. ゴダール/アストリュックの「女の一生」 (カイエ・デュ・シネマ、1958)
  7. トリュフォーへのインタビュー (カイエ・デュ・シネマ、1962)
  8. ジェラール・ゴズラン/アンドレ・バザンをたたえる (ポジティフ、1962)
  9. バザン/作家主義 (カイエ・デュ・シネマ、1957)
  10. ロベール・ベナユン/裸の王様 (ポジティフ、1962)


Godard

Richard Roud
Thames and Hudson, 1970


シネマワン・シリーズの1冊。1969年の「東風」までを論じています。作品ごとではなく、テーマごとです。


Andre Bazin
Dudley Andrew, 1978


アンドレ・バザンの伝記です。バザンはフランスの映画批評家で、「カイエ・デュ・シネマ」の創刊者です。トリュフォーやゴダールに大きな影響を与えました。彼がいなければヌーベルバーグはなかったかもしれません。もともと病弱だったのですが、1958年に40歳の若さで亡くなりました。これからヌーベルバーグが世界を席巻しようというときでした。

20年以上前に読んだきりなので、あらためてじっくり読んでみたいです。

バザン自身の批評は「映画とは何か」というタイトルで4巻に分かれて出ています。まだ、あるのかな。アメリカでは “What Is the Cinema?” というタイトルで2巻出ています。日本語訳は分かりにくいので、英語訳を買ってみようかな。でも、原文そのものが分かりにくいければ、英文も分かりにくいのだろうか。



Cahiers du Cinema, the 1950s:
Neo-realism, Hollywood, New Wave
Edited by Jim Hiller
Harvard University Press, 1985


1950年代にカイエ・デュ・シネマ誌に掲載された評論を集めたものです。1960年代のも持っています。70年代以降のもあるようですが、今のところ興味ありません。

大きく次のように分かれています。

  1. フランス映画
  2. アメリカ映画
  3. イタリア映画
  4. 論争

第1部の「フランス映画」には、ジャック・ベッケルの「現生に手を出すな」をトリュフォーが批評したもの、ロジェ・バディムの「大運河」をゴダールが批評したもの、バザン、リベット、ロメールら6人がフランス映画について論じた座談会、ゴダール、リベット、ロメールら6人が「24時間の情事」について論じた座談会などが収められています。

第2部の「アメリカ映画」は、さらに4つに分かれています。アメリカ映画全体、ニコラス・レイ論、映画作家、ジャンルの4つです。「アメリカ映画全体」には、ロメール、リベット、バザンの文章が収められています。「ニコラス・レイ論」では、トリュフォー、ロメール、ゴダールらが異なる作品を批評しています。「映画作家」には、ハワード・ホークス、オットー・プレミンジャー、ヒッチコック、フリッツ・ラング、サミュエル・フラーの作品の批評が収められています。「ジャンル」には、シャブロルの「スリラーの進化」と、2本の西部劇をバザンが批評したものが収められています。

第3部の「イタリア映画」には、デ・シーカの「ウンベルトD」をバザンが論じたものや、ロッセリーニの「イタリアの旅」をロメールが批評したもののほかに、ロッセリーニへのインタビュー記事も収められています。

第4部の「論争」は、2つに分かれています。批評論とシネマスコープ論です。批評論は作家主義が中心で、黒澤明と溝口健二に関する3人の批評家の文章も収められています(「カイエ・デュ・シネマ」誌は、黒澤明が大嫌いで、溝口健二が大好きでした。バザンは黒澤明も評価していたようです)。シネマスコープ論は、トリュフォー、リベット、ロメールの意見が掲載されています。みんなシネマスコープ賛成派です。

オマケとして、1951年と、1955年から1959年までの同誌のベスト20が載っていて、興味深いです。1959年には「24時間の情事」や「大人は判ってくれない」といったヌーベルバーグ作品を押しのけて、溝口健二の「雨月物語」が1位に輝いています。日本人はもっと溝口健二を誇りにしよう!!

さらに、1958年に選出した映画史上ベスト作品というのも掲載されています。まず監督を選んで、それから代表作を選んだようです。だから、実際には監督の順位です。

  1. サンライズ(ムルナウ、アメリカ、1927)
  2. ゲームの規則(ルノワール、フランス、1939)
  3. イタリアの旅(ロッセリーニ、イタリア、1953)
  4. イワン雷帝(エイゼンシュテイン、ソ連、1945/1958)
  5. 国民の創生(グリフィス、アメリカ、1915)
  6. アーカディン氏(オーソン・ウェルズ、スペイン/フランス、1956)
  7. 奇跡(カール・ドライエル、デンマーク、1955)
  8. 雨月物語(溝口健二、日本、1953)
  9. アタラント号(ジャン・ビゴ、フランス、1934)
  10. 結婚行進曲(シュトロハイム、アメリカ、1927)
  11. 山羊座の下で(ヒッチコック、イギリス、1949)
  12. 殺人狂時代(チャップリン、アメリカ、1947)

Cahiers du Cinema, the 1960s
1960-1968: New Wave, New Cinema, Reevaluating Hollywood
Edited by Jim Hiller
Harvard University Press, 1986


終わりのほうに1960年から1968年までの各年のベスト20が載っています。まず、驚くのが、ヌーベルバーグ真っ只中の1960年に、アントニオーニの「情事」、ゴダールの「勝手にしやがれ」、トリュフォーの「ピアニストを撃て」を抑えて、溝口健二の「山椒大夫」が1位になっていることです。前年の「雨月物語」に続いての1位です。あと、ジェリー・ルイスの映画が毎年ベストテンの常連になっています。

大きく4つに分かれています。

  1. ニューウェーブ/フランス映画
  2. アメリカ映画: 賞賛
  3. アメリカ映画: 再評価
  4. ニューシネマ/ニュークリティシズムに向かって
1968年の5月革命に向けて、どんどん政治的になっていくし、難解になっていくしで、後半はちょっと勘弁してほしい。

1965年に発表された戦後20年間のフランス映画ベスト10を挙げておきます。

  1. すり(ブレッソン、1959)
  2. 歴史は女で作られる(オフュルス、1955)
  3. 黄金の馬車(ルノワール、1953)
  4. オルフェの遺言(コクトー、1960)
  5. コルドリエ博士の遺言(ルノワール、1961)
  6. カラビニエ(ゴダール、1963)
  7. 24時間の情事(レネ、1959)
  8. 快楽(オフュルス、1952)
  9. ミュリエル(レネ、1963)
 10. アデュー・フィリピーヌ(ロジェ、1963)

トリュフォーは商業主義に堕したとみなされて評価が下がったらしく、27位にやっと「突然炎のごとく」が出てきます。


The New Wave: Truffaut, Godard, Chabrol, Rohmer, Rivette
James Monaco, 1976


ヌーベルバーグの代表的な監督5人についての本です。いずれもカイエ・デュ・シネマ誌の批評家出身です。トリュフォーに4章、ゴダールに5章、シャブロル、ロメール、リベットに1章ずつ割り当てられています。それぞれ、ほぼ年代順に作品を論じています。序論の副題、「カメラが書く」となっているように、作家主義に基づいています。昔は、こういう個々の映画作家を美学的に論じるものが好きでしたが、最近は、映画を総体的に論じたもののほうが好きです。ヌーベルバーグも、昔は夢中でしたが、最近はそれほどでもないです。でも、とてもなつかしい一冊です。


Six Moral Tales
Eric Rohmer
Lorrimer Publishing, 1980


エリック・ロメールによる教訓談シリーズの6本の映画を小説化したものです。フランスで1975年に出版された本の英訳です。その6本とは、「モンソーのパン屋の少女」、「シュザンヌの生き方」、「モード家の一夜」、「コレクションおんな」、「クレールの膝」、「愛の昼下り」です。


Eric Rohmer: Realist and Moralist
C.G. Crisp
Indiana University Press, 1988



The Taste for Beauty
Eric Rohmer
Cambridge University Press, 1989

エリック・ロメールの評論集です。日本でも1988年に「美の味わい」という訳本が出ました。当時、図書館で借りて読んだのですが、あまりよくわかりませんでした。もっとわかりやすいかなと思って英訳本を購入したかったのですが、5千円近くするので手が出せなかったところ、ヤフーオークションに1500円で出品されていました。来月、アメリカ版DVD「六つの教訓物語」が出るので、グッドタイミング!(2006年7月、ヤフーオークションで購入)


French New Wave
Jean Douchet
D.A.P./Distributed Art Publishers, 1998



The French New Wave: An Artistic School
Nichel Marie (Translated by Richard Neupert)
Blackwell, 2003

フランスで1997年に出版された "La Nouvelle Vague: Une ecole artistique" の英訳本です。全部で200ページ足らずの小さな本ですが、面白いです。フランス人が書いたからか、より直接的にヌーベルバーグを体験しているような気持ちになります。この本をヌーベルバーグ研究の出発点にしてみようかな。(2006年3月に紀伊国屋から購入)

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