青い山脈
「青い山脈」のDVDを購入しました。といっても、1949年のキネ旬で、小津の「晩春」に次いで2位になり、黒澤の「野良犬」より上位にある今井正監督、原節子、杉葉子ら主演の名作ではありません。1963年の吉永小百合と浜田光夫の「青い山脈」です。1949年のは前後編あわせて約3時間ですが、こっちは1時間40分ほど。
オマケの予告編からすると、1963年の正月映画らしい。併映は何か。Google で検索して見つけた「日活、映画製作再開以降の年度別お正月映画」によると、1963年正月に上映され、併映は「いつでも夢を」だそうな。えっ!?吉永小百合と浜田光夫コンビの二本立てってありうるのだろうか。吉永小百合は1962年に「キューポラのある街」で好演し、橋幸夫とのデュエット曲「いつでも夢を」のヒットによって暮れの紅白に出演し、飛ぶ鳥を落とす勢いだったにちがいない。
でも、私のお目当ては吉永小百合ではなく、芦川いづみ。1949年のでは原節子が演じた女教師を演じています。クレジットタイトルでは、出演者の一番最初に「吉永小百合、浜田光夫、田代みどり、高橋英樹」と出て、一番最後に「芦川いづみ、南田洋子、二谷英明」と出るので、あきらかに若手スターを前面に出して、彼女はサポートする感じ。でも、話の中心にいるのは芦川と吉永という保守的な学校の雰囲気になじめない先生と生徒で、この清純派の先輩と後輩が主演であることは間違いない。
ただ、芦川いづみは女教師という適役をもらいながら、なんかさえない。もともとおとなしい人なのかもしれないけど、27歳になって若い頃のはつらつさが消えちゃって、本当に地味な人になっちゃったのかなあ。生真面目な役だからかなあ。元気いっぱいの吉永小百合と比較しちゃうからかなあ。他の出演者では、芸者の南田洋子が良い。「パイナップル・プリンセス」田代みどりはまだこのとき14歳だったのか。高橋英樹は、1963年7月公開の「男の紋章」でスターの地位を確立したそうだから、半年前の「青い山脈」のころはまだイメージが定まっていなかったらしい。彼はいつもきちんとした髪型と格好をしている印象があるけど、「青い山脈」では少しぼさっとした髪型で無精ひげを伸ばしているのでワイルドに見えるし、「ガンちゃん」というユーモラスな役柄なので、とても好感が持てます。彼の出演作を調べてみると、1963年から1970年ぐらいまでかなりの数の仁侠映画に主演しており、東映だけじゃなく日活でも数多くの仁侠映画が作られていたことにビックリ。毎年10本ほどの作品に主演しているのも今からは考えられない。
役員会が思ったより長い。ここには高橋英樹以外の若手が出てこずに、昔からの人や助演者たちに活躍の場を与えています。藤村有弘、北林谷栄、三島雅夫、下元勉、左ト全、高橋とよ、近藤宏、井上昭文、中村是好、織田政雄らが演じる教師やPTA役員が、芦川いづみの女教師が正しいか、生徒たちが正しいかを議論するのです。
この前見た「真昼の死闘」もそうだったけど、色がとても鮮やかです。技術には詳しくないのですが、デジタル処理すれば、オリジナル以上に鮮やかになるのでしょうか。ワイドスクリーンは、テレビの向こうにもう一つテレビがあるような感じで、私のテレビの小さい画面では少々見づらいのですが、昔テレビで左右ちょん切られたのを見るよりは良いと思います。というのも、監督(西河克巳)らがていねいに構図を決めているのがよくわかるからです。ただ、引きの構図から寄りの構図に移るときに、カットを割ればスムーズにいくのにと思える箇所で、ズームを使っているのがチョクチョクあるのに違和感を感じました。たぶんこの頃流行だったのでしょうが、ドキュメンタリー風な作品には似合うけど、ていねいに構図を決めている作品だと唐突な感じがします。
1949年の名作は20年ほど前にレンタルビデオを借りて見たきりなので、おぼろげな記憶しかないのですが、1949年のより1963年のほうが古臭く感じます。民主的な考え方を1949年に主張するのは新しかったかもしれないけど、1963年だとちょっと苦しい。生徒がキスしたかどうかでもめるのも、なんだかなあ。何よりも古臭いのが、おなじみの主題曲を歌う神戸(かんべ)一郎の歌い方で、1949年のサントラをそのまま使用しているのかと思ったぐらいです。神戸一郎がこの時何歳かと調べたら、なんと24歳という若さでした。イギリスではビートルズが「プリーズ・プリーズ・ミー」でブレイクしようとしているときに、こんな歌い方でいいのか!(2006年9月6日のシネシャモ日記から転記)