top

私の小さな文化村HOME/案内/映画/音楽/記録/日記

映画天国

日本

Nikkatsu Noir



Nikkatsu Noir (Criterion Eclipse Series 17)

アメリカのクライテリオンから発売されたDVD5枚組「日活ノワール」。ファンタシウムで購入して6700円ほどでした。その中で一番古いのが石原裕次郎と北原三枝主演の「俺は待ってるぜ」(1957)。蔵原惟繕監督のデビュー作。裕次郎は前年にデビューしたばかり。キネ旬の男優全集によれば、1957年2月に主題歌が10万枚を超す大ヒットとなり、映画は10月に公開されたらしい。じゃあ、これはヒット曲に合わせて作られた映画なのか。映画のために歌が作られたようにしか思えないんだけど。

IMDb のユーザー評には「ちょっとスローすぎる」って書いてあるけど、たしかにハリウッド映画の基準からすると、ゆっくりすぎるかもしれない。でも、最初の何十分間かの石原と北原のゆったりとしたふれあいがいい。特に、意外にも二人にとって希望のあるうれしいラストだったので、もう一度見たら、安心して二人の静かなやりとりが楽しめそう。背景が抜群で、すぐ前を汽車が通るレストラン、近くの海の防波堤など、白黒の映像がとても印象的。

なかなかギャングが登場しないんだけど、静かに進行していくうちに潜在的な暴力が充満していく感じがいい。ギャング側の二谷英明、杉浦直樹、深江章喜、榎木兵衛らが、まだギャングを演じるのに慣れていないのか、手加減を知らない素人みたいなギラギラさがあって、「仁義なき戦い」を見ているような新鮮さを感じました。下からライトが差す床のあるキャバレーなんか、メルビルのフランス映画を見るようだけど、メルビルがこの種の作品を手掛け始めるのも同じころ。もっとも、その前からフランスには「現金に手を出すな」などの暗黒映画があったけど。音楽は佐藤勝で、ジャズやスローなロックンロールっぽいのとかいろいろあるんだけど、最後は歌謡曲で締めくくる。製作水の江滝子、脚本石原慎太郎、撮影高村倉太郎。

9月7日に書いた「俺は待ってるぜ」以外の4作品は、「錆びたナイフ」(1958)、「13号待避線より・その護送車を狙え」(1960)、「拳銃残酷物語」(1964)、「拳銃(コルト)は俺のパスポート」(1967)。すべて白黒でワイドスクリーン(「俺は待ってるぜ」はスタンダードサイズ)。

宍戸錠主演の二作品にシビレました。古川卓巳監督の
「拳銃残酷物語」は大藪春彦原作で、宍戸錠、小高雄二、草薙幸二郎、井上昭文が現金輸送車を襲撃する話です。襲撃を依頼する側のサングラスにちょび髭のスマートな人物が雰囲気があって良かったのですが、たぶん梅野泰靖(やすきよ)だと思います。襲撃の計画が映像で示され、実際にそのとおりにことが進むのですが、運転者と助手席の警備員が外に出てこないのが誤算で、防弾ガラスだからどうにもならない。彼らを乗せたまま輸送車を大型トレーラーに積んで隠れ家に逃げるあたりが面白かった。隠れ家での攻防も迫力がありました。一味が集まって計画を立てるのが廃墟のような建物で、二年後のメルビルの「ギャング」を思わせるのですが、「ギャング」の寡黙な登場人物と違って、宍戸錠はすぐキレるし、すぐ殴る。

野村孝の
「拳銃は俺のパスポート」の宍戸錠は寡黙で、サイレンサー付きのライフルで、ある組の親分を殺す最初の20分ぐらいはクールで良かった。ただし、クールなジャズっぽい音楽にときどきマカロニウエスタン調のテーマ曲が挿入されるのはいかがなものか。ま、全体がフランスのフィルムノワールとイタリアのマカロニウエスタンに日本風な味付けをしたものと思えば、雑多な音楽も許容しなければいけないとは思うけど。宍戸錠と相棒のジェリー藤尾のコンビがお似合いで、この二人が隠れるレストラン兼旅館の女将として武智豊子が出てきたり、港で働く野呂圭介(どっきりカメラ)や高木均(ムーミンパパ)がレストランの客としてやってくるあたりから、クールさが吹っ飛んで、庶民的になる。そこで働く小林千登勢が不幸な生い立ちなのも日本風に湿っぽい。しかし、最後の殺風景な埋め立て地での親分たちとの対決がバカバカしくも爽快だし、その前に錠が兵器を作るのを丁寧に描いているのに感心しました。

鈴木清順の
「その護送車を狙え」は、途中で少し挿入されるストリッパーの踊りがセクシーでとろけそうでした。あまりに短くて、とろけずにすみましたが。主人公が水島道太郎なのがイカサないのですが、サングラスをかけて車をぶっ飛ばす渡辺美佐子はカッコよかった。ロープで縛った二人を乗せたガソリン車からガソリンをたらして、少し走らせあとで道にたれたガソリンに火をつけて、火が車に届くまでに二人は脱出できるかというのが最大の見せ場のようですが、火がなかなか車まで届かなくて間延びしちゃったのが残念です。悪党側の中心が東映でも悪玉だった安部徹で、私生活でも悪い奴に違いないと思えるぐらいの悪い人相で、実際に私生活でも、その筋の人から親分と呼ばれるぐらいなんだけど、実は物腰の柔らかい人だというのが、以前「徹子の部屋」に出ていたときに判明しました。1993年に亡くなられているようです。

舛田利雄の
「錆びたナイフ」は、今から30年前、大学4年生だった1979年9月に新宿座のオールナイトで見ています。裕次郎特集で、「錆びたナイフ」以外の上映作品は「夕陽の丘」「赤いハンカチ」「泣かせるぜ」「二人の世界」でした。「錆びたナイフ」が4点で、ほかは3点とか2点とか付けています。たぶん、ほかのはムードアクションとか呼ばれるもので、かったるかったのでしょう。「錆びたナイフ」は、テンポが良かったし、裕次郎も若くてほっそりしていた。でも、今回見たら、それほど面白くなかった。「俺は待ってるぜ」よりも描き方のテンポは速いけど、描かれている内容はけっこうもどかしい。

北原三枝は、「俺は待ってるぜ」の影のある女性が最高でしたが、ここでは生真面目なルポライターとして登場し、台詞の内容が固くて、「俺は待ってるぜ」のように心がこもっていない。ここでも最後に二人は画面の奥に去っていくのだけど、映画の中でそんなに心の触れ合いがあったとは思えないので、とってつけたような感じ。小林旭はまだほんの若造で、この翌年から「銀座旋風児」や「ギターを持った渡り鳥」で主演になるなんて信じられないぐらい。宍戸錠は初めのほうであっという間に殺されてしまい、もしかしたら生き返って再登場するんじゃないかと期待したぐらい。

杉浦直樹とのトラックでも追っかけとその後の乱闘が唯一記憶に残っていたけど、今回もこれのみが見どころって感じでした。本当は善人そうな杉浦直樹が精いっぱい悪人を演じているのが面白いので、この二人の対決を最後に持ってくればよかったのに。実際には、杉浦の背後に黒幕がいて、最後はその黒幕との決闘だけど、年齢差がありすぎて、黒幕のほうが気の毒になるほど。しかも、黒幕が市全体を支配している広がりが感じられないので、腐敗を一掃したというスカッとした感じがなく、老人一人をやっつけたという感じしかしない。(シネシャモ日記2009年9月7日、9月12日)

go to top