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シネシャモ
Movies Begin
2003年4月 第1回上映

記念すべき第1回上映は、DVD5枚組の "Movies Begin" です。
Kino International というアメリカの会社から出ています。1万円ほどでアメリカのアマゾンから購入しました。各DVDのタイトルは次のとおりです。
- The Great Train Robbery and Other Primary Works
- The European Pioneers
- Experimentation and Discovery
- The Magic of Melies (メリエスの短編集。今回は取り上げません。)
- Comedy, Spectacle and New Horizons
Volume 1: The Great Train Robbery and Other Primary Works
(第1巻:「大列車強盗」その他の重要作品)
- マイブリッジに敬意
- エジソンの短編映画 8本 (1894-1897)
- リュミエールの映画 15本 (1895-96)
- 月世界旅行(1902)
- 記録映画 8本
- いかがわしい映画 4本
- 大列車強盗(1903)
- ダム一家とその犬
- 黄金のカブトムシ
マイブリッジは、連続写真を開発した人です。パラパラ漫画のように、連続写真を続けてみると、映画のような動きになります。走る馬を撮ったものが有名ですが、裸の人間を撮ったものもあります。ここに収められているのは、裸の女性が動くところを撮った連続写真です。背後の壁に10センチ間隔で横の線が引かれており、いかにも人体の動きを科学的に記録しようという意図らしいのですが、それでもエロチックです(Linda Williams が "Film Body: An Implantation of Perversions" というエッセイで指摘しています)。これを最初に収録しているこのボックスセットは、なかなか曲者です。
エジソンの短篇は、それぞれ30秒ほどしかないので、8本で5分足らずです。ストーリーはありませんが、面白いものを見せようという意図のようです。中年の男女がキスをしている作品や、女学生が寝巻き姿で枕投げをしている作品はノゾキ趣味だし、女性ダンサーが変な衣装をまとって踊る作品、筋肉ムキムキの男性がポーズをとる作品、ボクシングや闘鶏を撮った作品は見世物的です。
リュミエールの短篇15本も全部で10分ほどしかありません。全部屋外で撮影されたドキュメンタリーです。リュミエールの映画は、単に自然、人物、出来事を撮影しただけのように思われがちですが、さわやかな詩情といったものが感じられて、私はエジソンやメリエスより好きです。海辺で遊んでいる子供たちとその母親は、まるでルノワールの絵から抜け出してきたような装いです。伴奏のピアノがやさしい音を奏でています。
メリエスの「月世界旅行」は、とても有名な作品です。今の特撮ものの原点です。スタジオで撮影したものはあまり好きじゃないけど、奇妙な絵には驚かされます。あくまで舞台の人みたいで、映画もその延長のようです。
記録映画は、とても興味深いです。私は乗り物から撮影した風景が大好きなので、コロラドの山間を汽車から撮ったものや、ニューヨークの高層ビルを川の船から撮ったものなんか、たまりません。牛乳の入った大きな容器を載せた荷車を引いて主人のお手伝いをする牛乳犬を可愛いらしく撮った作品もあります。雪化粧をしたモスクワの風景をけっこう長く撮影した作品は、当時のモスクワの様子が興味深いです。サンフランシスコ地震のあとの様子を撮影したものもあります。
いかがわしい映画というのは、Blue Movies のことです(なぜ Blue がいかがわしいかというと、Brewer's Dictionary of Modern Phrase & Fable によれば、中国の売春宿の壁が青く塗られていたからです)。1905年ごろ撮影された1分前後の小コントが4本収められていますが、正面から固定カメラでワンショットで撮影しているので、まるで小劇場でコントを見ているような感じです。下品な劇場が火事になって、出演している女性たちが下着姿で飛び出してきたり、すごく太った女性がコルセットを着たり、ショーガールが衣装を着替えたりするといった内容です。当時の下着は、素材が厚いし、ほぼ全身を覆っているので、まったくエロチックじゃないです。一番最初のマイブリッジの連続写真のほうが、はるかにドギマギしてしまいます。
エドウィン・S・ポーターの「大列車強盗」は、メリエスの「月世界旅行」と同じく、とても有名な作品なので、ここでは割愛します。「ダム一家とその犬」も、特に面白いものではありません。
第1巻最後の「黄金のカブトムシ」は、フランスのパテ社が1907年に作った映画です。昆虫の羽根をつけた女性が噴水や花火に変身するのを正面から固定カメラで撮ったもので、メリエス同様に、舞台のマジックショーを見ているようです。珍しいのはカラー作品だということで、フィルムに手書きで着色しています。背景は着色されておらず、女性、噴水、花火のみ着色されています。
(これで第1巻は終りです。)
Volume 2: The European Pioneers
(第2巻: ヨーロッパの先駆者たち)
- リュミエール兄弟 Louis and Auguste Lumiere
- バート・エーカーズ Birt Acres
- R.W.ポール R.W. Paul
- ジョージ・アルバート・スミスGeorge Albert Smith
- シーフィールド写真会社 Sheffield Photgraphic Co.
- ハーガー&サンズ Haggar & Sons
- バムフォース Bamforth and Company, Ltd.
- ウィリアムソン James A. Williamson
最初に、1分ほどのリュミエール兄弟の映画が12本収められています。第1巻に収められた、海岸で遊ぶ子供たちをルノワールの絵のようにとらえた作品ほどの傑作はありませんが、「工場の出口」、「列車の到着」、「水をかけられた水まき人」といった有名な作品が収められています。
英語のナレーションが入っていて、作品を解説しています。
バード・エイカーズは、ドーバーの荒い海を撮影したものです。
R.W. ポールは、イギリス初期の人です。画面の中に画面があったり、人形を使って自動車事故を再現したり、いろいろ工夫しています。のんべえの心を入れ替える7シーンから成るドラマなんて、けっこうしっかりしています。
ジョージ・アルバート・スミスもイギリス初期の人です。ブライトン派と呼ばれるらしいです。まだ、ぎこちないけど、クローズアップとか、ショットのつなぎなど、1900年ごろから、いろんな話法を開拓していたようです。夢から現実に戻るとき、画面をぼかすという手法も、すでに使用しています。男の子が虫眼鏡でおばあさんや猫をのぞく作品は、クローズアップの使用が目を引きますが、作品自体がほほえましいものです。あと、女性が、何かの薬品をストーブにくべたために、爆発して、煙突から空に飛び出して、死んでしまい、墓場から幽霊になって出てくるというのも、手法が進んでいるだけでなく、作品自体が面白いです。ブライトン派について詳しく知りたくなりました。
そのほかでは、ウィリアムソンの作品が面白いです。特に面白かったのが、男がカメラに近づいてきて、口の大写しになり、最後にカメラとカメラマンを食べてしまう作品と、読書に夢中の男がローラー車の下敷きになってペチャンコにされてしまう作品です。通りかかった二人の男性が自転車の空気入れで男に空気を送り込んで元に戻すと、男がお礼を言って、ふたたび読書しながら歩き始めます。初期のイギリス映画がこんなに面白いなんて初めて知りました。
Volume 3: Experimentation and Discovery
(第3巻: 実験と発見)
- ヘップワース社 Hepworth Mfg. Co.
- クリックス・アンド・マーティン社 Cricks and Martin
- キネトー社 Kineto Production Co.
- パテ兄弟 Pathe Freres
- エジソン社 Edison Manufacturing Co.
ヘップワース社は、短編が5つ収められています。一番有名なのが"Rescued by Rover"
で、ローバーという名前の犬が、誘拐された赤ちゃんを見つけて、主人に知らせるという話です。ローバーは、名犬ラッシーや名犬リンチンチンの先駆者(先駆犬?)的存在らしいです。20世紀初頭の作品にしては、ショットのつなぎ方がうまく、赤ちゃんのいる場所と自宅をローバーが往復する様子をスムーズに描いています。
クリックス・アンド・マーティン社は、"A Visit to Peek Frean & Co." (1906) という10分ほどの素晴らしいドキュメンタリーが収められています。世界的に有名なビスケット工場でビスケットが製造され出荷される様子を順番に撮っているものですが、きちんと作っているので、映画の流れがとてもスムーズです。バックのピアノの演奏も愛情がこもっています。
キネトー社の作品も10分ほどのドキュメンタリーで、炭鉱労働者の一日を描いたものです。でも、上記ドキュメンタリーほどの一貫性はありません。女性が力仕事をしている様子が珍しいです。
フランスのパテ兄弟の作品は、1905年ごろのものが10作品ほど収められています。驚きなのが「アリババと40人の盗賊」と「アラジンの魔法のランプ」で、なんとカラー作品です。たぶん直接フィルムに着色しているのだろうけど、小さいフィルムに細かく色を塗る作業って、考えただけで気が遠くなりそうです。悪趣味でケバケバしいから、余計圧倒されちゃいます。でも、初期の映画は正面から固定カメラで撮ったものが多く、首を動かさずに演劇を見ているような感じだから、なんだか窮屈です。いつごろからカメラがダイナミックな動きをするようになるのだろう?
Volume 5: Comedy, Spectacle and New Horizons
(第5巻: コメディ、スペクタクル、新たな展望)
- The Policemen's Little Run (1907)
- Troubles of a Grass Widower (1908)
- Nero, or the Fall of Rome (1909)
- Onesime, Clock-Maker (1912)
- Winsor McCay and His Animated Pictures (1911)
- Making an American Citizen (1912)
- The Girl and Her Trust (1912)
- The Bangville Police (1913)
1910年前後になると映画の話法もかなり発展してきて、演劇を正面から首を動かさずに見ているような窮屈さが緩和されてきます。
"The Policemen's Little Run" は、肉を盗んだ犬を20人ほどの警官が追っかけるドタバタ劇です。犬を追いかけて警官が家の壁を登る場面があるのですが、床をはいずるのを真上から撮影しているのがミエミエです。今でも、テレビのコントでたまに見かけます。
"Troubles of a Grass Widower" は、チャップリンに影響を与えたマックス・ランデの主演作です。中流階級のこざっぱりしたチャップリンといった感じです。"grass
widower" というのは、妻が不在の夫という意味で、妻とけんかして実家に帰られてしまった夫が、家事をやったことがないので、家をめちゃくちゃにしてしまう話です。
イタリアは史劇が得意な国で、1910年代には "Cabiria" などの大作がハリウッドにも影響を与えました。"Nero, or the Fall of Rome"(「ネロ、またはローマ帝国の崩壊」)は、その先駆的な作品です。
"Onesime, Clock-Maker" は、主人公の能天気な男が、町を管理する時計をグルグル回してしまったために、町のすべてが早送りで動き始めるというドタバタ喜劇です。夫婦があやしている赤ちゃんが、あっという間にノッポの男性になってしまうのが笑えます。最後まで早送りなので、前衛映画を見ているようです。
"Winsor McCay and His Animated Pictures"は、著名な漫画家ウィンザー・マッケイが原画を書いている様子を見せたあと、その原画によるアニメーションになります。背景が真っ白で、素朴なものだけど、なんか絵が動くだけで感動します。
"Making an American Citizen" は、東欧かどこかからアメリカに移民した粗野な男が、妻を奴隷のように扱う態度を改める話です。男が妻に乱暴を働こうとすると、どこからともなくアメリカ人男性が飛んできて、男をたしなめるというエピソードをいくつか積み重ねています。たとえば、船からアメリカに上陸直後、男が妻に重たい荷物を持たせ、杖で小突いていると、アメリカ紳士がやってきて、重たい荷物を男に持たせ、妻に杖で男を小突くよう促します。そうしたエピソードがいくつか繰り返されるのですが、どうしても男は妻に乱暴を働くのをやめないので、裁判にかけられ、服役を課せられます。服役後、男は、完全なアメリカ人になって、妻にやさしい態度で接するようになります。乱暴な男と従順な妻の演技がオーバーなのが、とてもおかしいです。
"The Girl and Her Trust" はグリフィスの有名な短編です。これは、そのうちグリフィス特集を上映するつもりなので、今回は省略します。
"The Bangvill Police"は、そのグリフィスのパロディです。女性か子供だけが残された家に強盗が押し入ろうとする様子と、助けに来る人を交互に見せる手法がグリフィスは得意ですが、それを茶化しています。家の中でおびえている若い女性は、強盗に襲われると誤解しているだけだし、助けに来る警察隊も間抜けな人たちです。キーストン社が作った作品で、この警察隊はキーストン・コップが初めて映画に登場したものだそうです。
これで第1回上映はおしまいです。次回「忘れじの面影」上映まで、しばらくお待ちください。 |


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