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シネシャモ
(過去の上映作品はこちらで)

2005年1月 第21回上映
チャーリー・チェイス特集
(第二回ニコニコ大会)

今年のニコニコ大会は、去年のニコニコ大会で上映したDVD5枚組 "Slapstick Encyclopedia" で気に入ったチャーリー・チェイスの特集です。Kino Video の "Slapstick Symposium" というシリーズの1本として発売された "The Charley Chase Collection" という6本の短編を収めたDVDを上映します。このハル・ローチ制作作品を集めたシリーズからは他にスタン・ローレルとハロルド・ロイドの短編集が出ているようです。オールリージョンなので、日本製DVDプレーヤーでも見ることができます。

次の6本が収められています。
  1. Mum's the Word (1926)
  2. Long Fliv the King (1926)
  3. April Fool (1924)
  4. Mighty Like a Moose (1926)
  5. Crazy Like a Fox (1926)
  6. All Wet (1924)
チャーリー・チェイスがどんな風貌かは、このサイトなどを参照してください。

最近 Hollywood Party というインターネット上で映画を見ることができるサイトを発見したのですが、そこでチェイスの短編を見ることができます。「サイレント映画」のセクションに「チャーリー・チェイス作品集」として収められています。収録作品は以下のとおりで、すべて1週間105円で、無期限購入だと515円です。ためしに「ブロモとジュリエット」を見てみると、音楽が入っておらず、画質も劣っていますが、鑑賞に堪えられないってほどではないです。この短編、DVD "The Charley Chase Collection" には収められていませんが、オリヴァー・ハーディが助演しているのでDVD "Lost Films of Laurel & Hardy Vol. 3" に収められています。同じフィルムを使用しているようで、こちらも画質は悪いですが、音楽は入っています。
  • Crazy Like a Fox (キツネ狂い)
  • Bromo and Juliet (ブロモとジュリエット)
  • Mum's the Word (他言は無用)
  • Mighty Like a Moose (ムース氏の珍騒動)



チャーリー・チェイスの略歴

"Smile When the Raindrops Fall" という伝記が出ていますが、5千円ほどのハードカバーしかないので、よほど興味がないとキツイですね。

アメリカのメリーランド州バルチモアで1893年に生まれます。1889年生まれのチャップリンより少し年下で、1895年生まれのキートンより少し年上。1940年に46歳で死去。直接の原因は心臓発作ですが、酒好きだったことがたたったようです。

10歳ごろには街頭に立って歌ったりタップダンスをして小銭を稼いでいました。最初は一人でしたが、そのうち街頭芸仲間の少年たちとトリオを組んで、コントもやるようになります。10代半ばになると、劇場に出演することを望むようになり、、寄席(ボードビル)の一座に加入します。

映画に出演し始めたのは1913年からですが、本格的に映画界入りしたのは1914年で、マック・セネットのキーストン社でした。本名のチャールズ・パロット(Charles Parrott) でチャップリンやメーベル・ノーマンドの映画に助演したり、他のコメディアンの作品を監督したりしました。主演作もあります。

1917年にフォックス社に移籍し、1920年まで年10本ほどの短編コメディを監督しました。

1921年にハル・ローチと契約し、当初はスナップ・ポラード主演の短編コメディを監督しました。1924年から短編コメディの主演を務め始めます。1926年まではレオ・マッケリーがほとんどすべて監督していましたが、マッケリーがハル・ローチ・スタジオ全体の指揮を任されたので、1927年からは弟のジェイムズ・パロットが監督するようになります。ちょうどハル・ローチ・スタジオのスタン・ローレルとオリヴァー・ハーディがチームを組んで爆発的人気を呼んだ頃です。

チャーリー・チェイスはその後も亡くなるまで毎年10本から20本の短編コメディに主演し続けました。1929年からトーキー映画に出演し始めますが、歌がうまいことや、作風がスラプスティックよりもシチュエーション・コメディに近いことから考えると、他のスラップスティック芸人よりもうまく乗り切ったようです(トーキーになってからの彼の短編コメディを見たことがありません)。ただストレスがたまって、酒におぼれるようになりました(キートンもそうだけど、トーキーになったことより、大会社でしか映画を制作できなくなって、自由が奪われてしまったということが原因かもしれません)。

Mum's the Word (1926) 24分

仕事を感じさせない金持ちの世界の話で、スラップスティックというより30年代のスクリューボールコメディに近いです(監督のレオ・マッケリーは、のちにスクリューボールコメディの傑作「結婚道中記」を作ります)。スラップスティックの主人公たちは、チャップリン、キートンはもちろん、ちゃんとした身なりのロイドでさえ奇人変人のたぐいですが、チャーリー・チェイスは少々変わっていても、一応常識人の範囲内にとどまっています。チャップリンやキートンの傑作では彼らだけでなく彼らの住む世界でさえ次第に現実離れしたシュールなものに変貌していきますが、チャーリー・チェイスの住む世界は現実的なものにとどまっています。

大まかなストーリーは次のとおりです。チャーリー・チェイスの母親が再婚したのですが、自分に子供がいるのを隠すためにチェイスを自分の召使と偽って屋敷に住まわせます。一方、再婚相手も自分に娘がいるのを隠すために娘をメイドとして住まわせます。そのため、再婚者同士が、相手が執事やメイドと仲がよいのを疑うことになります。こういうのはシチュエーション・コメディだし、スラップスティックと違って、トーキーで作っても作品の質にほとんど影響を及ぼさないでしょう。

チャーリー・チェイスの伝記 "Smile When the Raindrops Fall" によれば、この設定は近親相姦を思わせるので、その後、あまり利用しなくなったそうです。この短編集と "Slapstick Encyclopedia" の両方に収められている傑作 "Mighty Like a Moose" でも、整形した夫婦各々が、相手が自分の伴侶だとも知らず浮気をしていると思い込むのですが、実は家族内で勘違いしているだけで、最後には誤解が解けてますます愛情が深くなるというわけで、微笑ましい設定だと思います。

そのシチュエーションを利用して、たぶん寄席でもやっていたのではないかと思われる芸を見せる次の場面が挿入されています。
 チャーリー・チェイスが母親の再婚相手のヒゲをカミソリでそっている間、メイドがチェイスの靴を履き替えさせようとするので、手元が狂うんじゃないかとハラハラドキドキする場面 (チャップリンほどは洗練されていない)。
 母親の部屋でチェイスが母親と談笑していると、再婚相手がやってきたので、チェイスがベランダへ逃げると、窓のカーテンにチェイスの影が映り、それが再婚相手の動きと一致する場面 (マルクス兄弟の「我輩はカモである」の鏡のシーンほど洗練されていない)。
 母親がチェイスの部屋に来ているのを再婚相手に知られたくないので、椅子に母親を座らせカバーをかけて、その上にチェイスが座る場面。

メイドを演じるのは Matha Sleeper という目が大きくて小柄な可愛い女優さんです。1907年生まれということは、まだ10代だったので、可愛いのは当たり前か。1924年から1926年までチェイスの短編によく出演しています。この短編集に収められた6本のうち、1926年制作の3本の短編 でチェイスの相手役を務めています (この作品のほかに "Crazy Like a Fox" と "Long Fliv the King")。1927年にチェイスの相手役を務めたのは "Flattering Hearts" 1本だけのようです (DVDボックスセット "Slapstick Encyclopedia" に収められています)。30年代もコンスタントに映画に出演し、最後の出演はレオ・マッケリー監督の「聖セントメリーの鐘」(1945)のようです。

Long Fliv the King (1926) 25分

タイトルは「Long Live the King (王様、長生きしてください)」のもじりです。「fliv」は、「しくじる」という意味の俗語「flivver」のことかな。とすると、「王様、ずっとしくじってろよな」ぐらいの意味でしょうか。

マーサ・スリーパー扮する王女は24時間以内に結婚しないと王位に就くことができない。それで、明朝死刑が執行される死刑囚チャーリー・チェイスと結婚することにする。ところがチェイスは無罪が判明し釈放されるので王様になってしまう。側近に悪い奴がいて、王位を奪うためにチェイスを殺そうとするが、チェイスは王女を連れて国外に逃げる。

特に際立ったギャグはないけど、そこそこ楽しめる作品。これも監督はレオ・マッケリー。悪い側近の部下の役でオリヴァー・ハーディが出演してます。この年にローレルとハーディが結成されるのですが、ハーディは10年以上前から映画に出演していました。

April Fool (1924) 12分

この作品集の中には1924年の作品が2本、1926年の作品が4本収められていますが、1924年と1926年に作られた作品の作風が違うのは明らかです。まだ調べていませんが、たぶんレオ・マッケリーが監督に起用されたことにあると思います。1926年の作品はどれも上流階級を舞台にしたシチュエーション・コメディなのに、1924年の2本はスラップスティックです。"April Fool" は単純なドタバタです。4月1日のエイプリルフールに会社の職員がお互いイタズラをするというだけの内容です。もっと洒落た作品でチェイスを好きになった者にとっては、ちょっとガッカリ。チェイスはジミー・ジャンプという名前で登場しますが、たぶんシリーズ化されたのでしょう。

Mighty Like a Moose (1926) 23分
(この部分は、DVDボックスセット "Slapstick Encyclopedia" を鑑賞したシネシャモ第10回上映「ニコニコ大会」で書いたものを転記しています。)

チャーリー・チェイスが主演し、レオ・マッケリーと共同監督です。レオ・マッケリーといえばトーキーになってからの1937年に「新婚道中記」というスクリューボール・コメディの傑作を作っている人で、この短編もスラップスティックよりもスクリューボール・コメディに近い傑作です。チャーリー・チェイスはユーモアのある渋い紳士で、ケイリー・グラントやデイビッド・ニーブンの先祖といった感じです。

出っ歯の夫と鼻が高すぎる妻が、お互い内緒で整形手術をします。同じ病院で手術を行った二人は、病院を出るとき互いに惹かれあい、相手が自分の配偶者だと気づかずに恋に落ちます。そんなシチュエーションからギャグが生まれてくるからシチュエーション・コメディと言っていいのでしょう。スラップスティックのラストは収拾のつかないまま終わってしまう傾向があるけれど、ここでは丸く収まります。それにしても、たんに歯と鼻を直しただけで配偶者に気づかないというシチュエーションは、音がついて、映像がリアルになった今となっては、信じることができない状況ですね。

("Slapstick Encyclopedia" の)第4巻「おかしな女性たち」の最初の短編に登場したゲイル・ヘンリーが、ポルカしか踊れない女性としてダンスパーティのシーンに出演しています。まわりがムードたっぷりにスローなダンスを踊っているのに、彼女とチャーリー・チェイスが陽気にポルカを踊っているのが傑作です。ポルカにウンザリしたチェイスが別の女性を探しているうちに、またゲイルに捕まってしまうのを足元だけで表現するショットが見事。チェイスの足が女性の足に近寄っていくと、その女性の足がどこかに行ってしまい、別の女性の足が近づいてくる。両者の足がダンスをする体勢になり、最初のうちはスローな感じでステップを踏んでいるが、すぐにポルカのステップになるのです。

Crazy Like a Fox (1926) 25分

”Crazy Like a Fox" は「ずる賢い」という意味で、Hollywood Party のタイトル「キツネ狂い」じゃ何のことやらサッパリ。

この作品も、"Mum's the Word" や "Mighty Like a Moose" 同様、うまく収まるはずの状況が誤解によって混乱するというもので、最後には誤解がとけるだろうと安心して見ることができる作品です。マック・セネット率いるキーストン社のドタバタは即興で作られているので、どこに向うのか分からないアナーキーさがありますが、ハル・ローチ・スタジオの作品は、もっと脚本が練られていて、最後はうまく収まるだろうという安心感があります(もっともハル・ローチ・スタジオの全体像を知っているわけではないですが)。

この作品は30年代のスクリューボール・コメディを予感させます。マーサ・スリーパーは金持ちの娘で、父親にたてついて家出する女性で、「或る夜の出来事」のクローデッド・コルベールを思い出すし、頭が変なふりをするチェイスは、まるでケイリー・グラントです。ただ、お転婆な女性を中心に置くスクリューボール・コメディと違って、スリーパーはあくまで脇役で、ほとんど活躍の場はありません。

マーサ・スリーパーの父親は娘を親友の息子と結婚させようとします。マーサは、知らない男性と結婚するなんて真っ平と、家出するために鉄道の駅に行きますが、そこでチャーリー・チェイスと出会い、お互い一目ぼれします。チェイスは見知らぬ女性と結婚するためにちょうどその駅に到着したばかりだったのですが、マーサを好きになったので、見知らぬ女性との縁談を御破算にするために、その両親に対して頭が変なふりをします。ところが縁談相手がマーサだったことがわかり、今度は自分が正常であることを納得させるのに苦労します。

チェイスが頭が変なふりをするのが見所です。変な踊りをして通行人をビックリさせるシーンがあるのですが、踊りがうまい人なんだなって思わせる身のこなしです。ただ、その後、子供っぽい仕草で頭が変なふりをするのは、あまり芸がなくて、見ている側が恥ずかしくなります。

頭が変なチェイスの出現で困ってしまったスリーパーの父親が精神病医に相談すると、「自分も変なふりをして、やり返してやりなさい」という助言を受けたので、奇妙な行動をしていると、チェイスを連行するためにやってきた病院の救急員が間違えて父親を連行するというエピソードは面白いです。

All Wet (1924) 10分

「エイプリル・フール」と同じくジミー・ジャンプ・シリーズの1本です。監督はレオ・マッケリー。「エイプリル・フール」のところで、レオ・マッケリー監督の起用によってシチュエーション・コメディ色が強くなったと書きましたが、これはドタバタ喜劇です。1924年と1926年の作品に違いがあるもっと大きな原因は、1925年に一巻物から二巻物に移行したことかもしれません。つまり、10分ならドタバタだけで持ちますが、20分ならもっと練ったストーリーが必要だろうと思います。

会社から面接通知が届いたので、自動車で急行していると、水たまりにハマって車が動かなくなります。通りかかった力持ちに車を動かしてもらいますが、水たまりの前にはもっと深い水たまりがあって、車が完全に水没してしまいます。そのストーリーに細かいギャグをちりばめています。たとえば、チェイスが水中にもぐって修理をしている間、水たまりのそばに座って様子を眺めている男がいるのですが、その男がタバコを吸おうとしてもマッチがないので、水中に向って何か叫ぶと、マッチ一本持った手が水中から出てきます。それを受取った男がそばの石にこすると火がつきます。

このDVDにはマーサ・スリーパーがチェイスの相手役として出演している短編が3本収められていますが、Internet Movie Database によると、この作品にもチョイ役で出ているようです。たしかにチェイスが住む下宿屋にスリーパーらしき少女がいます(このとき17歳ぐらい)。ただ Internet Movie Database には、オリヴァー・ハーディーと、その後「第七天国」や「サンライズ」に出演するジャネット・ゲイナーもチョイ役で出ていると記載されていますが、彼らを確認することができないので、Internet Movie Database の記載をそのまま信じることができません。DVDのジャケットに書いてある時間は12分なのに実際は10分足らずなので、残存するフィルムが完全なものではなく、なくなった部分に出演していたかもしれません。(非常にトリヴィアルなことなので、これ以上は追求しません。)

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