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シネシャモ
(過去の上映作品はこちらで)

2005年2月 第22回上映

Les Vampires

今回は1915−16年のフランスの連続活劇を上映します。ゴーモン社制作で、監督はルイ・フイヤードです。全部で400分もあるのですが、1枚のDVD に収められています。オールリージョンです。Image Entertainment から出ているのですが、残念ながら現在入手不能のようです。(最近調べたら、再び入手可能になっていました。2005年3月21日)

まず、DVDを見ながら全体のあらすじをまとめます。次の10のエピソードで構成されています。


  1. 切断された首
  2. 殺しの指輪
  3. 赤い暗号帳
  4. 幽霊
  5. 死者の脱出
  1. 催眠の視線
  2. サタナス
  3. 雷鳴の支配者
  4. 毒殺者
  5. 恐怖の結婚式

その後、次の文献を読んで理解を深めます。これは第23回上映「吸血ギャング団」というタイトルで別のページで行います。
  • DVD付属の解説書
  • "Cinema: A Critical Dictionary" という2巻から成る映画批評集の "Louis Feuillade and the Serial" (「フイヤードと連続活劇」)という項
  • David Bordwell の最新著書 "Figures Traced in Light" のフイヤードに関する章



第一話: 切断された首 30分

この作品、シーンごとに色分けされています。たぶん各シーンのフィルム全体を染料に浸す製法だと思いますが、室内はオレンジ、昼間の屋外は緑、夜間の屋外は青に色分けされています(もしかしたら、当時の上映を再現するために、DVD制作時に新たに色づけしたのかもしれません)。あまり効果的ではなく、同じ色調で統一したほうが見やすい気がします。ただ、夜のシーンも昼間撮影しているので、色分けしないと夜か昼か区別がつかなくなるおそれがあります。

主人公フィリップは悪党一味ヴァンパイアを追う新聞記者です。一味を捜査していた警部の首なし死体が発見されたというニュースが飛び込んできます。現場のそばに亡くなった父の友人ノックス博士が住む屋敷があるので、フィリップスは訪ねます。その屋敷を買うための下見に来た富豪のアメリカ婦人もやってきますが、寝ている隙に宝石を盗まれてしまいます。フィリップが疑われますが、ノックス博士がニセ者だと思ったフィリップは警察を説得し、ノックス博士を警察署内に閉じ込めて屋敷を捜索すると、殺された警部の切断された首が出てきます。警察に戻ってみると、ニセのノックス博士と一緒に閉じ込められていたアメリカ婦人は殺されており、ニセ者は暖炉の煙突から逃げていました。彼は一味の親分ヴァンパイア大王で、本当のノックス博士を殺して、博士に成りすましていたのです。

ヴァンパイア大王が黒の全身タイツを着て、屋根の上を歩いたり、樋づたいに建物を降りて行くシーンに当時の観客たちは興奮したことでしょう。特に樋を降りるシーンはワンショットで撮影されていて、このスタントマンの妙技に喝采したはずです(ただ、動きはゆっくりです)。フイヤードはスタジオのセットではなく、野外ロケで撮影しているので、自分の知っている風景の中で凶悪犯罪が行われていることに観客たちはリアルな恐怖を覚えたようです。

第二話: 殺しの指輪 15分

コウモリ踊りが評判のバレリーナがいて、フィリップと婚約すると噂されています。ヴァンパイア大王は毒を塗った針を指輪に仕掛けて、その指輪をバレリーナにプレゼントします。バレリーナは演技中に死んでしまいます。劇場でヴァンパイア大王を見つけたフィリップは車で追いかけますが、逆に手下たちに捕まり監禁されます。しかし、見張り役の手下がフィリップの知り合いだったので、二人で逃げます。

バレリーナの衣装は、全身黒タイツに、コウモリの羽のようなマントを付けているので、まるでバットマンです。漫画のバットマンが登場したのは20数年後の1939年で、ひょっとしたらこの映画に影響を受けているかもしれません。ただ、バレリーナはスラリとした体型ではないので、あまり現代的な感じがしません。

フィリップの知り合いの見張り番は、第一話にも出てきます。フィリップの捜査ファイルを盗もうとする一味の手下の役でした。その悪事をフィリップに見つかったときは、小さい息子たちと撮影した写真や、「お金を払っていただかないと、これ以上あなたの赤ちゃんの面倒をみることができません」という子守からの手紙をフィリップに見せて、「生活のために仕方なく手下になっているんです」と弁解します。今回再び手下になっているのがフィリップにばれてしまうと、また例の写真を見せて、「あなたの息子の授業料を早く支払ってくれ」という寄宿学校からの手紙をフィリップに見せます。ハゲ頭で鼻が大きい小柄な中年男性で、この映画のコメディリリーフです。以後のエピソードでは、フィリップの部下になります(彼の役名はマザメットで、男やもめなので息子たちを子守や寄宿舎に預けているらしい)。

第三話: 赤い暗号帳 40分

フィリップは労働者の格好でヴァンパイア一味のアジトを調べに行きます。そこはミュージックホールで、一味の女性メンバー、イルマ・ヴェップが歌を歌っています。イルマ・ヴェップは、一味の犯罪暦がつづってある赤い暗号帳を奪うために、家政婦に成りすましてフィリップの家に侵入しますが、見破られて、逃亡します。その間、誘拐された母親が機転を利かせて脱出するというエピソードが挿入されています。

イルマ・ヴェップの "Irma Vep" は "vampire" のアルファベットを並び替えたものです。ハッとするほどの美人でもないし、最初のうちは目立ちませんが、次第に頭角を現してきます。ひょっとして、映画が公開されるにつれ人気が出てきたので、彼女を中心に置き始めたのかもしれません。連続活劇っていうのは、たぶん最初からきちんとした脚本がなくって、観客の反応を見ながら即興で作っていたのじゃないかと思います。ときどきおかしな趣向があります。大王とイルマは隠れ家に入るのに、野原の井戸からロープづたいに苦労して入るのですが、出るときはどうするのだろう。母親が楽々と脱出できる出口があるのなら、そこから入ればいいじゃないかとか。でも、きっと子供はこういう趣向にワクワクするに違いない。

屋根伝いに逃亡するっていうのがこの連続活劇の特徴の一つです。パリのアパートがそういう風にできているのでしょう。

第四話: 幽霊 30分

不動産屋に扮したヴァンパイア大王がある男性客に大きな金庫のある部屋を紹介します。その金庫の背面は、隣室から開けることができます。男性客がカバンを金庫に入れて外出したので、隣室の大王とイルマがそれを盗んで中を開けると、出てきたのは泥棒用の黒装束。自分たちの同業者だったのです。

舞台は銀行に移ります。イルマは秘書として働きながら、何か悪さをたくらんでいるようです。年配の銀行員が翌週の月曜日にお金を運ぶ任務を受けます。もし都合で彼が行くことができなければ、イルマがお金を運ぶことになっているので、ヴァンパイア一味は週末に年配の銀行員を列車内で殺して、列車から突き落とします。ところが月曜になると年配の銀行員が出勤してくるのでイルマはビックリ。

フィリップは、「銀行の様子がおかしい」というメッセージを受取り、修理工に扮して銀行に偵察に行き、その後、イルマの部屋に忍び込みます。実は大きな金庫のある部屋の隣室で、壁を開けると銀行員の死体が転がり出てきます。隣の男が帰ってきて金庫を開けると隣室につながっているのでビックリ。フィリップに捕まってしまいます。ここから男の回想シーンになります。男は銀行員の死体が線路脇に転がっているのを見つけ、ポケットを探って、月曜にお金を運ぶ指示が書いてある紙に気づきます。それで彼が銀行員に扮装してお金を盗んだのです。回想を終えた男は警官たちに連行されます。

善玉も悪玉もみんな扮装しあっているのがおかしいし、自分が扮装しているくせに人の扮装を見抜けないのも愉快です。

第五話: 死者の脱出 35分

前回警察に捕まった男はモレノという名前で、ヴァンパイア一味と敵対するグループの首領です。警察が尋問しようとすると、モレノは耳に隠した毒薬を飲んで自殺します。死体は留置場の一室に安置されますが、モレノは生き返り、看守を殺して逃げます。

フィリップが自室で記事を書いていると、窓ガラスが割れます。窓から外の様子をうかがうと、通りにいたヴァンパイア一味がワッカのついた長い棒にフィリップの首を引っ掛けて、通りに突き落とします(バカバカしいけど、展開がスピーディーなので単純に面白いです)。大きなバスケットに入れて誘拐しますが、運んでいる最中に階段からバスケットを落とし、フィリップは通りがかりの人に助けられます。

ヴァンパイア大王とイルマは男爵夫婦に化けて、100名ほどの金持ちをパーティに招待します(男爵夫人に化けたイルマは今までより可愛らしく見えます)。彼らをホールに閉じ込め、催眠ガスを充満させ、手下とともに宝石などを盗みます。

ヴァンパイア一味は盗んだ財宝をカバンに入れ、そのカバンを車の天井に載せて、逃げ去りますが、その計画を事前に知ったモレノは、その車の天井に飛び乗って、数個あるカバンを一つずつ道端に投げ落として、強奪します。

今回は、フィリップやヴァンパイア一味よりも、一分の隙もなくスーツを着たダンディな紳士モレノが中心になっています。この連続活劇、悪役がどんどんカッコよくなっていって、主人公の影が薄くなります。今回フィリップは二回誘拐されるのですが、どちらも短期間で救出されます。主人公が助かるのかどうかというハラハラよりも、モレノが活躍するストーリーを進めるためだけに誘拐のエピソードが加えられているかのようです。

第六話: 催眠の視線 55分

第四話から登場しているモレノには、なんと視線で相手に催眠をかける技があります。といっても映画の中で催眠をかけるのはメイドの女性とイルマだけだし、催眠をかけられてモレノを好きになったイルマは途中から催眠とは関係なくモレノを愛しているように見えるので、この催眠というのはダンディなモレノの男性としての魅力をてっとり早く表現したものかもしれません。

今回は、アメリカで大金を盗んだ男女のカップルがパリに逃亡し、その大金を隠すのですが、それをヴァンパイア一味とモレノ一味が狙うという話です。実はフィリップとマザメットのコンビが早々とその大金を見つけているので、一味同士が無駄な化かし合いをしているだけです。簡単な話をややこしくして、30分を1時間に伸ばした感じで、少々まどろっこしいです。

ヴァンパイア大王が伯爵に扮し、一味の女性が伯爵夫人に扮します。イルマは男子のスーツを着て、彼らの息子の子爵に扮していますが、イルマは男装が似合いません(なぜかズボンの裾が短い)。

アメリカ人カップルと伯爵一家は同じホテルに住んでおり、ロビーで伯爵が先祖の話をしてカップルをひきつけている間に、イルマは全身黒タイツでカップルの部屋に忍び込み、お金のありかを示した地図を見つけます。ホテルの部屋に忍び込むのにわざわざ黒タイツを着るよりも、普通の格好をしていたほうが怪しまれないと思うのですが、体の線がはっきり見えるので、男性の観客には好評だったかもしれません。イルマはお尻が大きいし、下腹が少々出ているので、こういうタイプの役を演じる最近のスリムで中世的な体つきの女性よりも生々しくてエロチックです。

イルマが廊下に出ると、隣室で様子をうかがっていたモレノが彼女を隣室に引っ張り込み、クロロホルムをかがせて気絶させます。失神した全身黒タイツの女性が椅子に座っているのを画面前方に配置したショットは、なんか妖しげです。このあと、モレノ一味は自分たちでお金を探しに行かずに、ヴァンパイア一味にお金を探しに行かせるというもったいぶった展開になりますし、前に述べたように、そこにはもうお金はないのです。

イルマがモレノに誘拐されたのを知ったヴァンパイア大王はイルマを取り戻しに行きますが、大王を殺せという催眠をモレノにかけられたイルマは、部屋に入ってきた大王をピストルで射殺します。大王が部屋に入ってくるやいなや一発で大王を射殺するイルマはカッコいいです。

結局、アメリカ人カップルは逮捕され、お金を見つけたマザメットは賞金をもらいます。

第七話: サタナス 35分

サタナスというのは悪魔のサタンに由来する名前だと思います。ゴリラのようなゴッツイ男の名前です。実は前回イルマによって射殺されたヴァンパイア大王の親分で、彼こそが本当のヴァンパイア大王なのです。ただ、イルマはヴァンパイア一味だったのにサタナスの存在を知らなかったようです。かなりいい加減な設定ですが、David Bordwell の本を読んでなるほどと思いました。当時第一次世界大戦中だったので、悪役を演じていた男優たちは兵隊に行かなければならなかったのです。イルマは女性なので、第三話で登場して最後まで出演します。

サタナスは先端に毒を塗った画鋲を手袋に仕込み、モレノの住むホテル(アパート?)の部屋を訪れ、手をモレノの肩のあたりにおいて、画鋲の針を刺します。殺すための毒ではなく、5分間だけマヒする毒で、サタナスはマヒしたモレノに「降伏しろ」と告げて出て行きます。

第三話でヴァンパイア一味がたむろするミュージックホールが出てきたように、ここではモレノ一味がたむろするキャバレーが登場します。高級そうなキャバレーですが、なぜか二人の若い女性がケルト風のダンスを踊っています。モレノに連れられてやってくるイルマは、インド風というのか中近東風というのかエキゾチックな装いで、これまでで一番似合っています。

そのキャバレーにサタナスが大砲の弾を撃ち込むものだから、モレノは降参して、サタナスと組むことにします。つまり、ヴァンパイア一味とモレノ一味が一緒になるのです。

今回はアメリカの金持ちから大金を巻き上げる話です。モレノ一味の長身の美人リリー・フラワーが雑誌記者に扮して金持ちにインタビューし、署名をもらいます。続いてイルマ扮するレコード会社の社員が金持ちの声を録音します。モレノは署名が記された紙に、いかにも金持ちが指示しているかのように「これを持参した女性に自分の口座から10万ドル渡すように」というようなことを書きます。リリーはそれを銀行に持って行きます。銀行員は確認のためにホテルに電話しますが、電話交換手に化けたイルマは金持ちの部屋に電話をつながずに、録音した「パリの女性はこれまで私が会った女性の中で最もチャーミングだ。よろしい!」という金持ちの声を銀行員に聞かせます。

リリーはお金を受取りますが、ちょうど銀行に来ていたマザメットが彼女のあとをつけます。マザメットはフィリップと二人でリリーのアパートに乗り込み、リリーに電話をかけさせて、モレノとイルマを呼び出します。リリーのアパートに到着したモレノとイルマは警察に逮捕されます。


悪役の活躍ばかり目立って、フィリップは全然目立たなくなります。しかも手下のマザメットの人気が出てきたらしく、マザメットに押され気味なシーンさえあります。マザメットは画面に向かって目くばせしたりして、かなり快調に演技しています。

第八話: 雷鳴の支配者 50分

原題が "Thunder Master" だから「雷鳴の支配者」と訳しましたが、雷は落ちてきません。"Thunder" は大砲の音も意味するし、大砲なら出てくるので、「大砲の達人」と訳すべきかな。

前回、サタナスは自分の力を誇示するためにモレノのアジトに大砲を撃ち込みましたが、今回はイルマを助けるために船に向って撃ち込みます。前回逮捕されたイルマがアルジェリアの刑務所に移送されるのを助けようというのです。イルマも死んでしまう可能性が高いのですが、アルジェリアの刑務所に入れられるよりは死んだほうがマシだからです。弾丸は見事船に命中しますが、さて、イルマの運命は?

4話ほど大活躍だった悪党モレノは、ギロチンで処刑されたという会話が出てくるだけで、この映画からすっかり消えてしまいます。(前回言及したように、モレノを演じている役者は、第一次世界大戦のために入隊したのかもしれません。)

今回、新たな人物が登場します。小学校に入るかどうかぐらいのマザメットの息子で、けっこう芸達者な子役が演じています。このDVDには彼主演の短編もオマケとして収録されており、当時人気の子役だったようです。

クズ拾いに扮装したマザメット親子に隠れ家を見つけられ、サタナスはあっけなく警察に逮捕されてしまいます。警察に逮捕されたサタナスは、ヴァンパイア一味からの手紙を飲み込んで自殺します。手紙には毒が塗ってあったのです。死を覚悟で大砲を撃ち込んでもらうイルマや、いさぎよく自殺するサタナスなど、悪役がカッコよく描かれています。(悪役が美化されているので上映禁止になったというのをどこかで読みましたが、それは次回から詳しく調べていきます。)

ボロボロになったイルマがパリに戻ってきます。列車の底にしがみついていたようですが、地中海の港からずっとしがみついていたのでしょうか。倒れている彼女を駅員たちが介抱して元気にしてやります。人の情にほだされて改心するのかと思いきや、次のシーンではヴァンパイア一味のアジトに戻り、ドンチャン騒ぎをしています。

イルマにイマイチ夢中になれないのは、彼女が独立するとかヴァンパイア一味の首領になるとかしないからです。今回もサタナスが警察に捕まったあと、別の男がリーダーになります。化学が得意な「有毒男」という名前の男です。彼は生真面目な実務者タイプに見えるので、モレノやサタナスと比べると、こじんまりしすぎています。また、色気がないので、最初のヴァンパイア大王やモレノのようにイルマを愛人にするという感じではないです。

第九話: 毒殺者 50分

今回はフィリップの婚約者ジェーンが登場します。家庭的でやさしそうな女性です。ヴァンパイア一味は婚約パーティーでフィリップらに毒入りワインを飲ませようとします。まずイルマがメイド役の女性を連れてジェーンの住むアパートの上の階の部屋を借ります。そのメイドはジェーンのメイドから婚約パーティの仕出屋とメニューを聞き出します。ヴァンパイア一味はその仕出屋にキャンセルの電話を入れ、自分たちが仕出屋に扮装します。パーティーが始まり、みんなはワインを飲もうとしますが、先にワインを飲んだアパートの管理人が死んだため、大騒ぎになり、一味は退散します。

ジェーンが危険にさらされていることを知ったフィリップは、夜中彼女をアパートから連れ出し、彼女を隠すために車で郊外に向いますが、その車のトランクにはイルマが忍び込んでいます。目的地に到着したフィリップはイルマを発見し、彼女を追いかけます。フィリップはマザメットと、イルマは有毒男と合流して、二対二の追っかけになります。自動車や列車を使ってダイナミックな展開になりますが、結局フィリップとマザメットは二人を逃がしてしまいます。

話の展開は例によっていい加減なところがありますが、今回は、まったく人気のない郊外のムードがいいです。シュールな感じがしたり、フィルムノワールの雰囲気がただよったりします。ドロンが演じた「サムライ」のジェフ・コステロ同様、イルマは悪党として生きることが宿命であるかのように行動します。車の窓からはいだして車の後部にしがみつき、道路に落ちるイルマ。車も人も通らない道の真ん中でフィリップに両手両足を縛られるイルマ。なんとか脱出して化粧を直すイルマ。有毒男の車が近づいているかどうか調べるために地面に耳をあてるイルマ。風景が寂しいせいもあって、イルマが哀れに思えてきます。

第十話: 恐怖の結婚式 1時間

フィリップとジェーンは新婚生活を送っています。前回ワインを飲んで死んだアパートの管理人の未亡人が彼らのメイドとして働くことになりますが、ヴァンパイア一味に催眠術をかけられ、イルマや有毒男を夜中室内に入れます。彼らは有毒ガスを散布しますが、マザメットが察知し、イルマらは退散します。

その後、ジェーンと管理人の未亡人が一味に誘拐され、郊外にある彼らのアジトの一室に監禁されます。一味の車からもれたガソリンを手がかりにフィリップは彼らのアジトを見つけます。ちょうどイルマと有毒男の結婚パーティが行われているところに20名ほどの警官が乗り込み、一味を射殺したり逮捕したりします。イルマはジェーンに射殺されます。マザメットからプロポーズされた管理人の未亡人が承諾して、めでたしめでたし。

イルマが有毒男と結婚するのが納得いきません。彼女と一番お似合いだったモレノと比べると地味で色気がない男と結婚するなんてガッカリです。彼女は一味のリーダーと結婚しなければならないという掟があったのかもしれません。前も言ったように、独立した悪党になれば、もっとカッコよかったんですけど。当時女性が独立するなんてことは社会的に許されなかったのでしょうか(この反社会的な集団においても)。

彼らが開くパーティーも酒池肉林とはほど遠く、上品なものです。男女二人が少々アクロバット的なダンスを踊ったあと、有毒男か誰かが、はげ頭で鼻が大きいマザメットの似顔絵を描き、それに向けてイルマか誰かがピストルを撃つといった程度です。

人間がビルから下に落ちるシーンで人形を使っているのがバレバレで、かえって面白いです。以前フィリップが首を引っ掛けられて落ちましたが、今回はジェーンが投げ縄で落とされます。警察に追われたヴァンパイア一味が集団で落っこちるシーンも、複数の人形を放り投げただけって感じで、不思議な効果を出しています。

見てて最高に楽しいのは、イルマが体にロープをぐるぐる巻きにし、ロープの一方を固定して、ビルの7階ぐらいからアッという間にクルクルっと落ちるシーンです。そのロープをつたってあとからゆっくり下りてくる有毒男が情けない。私が子供だったら、あんなことができるイルマってスゲーなーと思ったことでしょう。


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村長 粟村彰義
 
(アワムラ アキヨシ)