4月から大学4年でした。劇場やテレビやフィルムセンターなど合わせて、全部で400本ほど見ています。ヌーベルバーグ熱が一番高まったときです。こんなに映画を見ていいのだろうかという時期だったので、今振り返っても、心苦しい。
外国映画
- 男性・女性 (仏1966)
Masculin, feminin
ジャン・リュック・ゴダール作品。ジャン・ピエール・レオ主演。この頃、ヌーベルバーグに夢中でした。まだ政治色が強くなっておらず、楽しく見れる映画。レオは、ゴダール作品であれ、トリュフォー作品であれ、相変わらず。流行歌手シャンタル・ゴヤが可愛い。(1月16日、池袋文芸座で「ワン・プラス・ワン」との二本立)
- すり (仏1959)
Pickpocket
ロベール・ブレッソン作品。たぶん当時の私は雰囲気だけで好きになってたと思う。あらためてじっくり見たい作品。(4月19日、アテネフランセにて)
- 真夜中の刑事・パイソン357 (仏1976) Police Python 357
アラン・コルノー監督、イブ・モンタン主演。モンタン扮する刑事は、自らが深く関わる殺人事件を担当する。自分が犯人ではないが、証人に面会すると明らかに自分が犯人にされてしまうので、硫酸で顔を焼いたりする。そんなところが私にはコッケイに思える、ブラックユーモアの快作です。(5月10日、大塚名画座にて)
- エドゥアールとカロリーヌ
(仏1950) Edouard et Caroline
ジャック・ベッケルはカイエ・デュ・シネマ派が賞賛する数少ないフランス人監督の一人だから、彼の映画を見るというだけで興奮してました。どんな内容だったか、まったく記憶にありません。ただ、傑作だと思った「肉屋」よりも上位にあるので、なにか見所があったと思います。(10月18日、日仏学院にて)
- ウィークエンド
(仏1967) Weekend
ゴダール作品です。すでに2回ほど見ていると思いますが、この頃ヌーベルバーグに夢中だったからトップテンに入ったのでしょう。バカンスに出かける途中の道中記で、ビートルズのホワイトアルバムのように、いろいろゴチャゴチャしていて、こういうオモチャ箱をひっくり返したような感じのものって大好きです。(10月31日、飯田橋の法政大学にて「女と男のいる舗道」と「中国女」とともに)
- 肉屋 (仏1970) Le
boucher
ここまでフランス映画です。ヌーベルバーグかぶれもいい加減にしろ!クロード・シャブロルは、ゴダール、トリュフォーとともにヌーベルバーグ御三家で、早々と商業的な映画を撮り始めた人です。ヒッチコックの大ファンで、スリラーを得意としています。のんびりした田舎を背景に中年の独身男女の恋愛を描きながら、殺人事件を徐々に忍び込ませていきます。遠足に来た子供が崖の下で昼食をとっていると、女の子が食べる白いサンドイッチが赤く染まり、崖を見上げると女性の足が突き出ているというシーンがお見事!(10月8日、日仏学院にて)
- ピロスマニ (グルジア1969) Pirosmani
グルジアの貧しい画家の話。淡々とした静かな映画。(10月6日、池袋文芸座にて)
- ファールプレイ (米1978) Foul Play
コリン・ヒギンズ監督、ゴールディ・ホーン主演の傑作コメディ。ヒッチコック・スリラーのパロディみたいな作品で、ダッドリー・ムーアが怪演。(4月13日に新宿ピカデリーにて「天国から来たチャンピオン」と、10月13日に浅草キャピタルにて「コーマ」と、10月15日に大塚名画座で「あなただけ今晩わ」とともに)
- 夕なぎ (仏1972)
Cesar et Rosalie
クロード・ソーテ監督、イブ・モンタン、ロミー・シュナイダー主演。内容をまったく覚えていないけど、三角関係を繊細なタッチで描いていたと思います。撮影ジャン・ボフティ、音楽フィリップ・サルドというのがいい。(6月30日、大塚名画座にて)
- 最後の休暇 (仏1948)
Les Dernieres Vacances
ヌーベルバーグの先駆的監督ロジェ・レーナルト
Roger Leenhardt
の作品。バザンが彼の批評集の中でほめてます。白黒撮影された田舎の風景がさわやか。(12月25日、フィルムセンターにて)
日本映画
- おとうと
(大映1960)
市川崑監督。岸恵子、川口浩主演。川口浩の虚無的な感じが好きでした。(10月31日、テレビ朝日)
- 狂った果実
(日活1956)
中平康監督。石原裕次郎、津川雅彦、北原三枝主演。ヌーベルバーグを先取りしたような新鮮な作品。(7月18日、フィルムセンターにて)
- 日本一のゴマスリ男
(東宝1965)
古沢憲吾監督、植木等主演。お相手役は浜美枝。たぶん植木等の絶頂期。このとき40近かったけど、まだ若いし、スイスイ出世していく様子がまだ信じられました。「ゴマスリ行進曲」などの挿入歌もおかしい。(3月3日にフジテレビで、5月12日にテアトル池袋でオールナイト)
- 仁義の墓場
(東映1975)
深作欣ニ監督、渡哲也主演。破滅的なヤクザの壮絶な人生を描く。多岐川裕美の遺骨をボリボリ食べるのがスゴイ。(3月12日と9月14日に新宿昭和館にて)
- あにいもうと
(東宝1976)
今井正監督、秋吉久美子、草刈正雄主演。しっかりと作られた見応えのある作品でした。多摩川沿いという設定がなつかしい。1953年に大映が成瀬巳喜男監督、京マチ子、森雅之主演で作っています。原作は室生犀星。(6月25日、銀座並木座で「さらば夏の日よ」との二本立)
- 昭和残侠伝・血染めの唐獅子
(東映1967)
1965年から1972年まで9本作られたシリーズの4作目です。3作目までは佐伯清が監督でしたが、この作品で初めてマキノ雅弘が起用されました。高倉健と池部良のコンビが定着したのもこの作品以降のようです。7作目の「死んで貰います」(1970)が有名ですが、あれは藤純子とのエピソードが情緒的すぎるので、私は、この4作目が一番好きです。(1月31日、池袋文芸地下で「昭和残侠伝」(一作目)との二本立)
- あいつと私
(日活1961)
石原裕次郎の相手役といえば50年代の北原三枝と60年代の浅丘ルリ子が有名ですが、1960年前後には芦川いづみが相手役でした。大学を舞台にした石坂洋次郎原作の青春映画です。セックスに関するきわどいセリフが少々恥ずかしい。清楚なお嬢さん役がピッタリの芦川いづみも20代後半になり、このあたりがピークだったようです。(8月31日、新宿座のオールナイト)
- もっとしなやかにもっとしたたかに (にっかつ1979)
内容は覚えていませんが、藤田敏八監督だから、面白かったのでしょう。奥田瑛二を初めて見ましたが、このときは好感が持てました。(9月11日、千歳烏山のアダルトな映画館にて)
- 桃尻娘・ラブアタック
(にっかつ1979)
橋本治原作のコメディ・シリーズの二作目。竹田かほりと亜湖主演。高橋淳という男っぽい二枚目俳優が演じるホモが面白かった記憶があります。(9月11日、千歳烏山のアダルトな映画館にて)
- 博多っ子純情
(1978松竹)
曽根中生監督。性に目覚め始めた中学生を主人公にした喜劇。(12月17日、銀座並木座にて「桃尻娘」との二本立)
他に面白かった作品
- ミッドナイト・エクスプレス (米1978) Midnight
Express
アラン・パーカー監督、ブラッド・デイビス主演。麻薬密輸の容疑で逮捕された主人公が、不当に長期間トルコの刑務所に入れられる。(1月25日、テアトル新宿にて)
- チャイナタウン (米1974) Chinatown
ポランスキーは話術がうまいです。1930年代のロサンジェルスが舞台で、ジャック・ニコルソンが私立探偵を演じる。(1月28日、三鷹オスカーにて「ロング・グッドバイ」とともに)
- ちびっ子ギャング特集 Our Gang
ハル・ローチ制作による1920年代の短編サイレント喜劇。太った男の子、そばかすだらけの男の子、黒人の女の子など7人ぐらいの子供たちの集団。大人が準備した設定の中で演技させられているのだが、ときどき垣間見せる自然な表情や仕草が可愛い。(2月17日、新宿アートビレッジにて)
- ハイ・シエラ (米1941) High Sierra
ラオール・ウォルシュ監督、アイダ・ルピノ、ハンフリー・ボガート主演。いつも死に直面しているような顔のボガートが死ぬために出演したような映画。(3月9日、日本テレビで)
- 男の紋章・風雲双つ竜 (日活1963)
松尾昭典監督。高橋英樹演じる若親分が悪い組の子分たち100人ほどと川原で喧嘩する。いくらなんでもやられちゃうだろうと思っていると、そこは軍隊の射撃練習場で、なにがなんだか分からないうちに終わってしまう。この若親分は、いつもミネ討ちで、人を殺さないし、警察とも仲が良いし、街中の人が尊敬しているのです。しかも彼は昔お医者様だったのです。(3月15日、日本テレビで)
- さすらい (伊1957) Il Grido
私が一番好きなアントニオーニ作品。雰囲気は絶望的に暗いけど、まだストーリーがあります。ロードムービーが好きだし、女の子を連れているのも救い。(4月25日、新宿アートビレッジにて「欲望」との二本立)
- トニ (仏1935) Toni
ジャン・ルノワール監督。ビスコンティが助監督ということで、イタリアのネオリアリズムに影響を与えているはず。ビスコンティのデビュー作「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(1943)はあきらかに影響を受けている。三面記事から見つけた殺人事件が題材なんだけど、自然の中で即興的に撮っていて、みずみずしい。(5月9日、飯田橋の日仏学院にて)
- フレンチ・カンカン (仏1955) French
Cancan
ジャン・ルノワール監督、ジャン・ギャバン主演。すごいバイタリティを感じさせる映画で、特にラストのカンカンショーは熱狂のオンステージです。しかも今の映画よりもずっとエロチック。(5月16日、飯田橋の日仏学院にて)
- 関東遊侠伝 (日活1963)
松尾昭典監督、小林旭主演。東映のヤクザ映画と違って、根っからの悪人は出てこない。最後、ライバルの宍戸錠と対決になり、お互いナイフを相手の腹に刺したまま、「イテーナー」。(6月10日、TVKで)
- 木靴の樹 (伊1978) L'Albero Degli Zoccoli (The
Tree With the Wooden Clogs)
エルマンノ・オルミ監督が貧しい田舎の農民たちの生活をじっくり描いています。大好きな作品なのに、なぜかトップテンに入れていません。(6月15日、岩波ホールにて)
- 黒の超特急 (大映1964)
増村保造監督、田宮二郎主演。「黒の試走車(テストカー)」(1962)から始まった「黒」シリーズの11作目にして最終作。シャープな切れ味の面白いサスペンス映画という印象が残っています。キネマ旬報「日本映画作品全集」によれば、「第二次新幹線建設で土地を安く買い取られた青年不動産業者(田宮二郎)の新幹線公団汚職事件追求」というお話です。(6月16日、浅草新劇場にて。浅草の映画館を3館はしごして8本見たうちの1本)
- さらば冬のカモメ (米1973) The Last
Detail
ハル・アシュビー監督。ジャック・ニコルソンがアカデミー主演男優賞にノミネート。ちっぽけな犯罪で不当な罰を科せられた男を護送する役目をおおせつかったニコルソン。その理不尽さに怒るが、自分では何もできないので、さらにイライラして、ビールばかり飲んでいる。
(6月20日、大塚名画座にて「ファイブ・イージー・ピーセス」との二本立)
- 若くて、悪くて、凄いこいつら (日活1962)
中平康監督。高橋英樹と和泉雅子主演なんだけど、山内賢扮する貴族の坊ちゃんがおかしいし、サマになってました。(8月31日、新宿座のオールナイト「中平康」4本立)
- ウェディング (米1978) A Wedding
ロバート・アルトマン監督。集団劇とでも言うのでしょうか、登場人物がたくさんいて、誰が主人公か分からない。核となるストーリーもありません。「ナッシュビル」の二番煎じという感じもします。年老いたリリアン・ギッシュが出演していました。「ヤング・ジェネレーション」の主人公デニス・クリストファーとその父親ポール・ドゥーリーも出てました。(9月9日、飯田橋ギンレイホールにて「オー!ゴッド」との二本立)
- 錆びたナイフ (日活1958)
舛田利雄監督。石原裕次郎主演。悪役の杉浦直樹が見事に裕次郎とバランスを保っていました。宍戸錠、小林旭が脇役というのがゼイタク。白黒の映像も良かった。(9月21日、新宿座のオールナイト「石原裕次郎」5本立)
- 野獣死すべし (仏1969) Que la bete meure (The
Beast Must Die)
クロード・シャブロル監督。二クラス・ブレイクの有名な推理小説の映画化。ジャン・ヤンヌが憎たらしくて、リアリティがありました。風景が美しい。(10月1日、飯田橋の日仏学院にて)
- 破局 (仏1970) La Rupture
クロード・シャブロル監督。主演は監督夫人のステファーヌ・オードラン。シャブロルは、1950年代の終わりごろ「美しきセルジュ」や「いとこ同士」でヌーベル・バーグの旗手として登場したあと低迷していましたが、1970年ごろは、この映画や「肉屋」などスリラー映画の傑作を撮っています。(11月5日、飯田橋の日仏学院にて)
- 赤い暗闇 (米1970) The Movie
Murderer
ウォーレン・オーツ主演のテレビ用映画。さっぱり覚えていないのですが、当時私が書いた感想によると、けっこう面白かったようです。オーツが誰かに雇われて、ある映画のフィルムを保管している映画館やスタジオに放火します。保険会社の調査員が調べていくうちに、その映画には、死んだと思われている犯罪者が写っているのが分かります。「オーツの放火魔の人物像が素晴らしいし、男運のない女の描写が的確で、二人の間に物悲しくて悲しい愛が流れている。このラブストーリーこそ、この映画の最も素晴らしいところだ」と当時の私が書いています。(12月15日、TVKで)
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