次世代に自然災害の本質をどう伝えるか

−子どもサマースクールの実践報告−

(日本災害情報学会での発表用まとめから)
16 Oct 1999 at Touhoku university

How shall we transmit essence of natural disaster to next generation
- Report of Schoolchildren's Summer Course−

地震・火山子どもサマースクール実行委員会

Executive Committee for Schoolchildren's Summer Course of Seismology and Volcanology

地震学会側委員:桑原央治(大島高校)、山崎晴雄(都立大理)、中川和之(時事通信社)
岡本義雄(大阪府教育セ)、数越達也(芦屋高校)、中丸明子(神田中学校)。
火山学会側委員:小山真人(静岡大教育、99年度委員長)、早川由紀夫(群馬大教育)
山岡耕春(名大理)、相原延光(小田原城内高校)

日本災害情報学会論文集用原稿


目的
 科学的な視点を持って、自然災害を引き起こすこともある地震・火山を感覚的に
イメージできる感性=「本質をつかむ感性」=を子どもたちに養ってもらう。

手法の特徴

・どんな質問にも答えられる専門家による講師陣   
・概観観察→目の前での観察→実験→講義の流れ   
・クイズ、ゲーム方式の多用、なまずカードによる評価
・小中高と多年代の参加、チーム方式による共同作業 

好奇心を刺激し、自ら考えるきっかけを得る

応用の可能性

地域での実践、人材の育成、他の自然災害への展開

1.概要

 1999年8月20〜21日の2日間、伊豆半島北部の静岡県函南町中央公民館、丹那断層公園、函南町農村環境改善センターなどを会場とし、一般から募集した児童・生徒を対象とした地震火山こどもサマースクール「丹那断層のひみつ」(主催:日本地震学会・日本火山学会、後援:静岡県教育委員会・函南町教育委員会)と、一般市民も対象とした関連シンポジウム(これについては静岡県、函南町も後援)を企画・実施したので報告する。本報告は、災害に関係する知識や情報をどう伝えるか、また伝えられた知識・情報を理解できる感性や知性をいかに養うかを考える上で、本学会での議論に役立つと考える。実行委員会としては、スクールに参加した子供たちは、体験を豊富に盛り込んだ楽しい1日を過ごす中で、地震や火山について、災害について考えるきっかけを得たと総括している。案内文書、準備資料、配付資料、実施状況、現地写真などの詳細な情報については、http://sk01.ed.shizuoka.ac.jp/koyama/izu/index.htmlを参照してほしい。

2.企画目的

 阪神大震災を契機として、さまざまな角度から大規模自然災害に対する防災問題が議論され、対策も進みつつある。しかし、その基盤ともいうべき「自然の理解」という点においては、若者の理科離れが指摘されているように、前進するどころか退歩の懸念さえされる現状がある。現在の教育方法では児童生徒が生の自然に触れる機会がなかなか得られず、教科書によって与えられる既成の知識は手あかがついているとも言える。
 かたや、学校における防災教育は、年に1度の避難訓練や地震防災ビデオの上映などにとどまり、自然現象の仕組みや自然災害の本質についての理解につながる場が十分与えられていないのが現状である。
 そこで今回、地震・火山分野の最前線における研究者をインストラクターとして配し、「地震火山こどもサマースクール」を、丹那断層(伊豆半島北部)で実施した。生の自然のありのままを見て、そして考えることを、大勢の子どもたちに経験してもらいたいからである。学生や大人を対象にした巡検の延長ではなく、子どもたちが興味を持ってもらえるよう、ゲームやクイズの形式を随所に取り入れ、また一人一人が自主的に取り組める実験を導入し、楽しく学び、気づいたら知識が身に付いている、災害を引き起こす自然に対する見る目が養われているような企画を目指した。

3.経緯と企画概要

 1998年10月、地震学会の桑原央治学校教育委員長(都立大島高校教諭)が火山学会に対し、児童生徒を対象に野外における地震・火山教育イベントを企画・実施するために協力を依頼。協議のうえ両学会から委員が選出され、実行委員会(委員10人)を組織した。実行委員の構成は、研究者4人、学校教育関係者5人、社会教育関係者1人となり、それぞれ、得意分野を持ち寄って企画を練り上げることができた。
 以後、おもに電子メールを通じた議論によって計画を煮詰めていった。当初は伊豆半島と伊豆大島での合計5日間にわたるプランが立案されたが、初めての経験でもあり、無理をせずに実施できる範囲として計画を縮小。今夏は伊豆半島のみの2日間の企画として実施することになり、実行委員長を小山真人(静岡大教育)が務めた。
 函南町には、1930年11月26日に伊豆北部で272人の死者を出した北伊豆地震(M7・3)の時にずれを起こした丹那断層が地表に現れており、一部が「断層公園」として断層断面を掘り下げたトレンチを含む野外展示がなされるなど、企画に使える素材が豊富なほか、地元教育委員会が企画段階から好意的に協力をしてくれたため、実現できた。
 第1日は、児童生徒のみを対象とした「地震火山こどもサマースクール」とし、第2日に児童生徒だけでなく一般市民も対象とした「地震・火山の理解と防災教育に関するシンポジウム」を開催し、第1日めの報告会を兼ねるとともに、広く一般市民に対する地震・火山の基礎知識の普及をめざした。なお、第1日および第2日を合わせた総称として形式上「'99 地震火山・夏のセミナー&シンポジウム」を用いた。

4.サマースクール

4.1.概要

 第1日「地震火山こどもサマースクール」では、伊豆半島周辺の火山や活断層・丹那断層を題材とし、野外での地形・地質観察や室内実験をゲーム形式の対話型授業をおりまぜて体験することによって、活断層や地震・火山現象についての基礎知識を学び、大地の営みについての理解を深めることを目的とした。
 募集対象は、主として静岡および神奈川県内の小学校5年生から高校3年生までの児童生徒とし、募集人員は用意できるバス座席の制限によって40人とした。募集の広報には、地元教育委員会・博物館・静岡県防災局などのネットワークをもちいたほか、地元報道機関にも資料提供し、ホームページにも案内を掲載した。参加費用は、現地レストランでの昼食代(1500円)、実験材料費、テキスト印刷代、傷害保険料、有料道路料金などの実費として参加者1人につき2500円を集めた。会場およびバスは、地元函南町からの無償提供を受けた。地元函南町のほか、静岡県や神奈川県などから、小5−高2までの22人が参加し、小学生12人、中学生3人、高校生7人の構成となった。

 行程の概略は以下の通りである。
08:30 函南町中央公民館で参加受付
09:00 開講式、オリエンテーション、チーム分け
09:30 伊豆スカイランの駐車場に移動し、火山地形・活断層地形の観察
11:15 丹那断層公園に移動し、断層のずれの観察
12:15 酪農王国オラッチェのレストランで昼食
13:30 農村環境改善センターで、食材を使った断層模型実験、ペットボトルの液状化実験
15:00 地震・火山・活断層の基礎知識についての講義
16:30 閉講式の後、函南町中央公民館に移動・解散

       

 まずは受付。名札が渡されます。全員ステージに上がって、自己紹介ゲーム。カードにサインをもらい握手。たくさん集めた人が名前を読み上げ、呼ばれた人は自己紹介をして、客席に降ります。

       

 各チームごとに分かれた客席には、透明ファイルに入れた資料と、チームフラッグが。高校生がリーダー、小学6年生がサブリーダーに。さっそく、チームごとにサインがいくつ集まったかに応じて、なまずカードが渡されました。実行委員長の小山さんによるオリエンテーションを、みんな資料を見ながら聞いています。

       

 バス車内から車窓の風景を解説。玄岳駐車場では最初は霧の中。用意した写真を元にした説明に、質問が相次ぎました。

       

 説明が佳境に入ってくると、霧が晴れてきました。みんなの願いが通じた瞬間です。どうも、この風景が怪しいぞ。断層はどこを走っているかな。チームごとに考えて手元の写真に断層線を書き込みます。

       

 さて、山崎さんが正解を説明して、チームごとに発表します。ユニークな説にはなまずカードが2枚渡されました。山からおりて丹那断層公園。地形模型の前で、さっきの風景をおさらいです。模型には、赤い線で断層線が示されています。

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